道議会決算特別委の質問・答弁概要(27年11月11日)
(道議会 2016-02-25付)

 道議会決算特別委員会(二十七年十一月十一日開催)における吉川隆雅委員(自民党・道民会議)の質問、および柴田達夫教育長、山本広海教育部長、成田直彦生涯学習推進局長、梶浦仁学校教育局長、菅原行彦学校教育局指導担当局長、赤間幸人高校教育課長、岸小夜子義務教育課長、長内純子文化財・博物館課長の答弁の概要はつぎのとおり。

◆教員研修について

吉川委員 本道の子どもたちに将来自立して生きていくために必要な学力を身に付けさせるためには、分かりやすい授業を行うことはもとより、学ぶことの楽しさや学ぶ意義をしっかり理解させることが重要である。

 そのためには、日々の授業をより良く改善することができるよう、教員の資質能力の向上を図るなど、教員の研修を一層有意義なものにしていく必要があると考える。そこで、以下伺っていく。

 現在、道教委では、ライフステージに応じた教員の研修をどのように行っているのか伺う。

岸義務教育課長 教員のライフステージに応じた研修について。道教委では、初任者の段階では、一年目から四年目の教員を対象に「初任段階教員研修」、五年目の教員を対象に「五年経験者研修」を、中堅教員の段階では、十年目の教員を対象に「十年経験者研修」、教務主任等を対象に「学校運営研修」、主幹教諭を対象に「新任主幹教諭研修」を、そして、校長、教頭等の管理職の段階では、「新任校長研修」や「新任教頭研修」等を、それぞれの段階に必要な資質能力を育成するため、計画的に実施している。

 特に、初任者に対する研修については、二十六年度から初任段階教員研修として、継続的・計画的な研修機会が確保できるよう、四年間に振り分け、改善を図って実施している。

吉川委員 今の初任者の中には、実践的指導力やコミュニケーション力、あるいは、チームで対応する力など、教員として身に付けておく必要のある力がまだまだ十分に身に付いていないと思われる教員もいるという。

 私も、PTA関係者などと話す機会があり、そうした声を聞いているし、一方では、先生方もよくやってくれているという声もよく聞く。

 そういったことを受けて、道教委では、これまでの初任者研修を見直し、初任段階教員研修として実施をしているというが、どのように改善を図ったのか伺う。

岸義務教育課長 初任段階の教員研修について。二十五年度までの初任者研修では、採用一年目に集中させて実施してきたが、五年経験者研修までの間、計画的に研修させる機会がないことや、初任段階の実務に直結した実践的な研修内容が十分位置付けられていないなどの課題があったことから、研修期間を四年間に振り分け、五年経験者研修と連続させること、教科指導力や生徒指導力、地域や保護者との連携など各年次ごとに育成を目指す資質能力を明確にすること、そして、日常の実践に直結する内容に重点化することなどを柱とする改善を行った。

吉川委員 道教委では、教員のライフステージに応じて指導力の向上を図っているということであるが、小・中学生を対象に行われている全国学力・学習状況調査の分析結果などから、本道の授業の進め方など、課題を明確にして、その改善に向けた取組を進めていくことで、教員の資質向上を図っていくことも必要と考える。

 道教委は、道内の小・中学校の授業において、どのようなことが課題と考えているのか伺う。

岸義務教育課長 道内の小・中学校の授業における課題について。全国学力・学習状況調査では、学校質問紙と児童生徒質問紙に共通する項目がいくつかあり、その結果を比較したところ、授業の冒頭で目標を示す活動について、学校質問紙調査で「よく行った」と回答した小学校は六七・三%、中学校は五〇・〇%に対して、児童生徒質問紙で「そう思う」と回答した児童は四九・〇%、生徒は三〇・一%となっている。

 また、授業の最後で振り返る活動について、学校質問紙調査で「よく行った」と回答した小学校が五四・三%、中学校が三九・一%に対して、児童生徒質問紙で「そう思う」と回答した児童は三五・五%、生徒は一三・九%となっており、いずれも、児童生徒質問紙の方が二〇%程度低く、教員の指導が子どもたちに十分に伝わっていない状況がみられる。

 これらの状況から、授業の冒頭で目標を示す活動や、授業の最後に振り返る活動が本道の小・中学校の授業の課題であると認識している。

吉川委員 二〇%程度、学校と子どもたちの意識に乖離(かいり)があり、全国的にも同じ傾向だが、本道は、特に、その差が大きいという。まだまだ子どもたちに届く指導が、なされていないのではないかと感じる。

