【特別連載】No.5 かかわりが難しい児童生徒への対応 子どもの側に立つ姿勢を 相手が満足する話の聴き方
(かかわりが難しい児童生徒への対応 2019-04-16付)

 前回はまず子どもの話を聴くことが大切であると説明しましたが、今回はどう聴くことが、子どもが満足するのかを説明します。子どもが満足する聴き方とは、「僕のことを分かってくれた」さらに「先生は僕を叱ったりせず嫌わないで、大切に思ってくれている。だから先生の言うことを聴くよう頑張ろう」と子どもの側に立って聴くことです。

 聴き方には言語と非言語がありますが、特に非言語が大切です。どのような態度や顔つきで子どもの話を聴くかが大切です。

 時間ばかり気にしながらソワソワ聴いたり、睨みつけたり、憮然とした態度で聴いていたのでは、いくら言葉を選んで話をしても子どもには当然いい印象にはなりません。少し前屈みの姿勢を取り柔らかな表情で子どもと同じ目線になり、うなずきながら聴くようにします。

 また、子ども1人に教師2人や3人ではなく、1対1で聴き威圧感を与えないようにします。聴き方は「どうしてそんなことをしたの」「相手にどんな迷惑をかけたか分かるのか」などと詰問調で聞くようなことはせず、「何が嫌だったの」「我慢できなかったことは何か」などの問いで始まり、口を挟まず子どもの苦しみに理解を示すように聴きます。

 気持ちが沈みあまり話が進まない場合は、無理に話をさせるのではなく「嫌だったんだね」「我慢できなかったんだね」などとイエス、ノーで答えることができるよう質問し、慣れてから言葉で答えられる質問をします。

 また、質問の内容は「どんな、気持ちだったの」「どう感じたの」と考え方や感じ方を中心に聴くようにします。

 特に、独特の考え方や感じ方がみられる場合は、無理のない程度に「そう感じた訳を教えて」「そう考えたんだね、それはどうしてかな」と聴いてみてください。

 発達障がいやその傾向がみられるかかわりの難しい児童生徒の中には、明らかに自分に問題があっても相手が悪いと言い張る子どももいます。この場合も頭ごなしに否定したり、反省を促すため誘導的に話を進めたり、どうすればよいか結論を押しつけたりしてはなりません。話を進めていくうちに、「先生は信頼できる」と感じると顔つきが柔和になり、質問をしなくても聴きたいことを自ら話をしてくれるようになります。

 また、聴くことにより、その子の独特の感じ方が理解できるようになります。

 最後に、「自分がやったことは、どうしたらいいと思う」「迷惑をかけた相手にはどうしたらよいと思う」と聴いてみてください。さらに「どう謝るのがいいか、先生と一緒に考えてみようね」とも聴いてください(謝る相手の児童生徒には前もって状況を納得してもらい、協力してもらうようにします)。

 次に、「今度このようなことがあった場合、どうしたらいいか教えて」と聴くようにします。話を聴いていくと、同世代の子が当然理解しているだろうと思われることが理解できていないことが分かります。この場合は「こうするといいんだよ」と教えることが必要です。

 また、どのようなことが人の迷惑になるのか、具体的にリストを作成し説明する方法もあります。対人関係のトラブルであれば、「ちゃんと…」「相手の立場を考えて」などの表現は理解しづらく、具体的にどうすればよいか説明するようにします。

 話の聴き方を説明しましたが、子どもの成長にとって必要な大人とは正直に話ができる相手です。子どもが満足するような聴き方ができると子どもは安心し、生活の安定につながります。

(北海道医療大学非常勤講師・石垣則昭)

(かかわりが難しい児童生徒への対応 2019-04-16付)

その他の記事( かかわりが難しい児童生徒への対応)

【特別連載】 かかわりが難しい児童生徒への対応 №10 子どもの訴え理解し対応 問題行動の見立ては目的論で

 子どもの問題行動は誤った自己表現であり、何を訴えたいのかを理解しなければ適切な対応を図ることはできません。  問題行動を理解するためには何が問題なのか、それによって誰が困るのか、さらに、...

(2019-06-27)  全て読む

【特別連載】NO.9かかわりが難しい児童生徒への対応 肯定的なかかわり必要 子の特性の見立てと対応例

特別連載No.9  シリーズで前述したように、医者から発達障がいと診断を受けた子やその傾向がみられる児童生徒は、年齢にかかわらず人との関係で生きづらさをかかえていると説明しました。その生きづらさを軽減すること...

(2019-06-19)  全て読む

【特別連載】NO.8かかわりが難しい児童生徒への対応 短い間隔で繰り返し定着 子どもに届く言葉がけ

 言葉がけをして、そのときはできても定着されず、同じような失敗を繰り返してしまうことがあります。確かに何度も何度も繰り返して説明することが大切であると理解をしていても、教師のイライラにつなが...

(2019-05-30)  全て読む

【特別連載】No.7 かかわりが難しい児童生徒への対応 自己肯定感を高める 認め自信もたせる言葉を

かかわりが難しい児童生徒図  発達障がいやその傾向が見られる児童生徒は生活の中で叱られることが多く、自信をなくし自己肯定感が低くなり、暴力などで自分のつらさを周りの人に訴えようとします。自己肯定感を高め、自信をもたせる...

(2019-05-09)  全て読む

【特別連載】No.6 かかわりが難しい児童生徒への対応 感情をモニタリング 保護者の悩みに寄り添う  

 今回は、発達障がいやその傾向がみられる児童生徒と教師のかかわりについて説明します。  児童や生徒の対応でイライラすると、ネガティブな感情がループ化(感情のループの説明は第3回に記載)しま...

(2019-04-24)  全て読む

【特別連載】No.4 かかわりが難しい児童生徒への対応 まずは話を聴くこと 一方的叱責は問題傾向高める

 発達障がいやその傾向がみられる児童生徒を一方的に叱責することは、問題傾向をより高めてしまいます。  発達障がいやその傾向がみられる児童生徒の特性は、こだわりが強くコミュニケーションを図る...

(2019-03-26)  全て読む

【特別連載】No.3 かかわりが難しい児童生徒への対応 環境により改善が可能 余裕ある対応を

 誰でもそうでしょうが、何かにつけ叱られ続けるとどのような感情がもたげてくるでしょうか。「僕は駄目な人間だ」と同時に「なぜ僕だけ叱られるのだろう」と怒りが込み上げ、自暴自棄に陥りやすくなりま...

(2019-03-14)  全て読む

【特別連載】No.2 かかわりが難しい児童生徒への対応 感情受け止め共感的に 怒りをあらあわにする子への対応

 発達障がいや発達障がいの傾向が強い児童生徒は生まれつきもった特徴のため、他の子がイライラしないところでも、いらだちをつのらせ爆発させてしまいます。怒りをあらわにする児童生徒は、そうしたくて...

(2019-02-22)  全て読む

【特別連載】No.1 かかわりが難しい児童生徒への対応 大人が余裕もって子と接し 行動特性等検討し適切な対応を

シリーズ全般の参考文献・資料  日々の指導が容易ではない、かかわりが難しい児童生徒の存在は教育活動を進める上での課題となっています。それは過去、生徒指導上困難を極め対応に苦慮した非行問題ではなく、こだわりが強く、協調性に...

(2019-02-06)  全て読む