30年度日高管内教育推進の重点―日高局が管内公立学校長会議開く 未来の日高を創造する力育成 取組支える体制整備求める (道・道教委 2018-04-25付)
波岸局長は管内教育推進の重点について共通理解を求めた
【浦河発】日高教育局は十八日、浦河町総合文化会館で三十年度管内公立学校長会議を開催した。波岸克泰局長が管内教育推進の重点について説明。「生きる力を育成する取組の確実な推進」「取組を支える体制の整備」の二つを取組の方向性として示し、スローガンについては、前年度からの「夢の実現と未来の創造~夢を実現させる力を育て、未来の日高そして世界を創造する力を育む日高教育の推進」を継承することを提示した。波岸局長は「子どもたちが生きていく地域社会の中で、教員に課せられる責務は何か、教育が果たすべき役割は何かを考え、管内教育推進の重点について共通理解を深めてほしい」と述べ、重点に掲げた取組の実現に向けた学校経営と教育活動への尽力を求めた。
管内教育推進の重点はつぎのとおり。
【はじめに】
校長の皆さんには、前年度、学校経営の改善・充実はもとより、管内教育の振興・発展に寄与していただいたことに感謝申し上げる。
さて、本年は本道が「北海道」と命名されてから百五十年という節目となり、北海道に住む私たちは、先人が積み重ねた歴史を振り返り、託された貴重な財産を受け継ぎ、新しい価値を創造し、この先の未来に引き継ぐとともに、次代を担う子どもたちに大きく変化する社会に主体的に向き合いながら、自らの可能性を発揮し、未来を開く力を身に付けさせることが求められる。
このような中、本道においては知事が定める北海道総合教育大綱において、今後、目指すべき人材像を「その先の道を切り拓く北海道人」とし、各地域で育むことが示された。
また、道教委においては、今後五年間の本道教育の理念や目標、施策の方向性などを示した北海道教育推進計画が三月に策定されるなど、本道教育にとって、未来を見据えた新しい年となる。
これから説明する管内教育推進の重点については、道教育推進計画において示された施策項目に合わせて策定し、管内の課題解決に向けた取組の重点を示すものである。
なお、重点の「豊かな人間性と健やかな体の育成」の項目は、道教育推進計画の「目標2 豊かな人間性の育成」および「目標3 健やかな体の育成」を一つにまとめ、特に取り組むべき項目を加えて示している。
本年度の管内教育推進の重点のスローガンについては、前年度からの「夢の実現と未来の創造~夢を実現させる力を育て、未来の日高そして世界を創造する力を育む日高教育の推進」を継承し、管内教育を着実に推進することとした。
このスローガンについて説明する。
「夢を実現させる力」とは、新しい時代に求められる資質・能力のことであり、これまでの学校教育の理念である生きる力、さらには、新学習指導要領に示された資質・能力の三つの柱である①生きて働く知識・技能の習得②未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力等の育成③学びを人生や社会に生かそうとする学びに向かう力・人間性等の涵養―のことであり、教育課程を通して、子ども一人ひとりに確実に育んでいくことが大切な力である。
「未来の日高そして世界を創造する力」とは、自立した人間として主体的に判断し、多様な人間と協働しながら新たな価値を創造する力のことである。
管内の一人ひとりの子どもがよりよい社会と幸福な人生のつくり手となることができるよう、教育に携わるすべての人が、その使命を自覚し、責任を果たすことが大切であると考える。
このスローガンのもと、これまでの管内教育推進の重点の流れを受け継ぎ、教育委員会の指導のもと、各学校で取り組んでいただきたい重点を示している。
推進の重点は、二つの柱と取組の方向性で構成しており、柱の一つ目は「Ⅰ 生きる力を育成する取組の確実な推進」であり、二つ目は「Ⅱ 取組を支える体制の整備」である。
この柱Ⅰのもとに二つの取組の方向性と、柱Ⅱの下に三つの取組の方向性と位置付けており、これらは、教育推進計画を踏まえたものとしている。
それぞれの取組の方向性のもとに、取組の項目と具体的な取組を示している。
【生きる力を育成する取組の確実な推進】
