【特別連載】No.2 かかわりが難しい児童生徒への対応 感情受け止め共感的に 怒りをあらあわにする子への対応
(かかわりが難しい児童生徒への対応 2019-02-22付)

 発達障がいや発達障がいの傾向が強い児童生徒は生まれつきもった特徴のため、他の子がイライラしないところでも、いらだちをつのらせ爆発させてしまいます。怒りをあらわにする児童生徒は、そうしたくてしているのではありません。わがままであるとか、自分勝手とみられる行動であっても、必ず理由があります。

 その理由は他の子に比べると、理解しがたい内容であることが多くみられますが、こだわりの強さや、社会性が身に付きづらい特徴ゆえの課題であると理解しなければなりません。

 怒りの爆発や、イライラは周りに助けを求めるサインと理解することが対応の基本です。しかし、現実には、頭ごなしに叱られたり、一方的に説諭されたり、誰にも悩みを聞いてもらえず、苦しい思いをしています。子どもは身勝手で矛盾していることを言うかも知れませんが、よく話を聞くことです。話を聞いていくうちにその子がどう考えて、どうしてほしいか理解することができます。

▼「どうしてそうなんだ!」から「何が嫌だったの?」へチェンジ

 子どもがイライラし、感情を爆発したときは「何をやっているんだ!」「どうしてそうなんだ!」と怒鳴り強い口調で制止することを多く見かけますが、まずは、「先生が話を聞くから、一緒に別室に行こう」とその場から移動させるようにします。その場での指導は、他の子が見ている手前、余計に興奮しやすく感情をあらわにすることがあります。また、他へ移動させることは、他の子へ殴る蹴るなどの危害を加えることがないようにする意味もあります。

 移動先は、できるだけ教室から遠い個室で対応するようにしますが、職員室に連れていくことは厳禁です。子どもには先に「○○室に行こうか」と告げ、子どもの了解を得てください。

 その後、怒りが収まらない場合は、再びその場に駆け戻りますが、トラブルになることもありますので、教師の視界に入る半歩先を歩かせるようにします。さらに移動に際して腕を強引につかんだりしてはいけません。腕や手に圧力をかけて触られると、無理矢理連れて行かれるなどの悪感情が芽生え、以降の対応が困難となります。そっと肩に触れたり、小学生であればやさしく手をつないだりします。興奮が冷めやらない場合は、身体接触は避けた方がよいでしょう。

 別室に入室後は、「何が嫌だったの」と優しく聞いてみてください。興奮が冷めぬうちは無言で、泣き出すこともしばしばあります。教師はその間、無理に話をさせようとしないことです。

 また、無言であるからといって、説諭し叱りつけてはなりません。微笑みながら見守り「先生待っているからね、話ができるようになったら教えてね」と述べ、落ち着くまで見守ってください。ここで必要なのは、「先生は話を聞くよ、君の味方だよ」というメッセージが言語や非言語で伝わることです。

 先に示しました「どうしてそうなんだ!」から「何が嫌だったの?」のチェンジの意味はお分かりになると思いますが、「何が嫌だったの?」は子どもの側に立った問いであり、信頼関係を築くきっかけの言葉となります。

 子どもがイライラし感情を爆発させた理由を話し始めたら、事実関係を問うよりも、子どもの気持ちにスイッチし「そうか、そんな気持ちだったんだ」「それは辛かったね」と共感的に話を聞くようにし、感情を受け止めるようにします。子どもは、先生が自分のことを分かろうとしてくれていると感じ取ることができると、自然に自分の反省や事実を述べるようになります。

(北海道医療大学非常勤講師・石垣則昭)

(かかわりが難しい児童生徒への対応 2019-02-22付)

その他の記事( かかわりが難しい児童生徒への対応)

【特別連載】No.7 かかわりが難しい児童生徒への対応 自己肯定感を高める 認め自信もたせる言葉を

かかわりが難しい児童生徒図  発達障がいやその傾向が見られる児童生徒は生活の中で叱られることが多く、自信をなくし自己肯定感が低くなり、暴力などで自分のつらさを周りの人に訴えようとします。自己肯定感を高め、自信をもたせる...

(2019-05-09)  全て読む

【特別連載】No.6 かかわりが難しい児童生徒への対応 感情をモニタリング 保護者の悩みに寄り添う  

 今回は、発達障がいやその傾向がみられる児童生徒と教師のかかわりについて説明します。  児童や生徒の対応でイライラすると、ネガティブな感情がループ化(感情のループの説明は第3回に記載)しま...

(2019-04-24)  全て読む

【特別連載】No.5 かかわりが難しい児童生徒への対応 子どもの側に立つ姿勢を 相手が満足する話の聴き方

 前回はまず子どもの話を聴くことが大切であると説明しましたが、今回はどう聴くことが、子どもが満足するのかを説明します。子どもが満足する聴き方とは、「僕のことを分かってくれた」さらに「先生は僕...

(2019-04-16)  全て読む

【特別連載】No.4 かかわりが難しい児童生徒への対応 まずは話を聴くこと 一方的叱責は問題傾向高める

 発達障がいやその傾向がみられる児童生徒を一方的に叱責することは、問題傾向をより高めてしまいます。  発達障がいやその傾向がみられる児童生徒の特性は、こだわりが強くコミュニケーションを図る...

(2019-03-26)  全て読む

【特別連載】No.3 かかわりが難しい児童生徒への対応 環境により改善が可能 余裕ある対応を

 誰でもそうでしょうが、何かにつけ叱られ続けるとどのような感情がもたげてくるでしょうか。「僕は駄目な人間だ」と同時に「なぜ僕だけ叱られるのだろう」と怒りが込み上げ、自暴自棄に陥りやすくなりま...

(2019-03-14)  全て読む

【特別連載】No.1 かかわりが難しい児童生徒への対応 大人が余裕もって子と接し 行動特性等検討し適切な対応を

シリーズ全般の参考文献・資料  日々の指導が容易ではない、かかわりが難しい児童生徒の存在は教育活動を進める上での課題となっています。それは過去、生徒指導上困難を極め対応に苦慮した非行問題ではなく、こだわりが強く、協調性に...

(2019-02-06)  全て読む