道議会文教委の質問・答弁概要(27年11月25日)
(道議会 2016-03-01付)

 道議会文教委員会(二十七年十一月二十五日開催)における加藤貴弘委員(自民党・道民会議)、田中英樹委員(公明党)の質問、および杉本昭則学校教育監、梶浦仁学校教育局長、岸小夜子義務教育課長の答弁の概要はつぎのとおり。

◆学力調査報告書について

加藤委員 本年度の全国学力・学習状況調査の結果については、二十七年八月二十五日に概要が公表され、九月の委員会でも報告があった。今回は、さらに詳しく分析された結果が示されたので、何点か質問する。

 まず、小学校の結果について伺う。八月の公表の際には、道教委は全体として改善の傾向がみられるとの見解であったが、これまでの調査で、最も全国との差があったのは、何年度のどの教科で、本年度はどの程度改善しているのか伺う。

 また、改善はしているものの、まだまだ課題はあると思う。今回の報告書では、レーダーチャートによる分析結果が掲載されているが、本年度の課題として、どのようなことが浮かび上がったのか伺う。

岸義務教育課長 小学校の結果について。十九年度から始まった同調査の小学校の結果において、全国の平均正答率との差が最も大きかった教科は、二十二年度の算数Aで七・〇ポイントであり、その後、全国との差は縮まってきており、本年度は二・九ポイントとなるなど、改善の傾向がみられる。

 また、本年度の小学校の課題としては、国語、算数、理科の合わせて十八領域の平均正答率をみると、特に、国語Aの「話すこと、聞くこと」、算数Aの「量と測定」、算数Bの「数量関係」の領域で全国との差が大きいことが挙げられる。

加藤委員 中学校では、どの程度改善しているのか、また、本年度の課題はどのようなことなのか伺う。

岸義務教育課長 中学校の結果について。これまでの中学校の結果で、全国の平均正答率との差が最も大きかった教科は、二十二年度の数学Bで四・二ポイントであり、その後、小学校と同じく、全国との差は縮まってきており、本年度は一・九ポイントとなるなど、中学校においても改善の傾向がみられる。

 また、本年度の調査対象である中学校三年生が小学校六年生だった二十四年度の結果と比較すると、全国との差が、国語Aでは四・二から〇・〇、算数・数学Aでは四・六から一・四に縮まり、理科では二・三低かったのが〇・三高くなるなど、全教科で大きく改善している。

 一方で、本年度の中学校の課題としては、国語、数学、理科の合わせて十九領域の平均正答率をみると、数学A・Bの「数と式」「図形」「関数」「資料の活用」のすべての領域で全国を下回っており、特に、数学に課題がみられる。

 道教委では、小・中学校の課題がみられる領域の指導の改善について指導資料を作成したところであり、今後、この資料を活用し、指導主事の学校訪問などを通して、各学校に指導助言を徹底していく。

加藤委員 中学校においても改善が図られており、特に、本年度の中学校三年生が小学校六年生だったときと比べると大きく改善しているということは、本道の子どもたちは、まだまだ可能性を秘めていることをうかがわせるデータである。

 道教委では、このように子どもたちが確実に力を付けてきた要因をどのように考えているのか、伺う。

岸義務教育課長 中学校で改善している要因について。道内の中学校では、道教委が「全国平均以上」という目標を掲げた二十三年度以降、放課後や長期休業中に補充学習を行う学校が大きく増えてきており、本年度の調査結果では、長期休業中に補充学習を五日間以上行った学校の割合が七四・八%で、全国より約一七ポイント高いなど、子ども一人ひとりに確かな学力を身に付けさせる取組が進められていることが、一つの要因と考えられる。

 また、小学校で、全教科で全国平均を下回っているものの、放課後や長期休業中の補充学習やチャレンジテストなど、子どもが小学校を卒業するまでに小学校段階の学習内容を定着させる取組が進められてきていることも、一つの要因と考えられる。

加藤委員 先の文教委員会で、上位県との比較・分析を行う必要があることを指摘した。道教委は、生活習慣や指導方法などの課題について、秋田県と比較した結果を報告書に掲載すると答弁され、実際、今回の報告書に分析結果を示されている。

 秋田県との比較などから、どのようなことが分かったのか、具体的に説明してほしい。

梶浦学校教育局長 上位県との比較からみられる課題について。学力の向上に当たっては、成果を上げている県の優れた取組を改善に生かすため、本年度は、これまで継続して成果を上げている秋田県との比較を行い、その分析結果などを掲載した。

