4定道議会一般質問の質問・答弁概要(27年11月30日)
(道議会 2016-03-03付)

 四定道議会本会議(二十七年十一月三十日開催)における中野秀敏議員(自民党・道民会議)、松山丈史議員(民主党・道民連合)の一般質問、および柴田達夫教育長の答弁の概要はつぎのとおり。

◆学力向上対策について

中野議員 全国学力・学習状況調査は、今回で九回目だが、道内の子どもたちの学力については、当初に比べ改善が図られた面が見受けられるものの、依然として多くの課題が残されていると言わざるを得ない。

 中でも、学習習慣については、全国平均をやや上回っているものの、いわゆる成績上位県との間に、大きな差があることが明らかになっている。

 わが会派は、第三回定例会において、学力に対する保護者や住民の認識に温度差があること、幼児期から高校までを通して、家庭学習を習慣付ける必要があることを指摘した。これに対して、教育長は「必要な取組を進める」旨を答えたが、どのように取り組んでいるのか伺う。

柴田教育長 学力向上に向けた取組について。道教委では、子どもたちの学力向上のためには、授業の改善と望ましい生活習慣の確立が重要であると考えており、これまで、各学校に対して、子どもたちの学力や学習状況を保護者や地域住民に丁寧に説明するよう働きかけるとともに、各管内で保護者等を対象として開催している「子どもたちの学力について考える会」で課題を共有するほか、PTA連合会の役員と望ましい生活習慣の確立について協議するなど、普及啓発を行ってきた。

 また、家庭学習の習慣を定着させるためには、幼児期から一貫した指導が大切であることから、このたび公表した『二十七年度全国学力・学習状況調査北海道版結果報告書』において、新たに、幼児期から高校までの子どもの成長に合わせた保護者の適切なかかわり方を示した啓発資料を掲載した。

 道教委では、今後、この資料をリーフレットとして作成、配布し、市町村教委や学校に対して、保護者や地域住民と連携した取組を進めるよう指導助言するとともに、道PTA連合会が主催する各種研修会をはじめ、様々な機会に家庭学習の習慣化に向けた意識啓発に努め、地域が一体となった学力向上の取組を徹底、強化していく考えである。

◆グローバル人財の育成

中野議員 十三年、カンボジアにNayoro・Keiryoという小学校が開校した。その背景には、中学校卒業者数の減少に伴い、十三年度末で閉校した、名寄市立名寄恵陵高校の生徒の活動があった。

 カンボジアでは、二十年余り続いた内戦のために校舎が破壊され、屋外で授業を受けるなど厳しい環境に置かれている子どもたちがいること、その子どもたちのために世界銀行の支援を受け、学校建設に取り組んでいるNGO団体があることを知った生徒が、自分たちも力になろうと、総合的な学習の中で、街頭募金や学校祭の模擬店に取り組み、学校の建設に必要な金額を確保したほか、家庭にあるカバンや文房具など、カンボジアの子どもたちが使える日用品を集め、提供した。日本の高校生に対する地元の人たちの感謝の気持ちが込められ、完成した学校には名寄恵陵高の名前が付けられた。

 北海道教育大綱には、グローバル人材の育成がうたわれているが、生徒たちのこのような活動は、「海外にも目を向け、自分たちにできることに取り組む」ものであり、グローバル人財づくりの入り口となるものである。

 訪日教育旅行や自治体で行われている海外との姉妹提携交流などを活用し、このような入り口づくりを進めるべきであると考えるが、見解を伺う。

柴田教育長 グローバル人財の育成について。通信技術の発達や経済活動の世界的な拡がりなどによって、グローバル化が急速に進んでいる中、今後、本道が持続的に発展していくためには、日本や本道について深く理解し、誇りをもつとともに、議員から紹介のあった子どもたちのように、世界にも目を向け、貢献していける人材の育成が重要であると認識している。

 このため、道教委では、ふるさと北海道の歴史や文化を学び、外国人との積極的なコミュニケーションを通じて、本道の魅力や世界とのかかわりをしっかりと伝えることができる子どもたちを育てるため、これまでも、各学校における姉妹校提携などによる国際交流を支援してきたが、今後は、道内の子どもたちが地域に伝わる伝統行事や文化に親しむ機会の提供や、ICTを活用して海外の青少年と交流するフォーラムの開催などに取り組むとともに、海外からの教育旅行の受入れを一層推進するなど、知事部局や市町村とも十分に連携を図り、学校や地域の特色を生かしながら、グローバル人財の育成に取り組んでいく考えである。

