ほっかいどう学シンポジウム 学習内容や展開方策議論 小学生に教える意義を強調(関係団体 2018-03-20付)
ほっかいどう学の発信の在り方を語るパネルリスト
自ら考え地域づくりに取組む担い手の育成・確保を目的に、第八期北海道総合開発計画に盛り込まれた「ほっかいどう学」。十四日に開かれた道開発協会(内田和男会長)主催のシンポジウムでは、教育関係者四人がパネリストとして出席し、ほっかいどう学の学習内容や展開方策について話し合った。札幌国際大学観光学部の吉岡宏高教授は学習内容について、開発局の事業をテーマ別にまとめれば開発局JICAという素材になると紹介。札幌市立屯田小学校の新保元康校長は展開の方策を「教材群をつくり、小学校で教えることが大事」と訴えた。
パネルディスカッション「多様な学びへのほっかいどう学の可能性」の内容はつぎのとおり。
草苅コーディネーター パネルディスカッションでは、多様な学びの場へのほっかいどう学の可能性をテーマに議論する。幅が広くて、奥の深い話となる。そこで、ほっかいどう学の学習内容と多様な学びの場への展開方策の二点について、意見をうかがいたい。
【ほっかいどう学の学習内容について】
朝倉 子ども達に学びたいと思えるような発問など、揺さぶりの授業が必要。いろいろな切り口を教師が実感して、教育現場にどう取り入れていくか。それを学習として構成していくことが必要と思う。
新保 ほっかいどう学は、北海道中で行っていくべき大事なこと。私たちは、北海道について知らないことがたくさんある。教育者として責任は重いと思っている。
高野 北海道の歴史を考えるとき、移動・交流してきた(先人達の)ルーツが大事なポイントとなってくる。教育にもいろいろな形で取り入れることができる。例えば、北前船と炭鉱のかかわりは深い。船主の資本で北海道の鉱山が開発された。その赤平には石川県加賀市動橋から人が移住してきた。
それを学ぶには一次元の世界から、次元を挙げていくことが大切となる。どういうことかと言うと、五感で学ぶということ。ビジュアルなものや食を絡めると、さらにリアルになる。
北海道の地域資源は自然や海産物だったりする。歴史や文化という視点はまだまだ一般にはない。
吉岡 北海道に豊かさをもたらしたものをテーマに学びを考えると、必修科目と選択科目が出てくる。近代では炭鉱がその必修科目の一つとなる。明治の初めの北海道は、沿岸部に人口の九五%が占めていた。大正には、それが全域に分散していった。
なぜか。石炭産業ができて炭鉱鉄道が伸びていったからだ。小樽で菓子店が栄えたのも幌内鉄道があったから。すべての鉄道は小樽に通じていた。
その関連性が分からないと「小樽のお菓子はおいしいね」で終わってしまう。
北海道は百五十年の密度で人口が明治初期の五万人から五百万台人に。空知の炭鉱があって、室蘭に製鉄ができた。そうした基盤は島津斉彬ら薩摩藩の人達の努力で生まれた。
草苅コーディネーター
そういった歴史を学校で教えることはできないのだろうか。
朝倉 歴史的事象は複雑で、小学校の教育現場では難しい。教科書は知識の上で使いやすい内容を優先し、一つの学習として出来上がるようになっている。そのため、小学生のフィルターを通して、体系化し広めていくことが大事と思う。
【ほっかいどう学の展開方策について】
吉岡 学校教育では、トピック的なテーマを分かりやすく行ってもらえれば十分。仕事柄、社会教育の現場に呼ばれるが、定番の人しか来ない。広がりが感じられない。私は、大人教育が宝の山と思っている。アート、写真、観光教育などで気づかせることがきっかけになると思う。
ほっかいどう学のパンフレットに記載されている泥炭地開発の話は、そのいい例である。昔から北海道は、豊かな穀倉地帯ではなかった。東南アジアに発信すれば役に立つし、交流も生まれる。開発局の港湾、空港、道路についてもテーマ別にまとめてほしい。そうすれば北海道JICA、開発局JICAという素材になる。
高野 北海道で歴史教育を考えるとき、観光とまちづくりの関連が重要。いろいろな部署や分野が連携して、まちづくりに歴史文化を生かしていくことだ。また、歴史は男性的な偏りが多い。食とかの要素を入れ、女性にも来てもらえれば広く歴史を取りきれていくのかなと思う。
新保 大事なことの一つは、小学生に教えること。小学生で一回学ぶことに意味がある。日本マクドナルドをつくった藤田田さんは、子どもをターゲットにした。それは示唆的で、ほっかいどう学という味を、小学校で味わっているか。除雪をのことを少しでも知っているかどうか。これで全然違う。小学校で教えられたことは、先生の脱線を含めた話も含め覚えているものだ。小学校で行う手立てを考えないといけない。
二つ目は、ほっかいどう学の必要性を気づいた人で厚みのある教材群を一杯作らないといけない。教科書やそれに関する教材がたくさんある。量的に負けてしまう。これを何としかしないといけない。
以前は『わたしたちの北海道』という副読本があった。全道の小学四年生が使っていた。それには、当時の北海道総合開発計画も紹介されていた。私も勉強して大人になった一人。泥炭地開発での客土事業のことを覚えている。
グローバルな時代を迎え、これから英語の時間が増えてくる。しかし、ローカルなことを語れない人は、グローバルな人にはなり得ない。それをやるには、ほっかいどう学に気づいた我々しかいない。
朝倉 教育現場では、新学習指導要領が四月から移行措置で始まる。二年後に、本格実施となる。盛んに言われているのは、カリキュラム・マネジメントというもの。簡単に言うと、教科で教えていくというよりは横断的に教え、評価をしっかりとやっていく。そして、社会に開かれた教育課程ということで、地域の文化的財産・人的財産を生かしていこうというもの。
教育現場も柔軟にフレキシビルに吸収して、展開していく力が必要となる。後は専門の部署の方にも教育に目を向けて、入り口をたくさんつくってくれるとありがたい。
社会と教育が融合して、本当の意味で子どもたちが社会教育で育つというようなことが可能な時代になってきた。
◆出席者=敬称略=
▼コーディネーター
▽草苅健(北海道開発協会開発調査研究所理事・所長)
▼パネリスト
▽朝倉一民(札幌市立屯田北小学校教務主任)
▽新保元康(札幌市立屯田小学校校長)
▽高野宏康(小樽商科大学グローカル戦略推進センター学術研究院)
▽吉岡宏高(札幌国際大学観光学部教授)
(関係団体 2018-03-20付)
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