 授業の中で、目標を示したり、振り返りをさせたりといったことは、子どもたちが進んで授業に参加したり、学習内容を定着させたりする上で基本的なことと考える。そこが十分ではないことが明らかになっているのであれば、その課題の解消に向け、具体的な取組を進めるべきである。

 道教委では、小・中学校の授業改善に向けた教員研修について、どのような取組を進めているのか伺う。

岸義務教育課長 授業改善の取組について。道教委ではこれまでも、道立教育研究所の研修講座や、毎年、全道六ブロックで開催している「教育課程改善協議会」などを通して、授業改善の在り方について研修を行い、小・中学校の教員の指導力向上に努めてきている。

 また、二十六年度からは、全国学力・学習状況調査結果を分析し、明らかになった課題や解決の方策について、道内の小・中学校と共通理解を図るため、各学校で中心となって学力向上に取り組んでいる教員を対象とした「学力向上推進研修会」を各管内で開催している。

 この研修会には、道内のすべての小・中学校から教員が参加しており、特に、本年度は、本道の授業の課題として、冒頭に目標を示したり、最後に振り返ったりする活動が子どもに十分に伝わっていないことなどを中心に説明するとともに、具体的な解決の方策について、実践事例を交流したり、協議したりすることを通じて、授業改善の道筋を全道の小・中学校間で共有できるよう取り組んでいる。

吉川委員 すべての小・中学校から教員が参加する本道の課題の解決に向けた研修会を行っているということだが、ここに参加した教員が理解しただけでは、本道全体の授業が変わっていくことはないと思う。

 小・中学校の授業改善を促進するために、今後、どのように取り組んでいく考えか伺う。

梶浦学校教育局長 授業改善の促進について。先ほど申し上げた「学力向上推進研修会」に参加した教員には、研修会で使用した資料等を活用して、それぞれの学校で校内研修を行うよう求めており、指導主事の学校訪問等において、校内研修の実施状況を把握するとともに、さらに具体的な授業改善の在り方について、指導・助言を行っている。

 また、道教委では、今後、新たに、授業の冒頭の目標の示し方や、最後の振り返りのさせ方などを示した指導資料を作成し、道内すべての小・中学校に配布するほか、市町村教委や校長会の代表を集めた会議を開催し、学力向上に成果を上げている秋田県の取組等を参考にしながら、授業改善の方向性について共通理解を深めるなどして、目標の設定や、振り返りの活動を位置付けた授業を徹底させていく考えである。

吉川委員 高校においても、生徒の学力向上を図る上で、教員の教科指導力の向上が必要と考えるが、道教委では、どのような取組を行っているのか伺う。

赤間高校教育課長 高校における授業改善の取組について。高校教育においては、生徒の社会的、職業的自立に向け、基礎的、基本的な知識、技能の確実な定着を図るとともに、思考力・判断力・表現力等を育み、生徒が課題解決に向け主体的に学ぶことができる授業づくりを行うことが求められており、生徒の指導に当たる教員の教科指導力の向上を図る研修を充実させることが重要であると考えている。

 このため、道教委では、毎年度、「高校教育課程研究協議会」を道内二会場で開催し、学習指導要領の説明や各教科別の分科会において、実践発表に基づいた、指導力向上に向けた研究協議を行うほか、道立教育研究所において、文部科学省の教科調査官等、外部講師による講義や、指導計画の作成、模擬授業などを行う教科指導等に関する研修講座を実施している。

 また、十九年度から開始した、教員の教科指導力の向上を図るための研修を、二十一年度には、現在の名称である「授業実践セミナー」に改め、さらに、二十五年度から、「道高校学力向上推進事業」の一環として、大学進学に関する指導に重点を置いた研修を加えて実施している。

吉川委員 「授業実践セミナー」といったことに取り組んでいるということだが、具体的に、どのような形で実施してきているのか伺う。

赤間高校教育課長 授業実践セミナーについて。道教委では、教員の実践的な教科指導力の向上を図るため、二十一年度から、「授業実践セミナー」を開催してきており、本セミナーは、「教科指導セミナー」と「進学指導セミナー」の二つの研修会で構成している。

 一つ目の「教科指導セミナー」では、授業における教科指導力の向上を図るため、国語、数学、地歴・公民、理科、英語の六教科について、全道四ブロック二十会場において、生徒の主体的な学びを促す授業公開や、ワークショップ、模擬授業などを行っている。

