道議会決算特別委の質問・答弁概要(27年11月11日)(道議会 2016-02-26付)
道議会決算特別委員会(二十七年十一月十一日開催)における三津丈夫委員(民主党・道民連合)、佐藤伸弥委員(北海道結志会)の質問、および柴田達夫教育長、山本広海教育部長、秋山雅行総務政策局長、加賀学施設課長、野﨑弘幸教職員課服務担当課長の答弁の概要はつぎのとおり。
◆地教委への調査の在り方
三津委員 昨年一年間で、服務規程に関して、地教委にいろいろ求めたものは何本あったのか。
野﨑教職員課服務担当課長 服務規律に関する通知について。二十六年度に、教職員課から各市町村教委に対して発出した、教職員の服務規律に関する通知は二十三本である。
三津委員 二十三本というと結構な量。それに追われる地教委、学校現場は、大変だと思う。
関係者は、その処理に忙殺され、運営業務がなかなか進まないと言っている。
発出する内容もそうであるし、場合によっては、道教委は不要なものも発出しているのではないかと思うが、見解を伺う。
野﨑教職員課服務担当課長 服務規律に関する通知について。道教委が発出する服務規律に関する主な通知としては、教職員による重大事故が発生した際に、再発防止を図る目的から発出するもの、選挙の前に教職員の選挙運動の禁止などについて具体例を挙げて周知するもの、車を運転する機会が増加する行楽期の前などに、交通事故防止の注意喚起を図るものなどがある。
学校教育は、保護者や地域住民との信頼関係の上に成り立っており、児童生徒の教育に直接携わる教職員の果たす役割は極めて大きいことから、教職員の服務規律を確保する上で、こうした通知は必要であると考えている。
― 意 見 ―
三津委員 それもあるだろうが、教育委員会の本来の仕事は、教育環境をどう整えていくのかということ。罰することばかりを考えながら、学校現場を運営することは、間違っているような気がする。
しかし、必要な伝達は必ずあり、そこをどう判断するかは、まさに教育委員会の資質の問題である。
三津委員 二十七年十月十四日付で、校内におけるクリアファイルの配布などについての調査が行われたようであるが、その目的は何か。
野﨑教職員課服務担当課長 調査の目的などについて。今回の調査は、クリアファイルが職員室内の職員の机の上に置かれているとの情報があったことから、九月上旬に各教育局を通じて、全道立高校に対し、聴き取り調査を行ったところ、石狩、渡島、上川、オホーツク、釧路の五管内の五校において確認されたことから、教育公務員の政治的中立性を確保し、学校教育に対する道民の信頼を損なうことのないよう、法令等に違反するおそれのある行為などについて、その状況を確認するものである。
三津委員 これは、議会での発言に基づいての調査だったと思う。誰かが言ったとか言わないとかということで調査するような内容のものなのか。その考え方を伺う。
秋山総務政策局長 調査の実施について。学校は、教育基本法の定める教育の政治的中立の原則に基づき、特定の政党を支持し、または反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならないとされており、併せて、教育公務員は、教育公務員特例法によって適用となる、国家公務員法およびこれに基づく人事院規則によって特定の政治的目的を有する政治的行為に一定の制限がなされている。
担当課長が答弁したとおり、聞き取り調査によって確認された行為は、法令等に違反するおそれがあることから、道教委の責任において、人事院規則の関係規定などを示した指導通知を発出するとともに、道内の公立学校における状況を把握するため、調査を行っている。
三津委員 「誰かが見た」「何ヵ所かで見た」ことで何があったかというと、政治的行為があったわけではない。人事院規則でいうと、おそれと言えば何でもできる。
個人的には、人事院規則上、問題ないと思う。
例えば、校長室の前にポスターを貼ったとかいうことになれば、別なことである。机の上にあった、読んでいた、見ていた。これは、何ら関係のないことだと思う。