◆経済・雇用について

松山議員 経済の国際化について。知事の掲げる道産食品輸出一千億円、外国人観光客受入れ三百万人のいずれも、ソフト面の強化が急務である。

 まずは、言葉の問題。これまでも、外国語教育の必要性を議会で主張してきたが、危機感やスピード感が感じられない。

 もちろん、外国語教育とは英語教育だけを指すわけではない。先日、日越友好北海道議会議員連盟のベトナム訪問に参加したが、行く先々で、あらゆる言語に対応できる人がおり、これが、ビジネスや観光客の受入れの推進に大変役立っていると、あらためて実感した。

 学校教育でも重要であるし、社会人になってからの語学習得も極めて重要。経済分野での多言語対応や児童生徒の言語習得に関して所感を求める。

柴田教育長 経済・雇用に関して、外国語教育の充実について。経済社会のグローバル化が進展する中、子どもたちが、国際社会の一員としての自覚をもち、主体的に行動できる資質や能力を育むとともに、国際共通語である英語などを使って、積極的にコミュニケーションを図るための実践的な力を育成することが重要であると考えている。

 こうした中、文部科学省では、小・中・高校を通じて、英語によるコミュニケーション能力を養うことなどを目指し、英語教育推進リーダーの養成など、その指導体制の強化を進めている。

 道教委としては、こうした国の施策を活用しながら、英語教育指導力向上研修の計画的な実施などを通して、英語教育の充実に努めていく考えである。

 また、英語以外の外国語教育については、現在、十二の道立高校などにおいて、地域の特性や生徒の進路希望等を踏まえた各学校の教育方針のもとで、ロシア語、中国語、ハングルなどの授業が行われており、今後は、履修に必要な授業時数や講師等の確保といった課題も踏まえながら、外国語教育の充実に努めていく考えである。

松山議員 「低賃金であるにもかかわらず、正社員並みの義務やノルマ、重労働を課されるアルバイト」が、いわゆるブラックバイトと言われているが、一向になくなる気配がない。

 教育現場における労働権利やルールについての教育がさらに必要と考えるが、所見を伺う。

柴田教育長 労働に関する教育について。高校においては、学習指導要領に基づき、教科「公民」の現代社会などにおいて、近年の雇用や労働問題の動向を経済社会の変化や国民の勤労権の確保の観点から、理解させる指導を行っている。

 道教委では、教育課程研究協議会における指導助言等を通して、こうした学習の充実を図るとともに、これまで、知事部局と連携し、働くときに必要な知識を分かりやすくまとめた『働く若者ルールブック』を配布し、その活用を促すなどしてきた。

 道教委としては、今後、こうした取組の一層の充実を図るとともに、道労働局と連携して、教育局の進路相談員を対象に実施した、「労働法制」に関する研修の内容を、新たに、資料として取りまとめ、各学校に送付するなどして、高校生の労働に関する教育の一層の充実に努めていく。

― 指 摘 ―

松山議員 経済の国際化に関し、言語習得について答弁があったが、例示のあったロシア語、中国語、ハングルなどに加えて、定期直行便のあるタイ語やマレー語、さらには、今後、期待が大きいベトナム語などのアジア系言語について、さらなる単位の修得が必要と考えているので、この取組をぜひ進めていただきたい。

◆子宮頸がんの予防について

松山議員 当面、ワクチン接種が行われないことを前提とするならば、早期発見と治療につなげる定期的ながん検診が重要であると考える。厚生労働省は、二十歳になったら二年に一度の子宮頸がん検診を推奨しているが、若年層に対する検診および学校での児童生徒の検診に対する理解の促進について、どのように考えているのか伺う。

柴田教育長 がん検診に対する理解の促進について。児童生徒が、生涯を通じて健康的な生活を送るためには、自分自身の健康上の課題を的確に把握することが大切であり、がんに関しては、生活習慣の改善等によって予防することや、適切に検診を受診することなどについての意識や態度を育むことが重要と考えている。

 このため、道教委としては、児童生徒が、がんに関して、正しく理解し、自ら検診を受けることなど、適切な態度や行動をとることができるよう、保健の授業等において、定期的に健康診断を受けることの重要性や地域における医療制度の活用に関し、理解を深めさせることなどについて、指導主事の学校教育指導等を通じ、学校や市町村教委に指導助言を行うとともに、教職員や保護者等を対象に、がんの教育の必要性等について理解を深める研修会を開催するなど、今後とも、児童生徒のがん検診に対する理解の促進に努めていく。

◆主権者教育について

松山議員 二十七年十一月四日の文教委員会で、わが会派から、生徒に対する政治的教養を育む教育実践について質問し、教育部長から、重要性があるとの答弁があった。

 十八歳に選挙権年齢が引き下げられる中、校内での選挙活動などに制限がなされることとなる。校内で選挙権をもつ生徒とそうではない生徒が混在する中で、どのように生徒の政治活動・選挙活動に対する指導を行うことが望ましいと考えるのか見解を伺う。