 また、「進学指導セミナー」では、大学進学希望者の進路実現を図るための教科指導力の向上を目指し、国語、数学、英語の三教科について、道内六会場で、進学校における授業実践の紹介や難易度の高い入試問題に対応できる指導法に関する研究協議などを行っている。

吉川委員 「授業実践セミナー」が、これまでどのような成果を上げ、また、今後、その充実に向けて、どのように取り組んでいく考えなのか伺う。

菅原学校教育局指導担当局長 授業実践セミナーの成果などについて。授業実践セミナーには、毎年度四百人を超える教員が参加しており、研修を終えた参加者からは、実践的な内容が豊富で、大変刺激になり、自分自身の授業改善に役立てることができた、大学進学を希望する生徒に対する効果的な指導方法を身に付けることができたなど、本セミナーに対する評価の声が寄せられている。

 道教委としては、現在、国において検討が進められている仮称・高校基礎学力テストや、仮称・大学入学希望者学力評価テストの導入を視野に、主体性をもって多様な人々と協力して問題を発見し、解決していくために必要な思考力・判断力・表現力等の向上を図る観点から、引き続き、本セミナーの内容の改善を進めるなどして、本道の高校教員の教科指導力の一層の向上に努めていく。

吉川委員 教員の資質能力の向上に当たっては、様々な研修や授業力向上の取組が進められており、本道の課題に応じた取組も進められている。授業の中で目標を示したり、振り返ったりといった活動を行うことは、授業を行う上で当然のことであると考える。こうした教員として身に付けておくべき力については、教員になってから研修を行って伸ばすのみではなく、大学での養成段階から積み上げて身に付けていく必要があると考える。

 教員になる前の教育は大学、教員になったあとの研修は教育委員会というように、それぞれの役割をしっかり果たしていくことも必要であるが、これからの時代は、ますます教育課題が複雑化・多様化し、それに対応できる高度な専門性を有した教員が求められることになる。教育委員会と教員養成大学とが連携・協力して教員を育成したり、支援したりする仕組みについて、構築する必要があると考えるが、道教委として、大学との連携について、どのように進めていく考えか伺う。

柴田教育長 大学との連携について。道教委ではこれまで、様々な教育課題に対応した実践的な教員研修の充実や専門性の向上を図るため、教員養成大学や教職大学院と連携し、大学院や教職大学院への現職教員の長期研修派遣、また、道教育大学附属小・中学校を会場とした授業実践の交流などの取組を進めてきている。

 今後、グローバル化や情報通信技術の進展、さらには、少子高齢化など社会の急激な変化に伴い、学校教育においても、高度化、複雑化する諸課題の対応が必要となり、教員には、高度な専門性や探究力をもって学び続ける力などを身に付けることが求められていることから、道教委では、これまで以上に大学等との連携を強化し、現職教員の派遣による大学での講義などを通して、学生に教員としての専門性の基盤となる資質能力を確実に身に付けさせる取組を進めるとともに、大学等が有している高度な教育理論や研究成果等を活用した現職教員に対する研修の実施など、さらなる教員研修の充実を図っていく考えである。

― 指 摘 ―

吉川委員 学校についての議論は様々あるが、学校の根幹をなすのは、やはり授業だと思っている。

 学校は、授業を受けに行く場であって、その授業が楽しく、興味を見いだせなければ、学校に行きたくなくなってしまう。先生方は、部活動指導や生徒指導を通して、子どもたちと心を通わせることもあるだろうが、まずは、授業を通じて子どもたちと向き合っていくことが非常に重要と考える。

 ところが、今の教員を養成する大学では、授業のやり方、教え方は習わないといったことも聞いており、それを補完するために、先生方の中には、自主的に互いの指導方法の良い面を共有・研究し、実践に結び付ける活動を行っている方々もいる。それは、大変素晴らしい取組ではあるが、やはり、学生のうちから、大学で教員として必要な能力を養っておくことが絶対的に大切である。

 学生にとってはもちろん、将来、その方たちから教わる子どもたちにとって、一番重要なことと思うので、今、教育長から答弁いただいた、道教委としての大学との連携を、さらに推進していただきたいと思う。

◆道立美術館の活性化

吉川委員 道立美術館は、広く道民に優れた美術品を鑑賞する機会を提供するとともに、地域の芸術文化の振興に向けた取組を行うことが重要な役割である。現在、道立美術館では、どのような取組をどの程度行っているのか伺う。

