Pick Up 2016⑥札幌市教委―部活動顧問の負担軽減急務 「特別外部指導者」の活用試行 立ちはだかる人材確保の壁
(市町村 2016-12-26付)

 「中学校に入ったら部活何やるの?」―。保護者や子どもたちにとって、部活動は「あって当たり前」のものとなっている。しかし、少子化に伴う学校の小規模化が教員の多忙感に拍車をかける中、部活動は、長時間の拘束に耐える顧問教諭の〝熱意〟で成立するという状況が顕在化。ある顧問教諭は、「三年生の担任なので、進路関係と部活動が重なる。部活動を一人でみるのは限界がある」とため息をつく。

 札幌市教委では、二十一年度から外部顧問派遣事業を導入。退職教員などの教職経験者が単独で運動部活動を運営できる制度だったが、「人材確保が難しい」(市教委)との壁にぶち当たった。そのため、昨年度、顧問教員の負担を軽減することに焦点を当てた「特別外部指導者活用事業」を試行した。

 特別外部指導者になる要件は、①教職経験者②一定のスポーツ指導者の資格をもつ者③〝外部指導者〟として二年以上の経験をもつ者―。いずれかの要件を満たす者を校長が市教委に推薦し、市教委が嘱託する形をとる。指導の内容は、「校長が認めた範囲内での単独指導」「市内における練習試合等への単独引率」となっている。

 昨年度のモデル事業では、十校に計十人を委嘱。各校からは、「大会に参加してもらい、助かった」「経験の浅い顧問教諭の指導力向上につながった」など、その有効性を実感する声が多数を占めた。

 本格実施となった本年度は、年度初めだけでなく三年生が引退してチームが一新する八月にも案内を行った結果、昨年度を大幅に上回る四十一人を嘱託することとなった。市教委では、モデル事業の成果を受けて学校へ積極的に周知したことが大幅増につながったとみている。

 一方、児童生徒担当課の喜多山篤課長は「活用したいが人材が見つからないという学校も多い」と、制度の根幹にかかわる課題も浮上している。

 〝活用したい人材が見つからない〟背景には、特別外部指導者との信頼関係構築という問題がある。

 「部活動は、技術指導がすべてではない。人材をマッチングする段階から見極めが必要になる」「学校の指導方針をしっかり理解している人でなければ、この立場になってもらうのは難しい」(管理職)。限られた時間とは言え、大切な生徒を預ける形になる。推薦する学校側としては慎重にならざるを得ない。実際、昨年度のモデル事業で嘱託した十人はいずれも二年以上の外部指導者経験を有する人材で、長い期間をかけて学校との信頼関係を築いている。

 部活動指導に当たって、最も身近に感じている一般教員は、「顧問には競技経験のない教員も多い。国が教育課程の中に部活動を位置付け、専門指導者を配置することで指導もやりやすくなるのでは」との声も挙がる。専門指導者に関する国の動向をみると、文部科学省が部活動の顧問、単独での引率等を職務とする「部活動指導員(仮称)」の制度化を検討する方針だが、具体的な運用方法が明らかになるには、時間を要する見通しだ。

 現時点で学校側ができる取組は、「保護者会も含めた地域への積極的な周知活動ではないか」(管理職)との意見も挙がる。顧問教員の置かれている窮状に理解を得る必要性を感じているからだ。

 部活動顧問の負担軽減に向けた抜本的解決策がみえない中、部活動の充実、ひいては子どもたちの健全な成長をサポートするには、保護者、地域とのコミュニケーションを一層密にすることが重要になる。

(市町村 2016-12-26付)

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