旭川市31年度教育行政執行方針 海外児童とネットで会話 プログラミング教育実施へ支援
(市町村 2019-03-06付)

旭川市教委赤岡昌弘
旭川市教委・赤岡昌弘教育長

 【旭川発】旭川市教委の赤岡昌弘教育長は、三十一年度教育行政執行方針で、海外の小学校で日本語を学ぶ児童とインターネットを通じて英語や日本語で会話させ、相互に学び合う取組を進めることを表明した。また、小学校のプログラミング教育を円滑に実施するため、ロボット型のプログラミング教育用教材やICT環境の整備を進めるほか、旭川工業高校や旭川工業高等専門学校と連携を図って学校への出前授業や教員の研修会を開催するなどの支援方策を示した。

 執行方針の概要はつぎのとおり。

【学校教育】

▼基本的な考え

 現在策定中の第二期旭川市学校教育基本計画にも掲げている三つの重点的な取組を進めるとともに、新学習指導要領の趣旨を踏まえ、家庭や地域社会と連携・協働して、信頼される学校づくりを推進する。

▼子どもたちに未来を生き抜く力を育む

 市確かな学力育成プランを策定し、各学校における教育活動を支援する。

 二〇二〇年度からの小学校での新学習指導要領全面実施に向けては、教育課程編成の指針を作成し、各学校に提供する。

 また、授業力向上実践研究推進事業に四校を指定し、授業改善や今日的な教育課題を踏まえた実践研究に取り組み、その成果を全小・中学校で共有する。

 さらに、全国学力・学習状況調査の結果を分析し、学力向上学習プリント集や指導の改善策を教員とともに作成するなど、各学校における学力向上に向けた取組を支援する。

 小学校における少人数学級編制については、生活習慣や基礎学力の定着などを図るため、低・中学年を対象に、市費負担教員をその確保の状況に応じて配置し、国や道の基準より少ない人数での学級編制を行う。

 ふるさと旭川の特徴を生かした教育の充実については、児童が本市について学ぶことで、郷土への愛着と誇りを育むことを目的として、引き続き社会科副読本『あさひかわ』を対象学年に配布する。

 英語教育については、児童生徒が学んだ英語をコミュニケーションの場面で活用できるよう、英語講座「イングリッシュ・チャレンジ教室」の開催や、新たに、海外の小学校で日本語を学んでいる児童とインターネットを通じて英語や日本語で会話し、相互に学び合う取組を進める。

 小学校で新たに導入されるプログラミング教育への対応としては、ロボット型のプログラミング教育用教材やICT環境の整備を進めるとともに、旭川工業高や旭川工業高等専門学校と連携を図り、児童生徒への出前授業や教員の研修会を実施して各学校におけるプログラミング教育の円滑な実施を支援する。

 小・中学校ともに「特別の教科 道徳」が全面実施となることから、各学校で質の高い道徳科の授業が行われるよう指導方法などに関する道徳科研修会を引き続き開催する。

 いじめの問題への対応については、本年二月に策定した市いじめ防止基本方針に基づき、学校や家庭、各関係機関との連携を図るとともに、子どもたちが主体的にいじめの問題等について協議する生活・学習Actサミットや各学校におけるいじめの未然防止等の取組を充実する。

 不登校など児童生徒の悩みの解消や問題の解決に向けては、スクールカウンセラーや適応指導教室(ゆっくらす)による専門的な支援に加え、全小・中学校に導入しているオンラインサービスを活用した学習支援の周知も図る。

 子どもたちの体力向上については、全小・中学校において新体力テストを全学年・全種目実施し、その結果や実態に応じた一校一実践などの取組の充実を図る。

 新たに、自分の体力などを記録し、目にすることで、運動習慣や生活習慣の改善に役立てることができる体力手帳を活用し、積極的に運動に取り組む児童生徒を育成する。

 望ましい食習慣を養い、食料の生産・流通などについての理解を深めるため、生産者などとも連携しながら、給食を通じた食指導の充実や地産地消の推進を図るほか、栄養や衛生管理の徹底、PEN食器の導入などによって、安全・安心な給食の提供に努める。