はじめに、柱Ⅰ「生きる力を育成する取組の確実な推進」である。
柱Ⅰの一つ目の方向性の「1 社会で活きる力の育成」については、新学習指導要領の理念として掲げられた「社会に開かれた教育課程」において、よりよい学校教育を通じてよりよい社会をつくるという目標をもち、教育課程を介してその目標を社会と共有していくことや、これからの社会を創り出していく子どもたちが社会や世界に向き合い、かかわり合い、自らの人生を切り開いていくために求められる資質・能力とは何かを、教育課程において明確化し育んでいくことが求められていることなどを踏まえたものとしている。
本年度、(1)から(4)の四点について、一層重点的に取り組んでいただきたいと考えている。
一つ目は、「(1)社会に開かれた教育課程の実現」についてである。
(1)の一つ目、「各学校において育成を目指す資質・能力の明確化・共有化」について、管内においてはこれまでも取組が進められており、今後は、育成を目指す資質・能力を学校内だけではなく、家庭や地域と共有するとともに、不断に見直していくことが大切であると考える。
また、(1)の二つ目、「資質・能力の育成を目指す教育課程の編成・実施・評価・改善」については、移行措置を踏まえ全面実施に向け、カリキュラム・マネジメントを確立させることが重要となる。
校長を中心として、教科等の縦割りや学年を越えて、学校全体で取り組んでいくことができるよう、学校の組織および運営についても見直しを図る必要があり、管理職のみならず、すべての教職員がその必要性を理解し、日々の授業等についても教育課程全体の中での位置付けを意識しながら取り組む必要があると考えている。
(1)三つ目、「“全国学力・学習状況調査”、“全国体力・運動能力、運動習慣等調査”等客観的な調査の分析による数値目標の設定と検証改善サイクルの確立」については、子どもの状況から、学校の課題を明らかにし学校改善を進めるために、学校全体で取り組んでいくことが大切であり、各学校の取組の一層の充実を図り、組織的な取組を推進していただきたい。
五つ目、「連携、一貫を通した校種間の円滑な接続を図る教育課程の編成」については、小学校と中学校がともに義務教育の一環を形成する学校として、学習指導や生徒指導において互いに協力し、責任を共有して目的を達成するという観点から、系統性・連続性に配慮した教育活動を実施し、その育ちを支えていくことが大切である。
さらに、子どもの育ちを支えるという観点においては、幼児教育をはじめ各学校種の教育内容や指導方法の理解を含め、幼保・小・中学校、高校の連携が必要であり、学校段階間の円滑な接続に配慮した教育課程を編成することの必要性が新学習指導要領総則に明確に位置付けられた。
教育局としては、新ひだか町、浦河町、えりも町の学力向上に関する総合実践事業の取組や小中一環教育校として小中一貫教育の取組を推進している様似町の成果を広く管内に普及したいと考えている。
つぎに、「(2)確かな学力の育成」についてである。
新学習指導要領の趣旨を踏まえ、「資質・能力」の育成を重視している。
各学校に取り組んでいただきたい具体的な内容として、学校が行う「質の高い学びを実現し、資質・能力を身に付けるための授業改善および学習環境の整備」と学校と家庭が連携、協働して行う「家庭との連携による望ましい生活習慣・学習習慣の定着」の二つの視点から重点的な取組を示している。
一つ目の視点である「質の高い学びを実現し、資質・能力を身に付けるための授業改善および学習環境の整備」については、二つ目にあるように、各学校で目指す資質・能力を確実に育むために、すべての教室において主体的・対話的で深い学びを実現させることが大切であり、各学校の学校経営方針や研修内容に確実に位置付け、全校で学習指導の工夫改善を図っていただきたい。
ここで重要なことは、資質・能力は各教科の文脈に応じて、内容事項と関連付けながら育むことである。このことが学習指導要領の大きな質的転換となっていることをしっかりと押さえていただきたい。
教育局としては、局独自の取組として前年度、新ひだか町立静内第三中学校や日高町立日高小学校、中学校で実施した、継続的に大学教授を招き、校内研修において主体的・対話的で深い学びの実現に向けた指導助言を行う「主体的・対話的で深い学びを実現する校内研修イノベーション事業」を継続し、その成果を管内に広く普及することとしている。