そこまでやったら、憲法で保障されている自由が、保障されなくなる。
教育長自らが、入り込んでいって、思想を調べろと言ってるのと同じことではないか。
柴田教育長 このたびの調査についての考え方であるが、教員も、一私人としては、思想の自由、表現の自由に基づく政治活動の自由が保障されているものであるが、一方で、心身ともに発達段階にある児童生徒の価値観の形成に対して、強い影響力がある。
こうした中で、最高裁の判例においては、公務員の政治的行為の制限について、「もし、公務員の政治的行為のすべてが自由に放任されれば、公務員の政治的中立性が損なわれ、その職務の遂行や行政機関の公務の運営に党派的偏向を招くおそれがあり、国民の信頼が損なわれることを免れず、従って、このような弊害の発生を防止し、行政の中立的運営と国民の信頼を確保するため、公務員の政治的中立性を損なうおそれのある政治的行為を禁止することは、まさしく憲法の要請に応えている」とされている。
道教委としては、こうしたことも踏まえ、教育公務員の政治的中立性を確保し、学校教育に対する道民の信頼を損なうことのないよう、まず、指導通知を発出するとともに、法令等に違反するおそれのある行為などの状況を把握するために、このたびの調査を行っているものである。
― 指 摘 ―
三津委員 「置いてあった」「読んでいた」ということが政治的行為かというと、そうではない。
調査の前提は、「おそれがあるから」「誰かが言ったから」。そういうことをもとにして、調査することが、道教委の使命ではない。現場は迷惑している。ぜひ、いろいろな意味での検証もしてみてほしい。
◆義務教育施設の耐震化
三津委員 市町村会から、「耐震化が遅れているし、現実として、しなければいけないと思うが、いくつかのルールの壁があって思うようにならない」と言われている。学校は、ほとんどが避難所になっており、その耐震化が思うように進んでいない中で、常時、子どもはそこにいる。耐震化や教育環境の整備に力を入れることが、教育長の本来の仕事と思っている。
そこで、何点か伺う。
文部科学省が、学校施設としてふさわしい耐震性能目標などを設置していると思うが、どのようになっているのか。
加賀施設課長 学校施設の耐震性能について。学校施設は、児童生徒等の安全確保や非常災害時の応急避難所としての機能、役割を担っているため、一般施設に比べ、高い耐震性能を確保する必要があることから、建物の形状や建築年数等で算出される構造的な耐震性能を評価する指標、いわゆるIs値は、一般施設では、震度六強以上の地震に対して倒壊または崩壊する危険性が低いとされている〇・六以上となっているが、学校施設については、さらに〇・七以上を目標としている。
三津委員 国が二十七年度までを、いわゆる最終年度として耐震化を進めようとして、指導もしてきた。本年度の全国、全道の耐震化率はどのようになっているのか伺う。
加賀施設課長 耐震化率について。文科省が毎年度実施している、公立学校施設の耐震改修状況調査の結果では、二十七年四月一日現在の公立小中学校の全国平均の耐震化率は九五・六%、これに対し、全道平均は八八・二%となっており、市町村数でいうと、七割で耐震化が完了しており、これは、全国平均と同様となっている。
なお、本年度中に百二十一校が耐震化される予定で、これによって、本年度末の耐震化率は、約九三%と見込んでいる。
三津委員 それぞれ積極的に進めており、いよいよ最終年度を迎えるが、現実的には、まだ残っている状況である。全国平均と比べて下回っている状況を打開するために、市町村が耐震化を進めたいと思っているが、なかなか進まない。それには理由があると思うが、道教委として、どのように考えているのか伺う。
加賀施設課長 耐震化が進まない理由について。耐震改修状況調査において把握した主な理由としては、「児童生徒数の減少に伴う統廃合に関する住民合意に時間を有すること」「建物の老朽化から耐震補強工事よりも全面改築を検討していること」「市町村財政が厳しい状況にあること」が報告されている。
