【特別連載】かかわりが難しい児童生徒への対応№12 生徒への理解と支援を 高校生を中心とした対応
(かかわりが難しい児童生徒への対応 2019-07-24付)

 「かかわりが難しい児童生徒への対応」シリーズの中で、高校における対応の依頼がありました。そこで、高校生を中心に「かかわりが難しい生徒への対応」について、掲載します。

 一般に高校生になると様々な活動の中で、人と違う自分を自覚するようになります。しかし、小さいころから続いている自分をどうすることがいいのか、なぜ自分はこうなのか、うまくいかないことが続くたびに、自分を否定的にとらえ著しく自尊感情を損ね問題行動を起こしてしまいます。高校の場合、生徒の問題行動は停学などの処罰として対処してきた歴史があります。停学などの対処の前に適切な理解と支援がなされるならば、不測の事態に陥ることは減少できると考えています。

 発達に課題のある生徒は、そうなりたくてそうしているわけではないことは前述しました。その理解を前提に読んでいただければと考えています。

 アメリカの発達心理学者で「アイデンティティ」の概念などを提唱したエリクソン(Erikson)は発達段階論で、青年期は同一性(Identity)を確立する時期であると述べています。

 同一性とは自分自身を社会に適応させることを言い、青年初期の高校生期は特に自分がどのような人間であるかを確立するため、生き方や価値観など、どう社会に適応させていくかを試行錯誤する時期であり、自分らしさをみつけるため、他人と比べたり些細なことに傷ついたりする時期とも言われています。

 しかし、かかわりが難しい生徒は生活を送る中で困難な状況に直面することが多く、自分を肯定的にみつめ、生活のしづらさを小さくできるよう生徒への理解と支援が必要となります。

 一般的な特徴として、マナーやルールを守ることが苦手で相手の気持ちをくみ取ったりその場にふさわしい言動ができず、静かにしなければならないところで大声を上げたり、暗黙のルールが理解できないなど、「社会性」に課題がみられます。

 また、他人と共感し、言葉の意味を理解しながら表現することや相手の気持ちを推し量ることが苦手です。特に、非言語(表情、しぐさなど言葉以外を使うコミュニケーション)をとらえるのが困難であり、「コミュニケーション」に課題がみられます。

 さらに、「限定・反復的」な行動がみられ、一定の手順にこだわり、いつもと違うことや予定外の出来事に柔軟に対応することができなく、不安になり混乱することもあります。

 また、光をとても眩しく感じ、音に敏感に反応し音楽の時間や、大勢の人の中にいることに苦痛を覚えることもあります。さらに、運動が極端に苦手で体をスムーズに動かすことができないなど、感覚と運動に課題がみられることもあります。

 学習の面では、知的な発達に遅れはみられず、話すことはできるけれど、本を読むことや作文をすることが苦手であるなど特徴的な困難がみられます。「話す」では、言葉を組み立て話したいことを相手の理解にかなうよう伝えることが困難であったり、「書く」では、文字や文書を書くことなど視覚認知に課題がみられ、板書をノートに書き写すのにかなりの時間を要したりします。

 さらに、「計算」では、繰り上げの計算や論理的に数を組み立てることが苦手であったりします。

 このような状況は通常の生活ではみえなくても、ある場面になると特徴的な症状として発現しますが、症状は併存する場合もあります。

 次回から、かかわりの難しい児童生徒への対応の(1)~(11)を基本に、事例を中心に対応を説明いたします。

(北海道医療大学非常勤講師・石垣則昭)

(かかわりが難しい児童生徒への対応 2019-07-24付)

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