また、六つ目、「ICT機器を効果的に活用した“分かる授業づくり”の実現」については、管内において、本年度は富川高校を中心に仮称・次世代の教育情報化推進事業の指定を受け、ICT機器の活用について調査研究を推進することとしており、こうした指定事業の成果を普及させながら、それぞれの校種において、実物投影機やタブレットなどを活用した学習活動の充実を図り、すべての子どもの主体的・対話的で深い学びを実現する授業づくりを進める必要がある。
二つ目の視点である「家庭との連携による望ましい生活習慣・学習習慣の定着」について、子どもの確かな学びを支えるためには、家庭との連携、協働が極めて重要であり、各家庭の個別の状況を把握し、子どもが主体的に学習習慣や生活習慣を確立することができるようきめ細かな関りを大切にした取組をお願いする。
教育局としては、新冠町で実施している保護者や地域住民と連携し学習習慣の定着を目指した体制づくりを推進する子ども未来塾などの取組の成果の普及を図っていく。
つぎに、(3)の「特別支援教育の充実」については、一人ひとりの子どもの障がいの程度に応じたきめ細やかな指導を、早期から一貫して受けることができるよう、関係機関との連携を図った相談・支援体制を確立するとともに、学校全体で校内研修プログラムなどを活用し、特別支援教育に関する教員の専門性や指導力を高める研修の充実に取り組んでいただきたい。
また、新学習指導要領において、各教科の配慮事項として「学習活動を行う場合に生じる困難さに応じた指導内容や指導方法の工夫を計画的、組織的に行うこと」と明確に示されたことを十分踏まえて、授業を行う必要がある。
教育局としては、特別支援教育基本セミナーや特別支援教育充実セミナーを開催するとともに、浦河町における発達障がい支援成果普及事業の成果の普及を図っていく。
つぎに、「(4)未来を拓き、社会の変化に対応する力を育む教育の推進」については、新学習指導要領の内容や、道教育推進計画の項目との整合性を図り、文言を変更している。
一つから三つ目までは、外国語教育、四つ目は、情報教育、五つ目は、キャリア教育の充実を図る内容としている。
特に、一つ目から三つ目の外国語教育については、小学校において移行期間における円滑な授業の実施に向け、すべての教員が外国語を指導することができるよう校内研修などの充実を図るとともに、系統的な指導を実施することができるよう小・中・高校の連携を促進していただきたい。
小学校における英語deトライや中学校におけるイングリッシュトライアルについて、学校における教育課程内で実施したり、各町における社会教育関連事業などと連携を図って取り組んだりしていただくなど、子どもが英語で日常的にコミュニケーションができる力を段階的に育んでいただくようお願いする。
高校においては、浦河高校、静内農業高校において、学科の特性に応じた英語によるコミュニケーション能力の向上を図る高校英語力向上事業を推進しており、指定校の取組を参考に各学校で英語の授業改善に取り組むなど、英語教育の充実を図っていただきたいと考える。
四つ目の情報教育の充実については「北海道における教育の情報化推進指針」を踏まえ、情報活用能力を育むことが大切であると考える。
また、小学校におけるプログラミング教育については、文科省から示された手引きなどを参考に、プログラミング教育のねらいの実現に向けた校内研修等の実施をお願いする。
教育局としては、小学校教委員英語力アップ夏季セミナーの内容の普及や、子どもたちが新しい時代に求められる資質・能力を確実に育むことができるよう、学校教育指導訪問や研修事業の改善を図るとともに、指定事業の成果の普及に努める。
つぎに、取組の方向性の「2 豊かな人間性と健やかな体の育成」についてである。
(1)から(6)の六点について、一層重点的に取り組んでいただきたいと考えているが、特に(1)、(2)、(4)、(5)について申し上げる。
まず、「(1)道徳教育の充実」についてである。
