【特別連載】No.4 かかわりが難しい児童生徒への対応 まずは話を聴くこと 一方的叱責は問題傾向高める(かかわりが難しい児童生徒への対応 2019-03-26付)
発達障がいやその傾向がみられる児童生徒を一方的に叱責することは、問題傾向をより高めてしまいます。
発達障がいやその傾向がみられる児童生徒の特性は、こだわりが強くコミュニケーションを図ることが苦手なため、周りの子どもたちと協力関係を築きながら学校生活を送ることに問題が生じやすくなります。周りの大人が特性を理解し対応してくれるのであれば困難さが軽減します。
しかし、理解されていない環境では、本人なりに人との関係を克服しようと努めても、周囲の理解を得ることはできずストレスを溜め込んでしまいます。それがイライラの原因となり対人関係での心配な行動につながります。
イライラしやすく、暴言、暴力の背景には、前回で述べたように明らかに特性への無理解と、家庭や学校での人間関係の不調にあります。発達障がいやその傾向がみられる子に対して、周りの子どもたちはわがままで自分勝手だ(残念ながら、教師の中にも同様に考える方がいます)と感じ、イライラや不信感を募らせてしまいます。
学級では他の子どもたちと同様に「授業中は前を見て」「授業中は友達に話しかけない」などと教師は指導しますが、発達障がいやその傾向がみられる子どもの中には、教師の発するネガティブな感情は受け取っても、指導の意味を受け取ることができない子がいます。なかなか問題が改善されないため周りの子どもたちも、その子に対して教師同様に注意、指摘をするようになります。その結果、嫌われようとしてそうしているのではないにもかかわらず、学級の仲間から特別扱いされ避けられたりいじめの対象になったりします。
子どもは自分なりに努力しても「何をしている!」「身勝手だ!」と指摘、注意されることに強い憤りを感じ、ついつい自分を守るために怒りをぶつけるしかなくなります。このように発達障がいやその傾向がみられるかかわりの難しい子どもは、日常生活を送る上で生活上の困難に直面し、失敗を繰り返し叱られ続けることで、イライラを募らせ攻撃的な行動を取り続け、ますます社会に適応しづらくなります。
特に教師は子どもの話を聴く前に「何をやっている」「何回言ったら分かる」「またお前か」「いい加減にしなさい」などと発言し、イライラを増幅させ失望感と同時に子どもの怒りを誘うことがあります。これでは、子どもとの信頼関係を築けるわけはありません。
回復には個人差がありますが、すぐさま行動の仕方を正そうと叱り、注意するのではなく、まずは話を聴くことです。例え教師の一方的な指導を静かに聞いていたとしても、心の内は晴れずにいます。身勝手な言い分であっても否定せず言い分を聞くことです。こだわりが強く対人関係やコミュニケーションが苦手な子どもにしてみると、教師や仲間の正論は理解できないことが多くあります。重要なのは何があったのか事実を知るよりも、子どもの気持ちを理解するように努めることです。かかわりが難しい児童生徒への対応(1)で説明しましたように、子どもの話の聴き方は責めるような追及するような聴き方では、子どもが満足する聴き方にはなりません。むしろ反発を招いてしまいます。どのように話を聴くことが望ましいのかは次号で説明します。
(北海道医療大学非常勤講師・石垣則昭)
(かかわりが難しい児童生徒への対応 2019-03-26付)
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