道議会文教委の質問・答弁概要(28年9月6日開催)
(道議会 2016-12-07付)

 道議会文教委員会(九月六日開催)における佐野弘美委員(日本共産党)、丸岩浩二委員(自民党・道民会議)の質問、および村上明寛総務政策局長、土井寿彦新しい高校づくり推進室長、加賀学施設課長(当時)、堀本厚健康・体育課長、川端雄一学校教育局参事(生徒指導・学校安全)、松本邦由新しい高校づくり推進室参事(高校配置)(当時)、相馬哲也新しい高校づくり推進室参事(改革推進)の答弁の概要はつぎのとおり。

◆台風等による大雨被害状況

佐野委員 複数の台風が本道に上陸したことに伴い、各地で甚大な被害が発生しており、道路や鉄道などのライフラインについても、各所でいまだに復旧に至っていない状況である。

 困難な状況が続く中、学校運営にも少なからず支障が生じていると思う。特に、断水の続いている地域においては、給食の提供やトイレなどの水回り設備の使用に当たり、児童生徒に健康上の問題が発生しないよう、衛生管理を徹底すべきと考えるが、道教委の見解を伺う。

堀本健康・体育課長 断水への対応などについて。九月六日現在、断水が続いている中で、授業が行われている学校は、十勝管内の新得町と清水町の二町九校であり、これらの学校では、給水車によって生活用水を確保しているほか、ペットボトルの飲料水を活用しているところもあるなど、児童生徒の健康等に配慮しながら、学校生活に支障が生じないよう、対応が行われている。

 なお、給食に関しては、清水町は、本日から給水車による水を使用して再開しており、新得町は、引き続き、パンと牛乳等による簡易給食としている。

 学校における飲料水等の水質や施設設備等についての児童生徒等の健康を保護する上での望ましい基準は、学校保健安全法に基づく学校環境衛生基準で定められており、洪水等の災害によって学校敷地が被害を受けた場合は、給水施設・設備の検査を行うほか、飲料水等についても、必要に応じて臨時検査等を行うなどの対応が求められている。

 道教委としては、被害を受けた市町村において、こうした基準に基づく適切な対応が行われ、学校における環境衛生管理の徹底がなされるよう、引き続き、必要な指導助言に努めていく。

― 指  摘 ―

佐野委員 水道を使えない中、不自由な学校生活を強いられているが、衛生管理を徹底して、健康管理に努めていただきたい。

 新得町では、簡易給食とのことだが、児童生徒が家庭でも満足な食事がとれていないのではないかと心配である。被災して、精神的にも身体的にもつらい状況にある中で、温かく、栄養のある食事が、児童生徒にとって大切な支えになると思う。近隣市町村との連携など広域的な支援となれば、道教委の役割になると思うので、道教委として、支援を強めていただきたいと指摘する。

佐野委員 今回の災害で、児童生徒がボランティアで災害復旧に当たる姿もみられたが、児童生徒がボランティア活動に参加するに当たっては、けがの防止や体調管理に十分に気を付ける必要があると思う。ボランティア活動に参加する児童生徒の安全確保のための指導や注意喚起について、道教委として、どのように対応しているのか伺う。

川端学校教育局参事(生徒指導・学校安全) ボランティア活動等に参加する児童生徒の安全確保について。児童生徒がボランティア活動などの体験活動を通して、公徳心や社会連携の自覚を高めたり、他者に対する思いやりの心の大切さを実感したりすることは、豊かな人間性を培う上で有意義なものであると認識している。

 一方、日常と異なる環境のもとでの活動においては、不慮の事故に遭うことも懸念されることから、事故等の未然防止に万全を期すことが重要であると考えており、これまで道教委においては、児童生徒がボランティア活動等に参加する場合には、実施前に保護者の承諾を得た上で学校へ届け出ることや、今回のような被災した家屋の後片付けなどの活動については、作業内容などに十分配慮し、体力等に見合った無理のない計画で参加するよう道立学校および市町村教委に対し、毎年、通知を発出し、指導してきている。

