【特別連載】No.1 かかわりが難しい児童生徒への対応 大人が余裕もって子と接し 行動特性等検討し適切な対応を
(かかわりが難しい児童生徒への対応 2019-02-06付)

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 日々の指導が容易ではない、かかわりが難しい児童生徒の存在は教育活動を進める上での課題となっています。それは過去、生徒指導上困難を極め対応に苦慮した非行問題ではなく、こだわりが強く、協調性に欠ける児童生徒の存在を意味しています。

 しかし問題なのは、このような児童生徒に対して、発達障がいであると根拠のないレッテルを貼ることにあります。発達障がいかどうかは、医師が多様な検査の結果、特徴的な症状として認定するものであり、医師ではない立場の者が決めつけ発言するべきものでありません。管理職を含めこのような安易とも言える発言は、保護者とのあつれきを生んでいます。

 自分の指導力が及ばない子どもの様子を見て、発達障がいと決めつけてしまうことは、その児童生徒へ適切なかかわりをもつことができないことを意味しています。そのような児童生徒に対して学校によっては、適切な対応が取られておらず、叱る、注意するなどの対応に終始し、問題をエスカレートさせている事例が見られます。

 また、手に負えなくなると「病院にいってみてもらったほうがいい」と保護者へ進言し、対立や不信をかっています。学校は発達障がいかどうかの前に、その児童生徒の行動特性とかかわり方を検討し適切な対応を図るようにすることが何より必要です。

 発達障がいとされている子やかかわりが難しい児童生徒に共通しているのは、自分が理解されていないと感じたならば怒りで対処しようとすることです。しかし、これはこのような児童生徒に限ったことではありません。誰しも自分が理解されることなく理不尽な扱いを受けたならば、怒りが込み上げてくるはずです。しかし、大概は後先を考えその場をしのぐことができます。基本的に発達障がいの子やかかわりが難しい児童生徒は怒りのコントロールが苦手なのです。

 発達障がいやかかわりが難しい児童生徒の状況は、改善しない症状ではありません。その症状は児童生徒のもつ固有の特性と、周囲の環境によって大きく変化をする関係依存的障がいであり、周りの大人が、余裕をもって子どもと接し、無理なく、発達を邪魔しない教育が行われるならば子どもは順調に成長します。

 また、生活上、かかわりの難しさをもっているという意味では、「生活障害」ととらえることができます。親や教師が生活のつまずきを小さくするため、その子のもつ特性を理解し環境を整えることが子どもの安定につながります。

 このシリーズでは、教育現場の困り感を「子どもの側に立って対応するべき」とか「子どもの観察を大切にして」など形式的、抽象的ではなく、上記の例で言うならば具体的な場面を設定し、子どもの側に立つとはどういうことか、どうすることが子どもの側に立って対応することになるのか、子どものどの場面を観察し、観察から何を理解するべきなのかなど、実際の状況に対応できる内容といたします。

(北海道医療大学非常勤講師・石垣則昭)

(かかわりが難しい児童生徒への対応 2019-02-06付)

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