札幌市社会科教育連盟が研究大会　見方・考え方鍛える学びを　第３・６学年部会２授業公開

（関係団体 2017-09-27付）

石本教諭は、地図上に官営工場の位置などを提示し、明治政府が地方からも日本の近代化を推進したことに気づかせた

　札幌市社会科教育連盟（新保元康委員長）は十四日、札幌市立緑丘小学校（本間雄一校長）で第四十五回札幌地区社会科教育研究大会を開いた。研究主題「未来を切り拓く資質・能力を育む社会科の授業」のもと、小学校研究部第三・六学年部会が二授業を公開。「確かな見方や考え方を鍛える授業」など、これまでの研究実践も踏まえ、主題実現に向けて取り組んできた成果を発表した。

　本年度は三ヵ年継続研究の二年次目。研究の視点として、①地域に誇りをもつ教材化②社会的事象の意味を明らかにする問題解決の学習展開③知識・技能を定着させる教師のかかわり―を設定し、研究を推進している。

◆６年「開拓使麦酒醸造所」

　公開した授業のうち、六年二組「明治の国づくりを進めた人々～開拓使麦酒醸造所と村橋久成」（石本歩教諭、児童数三七人）は、八時間扱いの六時間目。本時の目標を「村橋久成が明治政府の決定を覆してまで、当時未開の地であった札幌に麦酒工場を建設することを提案した意図について考える活動を通して〝北海道の開拓を進め日本の近代化に貢献する〟という村橋の願いに気づき、麦酒づくりが文化面での近代化につながったことを理解する」と設定した。

　石本教諭は研究の視点①から、道の開拓と文化面での近代化がみえ、国力の充実が理解できるとして、官営工場の一つ「開拓使麦酒醸造所」を選択。また、麦酒づくりが百四十年を経て、現在でも続いていることなどが、地域に誇りをもつ一因となると想定した。

　授業では、はじめに「官営の麦酒工場をつくるならどこにつくるか」と児童に問いかけた。「発展しているから東京」などといった児童の考えを引き出したあと、明治政府が東京に麦酒工場建設を決定していたことを提示。政府の決定に対し、開拓使の村橋久成が札幌に建設すべきと訴えた事実を示し、児童の疑問を引き出した。この上で、村橋は「なぜ札幌に麦酒工場をつくるように提案したのだろう」と問いかけた。

　全体交流では、村橋が建設地変更を訴えた意見書などの資料をもとに、児童が考えた意見を発表。「交通が発達するから」「木材が必要だったから」などの意見を板書してまとめ、札幌の自然を生かした麦酒づくりによって、北海道を発展させ、近代化を推進させようとした村橋の意図を理解させた。

　また、日本地図上に官営工場の位置を提示。全国各地に官営工場をつくり、地方からも近代化を進めようとした明治政府の意図に気づかせた。

　研究の視点②の観点から、官営工場の種類にも着目。麦酒工場が綿などの生活必需品や軍事用品の工場とは異なることに気づかせ、麦酒によって国民の意識や文化面が近代化したことについて思考を深めさせた。

　授業後の分科会では、石本教諭の授業について「子どもたちが北海道や村橋久成について愛着や誇りをもって語っていた」「北海道だけではなく日本全体の近代化、国づくりという視点にもっていけたらよかった」などの意見が出た。

　今後は、十月三日に札幌市立手稲鉄北小学校で第四・五学年部会、十月十二日に札幌市立常盤中学校で歴史的分野部会、十月十九日に札幌市立西岡中学校で地理的分野部会が授業公開および分科会を行う。

(関係団体 2017-09-27付)