― 指  摘 ―

佐野委員 ボランティア活動で人のために汗を流す経験は、ほかでは得がたい貴重な経験なので、安全に十分配慮しながらも、それを理由として活動参加を妨げることのないようにするべきと考える。

 うがい・手洗い・マスクなどの感染対策、防護の徹底や、自身も被災し恐怖や困難を抱えている児童生徒への精神的な支援も重要であることを指摘する。

◆公立高校配置計画について

丸岩委員 中学校卒業者数がピークであった昭和六十三年の半数以下にまで減少するなど少子化がますます進む中、学級減や再編を行うことはやむを得ないことと考えるが、学校の配置については、生徒や保護者をはじめ、地域にも大きな影響を与えることから、地元の意見を十分に聞きながら、慎重に進めることが大切だと考える。以上の点から、何点か伺う。

 まず、今回の計画では、平成三十一年度における学級減や再編の一方、二十九年度に清里高校を一学級の増とすることが決定された。

 六月の計画案には含まれていなかったものであるが、計画案の公表からこれまでの間、どのような経緯で学級増を行うこととしたのか伺う。

松本新しい高校づくり推進室参事(高校配置) 清里高校の学級増について。配置計画については、急激な中学校卒業者数の増減や生徒の進路動向に大きな変化が生じた場合などには、見直しを検討することとしている。清里高に関しては、七月に開催した地域別検討協議会において、清里町から、小清水高校の募集停止や、町による通学バスの整備などによって、来年度、清里高の入学希望者が四十人を上回る見込みであるとして、学級増の要望をいただいており、また、八月には、町が独自に実施した進路意向調査の結果に基づき、四十人を大きく上回る生徒が清里高を希望しているとして、学級増について、要望書が提出された。

 道教委としては、本年度の小清水高の募集停止に伴う進路動向を分析するとともに、通学などの地理的事情を考慮するなど検討を重ね、清里高については、一学級を超える進学者が見込まれることから、計画案を変更し、学級増を行うこととした。

丸岩委員 今回の計画では、桧山管内の奥尻高校に連携型の中高一貫教育が導入されることになっている。道内の高校において、連携型の中高一貫教育が導入されるのは、十九年の羅臼高校以来十年ぶりであり、また、町立の高校に導入されるのは日高管内のえりも高校に次いで二校目と聞いている。

 来年度から連携型の中高一貫教育を導入する奥尻高は、ことし四月に道立から町立に移管しており、離島の学校ということもありながら、その特色を生かし、同じ町立の中学校と連携した教育活動を行うものと期待している。そこで、奥尻町における連携型中高一貫教育の概要について伺う。

相馬新しい高校づくり推進室参事(改革推進) 中高一貫教育の導入について。奥尻町においては、二十九年度から、二つの中学校を統合し新設する中学校と町立移管した高校において、連携型の中高一貫教育を実施することとしている。現在、奥尻町教委において、六年間の計画的・継続的な教育指導を通して、生徒の個性や才能を伸ばし、豊かな人間性を育むため、中高の教員が相互に乗り入れる授業の実施、中高六年間を見通したキャリア教育の推進など、中高一貫教育の趣旨を踏まえた取組のほか、地域の自然環境を生かしたスクーバダイビングを中学校の授業にも取り入れるなど、多様な教育活動を展開する方向で検討を進めている。

 道教委としては、こうした取組の充実が図られるよう、人的支援として教職員を配置するとともに、他の中高一貫教育校などの優れた実践事例の紹介や教育課程の編成・実施における助言等に努めるなど、中高が連携して地域の特色を生かした魅力ある学校づくりができるよう、引き続き、必要な支援を行っていく考えである。

丸岩委員 今回の計画では、三十一年度に一学級減となる室蘭工業高校および北見商業高校の小学科については、「検討中」となっている。職業高校である室蘭工業高や北見商業高では、学級減によって学科が一つなくなった場合、両校に入学を希望している生徒の進路希望等に大きく影響することが考えられるが、道教委として、両校において、学級減となる学科を決定するのに当たり、今後、どのように検討されていくのか伺う。