三津委員 いろいろな状況があって、一つ目は、耐震化の国庫補助率の嵩上げなどを進めてきたが、期限があることから、今後、ますます影響が出てくるとのことである。二つ目は、新築、改築に対する全国一律の補助単価になっていて、積雪、寒冷地などでは、少し問題があるのでないかと言われている。実際の費用に大きな乖離(かいり)があることから、一連の補助単価を見直すなり、手をかけてくれなければ、なかなか進まないと思うが、道教委として、どのように取り組んでいくのか伺う。
山本教育部長 耐震化に向けた今後の取組について。児童生徒の安全確保は、何よりも優先して取り組むべき課題であり、国が耐震化完了を目標とする最終年度の本年度に、いまだ耐震化が完了しない市町村が全道の三割近くあることは、大変重く受け止めている。
道教委においては、現在、すべての学校に関する耐震化完了の目途が定まっていない三十二市町を対象として、教育長をはじめ幹部職員が訪問し、直接、市町長等に耐震化の促進を要請している。
今後、要請結果を踏まえ、市町村が作成する耐震化年次計画の進捗状況を随時把握した上で、事業の前倒しなどをさらに強く求めるとともに、耐震化が進まない理由の中で、市町村の財政が厳しいということもあるので、補助金の嵩上げなどの財政支援措置が本年度で終了予定となっているが、次年度以降についても、現行の嵩上げ措置の継続あるいは耐震化事業の優先的な採択を国に対して強く要望するなど、できるだけ早期の耐震化完了に向けて、最大限努力していきたいと考えている。
― 指 摘 ―
三津委員 子どもたちの安全、安心もそうであるし、災害時の避難所になることから、ぜひ、積極的に進めていただき、市町村長がよしやろうかと思い、走り出すことをお願いする。
◆アスベストについて
佐藤委員 二十七年十一月四日の文教委員会において、わが会派の同僚議員から、「子どもたちが生活する学校現場において、アスベストが飛散・浮遊しており、ばく露・吸引してしまう、そんな危険な状態が生じているといったおそれは本当にないか」との趣旨で、繰り返し、道教委としての認識をただした。
その際、「アスベスト粉じんの飛散、ばく露のおそれなしとの調査結果に変更はない」「規則改正の趣旨については市町村等に周知しており、学校においては、日常的な点検などにおいて適切に対応していると考えている」との答弁内容であった。
二十六年六月の「石綿障害予防規則」ならびに「大気汚染防止法」等の改正、施行を受け、以前は、飛散・ばく露のおそれが低く、吹き付け材のような対応は必要ないとされてきた石綿含有の保温材等の「レベル2」材についても、危険度が高い「レベル1」材と同等の措置が求められることとなった。
この間、道内の公立学校において、子どもたちが危険な状態にさらされていた、または、そのおそれがなかったと断言できるのか伺う。
また、そうした事例を道教委として把握していたかどうかも併せて伺う。
加賀施設課長 アスベストのばく露のおそれについて。このたび公表された特定調査は、二十六年六月の石綿障害予防規則の改正に伴い、教室や廊下等に露出している保温材等やアスベストを含有する煙突用断熱材の使用状況について、二十六年十月一日現在で調査したものである。
この調査では、道内の公立学校においては、劣化や損傷等によるアスベストの飛散によるばく露のおそれがない結果となったが、応急措置や囲い込みなどの措置が行われるまでの間、また、調査中の機関については、調査結果を踏まえ、必要な措置が終了するまでの間、その可能性は否定できないと考えている。
なお、市町村からは、規則改正からこれまでの間、保温材等に含有するアスベストの飛散に関する事例については、報告は受けていない。
佐藤委員 わが会派の調査では、釧路管内の中学校において、二十七年四月、石綿を含有する断熱材を使用した煙突で、劣化・破損によりアスベストが剥落し、なおかつ、灰出し口付近の地表にも、灰出しの際に排出した石綿含有の煙突用断熱材が散乱している事例を把握している。
