【特別連載】かかわりが難しい児童生徒への対応№13 問題掘り下げて考え 現象面だけに目を向けず(かかわりが難しい児童生徒への対応 2019-08-09付)
◆アセスメントの重要性
ある研修会で「何度注意、指導しても週3回は遅刻をしてくる生徒がいる。こういう生徒はどう対応したらよいのか」と相談がありました。
私は「何回も注意、指導を繰り返すと、君は駄目な生徒だというメッセージとなり改善できない自分に失望し、指導する教師に対しても反感をもつようになります」と話し、「まず、この生徒と時間を取って向き合い、遅刻をしないためにどうするか一緒に考えてください」と説明しました。部活動の疲労状態、帰路の交通機関の乗車時間、夕食時間、学習時間、スマホの操作時間、ゲームをしているならば開始時刻と終了時刻、就寝・起床時刻など詳しく話を聞いてみて下さいと重ねて説明しました。
後日担任からメールが来ました。内容は、「ゲームを10時過ぎにスタートし、終了はほぼ毎日午前1時を過ぎる。しかし、布団に入っても寝付くことができず朝起きることができない」とのことでした。その後、計画的に生活をすることが苦手な生徒でしたが、担任の適切で具体的なアドバイスで遅刻することは皆無となりました。かかわりの難しい生徒は自分の行為を顧みることが苦手であり、解決策をもたないまま過ごし、生活の困難さを増すことが多くあります。
この事例のように、遅刻などの現象面だけに目を向けるのではなく、どこに問題が隠れているのか生徒とともに掘り下げて考えることが大切です。学校生活に困り感をもっている生徒が、これからどうしたいと思っているのかなど様々な情報をもとに総合的、多面的に判断し、見立てることをアセスメントと言いますが、高校生は自覚が十分ではない少年期とは違う、自意識が高まる高校生だから自分で考えさせるなど大人扱いをせず、困難な状況の詳細を聞きアセスメントし改善に向け、アドバイスすることが必要です。
◆スモールステップで対応
かかわりが難しい生徒の中には、何度指導しても宿題や課題をやってこない、忘れ物が多い生徒がいます。そのような生徒にいきなり○月○日まで完成し学校に提出するようにと言っても、期限を忘れていないのにもかかわらず何をどうすると宿題や課題を提出することができるのか分からないため、結果的に期限に間に合わなくなってしまうことがあります。
教師は、「やる気がない」「いつも忘れるルーズな生徒」と決めつけるのではなく、スモールステップを活用することがよいと思います。宿題の提出日が○月○日であれば前日の仕上げを目標に、帰宅後どの時間帯にどこまでやるかを記載した計画表の作成に教師も協力し、机の前に掲示させるようにするとスムーズに提出できるようになります。
特に教師に必要なのは作成の指示だけして生徒任せにするのではなく、おっくうがらないで一緒に学習計画表をつくり上げるようにすることです。この方法がうまくいくと、やがて自分で計画を立て宿題や課題を忘れないようになります。また、忘れ物はメモ帳を作成し、帰宅後決めた時間に目を通すようにさせます。さらに机の前にカレンダーを貼り、○月○日提出と記載するなど可視化(言葉だけの説明では十分な理解ができない生徒もいます)することも有効です。
(北海道医療大学非常勤講師・石垣則昭)
(かかわりが難しい児童生徒への対応 2019-08-09付)
その他の記事( かかわりが難しい児童生徒への対応)
【特別連載】かかわりが難しい児童生徒への対応№16 生徒と同様 丁寧に 心情理解し保護者へ対応
保護者は高校生とは言え、わが子の日常生活にみる困り感や将来の展望に大きな不安を抱えながら生活をしています。この不安感は、高校に入学してからのことではなく、幼保、小・中学校のころから続いてい...(2019-09-26) 全て読む
【特別連載】かかわりが難しい児童生徒への対応№15 具体的説明で理解促す 距離を縮め丁寧な対応を
◆かかわりが難しい生徒はグループ活動が苦手? 「主体的・対話的で深い学び」を推進するため、高校では学習指導要領が改訂され、各高校でも生徒同士がグループで学習する機会が多くなります。しかし...(2019-09-13) 全て読む
【特別連載】かかわりが難しい児童生徒への対応№14 状況把握と必要な対応を 問題行動には4つの目的
かかわりの難しい児童生徒への対応の(10)で説明しましたが、問題行動には一般に4つの目的(要求、拒否・逃避、注目、感覚刺激)があるととらえます。 事例により分類と対応を説明します。高校...(2019-08-22) 全て読む
【特別連載】かかわりが難しい児童生徒への対応№12 生徒への理解と支援を 高校生を中心とした対応
「かかわりが難しい児童生徒への対応」シリーズの中で、高校における対応の依頼がありました。そこで、高校生を中心に「かかわりが難しい生徒への対応」について、掲載します。 一般に高校生になる...(2019-07-24) 全て読む
【特別連載】№11 かかわりが難しい児童生徒への対応 積極的に認め褒める バランスの取れた接し方
かかわりが難しい児童生徒への対応についてシリーズで掲載してきましたが、今回は教師の側に立って説明します。 かかわりの難しい児童生徒は他の子に比べうまくいかないことが目立ち、ついつい失敗...(2019-07-11) 全て読む
【特別連載】 かかわりが難しい児童生徒への対応 №10 子どもの訴え理解し対応 問題行動の見立ては目的論で
子どもの問題行動は誤った自己表現であり、何を訴えたいのかを理解しなければ適切な対応を図ることはできません。 問題行動を理解するためには何が問題なのか、それによって誰が困るのか、さらに、...(2019-06-27) 全て読む
【特別連載】NO.9かかわりが難しい児童生徒への対応 肯定的なかかわり必要 子の特性の見立てと対応例
シリーズで前述したように、医者から発達障がいと診断を受けた子やその傾向がみられる児童生徒は、年齢にかかわらず人との関係で生きづらさをかかえていると説明しました。その生きづらさを軽減すること...(2019-06-19) 全て読む
【特別連載】NO.8かかわりが難しい児童生徒への対応 短い間隔で繰り返し定着 子どもに届く言葉がけ
言葉がけをして、そのときはできても定着されず、同じような失敗を繰り返してしまうことがあります。確かに何度も何度も繰り返して説明することが大切であると理解をしていても、教師のイライラにつなが...(2019-05-30) 全て読む
【特別連載】No.7 かかわりが難しい児童生徒への対応 自己肯定感を高める 認め自信もたせる言葉を
発達障がいやその傾向が見られる児童生徒は生活の中で叱られることが多く、自信をなくし自己肯定感が低くなり、暴力などで自分のつらさを周りの人に訴えようとします。自己肯定感を高め、自信をもたせる...(2019-05-09) 全て読む
【特別連載】No.6 かかわりが難しい児童生徒への対応 感情をモニタリング 保護者の悩みに寄り添う
今回は、発達障がいやその傾向がみられる児童生徒と教師のかかわりについて説明します。 児童や生徒の対応でイライラすると、ネガティブな感情がループ化(感情のループの説明は第3回に記載)しま...(2019-04-24) 全て読む