土井新しい高校づくり推進室長 職業高校の学科について。このたびの配置計画においては、室蘭工業高と北見商業高について、欠員の状況や学校・学科の配置状況、生徒の進路動向などを勘案し、三十一年度にそれぞれ一学級の減とした。学級減を行う両校の学科については、これまで、それぞれの高校が行ってきた職業教育の内容や、生徒の学習ニーズ、地域の実情などを考慮するとともに、時代の進展や地域産業の特性を踏まえた学科への転換などについても検討する必要があることから、今後、両市の教育委員会や関係団体等の意見を伺いながら、子どもたちの期待に応え、社会の変化に対応した学科の構成について検討を進め、来年度の配置計画案で示していく考えである。

公立学校の

整備について

佐野委員 学校施設環境改善交付金について、道が要請していた事業の半数近くが未採択だった経緯に対して、私たち日本共産党道議団としても、八月二十九日に、政府に対して予算要望を行い、学校施設の整備促進を求めてきた。

 道内公立学校の整備にかかわって、本年度の学校施設環境改善交付金事業の要望は二百四十六件に対し、採択は百二十六件にとどまったと承知している。その要因は何か伺う。

加賀施設課長 学校施設環境改善交付金事業の採択について。二十八年度の国の公立学校施設整備費予算は、翌年度繰越できる二十七年度補正予算と当初予算を合わせて、一千九十七億円が措置されたが、この予算額は、全国の事業計画を踏まえた概算要求額を約一千億円下回った。

 国では、二十八年度の学校施設環境改善交付金事業について、前年度からの継続事業などを優先採択事業としたことから、道内の市町村が計画していた二百四十六事業のうち、四月当初で継続事業の九十五事業が採択され、その後、増改築事業などの三十一事業が追加で採択されたものの、現時点では、いまだ新規の百二十事業が未採択となっている。

佐野委員 百二十件が未採択となったわけだが、その中に、「危険改築」「不適格改築」「非構造部材の耐震化」など、それぞれ何件が未採択で残されたのか。このことについて、どのように認識し、対応してきたのか。

加賀施設課長 改築事業等の未採択状況などについて。建築後の経過年数等によって老朽化し、構造上、危険な状態にあると判定された学校を改築する「危険改築事業」においては七事業、耐震性能を評価する指標、いわゆるIs値が〇・三未満と診断された学校を改築する「不適格改築事業」においては五事業、また、体育館の吊り天井等の非構造部材の落下を防止する「防災機能強化事業」においては九事業、その他、施設の劣化や機能低下を改修する大規模改造事業など九十九事業が未採択となっている。

 道教委としては、国の財政状況によって市町村の負担増や事業の見直しなどが行われることは、当該年度のみならず、将来的な整備計画にも大きな影響を及ぼすものと考えていることから、国に対して、委員の皆さんの力添えをいただきながら、五月下旬の緊急要望や八月上旬の文教施策に関する要望を行ったほか、市町村など関係機関とも連携しながら、あらゆる機会を通じて、事業採択に向けた財源確保について働きかけてきた。

佐野委員 緊急性の高い「危険改築」「不適格改築」「大規模改造」などの、二次補正での採択の見通しについて伺う。

村上総務政策局長 採択の見通しについて。八月二十四日に閣議決定された二十八年度第二次補正予算案では、公立学校の耐震化や老朽化対策などを推進するため、一千四百七億円が計上されたと承知している。

 この補正予算案において、年度当初に不足していた財源が確保される見込みではあるが、道教委としては、今後とも、未採択事業が確実に採択されるよう、補正予算の成立状況など国の動向を十分注視しながら、市町村とも連携し、学校施設整備事業の円滑な実施に向け取り組んでいく。

― 指  摘 ―

佐野委員 補正予算が計上されたことで、必要な工事に一日も早く着手できることを願うばかりだが、北海道は、学校耐震化が全国四十三位と遅れている。構造上、危険な校舎や耐震指標が〇・三未満の校舎、吊り天井など非構造物の落下防止など、来年度以降も、市町村の要望に応えられるように引き続き、国に強く働きかけていただきたい。

(道議会 2016-12-07付)

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