【特別連載】No.3 かかわりが難しい児童生徒への対応 環境により改善が可能 余裕ある対応を(かかわりが難しい児童生徒への対応 2019-03-14付)
誰でもそうでしょうが、何かにつけ叱られ続けるとどのような感情がもたげてくるでしょうか。「僕は駄目な人間だ」と同時に「なぜ僕だけ叱られるのだろう」と怒りが込み上げ、自暴自棄に陥りやすくなります。教師からみると「何度言っても改善しないので、厳しく指導しなければ」と思うかもしれませんが、そのような単純とも言える対応が子どもたちを追い込み暴発させることになります。
また、学校によっては、教室や廊下などで暴れるので、怒鳴り、無理やり力で押さえつけようとする様子がみられますが、そのような力で圧するような対応が子どもを追い込んでしまうと言わざるを得ません。
特に医師によって発達障がいと診断された子どもや、その傾向がみられるかかわりが難しい児童生徒には独特の症状や状況がみられますが、「こだわりの強さ」「コミユニケーションが苦手」「社会性の欠如」「多動」は共通しています。その子にとってみれば、人と接することが苦手で、言葉に出さなくても生きづらさを日常的に感じているのです。また、心配な行動は本人が望んでいるのではなく、本人も「どうして失敗ばかりするのだろう」「どうして、みんなと仲良くできないのだろう」と悩んでいるのです。
それを周りの児童生徒が、自分たちとは違う様子や受け応えに違和感をもち、からかいやいじめの対象にしてしまうことがあります。そうされた子どもは語いが不足しているため、口で返すことができなく、暴力で自分の意思を表すことになります。
さらに、感情がネガティブなループ化(過去に嫌な体験や苦痛を伴う体験を繰り返すと、そのときと似たようなネガティブな感情となり、暴言や暴力などの行動を繰り返してしまうこと)をしてしまい、さしたることでなくても嫌な思い出がフイードバックし、自分を守るため攻撃的な行為に及ぶことがあります。
インクルーシブ教育の重要性が述べられています。インクルーシブ教育(障がいの有無にかかわらず誰もが望めば、合理的な配慮のもと地域の普通学級で学ぶ教育)とは、障がい児を個別に調整(合理的配慮、個別的支援)し、サポートしながら健常児とともに学ぶことを言います。
障がいがあるないにかかわらず理解を深め、ともに手を取り合い共生社会の実現を目指すことをねらいとしていますが、発達障がいのある児童生徒やその傾向がみられるかかわりの難しい児童生徒も同様であり、同じ学校、教室で学ぶ者として理解し合う集団づくりが強く望まれています。
発達障がいやその傾向がみられるかかわりが難しい児童生徒は、生活のしづらさを抱えているため、「生活障がい」と置き換えることができます。また、生活をする家庭と学校に依存しながら成長をするため、本人の特性と周囲の環境との関係で大きく変化する「関係依存的障がい」とも言われています。
生活のつまずきを小さくするためには、その子の特性を理解し環境を整えることが重要です。つまり、周りの大人が余裕をもって子どもと接し、無理なく発達を邪魔しない教育が行われるならば、子どもの心配な行動は改善されます。
次回以降は発達障がいの種別や特徴を論じるのではなく、教育の現場に必要な目の前の子への対応をどうするのかを前述した考え方に添い説明します。
(北海道医療大学非常勤講師・石垣則昭)
(かかわりが難しい児童生徒への対応 2019-03-14付)
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