管内の教育の大きな成果として、これまで、第五十一回道道徳教育研究大会日高・浦河大会の開催や教委連が主体となった道徳の時間の授業づくりセミナーの実施などを通し、今求められている道徳教育について理解を深め、管内が一体となって道徳教育に取り組み、「特別の教科 道徳」の実施が円滑に推進されていることがあげられる。
本年度は、小学校において教科用図書を使った指導が実施されること、中学校においては次年度から教科用図書を使った指導が行われることを踏まえ、北海道版道徳教材『きた ものがたり』の活用を位置付けた年間指導計画等の改善や子どもの道徳性に関する成長の様子を見取る評価の在り方について、校内での研修を充実させる必要があると考える。
また、高校でも新学習指導要領において、校長のリーダーシップのもと、道徳教育推進教師を中心に全教職員が協力して道徳教育を展開することが示されたことを踏まえ、小・中学校と連携し道徳教育や道徳科の指導方法等について情報交流を行うなど、道徳教育について理解を深める取組を推進していただきたい。
「(2)ふるさと教育の充実」にかかわって、昨年十月の北海道キャリア教育サミットにおいて、平取町における小中一貫ふるさとキャリア教育推進事業の取組の成果が子どもから発表され、大きく報道に取り上げられた。
北海道総合教育大綱の基本方針「ふるさと北海道への愛を育む」の中で、ふるさと北海道に誇りと愛着をもちながら、主体的に取り組む人材の育成を目指し、ふるさとの歴史や産業への理解を深めるキャリア教育・職業教育に関する教育施策を推進することが掲げられている。
こうしたことを踏まえ、各学校種において、段階的に地域の豊かな自然や歴史、伝統、文化産業等への理解を深めつつ、自らの進路を適切に選択できる資質・能力を確実に育成するとともに、北方領土やアイヌの人たちの歴史や文化等に関する学習の充実を図ることが大切である。
七月の「北海道みんなの日」や、本年度、北海道百五十年事業として小学校第五・六学年児童、中学校第一学年生徒に冊子として配付する北海道版道徳教材『きた ものがたり』を積極的に活用し、ふるさと教育に取り組むようお願いする。
平取町においては、管内公立高校において実施する地域の課題解決の取組、地域の発展に貢献する人材を育成する北海道ふるさと・みらい創生推進事業の成果の普及を図っていく。
つぎに、「(4)生徒指導・教育相談体制の充実」についてである。
生徒指導については、管内では大きな事故は起こっていないが、全国的には、いじめを苦にした自殺や長期間におよぶ不登校、ネットなどを介したわいせつなどの事件によって子どもが被害に遭う事件などが発生するなど、依然として、危機感をもって対応しなければならない状況にある。
家庭、学校、地域、関係機関が互いに連携協力をして、社会全体でいじめをはじめとする生徒指導上の諸課題の解決に向かうことが大切であると考えることから、五点の重点的な取組を示した。
一つ目に「学習指導と関連付けた生徒指導の充実」を位置付けた。
子ども一人ひとりの理解を深め、教師と子どもの信頼関係や子どもの相互の人間関係づくり、自己選択や自己決定を促すなどの生徒指導の機能を学校の教育活動全体の中で生かしていくことが求められるが、新学習指導要領において、「学習指導と関連付けながら、生徒指導の充実を図ること」と示されたことを踏まえ、特に、「主体的・対話的で深い学び」を実践する際に、生徒指導の視点を意識しながら必要な資質・能力を育んでいくことが大切である。
生徒指導の充実に向け、二つ目の「ほっと」、三つ目の「いじめの重大自体の調査に関するガイドライン」、四つ目の「いじめ未然防止モデルプログラムや自殺予防教育プログラム等の活用」を図っていただくとともに、五つ目の「計画的なネットパトロールや情報モラル教育の充実」に、確実に各学校で取り組んでいただきたい。
また、学校だけでは解決できないような事案については、関係機関が連携したケース会議を開催するなど、専門的な指導助言が受けられるよう体制づくりを構築していただきたい。
つぎに、「(5)学校における体力づくりの促進」についてである。
全国体力・運動能力、運動習慣等調査の結果においては、北海道の子どもの体力が全国平均と比べ大きく下回っていることが明らかになっており、管内においても、小学校女子については、全道を上回るなど成果を上げているものの、改善が進まない状況にある。