同校が、耐震化工事に先立ち、二十七年三月二十日から四月七日にかけ、改修前のアスベスト使用の有無に関し、従前どおりのレベル1材を対象に行った事前調査の結果、偶然、規制が強化されたレベル2材の使用と、その劣化・破損、さらに、アスベスト自体が、外部に散乱している事実が専門機関によって確認され、四月八日、事態を重くみた専門機関から、速報として、「非常に危険な状態」と市に対し報告がなされた。
先の委員会で、「二十六年十月一日現在での、煙突用断熱材使用状況について、国に対し報告した時点から、二十七年九月八日現在まで、アスベスト粉じんが飛散することによるばく露のおそれがないことに変わりない」との答弁は適切なのか、所見を伺う。
加賀施設課長 釧路市の事例について。二十六年十月一日現在における釧路市内の中学校の煙突用断熱材の使用状況については、市の技術職員による調査の結果、劣化、損傷等によるばく露のおそれがないことが報告されており、その後、ばく露したという報告もなされていないが、道教委では、今回、あらためて事実関係を釧路市教委に確認したところ、指摘の中学校の耐震補強工事の施工に当たり、石綿障害予防規則に基づき、二十七年三月に、施設全体のアスベストの有無について、専門機関による事前調査を実施した結果、アスベストを含有する煙突用断熱材の散乱があったこと、また、散乱した時期は、不明との回答があった。
佐藤委員 これまでは、「ばく露のおそれがない」との答弁であったが、あらためて確認すると、アスベスト含有の煙突用断熱材の散乱があったとの回答があった。このことは、大変重要な問題だと考える。
二十七年七月一日付で、釧路市から釧路総合振興局に提出、道環境生活部で受領された同中学校の耐震化工事にかかわる書類には、石綿を含有する断熱材を使用した煙突に対する、石綿含有断熱材、いわゆるレベル2材の除去工事である旨が記載されている。しかも、それがレベル2材でありながら、除去に際して、レベル1材同等の、慎重かつ適切な対応をとる旨の施工フローまでもが添付されている。
つまり、少なくとも施工業者の段階では、専門機関による調査に基づき、レベル1材同等の危険な材の除去工事として、適切に扱わなければならないことを認識しており、その認識のもと、慎重な工事が行われたと聞いている。
二十六年八月一日付で、道教委が各市町村教委に対し、施設課長名等で発した「石綿含有保温材等の使用状況調査」以降、二十七年九月八日現在までの間、アスベスト飛散によるばく露と、同中学校の生徒たちが、その散乱、浮遊するアスベストを吸引していたおそれが本当にないと断言できるのか、重ねて伺う。
加賀施設課長 アスベスト吸引のおそれについて。釧路市教委では、二十七年三月に校舎外側のボイラー用煙突付近でアスベストを含有する煙突用断熱材の散乱を確認したことから、直ちにその断熱材をシートで囲い込むなど、アスベストの飛散防止の措置を行うとともに、生徒の立ち入りを禁止した。
釧路市教委では、発見後、生徒の健康被害の防止に向け、速やかに対応しているが、散乱した時期を特定することができないことから、アスベストの飛散によるばく露のおそれについては、否定することは難しいものと考えている。
佐藤委員 「直ちにシートの囲い込み、飛散防止措置を行ったが、ばく露のおそれについては、否定するのは難しい」との答弁であったが、これは、本当に深刻な問題である。
規則改正による規制強化後のレベル2材に対する使用状況調査の在り方に大きな問題があり、極めて深刻だとわが会派が考え、重ねて質問してきている理由は、申し上げてきたような状況のもと、大きく四つある。
一点目は、現状の取扱いでは、例えば、施設課で所管する公立学校について、「調査中」か「ばく露のおそれなし」との結果報告しかなく、「調査中」と分類されている学校の状態が、果たして安全な状態にあるのかを確かめる調査が具体的に着手されているのかが明らかとならず、少なくとも、「ばく露のおそれ」の可能性があるという事実が、各市町村も含め、子どもたちや保護者に伝わらない点である。つまり、子どもたちや学校施設利用者を、現状、危険な状態にはさらしていないと、誰も断言できないという点である。
