文化庁の２９年度「日本遺産」　江差町のストーリー認定　函館市・松前町等１１自治体も

（市町村 2017-05-01付）

　文化庁は四月二十八日、二十九年度「日本遺産（Ｊａｐａｎ　Ｈｅｒｉｔａｇｅ）」に、全国で十七件のストーリーを認定した。本道関係では、江差町の「江差の五月は江戸にもない―ニシン繁栄が息づく町」と、函館市・松前町など十一自治体の「荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間～北前船寄港地・船主集落」の二件が認定された。

　この事業は、地域の歴史的魅力や特色を通じて、わが国の文化・伝統を語るストーリーを「日本遺産」に認定。そのストーリーを語る上で不可欠な魅力ある有形・無形の文化財群を地域が主体となって総合的に整備・活用し、国内外に戦略的に発信することによって、地域の活性化を図るもの。

　本年度は、本道関係二件を含む十七件のストーリーを認定した。本道関係の認定は初。

　四月二十八日には、東京都内の文部科学省第二講堂で二十九年度日本遺産認定発表・認定証交付式を開いた。

　高橋はるみ道知事は同日、今回の認定に対するコメントを発表。「認定された地域は認知度が高まるとともに、認定後の様々な取組を通じて、地域のブランド化にも貢献する」などと、文化振興、観光振興の面での効果に期待を寄せた。また、道として、「市町村をはじめ地域の方々と連携して、認定を受けた歴史的・文化的資源の魅力を国内外に発信するとともに、地域の魅力を高める取組を全力で支援していく」と表明した。

　本道関係の認定市町村とストーリー概要はつぎのとおり。

▼江差町（北海道）＝「江差の五月は江戸にもない―ニシン繁栄が息づく町」

　江差の海岸線に沿った段丘の下側を通っている町並みの表通りに、切妻屋根の建物が建ち並び、のれん・看板・壁には、その家ごとの屋号が掲げられている。緩やかに海側へ下っている地形に合わせて蔵が階段状に連なり、海とともに生きてきた地域であることがうかがえる。

　この町並みは、江戸時代から明治時代にかけてのニシン漁とその加工品の交易によって形成されたもので、そのさまは、「江差の五月は江戸にもない」とうたわれるほどであった。

　ニシンによる繁栄は、江戸時代から伝承されている文化とともに、今でもこの地域に色濃く連綿と息づいている。

▼酒田市（山形県、代表自治体）、函館市・松前町（北海道）、鰺ヶ沢町・深浦町（青森県）、秋田市（秋田県）、新潟市・長岡市（新潟県）、加賀市（石川県）、敦賀市・南越前町（福井県）＝「荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間～北前船寄港地・船主集落」

　日本海沿岸には、山を風景の一部に取り込む港町が転々とみられる。そこには、港に通じる小路が随所に走り、通りには広大な商家や豪壮な船主屋敷が建っている。また、社寺には奉納された船の絵馬や模型が残り、京など遠方に起源がある祭礼が行われ、節回しの似た民謡が唄われている。これらの港町は、荒波を越え、動く総合商社として巨万の富を生み、各地に繁栄をもたらした北前船の寄港地・船主集落で、時を重ねて彩られた異空間として今も人々を惹きつけてやまない。

(市町村 2017-05-01付)