 特別支援教育については、一人ひとりの教育的ニーズに応じた指導・支援を充実するため、引き続き各学校に補助指導員を配置するとともに、医療的ケアを必要とする児童生徒に対し、看護師資格を有する補助指導員を増員する。

▼子どもたちの学びの環境の環境を整える

 昨年発生した北海道胆振東部地震の際、電話がつながらない状況の中、児童生徒の安否確認が思うように進まなかった。教職員の懸命な働きで全員の無事を確認することができたが、このような状況において、学校と家庭がより迅速に情報伝達できるよう、電子メールの一斉配信機能も活用するなど、緊急時の連絡体制を充実させる。

 通学路における子どもたちの安全の確保については、通学路の安全点検の徹底と要注意個所の周知や、関係機関、地域と連携した見守り活動など、安全確保対策の充実に努めるとともに、防犯や防災に関する訓練などの実施を通じて、児童生徒の危機対応能力を育成する。

 学校施設については、東栄小学校の増改築工事に着手するほか、千代田小学校増改築の基本設計と豊岡小学校の耐力度調査に着手することで、耐震化を着実に進めるとともに、アスベスト含有断熱材が使われている煙突を順次改修し、安全・安心な施設の整備に取り組む。

 市立小・中学校適正配置計画に基づく小・中学校の統廃合や通学区域の見直しについて、引き続き保護者や地域住民との協議を進めるとともに、三十一年度で第一期の計画期間が終了することから、これまでの進捗状況などを踏まえ、第二期の取組に向け、適正配置計画の点検や見直しを行う。

 調理能力や衛生水準が向上する東旭川学校給食共同調理所については、来年一月に供用を開始する。

 新たに併設する調理実習室などのコミュニティエリアについては、地域の食育の拠点として活用を図る。

 経済的に厳しい世帯に対する支援として重要な役割を担っている就学援助については、新入学用品費等の支給単価を増額し、保護者のさらなる負担軽減を図るとともに、生活保護基準の見直しによる影響が及ばないよう、対応を検討する。

▼子どもたちをともに育て豊かな学びをつくる

 小学校から中学校への円滑な接続や学力の向上などを目的とする小中連携・一貫教育については、本年一月に施設一体型の学校となった旭川小学校と旭川中学校において、九年間を見通した目指す子ども像を新たに設定するなど、各中学校区において引き続き小中連携・一貫教育推進プランに基づいた教育活動の促進に取り組む。

 子どもたちを学校・家庭・地域が連携・協力して育むコミュニティ・スクールについては、本年一月に導入したモデル実施地域の三中学校区の学校に加え、二〇二〇年度末までにすべての小・中学校への導入を目指す。

 本年一月に策定した市立小中学校働き方改革推進プランに基づき、学校閉庁日の設定や学校への調査、依頼等の縮減などに取り組むほか、中学校においては部活動指導員を配置するなど、子どもたちの豊かな学びや成長に向け、教職員が心身ともに健康でいきいきと子どもたちと向き合うことができる環境づくりを進める。

 教職員のキャリアステージに応じた各種研修や今日的な教育課題に関する研修を充実し、教職員の資質・能力の向上を図るとともに、服務規律の保持については、教職員一人ひとりが公務員としての責任をもち、職務を遂行するよう指導の徹底を図る。

【社会教育】

▼基本的な考え

 市民一人ひとりが、主体的に学び、地域への関心と愛着を深めながら、心豊かに暮らすことができるよう、学びの機会の充実と文化芸術活動の支援を図るとともに、学習成果を地域に生かせる環境づくりを推進する。