各学校においては、全校体制で継続的な体力向上に向けた取組を推進するとともに、体育・保健体育科の授業改善を一層推進することが重要であると考える。
体力向上に向け、特に、新体力テスト等から実態を把握し、分析した結果から数値目標を設定して改善方策を実施し、検証を行うという検証改善サイクルが重要であり、すべての学校で体力の向上や運動習慣の定着が確実に図られるよう、重点的な取組を二点示した。
新体力テストの全学年・全種目の実施による実態把握に基づき、ねらいを明確にした一校一実践などの取組を通して子ども自身が、自分の体力や運動能力について把握し、向上させようとする意欲をもって目標を設定し、取り組んでいくことができるよう指導の一層の充実を期待する。
以上が、柱Ⅰについてであるが、教育局としては、学校が抱える様々な課題を解決し、学校経営の一層の充実を図るため、本年度も前年度と同様に学校教育指導訪問を定期的に実施することとしている。
小・中学校においては、各学校の実態に応じた目的別訪問を実施しており、本年度は、小学校外国語教育の充実や主体的・対話的で深い学びの実現などの内容を位置付けていることから、義務教育指導監の学校経営指導訪問や各種研修会などとの関連を図った取組となるよう各学校で計画していただきたいと考えている。
また、高校においては、一次訪問の名称を学校運営指導訪問として年二回、二次訪問の名称を教科指導訪問として年一回、学校経営の課題を継続的に把握しPDCAサイクルに基づく学校教育指導訪問を実施する。
本年度、道教委では、石狩、上川、十勝の三教育局に高校経営指導にかかわる主幹を配置し、道立高校の学校経営を支援する仕組みづくりを推進し、各道立学校を支援していく。
【取組を支える体制の整備】
続いて、柱Ⅱ「取組を支える体制の整備」についてである。
取組の方向性の一点目「学びを支える家庭・地域との連携・協働」について、三点に一層重点的に取り組んでいただきたいと考えているが、特に「(3)学校と地域の連携・協働の推進」について、申し上げる。
現在、学校が抱える課題が複雑化・困難化する中、学校と地域が目標やビジョンを共有し、一体となって子どもを育んでいくため。連携・協働した組織的・継続的な取組が求められている。
「社会に開かれた教育課程」の理念のもと、各学校において、学校の教育目標や教育活動等について、保護者や地域にホームページなどを活用し積極的な公表を行い、その目指すところを社会と共有しながら、ともに子どもの育ちを支えていけるよう取り組み、「地域とともにある学校づくり」を推進することが大切である。
「地方教育行政の組織的及び運営に関する法律」が一部改正され、二十九年四月から、教育委員会に対する学校運営協議会設置が努力義務となったことなどを踏まえ、三十年一月現在で、道内では五十四市町村においてコミュニティ・スクールが導入されている。
管内においても、日高町、平取町、様似町において、本年度から導入されることになっている。
各町教委を中心に、二十九年三月に改正された社会教育法に規定された地域学校協働活動推進員を位置付けるなど、学校と地域をつなぐコーディネーター機能を強化し、地域の教育力を生かし、地域とともにある学校づくりを推進していただきたい。
取組の方向性の二点目「学びをつなぐ学校づくり」について、(1)から(5)の五点について、一層重点的に取り組んでいただきたいと考えているが、特に(2)、(3)、(5)について申し上げる。
まず、「(2)管理職のリーダーシップによる学校運営の改善」についてであるが、学校経営者として、教育課題の本質を咀嚼し、自身の思いや理念を自らの言葉で語るなど、リーダーシップを発揮するとともに、学校経営のマネジメントサイクルを機能させることが一層求められている。
前年度は、将来のスクールリーダーを育成するための研修として教務担当者等ミドルリーダー研修会などの研修を開催してきたところである。こうした取組を踏まえ、四点の重点的な取組を示した。
特に、一つ目には、学校組織をより活性化させるため、教務主任等の役割の明確化を位置付けている。
管内における学力向上や授業改善等の課題への取組を進めるためには、組織的な学校運営を促進することが最も重要と考えている。