 その結果、家庭での学習習慣について、全国の平均値を一〇〇とした数値で比べると、例えば、「自分で計画を立てて勉強する」子どもは、小学校で本道は一〇二・二に対し秋田は一三一・八、中学校で一〇〇・四に対し一三四・〇と大きな差があり、秋田県では、計画的に家庭学習に取り組んでいる子どもが多い状況になっている。

 また、授業の進め方については、冒頭で目標を示す活動を行っている学校は、小学校で本道は九四・七に対し秋田は一三七・四、中学校で八八・八に対し一六一・一、また、最後に振り返る活動を行っている学校は、小学校で一一四・一に対し一六三・七、中学校で一一四・三に対し一九八・二と大きな差があり、授業を改善していく必要があることが、より一層明らかになった。

加藤委員 道教委では、授業を改善する方策について、どのように学校に指導していくのか伺う。

岸義務教育課長 授業改善の方策について。秋田県との比較・分析などによって、本道では多くの授業で、授業の冒頭に目標を示したり、授業の最後に振り返ったりする活動を一層改善する必要があることが明確になった。

 こうしたことから、道教委では、道内のすべての小・中学校で中心となって学力向上に取り組んでいる教員を対象に「学力向上推進研修会」を各管内で開催し、授業の進め方について新たに作成した指導資料を活用して、具体的な解決の方策について、説明、協議を行い、授業改善の方向性について共通理解を深めるなどして、目標の設定や、振り返りの活動を位置付けた授業の徹底に努めていく。

加藤委員 昨年度までの結果では、管内の差が大きいことが指摘されていた。本年度の結果では、管内の差はどのようになっているのか伺う。また、全国の平均正答率を上回っている管内はあるのか伺う。

岸義務教育課長 各管内の状況について。平均正答率が高かった管内と低かった管内の差は、概ね一〇ポイント程度であるが、小学校理科では四・七ポイントと小さくなっている。

 また、全国の平均正答率を上回った管内は、小学校では国語Aで一管内、国語Bで一管内、中学校では国語Aで五管内、国語Bで五管内、数学Aで三管内、数学Bで二管内となり、中学校で全国を上回る管内が増えている。

加藤委員 市町村の規模別にみた平均正答率の状況は、どのようになっているのか伺う。

岸義務教育課長 市町村の規模別の状況について。小学校では、すべての教科で、平均正答率の高い順に、「大都市・中核市」、次いで「その他の市」「町村」となっており、中学校では、すべての教科で「大都市・中核市」、次いで「町村」「その他の市」の順となっている。

 また、国語、算数・数学の八教科中、全国との平均正答率の差が、昨年度と比べて縮まっている教科数は、「町村」は六教科に対し、「その他の市」は三教科、「大都市・中核市」は一教科となっている。

加藤委員 今後、道教委と市町村教委が一層連携を密にし、学力向上の取組が進められることを期待するが、道教委では、今後、どのように学力向上の取組を進めるのか、見解を伺う。

杉本学校教育監 今後の取組について。本年度の結果を詳細に分析した結果、授業改善や生活習慣の課題がより明らかになったことから、本年度の報告書においては、これらの課題を解決する方策を具体的に示したところである。

 道教委では、先般、こうした解決方策について、市町村教委や学校、保護者の代表者と協議する会議を開催して、その中で、教育委員会からは、方向性を全道で共有して取組を進めることが必要であること、また、学校からは、授業改善の視点を明確にすることが必要であること、さらに、保護者からは、家庭学習の大切さについて、より一層分かりやすい資料などによる意識啓発が必要なことなどの意見があり、今後は、こうした意見も踏まえながら、市町村教委をはじめ、学校やPTAなどとより一層連携して、教員の指導力向上に向けた研修や家庭学習の習慣化に向けた取組の充実を図るなど、学力向上に全力で取り組んでいく。

◆学習習慣の定着について

田中委員 二十七年九月の文教委員会で、宿題の状況を伺ったが、そのときの答弁では、本道の小中学校で宿題を出している学校の割合は、昨年度よりは増えてきているとのことだった。

 しかしながら、本道の子どもたちの家庭学習の時間が、全国に比べて短い状況は変わっていない。ただ、宿題を出せばいいのではなく、工夫が必要だと考えるが、見解を伺う。

岸義務教育課長 宿題について。本道の小学校、中学校ともに宿題を「よく与えた」学校の割合は、昨年度より増えてきているが、宿題や家庭学習について、指導や評価をよく行ったと回答した小学校の割合は、全国に比べて低くなっているなど、適切な評価が十分に行われていない状況がみられる。