 三十一年度においては、市社会教育基本計画および市文化芸術振興基本計画に基づき、五つの重点的な取組を進める。

▼市民一人ひとりの主体的な学びの機会の充実

 市民自らが生涯学習の場を広く選択できるよう、生涯学習団体やサークル・講師等の情報や行政機関などが行う講座等を掲載した生涯学習ポータルサイト・まなびネットあさひかわの利用拡大に努める。

 市民や団体が自らの学習成果を発表し、市民の学習活動への参加機会などを提供する場である生涯学習フェアを引き続き開催する。 

 本市および周辺地域は、大雪山、石狩川水系、神居古潭などの自然がつくり出した美しく価値のある地質遺産に恵まれている。この地域をエリアとする大雪山カムイミンタラジオパーク構想を本格的に進めるため、昨年、設置した推進協議会において、基本計画を策定するとともに、住民の機運を醸成するためフォーラムなどの普及活動のほか、地域の魅力を再発見できる取組を進める。

 科学館においては、子どもたちが身の回りの不思議や科学の楽しさを体験し、興味や理解を深めることができるよう、夏・冬休み期間中、ワークショップや特別実験ショーなど、科学とふれる機会となる取組をボランティアと協働しながら実施する。

▼市民の学びを支える環境の整備

 中央図書館においては、利用時間の拡大を通年実施とし、利用時間の変更に伴う動向の変化など、さらなる検討を進め、市民にとって利用しやすい環境整備を進める。

 仮称・緑が丘地域複合コミュニティ施設内に緑が丘図書コーナーを設置することによって、地域住民へのサービスの充実を図る。

 市民文化会館については、整備等の方向性について引き続き検討を進める。

▼地域における学びの循環

 子育てや家庭教育についての悩みを気軽に相談できる家庭教育ナビゲーターの育成とスキルアップを図るとともに、活動の場の提供を進め、家庭や地域の教育力の向上に努める。

 公民館では、地域の身近な社会教育施設として、学校や地域などの関係機関と連携するとともに、社会教育活動などに資する市有施設の在り方について検討を進めるなど、学習環境の整備を図る。

▼市民の心を豊かにする文化芸術活動の充実

 これまでの補助金制度を見直し、若者などが行う小規模な事業に対象範囲を広げるなど、より一層、市民の自主的で創造的な文化芸術活動の振興と発展を促進するとともに、市民が多様な分野の文化芸術に親しみ活動する機会の醸成を図る。

 昨年、常設の施設として開設した市民ギャラリーについては、利用者の増加に向けた周知を継続するとともに、利用者の意見を踏まえ利便性の向上に努める。

 市民文化会館や大雪クリスタルホールについては、幅広い世代を対象に、質の高い舞台芸術が鑑賞できる公演や、文化芸術の素晴らしさを体験できる機会の提

供など、魅力ある自主文化事業を実施する。

 彫刻美術館については、「彫刻のまち・旭川」のまちづくりを推進するため、第四十一回中原悌二郎賞を開催するほか、企画展、彫刻巡回展示事業などの自主事業を実施するとともに、ステーションギャラリーや春光園を活用し、鑑賞機会の創出に努める。

▼郷土文化の保存・活用と活用と郷土愛の育成

 博物館については、アイヌの人々の歴史と文化にふれ、興味や関心をもつきっかけや理解を深める機会を提供するため、引き続き、アイヌ文化ふれあいまつりの開催、高校の郷土研究部などと連携した研究事業などを実施する。

 昨年、本市を含む二市十町をエリアとして「カムイと共に生きる上川アイヌ」について日本遺産の認定を受け、シンポジウムの開催や構成文化財の看板設置などを進めている。

 今後は、ジオパーク構想との連携も図りながら、日本遺産の構成文化財である大雪山の自然や上川アイヌの文化・伝統の魅力を総合的に発信し、アイヌ文化への理解を深める取組や施設整備への支援を行うなど、郷土愛の育成や圏域の活性化を図る。

(市町村 2019-03-06付)

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