30年度上川管内教育推進の重点―上川局が管内小中校長会議 上川スライド30を啓発 教職員の業務改善推進へ(道・道教委 2018-04-24付)
中島局長は「社会で活きる力」など重点6点を提示した
【旭川発】上川教育局は十三日、アートホテル旭川で三十年度管内公立小中学校長会議を開いた。中島康則局長が基本目標として「社会で活きる力」など六点を提示し、本年度の重点を説明。電子メディア接触時間を見直して家庭での学習習慣の定着を図る局独自の取組「上川スライド30」に関する普及啓発を進めるほか、「学校における働き方改革『北海道アクション・プラン』」に基づき、教職員一人ひとりに服務規律の保持徹底や、教職員が子どもたちと向き合う時間を確保するための業務改善などに努めていくことを示した。
重点の概要はつぎのとおり。
【はじめに】
前年度は、昨年三月に告示された新学習指導要領の実現に向け、上川の子どもたちが自らの将来を切り開いていくために必要な学力や体力などを一層育んでいくことが責務であるとの考えのもと、組織として教育活動に取り組む体制の整備に尽力いただいたと認識している。
そのため本年度は、より一層、学校、家庭、地域および行政がそれぞれの役割と責任を自覚し、一体となった取組を進め、管内の学校に通うすべての子どもたちに、確かな学力や豊かな心、健やかな体がバランスよく育成されるよう、上川らしい教育を推進していただきたいと考えている。
さて、道教委では、新学習指導要領や知事が定める道の教育、学術、文化の振興に関する北海道総合教育大綱を踏まえ、三十年度以降の北海道が目指す教育の全体像を示した北海道教育推進計画を策定し、二月には教育行政執行方針を示した。
北海道教育推進計画や教育行政執行方針をもとに、前年度取り組んでいただいた上川管内教育推進の重点の達成状況等を踏まえ、本年度、重点的に取り組んでいただきたい内容を示す。
【基本目標I 社会で活きる力】
基本目標1の1「確かな学力を育む教育の推進」について特にお願いしたいことは、カリキュラム・マネジメントの確立に向けた組織的な取組の推進や、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善の推進など。
管内においては、各種調査などの結果を踏まえ、年に複数回、組織的に学校改善プランを見直す取組や、ロードマップにチャレンジテストを位置付け、学校改善サイクルに基づいた指導を行い成果が現れているなど、子どもたちの学力向上に向けた取組を着実に推進していただいている。
一方、子どもが根拠を明確にして自分の考えを述べたり、説明したりする学習活動の充実が十分図られていないことや、ICT機器を活用した授業づくりなど、日常の授業改善について課題がみられる。
そのため、各学校においては、特に基本目標1の1に示した
▽各種調査等を活用した学校改善プラン等に基づく検証改善サイクルなど、カリキュラム・マネジメントの確立に向けた組織的な取組の推進
―など五点を進めていただくようお願いする。
教育局としては、指導主事による学校教育指導訪問などにおいて学力向上の検証改善サイクルの確立や授業改善、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿を踏まえた指導などについて指導助言に努める。
基本目標1の2「インクルーシブ教育システムの理念を踏まえた特別支援教育の推進」について、特にお願いしたいことは、早期からの切れ目のない一貫した支援の充実や、指導の充実を図るための教職員の専門性向上についてである。
管内においては、特別支援教育コーディネーターを複数名指名している学校があるなど、特別支援教育の充実に向けて組織的な取組を推進していただいている。
一方、全教職員が特別な支援を要する子どもに対して適切に対応できるよう、校内研修プログラムなどを活用した研修を実施するなど、指導力の向上に向けた取組について課題がみられる。
そのため、各学校においては、基本目標1の2に示した
▽個別の指導計画および上川版個別の支援計画「すくらむ」などの活用による切れ目のない一貫した支援の充実
―など三点に取り組んでいただくようお願いする。
教育局としては、各学校などの依頼に応じた特別支援教育スーパーバイザーの派遣や、管内特別支援連携協議会の情報提供、校内研修プログラムや実践事例集を活用した校内研修の進め方などについて指導助言に努める。
基本目標1の3「新しい時代を切り拓く力を育む教育の推進」について、特にお願いしたいことは、グローバルな視野で活躍するために必要な資質・能力の育成や、生まれ育った地域への愛着や誇りをもち主体的に自己の進路を選択・決定できる力の育成である。
管内においては、小学校における外国語の教科化に向け、各種研修会や小学校外国語活動巡回指導教員研修事業を活用するなど、学級担任が指導力や英語力を身に付け外国語活動の授業を進めていただいている。
一方、外国語活動の授業づくりに苦手意識をもっていたり、ALTとのチーム・ティーチングにおいて、ALTが中心となり授業を進行したりするなど、指導に当たる教員自身が指導力や英語力に不安を感じているなどの課題も依然としてみられる。
また、子どもたちが社会の変化に主体的に向き合いながら、自らの可能性を発揮し、未来を切り開く力を身に付けていくことなどにも課題がみられる。