 道教委では、子どもたちに望ましい学習習慣を確立するためには、各学校が、学校全体で宿題の分量や内容を、学年に応じた適切なものとなるよう工夫するとともに、子どもの意欲を高める評価を工夫する必要があると考えており、宿題のポイントをまとめた指導資料を九月に作成し、こうした指導資料を活用しながら各管内で開催している学力向上に中心となって取り組む教員を対象とした研修会で指導助言している。

田中委員 本年度の報告書では、秋田県との比較を行った結果が掲載されており、課題が明確になって非常に分かりやすくなっていると思う。家庭学習の状況も比較されているが、秋田県の家庭学習の仕方にどんな特長があるのか伺う。

岸義務教育課長 秋田県の家庭学習について。普段一日当たり一時間以上勉強する子どもは、全国の数値を一〇〇とした場合の秋田県の数値は、小学校では一一五・二、中学校では一一七・〇であり、本道の小学校八七・一、中学校九一・三と比べて大きな差がある。

 また、自分で計画を立てて勉強する子どもについても、秋田県では、小学校では一三一・八、中学校では一三四・〇であり、本道の小学校一〇二・二、中学校一〇〇・四と比べて高くなっている。

 こうしたことから、秋田県の子どもたちは、本道の子どもたちに比べて家庭学習の時間が長く、主体的な学習を計画的に行っているなど、家庭学習の習慣が、小学校、中学校を通して、しっかりと定着しているものと考えている。

田中委員 学校では、もっと家庭学習の習慣を確立するための指導を充実させるべきと考えるが、道教委の見解を伺う。

梶浦学校教育局長 家庭学習の指導の充実について。学習指導要領では、「学校の教育活動を進めるに当たっては、各学校において、家庭との連携を図りながら、子どもの学習習慣が確立するよう配慮しなければならない」と示されており、家庭での望ましい学習習慣を身に付けさせる指導の充実を図ることは重要であると認識している。

 そのため、道教委では、自分で計画を立てて勉強する子どもを育てるために、家庭学習ノートに教職員が分担しながらコメントを書き込み、学習意欲を高める取組のほか、子どもの参考となるよう、優れた家庭学習ノートを校内に展示する取組など、効果的な事例を取り上げた指導資料を作成したところであり、今後、この資料を全道の学校に配布するとともに、指導主事の学校訪問などにおいて、家庭学習の習慣化を図る指導の工夫について指導助言していく。

田中委員 報告書には、同意した百三十五の市町村の結果が掲載されており、それぞれの実態や取組が分かるようになっており、大変興味深く読ませていただいた。

 掲載した市町村は、教科や質問紙調査の結果のほかに、それぞれの改善方策を掲載しているが、多くの市町村が取り組んでいる改善方策は、主にどのようなものなのか伺う。

岸義務教育課長 市町村の改善方策について。市町村別結果の内容については、教科や質問紙調査の結果をレーダーチャートやグラフなどを使って分かりやすく示すとともに、分析結果と改善方策を必ず掲載することとしている。

 市町村教委が掲載した改善方策は、分析結果を踏まえ、それぞれの課題に応じたものとなっているが、多くの市町村が掲載している内容としては、放課後や長期休業中に地域人材を活用した学習サポートの取組、学習規律の徹底を図ったり、ノート指導、板書の仕方を全校で統一した取組、さらには、学習習慣の確立に向けて『家庭学習の手引』を作成した取組などがあり、学校全体での組織的な取組や保護者や地域と連携した取組が多くみられる。

田中委員 道教委では、市町村の学力向上の取組を充実させるため、今後どのように取り組んでいくのか、見解を伺う。

杉本学校教育監 市町村の取組への支援について。各市町村教委では、全国学力・学習状況調査の結果を分析し、それぞれの課題に応じ、ただ今、担当課長が答弁したような取組が進められている。

 道教委としては、こうした取組を市町村間で相互に交流し、さらに充実するよう支援していくことが大切であるというふうに考えており、報告書には、市町村の改善方策を必ず掲載することとしたほか、それらの取組の中から、計画的な教員研修や、解決のための組織を確立したり、町全体で家庭学習の手引を作成しているなどといった効果的な事例を掲載しており、今後、各教育局において、市町村教委に対し、様々な機会にこれらの事例を活用して指導助言するなど、市町村教育委の取組がさらに充実するよう、支援に努めていく考えである。

(道議会 2016-03-01付)

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