Pick Up 2016⑦渡島管内―息の長い取組が結果に 函館市の「いじめ対策」 市基本方針策定で加速期待
(市町村 2016-12-27付)

 自殺や不登校が社会問題としてクローズアップされて久しい、いじめ問題。函館市内においても、行政、学校現場が、いじめ撲滅に向けて継続的な取組を展開している。

 函館市教委が平成七年度に設置した「いじめ等対策委員会」では、年に数回の会合を開き、学校・家庭・地域の協力体制の在り方などを協議。南北海道教育センターには子ども電話相談室を設け、相談に応じてきた。年度ごとに異なるテーマを掲げ、フォーラムも開催。二十一年度からは「いじめ等の問題について考える集会」に衣替えし、内容を拡充する形で取組を進めている。

 本年度の集会では、㈱植松電機の植松努専務(当時)が講演し、宇宙開発の夢に挑んできた自身の経験を語りながら、「人には足りない部分があるから、助け合える」と強調。あさひ小学校五・六年生と宇賀の浦中学校一・二年生合わせて二百人余りが意見を交わし、「人の命を奪うことは、夢や未来を奪うこと」といった声が挙がっていた。

 委員会では毎年度、啓発用のリーフレットを保護者や地域住民に配布している。集会の様子や子どもたちの意見・感想も紹介し、いじめ防止へのメッセージを発信。そのほか、各学校における取組、児童生徒が作成したポスターや標語・作文、いじめを見逃さないためのチェックポイント、相談窓口などを掲載し、実効性ある取組への協力を呼びかけている。

 一方、各学校では、「いじめ防止基本方針」を定め、教育相談、全職員による休み時間のふれあい活動などを実施。中学校においては、仲間の良さを評価する賞の創設など、生徒自らが企画するボトムアップの実践も進められている。

 毎年行われる全市生徒会協議会でも、七年度に制定した「いじめ撲滅宣言」を生徒同士で復唱。いじめのない学校づくりへの決意を確認し合っている。

 こうした息の長い取組が着実に成果を上げ、認知件数は減少。ここ数年は、最近十年間で最も多かった時期の三分の一程度で推移している。

 それでも一定数のいじめが認められ、インターネットやSNSの普及などに伴い問題が多様化。認知件数が減少している一方、認知されない水面下のいじめがどの程度あるのかは不明で、それを見逃さないための対策も課題となっている。

 市教委は、「子どもたちが相談しやすい環境づくりが大事」と、積極的に認知していく必要性を認識する。すでに二十五年度から巡回相談員を配置しているが、より有効な活用方法を探っていくこととしている。インターネットやSNSに関しては、ネットパトロールを継続するとともに、年齢制限やフィルタリングの徹底などを家庭に要請。さらに、いじめそのものをなくすため、道徳心・倫理観を高めていく手立ても講じ始めている。

 これらがしっかり機能し、より高い効果を得るため、市民全体で一体となった取組を推進しようと進められているのが、市としてのいじめ防止基本方針の制定だ。今月示された原案によると、①いじめ防止等に関する基本的な考え方②いじめ防止等のための役割と取組③重大事態への対応―で構成され、学校、教職員、保護者、地域社会・市民、教育委員会それぞれの役割を明確化。具体的な取組として、学校の基本方針の点検・見直し、学年を越えたふれあい活動、道徳教育の充実、心理の専門家による校内研修、PTAによる情報モラル講演会等、保護者用チェックシート活用などが示されている。

 この動きについて、函館市小学校長会の戸澤和彦会長は「各学校で方針を定めているが、市全体の方向性を固めることで、より一体感が生まれるのでは」と期待。函館市中学校長会の岡野伸二会長も「いじめはある日突然、重大な事例として発生する。学校現場の混乱を軽減し、解決に取り組む姿勢を示してくれた」と評価する。

 年明け一月二十日までパブリックコメントを行ったあと、二月にも成案化。新年度から基本方針に基づき、具体的な取組を進めていくこととなる。「いじめは許されない行為」という行政、学校、家庭、地域社会に共通する思いが、基本方針のもとでどう結実していくのか。一丸となった取組に寄せられる期待は大きい。

(市町村 2016-12-27付)

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