二点目は、仮に、調査によって、アスベスト含有断熱材等の使用が判明し、その後、速やかに措置されたとしても、その判明時点の状態いかんでは、それ以前に「ばく露のおそれがあった」懸念が残るのにもかかわらず、そうした事例をも「おそれなし」とくくってしまうことによって、健康被害を受けたおそれ自体があったことを、事実上、封印してしまうという点である。
我々が把握した釧路の事例では、いつごろから、危険な状態が放置されていたのかが判然としない上に、特定調査依頼後も、少なくとも二十七年八月に除去工事が完了するまでの一年にわたって、危険な状態が放置されていた可能性も否定できない。
しかし、先の文教委員会では、「〝調査中〟か〝ばく露のおそれなし〟との結果報告しかないのは、おかしいのではないか。そうした取扱いで本当に子どもたちの安全が確保できるのか」との趣旨の質問に対し、道教委は、「文科省からの調査実施要領上、劣化を発見して直ちに応急処置した場合には、〝ばく露のおそれなし〟として差し支えないとなっているから問題なく、措置前の状況等について把握していない」と答弁している。
まず、この二点について、釧路の事例を踏まえて、あらためて現状の認識を伺う。
秋山総務政策局長 現状の認識について。今回公表された特定調査においては、調査日時点で調査中機関が多数にのぼり、その安全性は確認されていないこと、また、委員指摘のとおり、調査日以降に、アスベストを含有する煙突用断熱材の散乱していた事例が確認され、アスベストの飛散によるばく露のおそれがあったことを深刻に受け止めている。
佐藤委員 問題の三点目は、規則改正の趣旨や改正に至った背景等について、市町村教委が正しく理解していないのではないかという点である。なぜなら、煙突用断熱材については、二十六年の道教委からの特定調査依頼が発されて以降、一年以上がたつのにもかかわらず、二百六十五施設もの「調査中」案件が残っている。
一方、釧路市の事例にあったとおり、別な案件で調査を行った結果、偶然、レベル2材の使用と劣化、飛散が確認されるような事態となっている。釧路市は、なぜ、この間、危険な状態が放置されている可能性が否定できないにもかかわらず、一年以上もの間、その調査すら着手しなかったのか。
先の委員会で道教委は、「規則改正の趣旨については市町村等に周知をしており、かつ、学校においては、日常的な点検などにおいて適切に対応していると考えている」と答弁している。
では、この釧路市の対応をどう説明するのか。指導監督する立場にあった道教委としての見解を伺う。
山本教育部長 釧路市の対応状況などについて。釧路市教委では、二十七年三月の発見後、生徒の健康被害の防止に向けて、断熱材をシートで囲い込むなどの措置を行い、生徒の立ち入りを禁止するなどの対応をしている。
このたびの事例においては、日常的な学校施設の点検によって、早期発見あるいは早期対応が可能であったのではないかと考えている。
道教委としては、今後とも、児童生徒の安全確保に向けて、アスベスト対策や学校施設設備の安全点検の強化を促すことはもとより、今回の事例のように、アスベストを含有する煙突用断熱材の散乱など、アスベストの飛散によるばく露のおそれがある場合については、道教委に対し、速やかに報告を行うこととし、各市町村教委に対し、文書を発出して指導・助言していきたい。
― 指 摘 ―
佐藤委員 釧路市の事例は、「日常的な点検によって、早期発見・早期対応が可能であったと考えている。今後は、安全点検の強化を促す」とのことであるが、毎年実施しているフォローアップ調査についても、その信頼性について、疑問を抱かざるを得ない。意識改革を含め、徹底した安全点検の強化を強く求めておく。
― 再質問 ―
佐藤委員 ここまでの議論の中で、提示した事例を含め、現在、文科省の指示のもと、道教委が行っている調査方法では、調査結果として、「アスベストの飛散のおそれなし」と報告があったとしても、アスベストの飛散防止措置が行われるまでの間、また、調査中の機関については、結果を踏まえ、必要な措置が完了するまでの間、アスベストの飛散によるばく露の可能性があったのか、また、あった場合は、それがいつの時点までなのか判然としないことが、調査の重大な欠落事項といえる。
