北教組第128回定期大会 憲法を守る決意新たに 信岡中央執行委員長のあいさつ
(関係団体 2017-06-27付)

北教組・信岡聡中央執行委員長
あいさつに立つ信岡中央執行委員長

 北教組の第百二十八回定期大会(二十二・二十三日、ホテルライフォート札幌)における信岡聡中央執行委員長のあいさつ概要はつぎのとおり。

          ◇          ◇          ◇

 北教組は、結成七十周年を迎えたこの一年間「教え子を再び戦場に送らない」誓いのもと、憲法改悪阻止・「戦争法」撤廃、「学習指導要領」に対峙する自主編成と組織の強化・拡大、差別賃金・超勤排除など勤務条件改善、そして、参院選での日政連勝利を目指し、組織の総力を挙げてたたかってきた。

 このたたかいの中で、戦後教育の原点に立ち返り、組合員同士の信頼の強さと組織の団結力を再確認し、今後のたたかいにつながる成果を勝ち取ることができた。

 さて、安倍政権は経済最優先・大企業優遇の政策によって「格差社会」を一層固定化・拡大させてきた。四月に公表された北海道の「子どもの貧困調査」は「家計が赤字の世帯が全世帯の約四分の一」「家族が必要とする食料が買えなかった世帯が二割を超えた」「経済的な理由から、進学をあきらめなければならない」など、深刻な子どもたちの生活実態が明らかとなった。

 こうした「貧困」の現実に目を向けることもなく、自民党は今「教育の無償化」を改憲の突破口としているが、これは党利党略以外の何物でもない。「憲法二六条は義務教育無償」を定めている。それにもかかわらず、膨大になっている教材費をはじめ給食費など、保護者負担の無償化こそ、実現すべきである。

 私たちは、困窮する子どもたちの増加が「学ぶ権利」や「教育の機会均等」を奪っている実態の改善を目指し、北海道の連合・労福運動が発端となり端緒についた「給付型奨学金」拡大とともに「中学校三年生への無償の奨学金支援」など、北教組「社会的還元事業」を確実に進めていかなければならない。

 こうした中で安倍政権は「特定秘密保護法」「戦争法」に続き、十六日に「共謀罪法案」を強行採決し、憲法改悪へとひた走っている。国会法の規定を口実に、委員会採決を省略しての「強行」は、前代未聞の「数の暴力」である。

 「共謀罪」は、処罰対象となる団体や実行準備行為など極めてあいまいで、政権に異を唱える市民団体や労働組合も監視・密告の対象となりかねず、内心の自由や基本的人権の一層の侵害が危惧される。

 かつて、北海道の教職員は「治安維持法」のもとで、多くの教職員が検挙され、職を追われるなど、弾圧され、教育の自由を奪われた。

 私たちは過去の歴史や教訓に学び、権力の暴走を断じて許さず、「共謀罪」を撤廃し、憲法を守るため、あらゆる人々と連帯し、平和と教育の自由、人権を守る取組を強化しなければならない。

 政府・文科省は三月、改訂「学習指導要領」を告示し「人格の完成」を目指すよりも「点数学力偏重」の競争と国家道徳を押しつけ、「格差社会」に従順な「国家のための人づくり」を徹底しようとしている。子どもの要求とかい離した「主体的で深い学び」など、内容や方法、評価まで詳細に縛り、主体的で創造的な教育実践を奪い、多忙化に拍車をかけるものである。

 また、「特別の教科 道徳」の教科書検定では「伝統と文化を強調」し、教科書会社に「パン屋を和菓子屋に修正」させる、戦前の陸軍の「銃剣道」を中学校武道に追加する、さらに、憲法・教育基本法に反し軍国主義につながるとして衆参両院で排除・失効確認された「教育勅語」を復活させるなど、子どもたちを戦場に駆り立てる戦前回帰の政策を進めている。

 道教委も文科省に追随し「全国学力調査」の平均点を上げることに奔走し、点数が高いことが教育の成果であるとして、子どもたちを差別・分断している。財政論に基づく「新たな高校教育に関する指針と配置計画」は、この十年間、機械的再編・統廃合を繰り返し、道内の高校を四十校減少させ、高校のない市町村を五十に拡大させるなど、地域の疲弊と一層の「格差」を生み出した。

 今、子どもたちは、所得格差・地域格差・親から子どもへの世代間連鎖が「教育格差」となる状況の中で、努力しても報われない不安を感じている。学習離れが進み、いじめ・暴力・自殺など、様々な形で苦悩している。

 学校は、それぞれ違った家庭で生活している一人ひとりの子どもの個性あふれる人格を大切にし、教職員とともに人間として対等な立場で学び合うところである。私たちは、競争と序列化によってバラバラにするのではなく、今を生きることが将来の生き方につながり、学ぶことと生きることのかかわりを、日常のふれ合いの中で培わなければならない。「学校改革・教育課程自主編成推進委員会」作成の『報告書』などを組織的に学び、学ぶ喜びと希望を育む、科学的で系統的な創造力あふれる教育実践を進めていくことが必要である。

 昨年、文科省が行った勤務実態調査は「過労死ライン」とされる月八十時間を超える時間外勤務を行った教員が他業種と比べ格段に高い、過酷な状況をあらためて明らかにし、中教審での審議が開始された。調査から明らかとなった「授業計画や準備」など突出した時間外は「ゆとり」批判の中で、授業時数が大幅に増加したにもかかわらず、定数改善を行ってこなかったことが要因である。

 ILO・ユネスコ「教員の地位に関する勧告」は、一日の担当科目・時数、計画や準備、評価、子どもや保護者との相談を勤務時間内に行うよう考慮し、持ち時間数と定数を決定するよう求めている。しかし、抜本的な定数改善は放置され、月六時間程度の手当措置で労基法三七条が適用除外される「給特法」下で、働かせ放題となってきた。道教委交渉で勝ち取った制度改善の定着・拡大とともに、最大の要因となっている「給特法」見直し、持ち時数減・定数改善などの抜本的改革を本年度の最大の課題と位置付け、運動の強化が重要である。

 学校は、今ある政治や社会状況と切り離して考えることはできない。教育への攻撃に歯止めをかけるためには、今こそ組合の存在と力が必要である。引き続き、若い仲間と語り合い、自らが主体的に北教組運動に自信と確信をもって組織拡大を図っていく運動の展開が大切である。

 二〇一七・一八年度運動課題の重点について述べる。

 課題の第一に、憲法を守り・生かすため道民運動を強化すること、第二に「給特法」・定数など抜本的な勤務・教育条件改善を進めること、第三に青年委員会の活性化など未組織者の全員加入を図ること、第四に改訂「学習指導要領」に対峙した自主編成の強化である。

 朝鮮戦争勃発の翌年、私たちは「教え子を再び戦場に送るな!」をスローガンに掲げた。安倍首相が二〇二〇年に向け「九条改憲」を明言し、「戦争する国づくり」にまい進する中で、あらためて、このスローガンに込められた意義を再確認して「憲法を守る」決意を新たにしたいと思う。

 今、私たちは、そういう歴史的転換期に立っているのである。

 この定期大会が皆さんの真摯な討議によってたたかう北教組の方針が確定することを心より期待申し上げ、中央執行部を代表してのあいさつとする。

(関係団体 2017-06-27付)

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