長内文化財・博物館課長 道立美術館の取組について。道立美術館では、優れた魅力ある美術作品を、広く道民に鑑賞していただけるよう、各美術館の収集方針に基づき、作品の収集を進めており、近代美術館ではガラス工芸、旭川美術館では木工、函館美術館では書、帯広美術館ではプリントアートなど、それぞれの特色や地域性を生かした展覧会を開催している。

 展覧会のうち、収蔵作品を中心に紹介する常設展は、各館ごとに一年間を二期から五期に分け、それぞれテーマを設け、ほかの美術館の作品なども含めて展示作品を入れ替えて開催しており、国内外のほかの美術館の作品を中心に紹介する特別展は、現在、近代美術館では年に五回、三岸好太郎美術館では一回、地方美術館では四回から六回程度開催している。

 また、学芸員による作品解説や子ども向けのワークショップ、ロビーを活用したミュージアムコンサートなど、それぞれの美術館において、その施設や機能を活用し、様々な教育普及事業を行っている。

吉川委員 展覧会は美術館の取組の大きな柱である。道立美術館では、どのような企画の展覧会を行っているのか、また、ここ数年の入場者数がどのように推移しているのか伺う。

長内文化財・博物館課長 展覧会について。二十六年度に開催した、特色のある常設展を申し上げると、旭川美術館においては、コレクションの中心である木工作品を生かし、暮らしの中で使われてきた木製品の魅力を、近代椅子の研究で知られる織田憲嗣氏の作品と所蔵品から紹介した、「木をつかうくらし展」を開催した。

 また、特別展では、近代美術館において、名古屋市にある徳川美術館が所蔵する、徳川家康の遺産を含む大名文化の名品、約二百三十件を展示した、「徳川美術館展」を開催し、十万人以上の入場者があった。

 道立美術館五館の合計の入場者数については、常設展では、二十四年度は約十一万七千人、二十五年度は約十万四千人、二十六年度は約十一万九千人と、ここ三年間、ほぼ同程度で推移しており、特別展では、二十四年度は約二十九万三千人、二十五年度は約二十四万一千人、二十六年度は約二十七万四千人と、展覧会の内容によって若干の変動がみられる。

吉川委員 もう一つの柱である教育普及事業について。気軽に美術館に来てもらうためには、様々な催しが必要であると考える。現在、道立美術館では、どのような事業を実施しているのか、また、ここ数年間、その参加者数がどのように推移しているのか伺う。

長内文化財・博物館課長 教育普及事業について。代表的な取組を申し上げると、美術作品の鑑賞機会が少ない地域の方々への鑑賞機会を提供する「移動美術館」を道内各地の公民館などで年二ヵ所開催しているほか、学芸員の指導のもと、児童生徒などが作品づくりを体験するワークショップをすべての道立美術館で開催しており、二十六年度は、約一千人が参加し、創作の楽しさを体験していただいた。

 また、美術館のロビーなどを活用したミュージアムコンサートとして、ヨーロッパ絵画の展覧会に合わせたクラシックコンサートや、子ども向けの「ピアノと絵本の音楽会」などを開催しており、二十六年度は、全道立美術館で四千人以上の方に鑑賞していただいた。

 これら教育普及事業への参加者数については、二十四年度および二十五年度は約三万三千人、二十六年度は約二万八千人と、やや減少傾向にあることから、今後は、さらに多くの皆さんに参加していただけるよう、より一層創意工夫を凝らした取組を進めていく必要があると考えている。

吉川委員 こうした取組は、当然、あらゆる世代の方々に向けて行われているが、これからの本道を担う子どもたちに対して、美術館の作品にふれる機会を提供していくことも重要である。

 小学校や中学校などの授業の場において、道立美術館の作品や機能をさらに活用していくべきと考えるが、どのように考えているのか伺う。

長内文化財・博物館課長 学校教育での活用について。道教委では毎年度、年間スケジュールを示したリーフレットを全道の各学校へ配布し、修学旅行の際に道立美術館を積極的に活用してもらえるよう働きかけているほか、道立美術館では、二十四年度から、学芸員が作品を学校に持参し、児童生徒に実物を見せながら、分かりやすく鑑賞の手ほどきを行う「出張アート教室」を、年十五校程度で実施している。

 また、教員を対象に、美術館活動を体験し、収蔵作品を用いて鑑賞教育について具体的な方法を学ぶ「美術館活用学習のための研修講座」を子どもたちの長期休業中に実施している。