これでは、当該施設でアスベストの被害に遭った方が、十年、二十年後に、何かしらの健康被害を発症した場合、それに対する救済措置を求める上で、因果関係を含め、その立証に困難を有することが懸念されている。
道教委として、追跡調査が可能となるような、独自の調査手法を早急に検討すべきと考えるが、所見を伺う。
山本教育部長 アスベストにかかわる調査について。道教委としては、ただ今答弁したように、今回の釧路のような事例、アスベストの飛散によって、ばく露のおそれがある場合は、今後、報告を求めていくこととしているが、これに加えて、二十六年の調査において、ばく露のおそれなしとなっている学校について、必要な措置を行った時期等をあらためて調査するなど、各学校におけるアスベスト対策の状況について、できる限り詳細に把握していきたい。
また、道教委としては、吹き付けアスベストと同様に、新たに規制となった、今回の保温材等、あるいは、煙突用断熱材の台帳整備などについても、道環境生活部が所管する「アスベスト問題対策連絡会議」で様々な議論をするなどして、今後とも、安全安心な教育環境の整備に向け、児童生徒等のアスベスト対策に万全を期していきたいと考えている。
佐藤委員 問題の四点目は、各市町村教委の認識が、十分ではない可能性があり、同様の事例が、実は、全道にまたがって起こっている可能性も否定できないという点である。
我々の調査では、時期も施設の種類も、都市も所管する振興局も、すべてにおいて、連続性も関連性も認められない二都市二施設において、道教委からの特定調査依頼がなかったかのような状況下で、偶発的にレベル2材の使用と劣化、飛散が確認されている。
その後、道教委として、先の委員会答弁のごとく、問題意識をもち、さかのぼって追跡調査を行っていないので、子どもたちや施設利用者等が、健康被害を受けていたかもしれないということを、当事者たちが知る余地もない状況に置かれている。
道教委が問題意識をもって対応していない以上、提示した二つの事案から、同様の危険性が、全道各地で発生している可能性を否定できない状況が起こっている深刻な事態だと考える。
道教委が引き続き、「問題ない」とするなら、確かな根拠と合理的な説明を示し、そのことを証明していただきたいと考えるが、所見を伺う。
加賀施設課長 アスベストを含有する煙突用断熱材ついて。道教委としては、二十六年六月の石綿障害予防規則等の改正によって、新たに石綿を含有する保温材や煙突用断熱材が規制の対象となり、吹き付けアスベストと同様に、その安全対策に万全を期すことが求められていることは、子どもたちの健康にかかわる重要な問題と認識している。
こうしたことから、文科省からの通知を待つことなく、改正規則の施行前の二十六年五月に、各市町村教委宛てに改正内容等を周知するとともに、十月に公表された特定調査の結果、調査中であった学校施設等を有する市町村に対しては、直ちに現時点での対応状況を報告するよう通知し、現在、その取りまとめを行っている。
佐藤委員 私立学校においては、調査の結果、二十五施設において、「おそれあり」となった。
一方、公立学校では、調査すら進まない事態に対し、道教委は、どう対処する考えなのか。
道教委として、いつまでに、どのように対応するのか伺う。
加賀施設課長 公立学校の調査について。道教委では、現在、調査が未完了な学校について、児童生徒等の安全対策に万全を期すため、早期の調査完了と、その結果を踏まえた必要な措置を要請するとともに、調査実施の有無や調査方法、さらには、未実施の市町村については、実施予定時期の報告を求めている。
今後、報告内容の精査を行った上で、いまだ調査が完了していない、または、未定となっている市町村に対して、石綿障害予防規則の改正の趣旨をあらためて周知徹底するとともに、学校設置者として、早期の調査完了とその結果を踏まえた必要な措置を強く要請することはもとより、道教委としても、市町村の取組が早急に進むよう、アスベスト対策にかかる技術的な相談や助言を行っていく。
