【特別連載】No.6 かかわりが難しい児童生徒への対応 感情をモニタリング 保護者の悩みに寄り添う  
(かかわりが難しい児童生徒への対応 2019-04-24付)

 今回は、発達障がいやその傾向がみられる児童生徒と教師のかかわりについて説明します。

 児童や生徒の対応でイライラすると、ネガティブな感情がループ化(感情のループの説明は第3回に記載)します。

 結果、感情的になり厳しく指導してしまい、保護者から強い批判や周りの児童生徒からも誤解を招くことがあります。子どもができていないところや、迷惑をかけられていると感じてしまうと問題が必要以上に大きく見え、叱りたいことばかりが増え、結果的に子どもの心が離れ、以降の対応に苦慮することになります。

 教師の言葉や態度は、子どもの生活に大きく影響することを教師は自覚しなければなりません。教師は子どもの失敗の中にも本人なりにできているところや、努力しようとしているところを見つけるようにすることです。そのためには、自分の感情の状況を冷静にチェックするもう一人の自分(もう一人の自分とは、メタ認知で言うオンライン・モニタリングを言います。オンライン・モニタリングとは、自分の中で現在進行中の思考や感情などをモニターする力を言います)により、自身の感情の状況を理解し修正した上で子どもに接するようにします。

 発達障がいやその傾向を抱える児童生徒の保護者の多くは子どもの課題で悩み苦労しながら生活をしています。特に、わが子の問題は親の問題であるように感じ、子どもの話には神経質に反応します。

 しかし、学校や教師によっては、保護者の気持ちを無視するように「病院に行って下さい」とか「発達障がいです」など、無神経な発言により保護者の感情を逆なでし、著しく信頼を損ね対立してしまうことがあります。

 また、保護者の中には、わが子の状況を理解しながらも、「家では、頑張って勉強しています。この子の頑張りに期待しています」「みんなと一緒にいることが楽しいようです」「集団の中で伸びていくと思います」など、子どもの状況を頭で理解していても、気持ちや行動に結び付かない場合もあります。

 学校が保護者との信頼関係を築く理由は、「わが子に障がいがありますので、個別的で特別な教育を受けさせてください」と言わせることではありません。他の子と様子が違う子を家庭と学校が理解し協力して、どう育てていくかにあります。

 そのためには、保護者のよき相談相手になることです。相談相手とは、保護者の不安や悩みに寄り添い話を聴くことです。

 保護者の話に耳を傾けるよりも、学校であった問題点や心配な出来事を保護者に一方的に伝えてはいないでしょうか。保護者は、その話をどんな思いで聞いているのでしょうか。察するものがあります。

 保護者の話を聴く中で、「学校では今、○○が身に付くようお子さんに指導しています。お父さん、お母さんはどう考えますか。意見を聞かせて下さい」と尋ね、「それでは、家庭と学校共通で指導した方が効果的ですので、家庭ではどのような指導をしますか」と問い、指導の方向を合わせます。その後、学校や家庭の状況を連絡し合うようにします。

 また、同じ障がいのある子どもを抱えている保護者会への参加を促すことも、保護者の心の安定や子どもへの理解のためによい機会となります。

 次回は、子どもの自己肯定感を高め、自信を持たせる言葉がけの基本を説明します。

(北海道医療大学非常勤講師・石垣則昭)

(かかわりが難しい児童生徒への対応 2019-04-24付)

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