そのため、各学校においては、基本目標1の3に示した
▽新学習指導要領の移行期間における小学校外国語活動の充実を含むグローバル化に対応した外国語教育の充実
―など二点に取り組んでいただくようお願いする。
教育局としては前年度に引き続き、グローバル化に対応した英語教育指導力向上研修をはじめとした各種研修事業を実施するほか、市町村教委と連携を図り、中学生の英会話への興味・関心を高めるため、生徒が日常生活で使用する英語を用いた英会話に挑戦するイングリッシュ・トライアルの拡充など、子どもが英語に対する興味・関心を高めるための事業の推進に努める。
【基本目標Ⅱ 豊かな人間性】
基本目標2の1「いじめや不登校を解消する取組の充実」について、特にお願いしたいことは、学校いじめ防止基本方針に基づいたいじめの未然防止や、学校と家庭・関係機関が連携した不登校の子どもへの対応である。
管内においては、学校いじめ防止基本方針に基づいた組織的な取組など、中一ギャップ問題の未然防止に向けた小・中学校が連携した取組を進めていただいている。
一方、小・中学校における不登校は増加傾向にあり、個々の事案は家庭や環境などの様々な要因が複雑に絡み合い、対応が困難で解決に時間がかかるケースがみられる中、児童生徒理解・教育支援シートなどの活用や、家庭や関係機関と連携した取組に課題がみられる。
そのため、各学校においては、基本目標2の1に示した
▽学校いじめ防止基本方針に基づいた組織的な取組の推進
―など六点に取り組んでいただくようお願いする。
教育局としては、管内地域いじめ問題等対策連絡協議会の協議内容を踏まえ、管内の各学校にいじめや不登校などの問題の解決に向けた取組を周知し、効果的な実践が推進されるよう支援に努める。
基本目標2の2「豊かな心や感性を育む教育の推進」について、特にお願いしたいことは「特別の教科 道徳」の小学校における全面実施と中学校における移行期間への適切な対応である。
管内においては、校長の方針のもと道徳教育推進教師が中心となり、年間指導計画に基づいた授業を実施するとともに、年間指導計画の見直しなどを組織的に推進していただいている。
一方、子どもたちが道徳的価値について主体的に考えたり、多様な考えにふれて自分の考えを深めたりする授業改善や、ふるさとへの理解とその発展に貢献しようとする意欲や態度の育成が十分に行われていないなどの課題がみられる。
そのため、各学校においては、基本目標2の2に示した
▽「特別の教科 道徳」の小学校の全面実施および中学校の移行期間における校内的な取組の推進
―など三点に取り組んでいただくようお願いする。
教育局としては、本年が北海道と命名されて百五十年という節目の年であることから、各学校において、七月の「北海道みんなの日」を中心に、本道にゆかりのある偉人を題材とした北海道版道徳教材『きた ものがたり』などを活用し、地域の歴史や文化等を学ぶ授業など、ふるさと教育が積極的に展開されるよう支援に努める。
基本目標2の3「他者と協働する力の育成」について、特にお願いしたいことは、コミュニケーション能力を高める学習活動の充実である。
管内の各学校においては、これまでも各教科等における言語活動の充実に向けて、ペアやグループでの話し合い活動など、学習形態の工夫を図った授業を実践していただいている。
一方、学級などで行う話し合う活動を通じて自分の考えを深めたり、広げたりすることが十分ではないなどの課題がみられる。
そのため、各学校においては、基本目標2の3に示した
▽コミュニケーション能力を高める学習活動の充実
―に取り組んでいただくようお願いする。
教育局としては、指導主事による学校教育指導訪問などにおいて子どもたちが自分の考えをもち、表現しながら考えを形成・深化させたり、よりよい人間関係を形成したりすることができるよう各教科等における言語活動の充実を図るとともに、コミュニケーション能力を高める学習活動の充実に向けて指導助言などに努める。
【基本目標Ⅲ 健やかな体】
基本目標3の1「体力・運動能力の向上」について、特にお願いしたいことは、新体力テストの全学年・全種目の実施である。
管内においては、体育・保健体育科の授業において、多くの学校が目当てを示し授業を行うなど授業改善が進むとともに、すべての中学校において新体力テストが全学年・全種目実施されるなど、体力向上に向けた取組の充実が図られてきている。
一方、子ども自身が自分の体力の向上を実感できるようにするなど、計画的・継続的な体力向上の取組を充実させることのほか、日常的に運動する機会を確保することなどに課題がみられる。
そのため、各学校においては、基本目標3の1に示した
▽新体力テストの全学年・全種目の実施および課題のある種目の複数回実施による体力向上の把握など全校での継続的な取組の推進
―など二点に取り組んでいただくようお願いする。
教育局としては、子どもの体力向上ボトムアップ事業や体育専科教員活用事業などの成果の普及などに努める。
【基本目標Ⅳ 学びを支える家庭・地域】
基本目標4の1「家庭の教育力の向上」について、特にお願いしたいことは、インターネットの利用を含めた望ましい生活習慣や家庭と連携を図った学習習慣の定着である。