 また、政治に関する教育実践では、教職員の中立性の確保が必要だとしているが、政治的中立性を確保した教育実践とは、具体的にどのような状況を示すのか、併せて見解を伺う。

柴田教育長 政治的教養を育むための指導の在り方などについて。生徒の政治的な教養を育むためには、政治や選挙に関する知識はもとより、根拠を判断し、討論等を通じて、自己の意見を正しく表明する力などの資質や能力を育むことが大切である。

 その際、満十八歳以上の生徒と満十八歳未満の生徒には、選挙権の有無や公職選挙法上の選挙運動が可能かどうかなど、法律上の差異があることを理解させ、満十八歳以上の生徒が、満十八歳未満の生徒に同じ行動を求めることは違法となる場合があることなどについて、理解させる必要がある。

 また、教員が指導を行う際には、一つの主張に誘導することを避け、生徒の議論がより深まり、議論の争点について、その背景や多様な意見が見いだせるよう、国会等において議論となっている主要な論点について、対立する見解を、複数の新聞や国会等における議事録等を用いて紹介することなどによって、偏った取扱いとならないように留意することなどが必要であると考えている。

松山議員 総務省と文科省が作成した政治に関する教材において、ディベートによる政策論争や模擬投票が提案されている。しかし、その内容については、当たり障りのない内容が提示されている。

 学習において、当然、国政で大きな政治的争点となっている国家安全保障や原発再稼働の課題なども、授業において、積極的に取り上げるべきと考えるが、所見を伺う。

柴田教育長 授業での取扱いについて。議員指摘の現実の政治的事象については、国の通知において、このたびの選挙権年齢の引き下げなどを契機に、生徒に、習得した知識を活用し、主体的な選択・判断を行い、他者と協働しながら様々な課題を解決していくという、国家・社会の形成者としての資質や能力を育むことが、より一層求められており、授業において、現実の具体的な政治的事象も取り扱い、有権者として自らの判断で権利を行使することができるよう、具体的かつ実践的な指導を行うことが重要であると示されている。

 なお、そうした授業において、政治的に対立する見解がある現実の課題を取り上げる場合には、学校が政治的中立性を保ちつつ、政治的教養を育む指導を行う必要があり、その際には、生徒が個人として、多様な見方や考え方の中で自分の考えを深めるとともに、冷静で理性的な議論が行われるよう留意することが大切であると考えている。

松山議員 教材の指導編には、特別支援学校における取組について記述されているが、生徒への配布資料には、視覚障がい等に対する配慮がなされていない。合理的配慮を必要とする生徒等に対し、ルビを振ることや、拡大・点字教材等の作成や支援体制の充実が必要と考えるが、見解を伺う。

柴田教育長 特別支援学校における教材等について。特別支援学校で使用する教科用図書については、国において、点字版教科書など、障がいの状態に応じて整備がなされ、各学校において適切に使用している。

 このたびの総務省と文科省が作成した副教材についても、障がいの状態に応じた配慮がなされることは、基礎的環境整備として必要なことと認識している。

 道教委としては、副教材の活用に当たり、文科省における拡大や点字版等の整備の状況を確認しつつ、特別支援学校において効果的な学習が実施できるよう必要な対応を行っていく考えである。

松山議員 副教材には、外国籍の生徒に対する配慮がなされていないが、こうした生徒に対して、政治的教養を育む教育を進める上で、どのような点に留意していくのか伺う。

柴田教育長 外国籍の生徒への配慮について。選挙権の有無や国籍の違いにかかわらず、高校生に対し、社会の形成者として必要な政治や選挙への関心を高め、政治的教養を豊かにするための教育の充実を図ることは重要であると考えている。

 外国籍の生徒が在籍している道内の高校では、これまでも、日常の教育活動において、複数の教員による指導を行ったり、大学生などのボランティアの協力を得たりしながら、一人ひとりの生徒に対する支援が行われている。

 道教委としては、このたびの副教材を活用した指導においても、外国籍の生徒が在籍している学校と十分に連携し、政治的教養を育む学習が円滑に行われるよう、学校の要請に応じたきめ細やかな支援に努めていく考えである。

― 指 摘 ―

松山議員 主権者教育に取り組むに当たっては、選挙運動に関する指導だけではなく、生徒が主体的に参画できるよう、学校現場においても指導する必要があることを指摘する。

 また、先ほどの答弁で、具体的かつ実践的な指導を行うことが重要であると示したので、国政課題などについても、積極的に取り上げるべきと指摘させていただく。

(道議会 2016-03-03付)

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