 さらに、道教委では、本年度から、学校の授業で活用できる「鑑賞学習用支援ツール」として、収蔵作品の写真や解説などをコンパクトにまとめた「アートカード」などを作成し、学校に提供する取組を進めることとしており、今後も、各美術館や学校と連携し、道立美術館の作品や機能が学校教育において、さらに活用されるよう取り組んでいく考えである。

吉川委員 「鑑賞学習用支援ツール」といった教材の開発を進めているようであるが、現状、どのような取組を行っているのか。また、これを最終的にどのように展開していくつもりなのか伺う。

長内文化財・博物館課長 「鑑賞学習用支援ツール」について。道教委ではこれまで、小・中学校や、美術教育に関する研究団体に「鑑賞学習用支援ツール」の概要を情報提供して意見を伺うとともに、道立美術館と支援ツールの在り方などについて協議してきた。

 今後は、具体的な取組を推進するため、美術教育に関する専門家や美術館の学芸員、教員で構成する委員会を設置し、本年度内を目途にアートカードやワークシート、掲示用作品パネルなど、鑑賞教育を実施するための教材開発を進めるとともに、次年度以降は、授業展開例や学習評価シートなど教員向けの指導資料を作成し、学校に提供することなどによって、児童生徒の美術への興味関心を高め、本道にゆかりのある作家や作品の素晴らしさを知る機会となるよう、鋭意、取組を進めていく考えである。

― 意 見 ―

吉川委員 アートカードなどは新たな試みということであり、ぜひ、子どもたちにとって興味を引くような、いい内容にしていただくように、様々な角度から今後の検討を進めていただきたい。

吉川委員 美術館では、ボランティアの活動が欠かせず、多くの方々に美術館活動をバックアップしていただいている。美術館にとって、なくてはならない存在であるが、このようなボランティアがどのような活動を行い、美術館運営にどのように寄与しているのか伺う。

長内文化財・博物館課長 ボランティア団体の活動について。地域の方々には、積極的に道立美術館の運営に協力していただいており、近代美術館では「北海道美術館協力会(アルテピア)」、旭川美術館では「常磐会」と「旭川美術振興会」、函館美術館では「いちいの会」、帯広美術館では「しらかばの会」と「帯広美術館振興会」が組織されており、全道で約一千六百人が会員となっている。

 各ボランティア団体においては、美術館が実施する教育普及事業への運営協力をはじめ、ミュージアムショップや喫茶コーナーの運営のほか、来館者に対する美術講座の開催や作品の解説、会員の資質向上を図るための研修会といった、美術に関する道民の知識と教養の向上を図るための事業を実施していただくなど、幅広く美術館の活動全般を支えていただいている。

吉川委員 私の地元にも、このボランティア活動にかかわっている方がおり、ぜひ、たくさんの方に美術館に来ていただきたいという話を聞いている。

 たくさんの方に来ていただくためには、新たな美術品の収蔵も、必要なことであると考えるが、道では、ここ数年、新たな作品を購入していないと聞いている。この間、各美術館は、どのようにして作品を収集してきたのか、また、今後の購入について、どのように考えているのか伺う。

成田生涯学習推進局長 美術品の購入について。道教委では、美術品を円滑かつ効率的に取得することを目的に、五年度に五億円の「北海道美術品取得基金」を設置し、各美術館で展示する美術品の収集を進めてきたが、十八年度以降、道の厳しい財政状況などを踏まえ、基金を活用した新たな美術品の購入を行っておらず、この間は、寄贈による収集のみとなっている。

 本年度は、本道にゆかりのある、稀少性および緊急性が非常に高い作品を購入する方向で検討しており、今後についても、道民に優れた美術品を鑑賞していただく機会を提供するという、美術館の役割や、基金の設置目的を踏まえ、道の財政状況などを見極めながら、美術品の購入について検討していく考えである。

吉川委員 利用者の増に向けては、展覧会、教育普及事業のいずれにおいても、より多くの道民に美術館に足を運んでもらい、様々なイベントに参加していただくということが重要である。道立美術館では、利用者の増に向けて、どのような工夫をしているのか伺う。

長内文化財・博物館課長 利用者増に向けた取組について。道立美術館ではこれまで、多くの方々に来館していただくため、より魅力的な展覧会の開催はもとより、先ほど申し上げた、ワークショップやロビーコンサートなどのほか、親子向けのガイドツアーや、映像ミュージアム、トークイベントを開催するとともに、近代美術館と三岸好太郎美術館では、知事公館との連携による「ぐるっと三館鑑賞ツアー」を実施するなど、様々な工夫を凝らした取組を行っている。