管内においては、全国学力・学習状況調査の児童生徒質問紙調査結果から、一日当たりのテレビ視聴時間やゲームをする時間、インターネット利用時間が二時間以上である子どもの割合や、一日当たりの家庭学習時間が三十分以下である子どもの割合がいずれも全国平均を上回っているなど、生活習慣・学習習慣に課題がみられる。
そのため、各学校においては、基本目標4の1に示した
▽電子メディア接触時間を見直すと同時に家庭での学習習慣の定着を図る取組の推進
―など四点に取り組んでいただくようお願いする。
教育局としては、前年度から取り組んでいる「上川スライド30」の普及啓発の充実に努めるなど、生活習慣および学習習慣の定着に向けた取組の推進に努める。
基本目標4の2「地域の教育力の向上」について、特にお願いしたいことは、地域全体で子どもたちの成長を支える学校と地域の連携・協働体制の構築・強化である。
管内においては、コミュニティ・スクールの導入が進んでおり、すでに導入済みの地域においては、組織活動の充実に向けた取組を検討・実施いただいている。
また、地域学校協働本部の体制を整備して学校との連携を強化している市町村もあるなど、すべての市町村がコミュニティ・スクールの導入・活用に向けて、取り組んでいただいている。
そのため、各学校においては、基本目標4の2に示した
▽コミュニティ・スクールの導入および活用促進に向けた研修会の充実
―など二点に取り組んでいただくようお願いする。
教育局としては、各教育委員会と連携を強化し、コミュニティ・スクールの導入や運営にかかわる研修会の実施、地域学校協働活動の充実などに努める。
【基本目標Ⅴ 学びをつなぐ学校づくり】
基本目標5の1「教職員に対する信頼性の向上」について、特にお願いしたいことは、教職員一人ひとりに服務規律の保持徹底や教職員が子どもたちと向き合う時間の確保に向けた業務改善の推進である。
管内においては、飲酒運転根絶などコンプライアンス確立にかかわる職場研修や個人面談の実施、授業改善に向けた管理職による授業参観やメンター研修の実施を推進していただくとともに、一斉定時退勤日や部活動の休養日を設定するなど、勤務時間の縮減に向けて工夫していただいている。
一方、服務規律の保持や学校における勤務時間などに課題がみられる。
そのため、各学校においては、基本目標5の1に示した
▽教員の時間外勤務の縮減による子どもと向き合う時間の確保
―など三点に取り組んでいただくようお願いする。
教育局としては、「学校における働き方改革北海道アクション・プラン」に基づき、教員が業務の質を高めるとともに、日々の生活や教職員人生を豊かにすることで、自らの専門性や人間性を高め、子どもたちに対して効果的な教育活動を行い教育の質を高めるという、働き方改革の理念を共有しながら取組を進めるとともに、教員の資質能力の向上を図るため、教員育成指標に基づく教員研修の充実などに努める。
基本目標5の2「魅力ある学校づくりの推進」について、特にお願いしたいことは、学校がチームとして機能する包括的な学校改善の推進や義務教育九年間を通じて子どもたちに必要な資質・能力を確実に育むための小中連携・一貫教育の推進である。
管内においては、新学習指導要領の趣旨および移行措置に向けた取組や対応、チーム学校としての包括的な学校改善、同一中学校区内の小・中学校が九年間を見通した学習規律を定め、取り組んでいただいている。
一方、小・中学校間においては、教育目標を共有している学校や、学校段階間の接続を意識した教育課程の編成・実施に課題がみられる。
そのため、各学校においては、基本目標5の2に示した
▽社会に開かれた教育課程の実現に向けたグランドデザインなどの作成・普及の推進
―など六点に取り組んでいただくようお願いする。
教育局としては、小中一貫教育推進事業や、小中一貫教育支援事業等の成果の普及などに努める。
【基本目標Ⅵ 学びを活かす地域社会】
基本目標6の1から3については、教育委員会の担当部署と連携して各取組を進める。
各学校においては、ふるさと北海道への理解を深め、愛着をもたせるため、ほっかいどう学ネット検定・ジュニア検定の参加促進や、道民カレッジの周知について協力いただくようお願いする。
【むすび】
以上、本年度の管内教育推進の重点について、六つの柱から皆さんに取り組んでいただきたいことについて申し上げた。
ことし、本道は「北海道」と命名されて百五十年の節目の年を迎えたが、命名の地であるここ上川が、この先、二百年、二百五十年と持続・発展していくために、次代を担う子どもたちが、自分のよさや可能性を認識するとともに、あらゆる他者を価値のある存在として尊重し、多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え、豊かな人生を切り開き、持続可能な社会のつくり手となることができるよう、学校・家庭・地域・行政との緊密な連携のもと、一丸となって教育の充実・発展に取り組んでいくことが重要である。
上川教育局としては、新しい北海道教育推進計画で示された北海道教育の基本理念「自立」と「共生」のもと、市町村教委や学校と手を携えながら、上川らしい取組を積極的に展開し、管内教育の充実・発展に取り組むので、三十年度の管内教育推進の重点の実現に向けて理解と協力をお願いする。
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