子どもを権利主体に実践を 國田委員長あいさつ概要
(関係団体 2018-03-08付)

道高教組定期大会・國田委員長
「新たな学習指導要領を乗り越えていこう」と呼びかけた

 道高教組第百二十回定期大会における國田昌男中央執行委員長のあいさつ概要はつぎのとおり。

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 昨年、内閣府は『子ども・若者白書』を公表した。十五歳から二十九歳の男女六百人に「自分の居場所と思うか」と尋ね、「そう思う」「どちらかといえば」を合わせて、自分の部屋八九%、家庭八〇%、インターネット空間六二%であった。それに対し、学校は四九%にとどまっている。

 この傾向は、学習指導要領や「学力テスト」による学習負担増、競争主義教育の常態化、道徳の教科化やゼロトレランスなど、子どもを特定の「枠」にはめ込もうとして、居場所としての学校を子どもから奪っているからと考えられる。

 そうであれば、今こそ、子どもの願いを受け止めて、子どもを権利主体として大切にする教育実践、学校づくりが求められる。

 しかしながら、現政権の教育政策は、国や財界の要請に応じる「人材育成」に重きを置いて、教育を利用し、介入を繰り返していると言わざるを得ない。この三月にも高校と特別支援学校高等部の学習指導要領が告示されるが、今次の改訂で、とりわけ道徳教育に力点が置かれているのは、小・中学校の新指導要領をみても顕著であるし、教育勅語の復権を果たそうとする勢力の動向からしても注意すべきである。

 そもそも現憲法下で、国は公教育で道徳教育の内容を決めてよいのか。道徳に限らず、国家に公教育の教育内容を決定する法的権限があるか、「国民の教育権」説と「国家の教育権」説が鋭く対立してきて、それに一定の決着を付けたのが一九七六年の最高裁の旭川学力テスト事件判決だった。

 この判決は、学習指導要領の合理性を認めつつも、教育内容への国の関与を無条件、無制限に認めたわけではなく、「必要かつ適当と認められる範囲」に限った。教育を「人間の内面的価値に関する文化的な営み」ととらえ、「党派的な政治的観念や利害によって支配されるべきではない」としている。このことは、知育以上に、良心の形成にかかわる道徳だからこそ強く意識されるべきである。

 それゆえ、「道徳的価値」として国が正当に設定できるのは、憲法の基本原理に基づく価値、個人の尊厳、立憲主義、基本的人権の尊重、平和主義、国民主権といった価値のみと考えるのが必然。であるから、国が定めることができる道徳教育の内容は、個人の価値に立脚し、権力に対する警戒心を伴った人権教育、平和教育、主権者教育になる。

 加えて、教科はその背景に、人類の知的・精神的活動の成果としての学問・文化の体系がある。それを子どもの発達段階に応じて再構成したものが教科であるが、道徳には、その基盤となる学問も文化的体系もない。したがって、大学で教員養成をすることも免許状を設けることもできない。

 憲法改正で二六条を変更するという動きに注意を払いながら、学校における道徳教育は、伝統的道徳の反憲法制を否定しつつ、憲法的価値を国民の間に広げる役割を負うということを意識して、新たな学習指導要領を乗り越えていこうではないか。

 首相は今、改憲に前のめりになっていて、それを受け、自民党憲法改正推進本部は、所属議員から公募した憲法九条「改正」をめぐる条文案を議論し、三月中に意見集約するとしている。衆議院を通過した一八年度政府予算案には、過去最高の軍事費が計上されている。それがために、暮らしに冷たいアベノミクスの継続とともに、社会保障予算は大幅に削減され、生活保護費のさらなる削減を打ち出したことは重大。文教予算も少人数学級に背を向けながら、グローバル人材の育成には予算を割くなど、国民に「貧困と戦争」を押し付ける内容である。

 昨年公表された道子どもの生活調査では「年収階層別でみると、年収が下がるのに伴い、学校での授業が〝分からない〟とする割合は増加傾向」にあることが示され、家計収入と学力の相関が明らかになった。貧困の連鎖を断ち切るには、家計への直接支援が最も効果的と言われるが、それを阻んでいるのが新自由主義による自己責任論であり、「国難」を理由にした軍事費の増大と言える。

 私たちの「ゆきとどいた教育をすすめる運動」などによって、就学援助の拡充や給付型奨学金の本格運用が始まったが、子どもたちに権利としての学びを担保するには不十分と言わざるを得ない。

 また、子どもたちの前に日々立ち続ける教職員の多忙解消も早急に解決されるべき課題として、中央教育審議会や文部科学省、スポーツ庁などが「チーム学校」としての様々なガイドラインや提言を発している。道教委も、それにならって学校における働き方改革「北海道アクション・プラン」を検討している。教育長は「時間外勤務の一層の縮減に庁内一丸となって取り組む」との決意を述べているが、こうした動きをつくってきたのは、まぎれもなく学校現場の声であり、それを束ねて要求としてきた教職員組合の運動である。

 「学力テスト」で「日本一」常連の福井県が昨年十二月に県議会で意見書を採択した。「福井県の教育行政の根本的見直しを求める意見書」として、県内中学校での「指導死」の反省から、「子どもたちが自ら学ぶ楽しさを知り、人生を生き抜くために必要な力を身に付けることが目的」であって「過度の学力偏重は避けること」「教員の多忙化を解消し、教育現場に余裕をもたせるため、現場の多くの教員の声に真摯に耳を傾け、本来の教育課程に上乗せして実施する本県独自の学力テスト等の取組を学校裁量に任せることや、部活指導の軽減化を進めるなどの見直しを図ること」としている。

 この意見書に書かれている方向性を、教職員定数の増や少人数学級の前進も含めて、より多くの人と共有し、目指していくことが必要ではないだろうか。学校からゆとりがなくなると、「子どもの人権」に気が回らなくなり、教育そのものが子どもにとってリスクになる可能性があることを私たちは認識しなければならない。そのためにも、風通しがいい職場、子どものことを語り合える職場が必要で、それができるのは組合の力の結集にほかならない。

 私たち道高教組は「教え子を戦場に送るな」をスローガンに掲げ、「憲法の理想の実現は根本において教育の力に待つべきもの」という立場で運動を進めてきた。これは教職員組合としての矜持である。戦後七十三年のことし、安倍改憲を許さない大きな運動の担い手に、私たち一人ひとりがなることが求められる。

(関係団体 2018-03-08付)

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