管内では、主幹教諭や教務主任、分掌や学年部会の部長などが、それぞれの役割を明確にし、管理職のリーダーシップのもと、組織として学校を機能させるよう一層の取組を進めていただきたい。
また、四つ目、教職員がゆとりをもって子どもと向き合える時間を確保することや教職員自身の健康管理を一層充実させるため、学校における働き方改革「北海道アクション・プラン」を踏まえ、それぞれが自らの意欲と能力を最大限に発揮できる勤務環境の整備に向けた取組を進めていただきたい。
つぎに、「(3)教職員の資質・能力の向上」については、教職員一人ひとりが変化の激しい社会の中で、新しい時代の教育に対応できるよう、北海道における教員育成指標等を踏まえ、キャリアステージに応じた研修に参加するよう、計画的に働きかけていただきたい。
つぎに、「(5)教職員の勤務と服務規律の徹底」についてである。
機会あるごとにお話しているが、全国的に教育公務員の不祥事が一向に減少しない傾向にあり、学校教育の信頼を失墜していることは、誠に憂慮すべきことである。
このような中、前年度、管内においては、交通違反など、地域や保護者から学校の信頼を損ねる事案が発生した。
教育局としは、管内コンプライアンス確立会議を開催し、あらためて、学校における不祥事防止の取組について確認することとしているが、教育公務員としての法令順守の徹底について、定期的・継続的・徹底的に取り組んでいただきたいと考える。
こうしたことから、服務監督者である各町教委においては、校長会議や教頭会議の際に服務規律の順守について継続的に働きかけていただきたい。
さらに、所属長である校長においては、継続的に職場研修や個人面談を実施し、教職員一人ひとりが法令順守の強い意志をもつよう、法令や規則に基づいた職務の遂行について、今まで以上にきめ細かに監督するとともに、日常の教職員の言動に関心を払い、気になる点があれば、早めに相談に乗ったり、ときには厳しく注意したりするなど、温かな中にも、秩序ある職場づくりを推進していただきたい。
【学びを活かす地域社会】
最後に、三点目の取組の方向性「学びを活かす地域社会」についてである。
今日、学校教育が抱える課題の解決や地域全体で子どもの成長を支え、地域を創生する人材育成の観点から、社会教育との連携が不可欠であることを踏まえ、「(1)社会教育の振興」を位置付けている。
学校・家庭・地域・行政が連携した教育環境の形成に向け。三点に重点的に取り組んでいただきたいと考えている。
一つ目については、取組の方向性の一点目「学びを支える家庭・地域との連携・協働」とかかわる内容であるが、学校・家庭・地域・行政、それぞれの役割を明確にしながら、子どもの成長を支え、地域を創生する地域学校協働活動とコミュニティ・スクールが一体的に推進する体制づくりに取り組んでいただきたいと考えている。
そのためには、学校の教育活動を支援する教育委員会の役割が重要と考えている。
学校においては、教育委員会との連携を積極的に図っていただきたい。
三つ目について、管内の人材や施設、自然、文化、コミュニティなどの地域資源のよさや各町に社会教育団体を活用した特色ある教育活動を展開していくことが、地域を支え地域を創生する人材を育むことにつながると考えている。
本年度は、様似町において十月に第九回日本ジオパーク全国大会が開催されることから、地域資源を活用した地域創生の在り方について、その成果が広く普及されるものと考えている。
以上、本年度の管内教育の推進に当たり、基本的な考え方や重点として取り組んでいただきたいことを申し上げた。
【終わりに】
現在、これまでにない大きな教育改革が進められる中、北海道教育にとっては新たな幕開けの一年となる。
教育局としては、これまでの取組の一層の充実を図り、各町教委および学校の支援に努めていく考えであるので、皆さんにおいては、推進の重点に掲げられた取組をそれぞれの学校の教育実践に取り込み、「日高の子どもたちが夢を実現させる力と未来を創造する力を育む学校教育の創造」に全力を尽くしていただくことを期待する。
皆さんの活躍を期待申し上げるとともに、教育局の教育行政の執行に引き続き協力をお願いする。
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