佐藤委員 「早期の調査完了とその結果を踏まえた必要な措置を要請する」とのことであるが、明確な時期については、答弁がない。
仮に、道教委として、財政力等に課題がある市町村が多い中、それが調査の進まない理由と想定しているなら、そのための財源を独自に補助するか、あるいは、代替の財源を、国に求めるなどして確保する以外に、責任を果たす道はないと考えるが、所見を伺う。
加賀施設課長 財政支援について。このたびの規則改正によって、新たに追加となった保温材等や煙突用断熱材のアスベストの分析調査の事業については、補助対象となっていないが、道教委としては、アスベスト対策に関する財政支援については、現在、取りまとめている、調査中であった市町村の対応状況も踏まえ、必要な財政支援について、あらためて国へ要望していく。
佐藤委員 そもそも、道としてのアスベスト対策のバイブルとなる『アスベスト対策ハンドブック』が本年三月、最新の改訂版として発行されているのにもかかわらず、道教委での取扱いも含め、二十六年六月以降の規則改正等に基づく規制強化に即した対応が、一言もふれられていない。
この間、わが会派の各議員が、それぞれの委員会において、質問と、そのための事前調査を進める段階で、どの部局も、認識が乏しく、対応については各部の責任で行うものといった趣旨ともとれる返答が返ってくるなど、調査が思うように進まなかった。
道は、法令に基づく責任があるにもかかわらず、事実上の組織的不作為によって、守られるべき道民の健康が危険にさらされる可能性があることを、組織として、もっと深刻に受け止めるべきである。
道教委としては、今後、どのように対応していく考えか、教育長の所見を伺う。
柴田教育長 今後のアスベストへの対策・対応について。学校は、子どもたちが一日の大半を過ごす学習、生活の場であり、アスベスト対策をはじめ、安全安心な教育環境の整備は、最優先で取り組んでいかなければならないと考えている。今回の公表結果において、調査中の機関が多数あったこと、また、委員指摘のように、アスベストの飛散によって、ばく露のおそれがある事例が発生したことを大変重く受け止めた。
学校等においては、児童生徒の安全確保に向け、アスベスト対策はもとより、日常的に学校施設等の点検や適切な措置を行う必要があり、道教委としては、これまでも、市町村に対し、学校施設の維持管理の徹底について、注意喚起を行ってきたが、このたびの釧路市の事例などを踏まえ、学校におけるアスベストの粉じんの飛散によって、子どもたちに重大な健康被害が起こることのないよう、知事部局、市町村と一層連携しながら、現時点における市町村の対応状況を速やかに把握するとともに、アスベストに関する情報の提供や技術的な助言を行い、市町村における速やかな対策を促すほか、必要な財政支援について国に要望するなど、適切かつ迅速なアスベスト対策に、積極的に取り組んでいきたい。
― 指 摘 ―
佐藤委員 アスベスト対策については、議論を通じて、道教委としても、わが会派の認識と同等の問題意識を共有していただけたと思っている。
二十六年六月の「石綿障害予防規則」ならびに「大気汚染防止法」等の改正、施行後の道全体の対応が、『アスベスト対策ハンドブック』の改定における不備や、実態調査の遅れなどに象徴されるように、あまりにもずさんと言わざるを得ないことが明らかになった。
わが会派の同僚議員の再三の指摘によって、道が、規則改正の影響の大きさや実態調査の問題点などを認識したことは、道のアスベスト対策がスタートラインに立ったに過ぎないわけであり、今後、調査を進める上で、明らかになると思われる多くの問題に、全庁挙げて取り組む決意をもたなければならない。
文科省の指示のもと、いち早く、この対応に当たってきた道教委には、さらに、強い危機感をもち、率先して対策を進めていただくよう強く求める。
(道議会 2016-02-26付)
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