 また、地方美術館においては、博物館、動物園や観光施設などとの入館料相互割引制度の導入や、交通機関や観光施設と連携した日帰りバスツアーの実施、さらには、夏休み、冬休みの親子向け体験講座の開催、地域イベントや近隣の文化施設などとタイアップした事業の実施など、地域や関係機関と連携した取組を行っている。

吉川委員 さらに多くの方々にこうした利用していただくためには、今答えていただいた工夫はもちろん、民間企業とのコラボレーションや、道内各地の文化施設などと協働、連携した取組も必要と考えるが、見解を伺う。

成田生涯学習推進局長 利用者増に向けた新たな取組について。道教委としては、多くの道民に美術館を利用していただくため、魅力ある展覧会の開催や、参加したくなるイベントの企画など、これまで行ってきた取組をさらに充実させることはもちろんのこと、新たな取組を進める必要があるものと考えている。

 今後に向けては、民間企業の店舗など、多くの方々が訪れるスペースに道立美術館の収蔵作品を展示することや、道内各地の市町村立美術館や企業が収蔵する美術品を道立美術館で紹介することなど、民間企業やほかの文化施設との協働、連携を一層進めることが必要であり、これらの実現に向けて検討を進めていく考えである。

 さらに、本道の美術振興に当たっては、子どものころから美術作品にふれる機会を提供することが重要であるから、学校教育における美術館の作品や機能の活用を積極的に進めていく。

吉川委員 利用者増に向けて、新たなことも様々に考えているということだが、こうした現在の運営方針やそういった取組が、道民の方々に本当に喜んでいただけているのかどうか、客観的な評価をもとに判断し、その運営の改善を図っていくことも必要であると考える。

 道教委としては、どのように考えるか伺う。

山本教育部長 美術館運営の改善について。道教委では、二十年の博物館法の改正によって、運営状況の評価が努力義務とされたことを踏まえて、道立美術館の運営改善を図るため、「美術館評価システム」を導入することとした。

 この評価システムは、「優れた作品の収集」「豊かな人間性を育む学習の場の提供」「地域文化の振興」といった運営方針の柱ごとに評価項目と評価指標を設定し、自己チェックシートや来館者へのアンケートによって、運営全体について評価を行おうとするものである。

 また、この評価結果については、ホームページなどを通じて公表するとともに、各美術館に設置している美術館協議会に報告し、意見を伺った上で、運営の改善を図っていくこととしている。

 本年度から試行を始めており、その検証結果を踏まえて、評価項目や評価方法などについて、必要な修正を加えた上で、本格実施していく考えである。

吉川委員 道立美術館は、本道の美術振興の中心となるべき立場であり、多くの道民に訪れていただきたいと考えている。そのためには、道民の中に、美術や芸術に対する関心や意識を高めていくことも必要である。

 道民のニーズに応じた、多くの方々を呼び込める展覧会の開催や、アウトリーチ型の教育普及事業の充実などを、様々な創意工夫を凝らして積極的に進めていただきたいと考えるが、今後の道立美術館の果たすべき役割や在り方について、教育長の見解を伺う。

柴田教育長 今後の美術館の在り方などについて。道立美術館は、本道における美術の振興を目的に設置しており、本道にゆかりのある作家や作品の収蔵や研究を行うとともに、展覧会や教育普及事業などを通じて、子どもから大人まで、あらゆる道民に優れた魅力ある作品にふれる機会を提供する役割を担っているものと認識している。

 また、本道の美術振興に当たっては、児童生徒の美術への興味・関心を高めることが重要であることから、収蔵作品の鑑賞教育への活用をさらに進めるなど、学校教育と連携した取組を強化していくことが求められている。

 こうしたことから、道教委としては、道立美術館が本道の美術文化の拠点としての機能を果たしていくため、質の高い展覧会を開催することはもとより、これまでの教育普及事業をさらに充実させるとともに、民間企業や地域イベントなどと連携した、新たな取組を進めることなどによって、道立美術館の利用拡大を図り、道民が、生涯を通じて美術に親しむことができる環境づくりを積極的に進めていきたいと考えている。

― 意 見 ―

吉川委員 東京などであれば、美術や文化にふれる機会は多くあるが、道民には、道立美術館が、大変貴重な機会を提供していると考える。

 今、教育長から、道民が、生涯を通じて美術に親しむことができる環境づくりを進めるという答弁があった。

 今後も、しっかりそうした環境を、道民に届けていただきたい。

(道議会 2016-02-25付)

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