【特別連載】 かかわりが難しい児童生徒への対応 №10 子どもの訴え理解し対応 問題行動の見立ては目的論で(かかわりが難しい児童生徒への対応 2019-06-27付)
子どもの問題行動は誤った自己表現であり、何を訴えたいのかを理解しなければ適切な対応を図ることはできません。
問題行動を理解するためには何が問題なのか、それによって誰が困るのか、さらに、その問題はその子のもつ特性なのか、子どもの立場になって冷静に考えることです。
特にありがちな子どもの問題行動を、なぜそのような行為をしたのかと原因追及をするのではなく、現状の問題を理解し、どのように対応すべきか明らかにすることが必要です。
発達障がいやその傾向が強い児童生徒はある状況である行動をし、要求を通すことで、かかわりの難しい状況をつくり出しています。
その行動を4つの視点でとらえると、①物事を手に入れようとする要求②あることをやりたくない、中断し逃げたいという拒否、逃避③教師や親、仲間から注意を引き注目をされたいと言う注目④自分への刺激を得ることを目的とした感覚刺激―に分類されます。また、その対応として、A代替の提示、B問題行動のスルー、C選択肢を示す、Dタイムアウト、E事前警告などがあります。
対応例を説明します。
教師がある児童に、つぎは図工の時間なので、絵の具を用意するよう指示をしますが、「やりたくない」と泣いて言い張ります。教師は仕方なく「それじゃ、ほかのことをしなさい」と言うと、児童は自分が好きな折り紙を始めました。
これによって「やりたくない」と教師に泣いて言い張れば、自分の意見が通ることを学ぶことになり、何かにつけ自分がやりたくないことがあると、泣いて言い張れば通る①要求②拒否、逃避を学んだことになります。
上記の対応例として「○○君はこの絵の中でどれが好きなの?」と聞き、複数の好きな絵を引き出します。
つぎに、「○○君は絵を描くとすると、どんな絵を描きたいのか教えて」と問い、描く絵を自分で選択をさせ絵を描かせるようにします。この方法は、子どもにC選択肢を考えさせ自ら選ばせる方法であり、自分の意見が認められたという満足感をもたらし、絵を描きたくないという思いを改善することができます
つぎに、教室のいすや本棚を意味なく蹴る児童がいました。何度注意しても止めようとしません。
そこで、ビニールのサッカーボールを与え、他の子と一緒にボールを蹴るようにさせました。定着のために「○○君、サッカー上手ね」と繰り返し褒めるようにしたところ、いすや本棚を蹴ることがなくなりました。これは、A代替えを子どもに提示し適切な行動に導く対応法です(問題行動の分類は④の感覚刺激です)。
授業中、近くの子に話しかけ無視されると怒り出す児童がいました。教師が何度注意しても話しかける行為は止めません。教師が注意すれば注意するほど、エスカレートしてしまいます。
周りの子には従来どおり話しかけられても応じないように依頼し、前を見て授業を受けているときに教師は「前を見て先生の話を聞いてくれるね、ありがとう」と繰り返し、B問題行動はスルーし友達に話しかけたくなったら、小さく手を挙げて教室の後ろで深呼吸や屈伸をして落ち着いたら席に戻るよう説明しました(A代替え行動の提示)。その結果、次第に授業中の話しかけも減少しました(問題行動の分類は③の注目です)。
ある児童は体育の時間に、他の子にちょっかいをかけトラブルになることがよくあります。このような場合は前もって「体育の時間、友達にいたずらをしたら、別な部屋に行って10分間静かにしてもらい、深呼吸と体操をして気持ちが戻ったら来て下さい」と説明します。このねらいは反省させるよりも、クールダウンさせることです(問題行動の分類は③の注目です。対応はDのタイムアウトです)。
また、人に迷惑をかける行為に事前に、「○○したら、好きな○○は中止します」と言い、ペナルテイを与える対応です(対応はEの事前警告です)。この場合、怒り顔で言うのではなく、子どもの心を満たすよう和やかに説明すると効果的です。
(北海道医療大学非常勤講師・石垣則昭)
(かかわりが難しい児童生徒への対応 2019-06-27付)
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