道立高入選改善の方向性に対し 拙速な導入は混乱招く 道教委へ要求書を提出 道高教組・道教組(関係団体 2019-05-09付)
道高教組(尾張聡中央執行委員長)と道教組(川村安浩執行委員長)は4月26日、道教委に対して「道立高校入学者選抜における改善の方向性」にかかる要求書を提出した。改善の方向性について、「2年後の“高校入学者選抜(改善)”がどのように行われるのか不透明なまま、中学校生活を送ることになりかねない」「“高校入学選抜(改善)”によって、今以上の超勤を教職員に課すことになれば、大変問題になる」などと批判。「高校入学者選抜(改善)」の拙速な導入は行わないこと、具体的な制度設計に当たり有識者懇談会ではなく、中学生の保護者、教職員、研究者から広く意見を聞く委員会等を立ち上げることなどを求めた。要求書の概要はつぎのとおり。
道教委は、2019年3月22日に「道立高校入学者選抜における改善の方向性」を公表した。「全入時代にふさわしい選抜」と銘打って行われた1982年以来、40年ぶりの大変更となる。新学習指導要領の趣旨を踏まえ、新たに「思考力・判断力・表現力等」について問うことを留意するほか、定時制課程については、多様な学習歴の入学希望者に対し、より客観的な判断材料で選抜する必要性などから、学力検査を導入するなど抜本的な見直しを示している。
また、2019年6月には「改善の基本方針」を公表し、7月から具体的な制度設計を始めるなどスケジュールを示し、2021年9月に実施要項を決定、同年度に行われる2022年度「高校入学者選抜」から導入するとした。これは、現在中学校1学年に在学する中学生が対象となるが、2年後の「高校入学者選抜(改善)」がどのように行われるのか不透明なまま、中学校生活を送ることになりかねない。
このように、スケジュールありきの高校入学者選抜の拙速かつ急激な変更は、中学生に不安を与えるばかりか、中学校・高校ともその対応に追われ、学校現場に重大な混乱をもたらす。2020年度から行われる大学「新共通テスト」において、思考力・判断力・表現力を問う問題の妥当性や採点の公平性への疑義が指摘されているが、高校入学選抜(改善)においても公平性が担保できるのかはなはだ疑問である。
さらに、入選業務による教職員の超勤はすでに限界に達している。高校入学選抜(改善)によって、今以上の超勤を教職員に課すことになれば大変問題である。
定時制課程では、中学校時に不登校だった生徒、特別な支援を必要とする生徒、日本語を母語としない生徒など、困難を抱えた生徒が在籍している。現在、北海道の定時制課程は全国で唯一学力検査を課さない入学者選抜を行っているのは、こうした生徒の実態に即したものといえる。
他県の動向をみると、例えば神奈川県のクリエイティブスクールでは、中学校で十分に力を発揮できなかった生徒のためにあえて学力検査を廃止している。新たに学力検査を課すことは、これら困難を抱えた生徒を実質的に排除することになる。また、定時制課程では入学希望者が定員を下回っている実態もあり、学力検査を課す必要性もまったくない。
道教委はこれまでも、学区の拡大や学校裁量問題の導入など、競争を加速する制度を導入してきた。子どもの権利委員会は第4回・第5回統合定期報告書に関する総括所見の中で、「ストレスの多い学校環境(過度に競争的なシステムを含む)から子どもを解放するための措置を強化すること」を勧告している。高校入学者選抜(改善)は幅広い道民の議論を踏まえ、競争主義的な現制度を見直す方向で改善されなくてはならない。
以上の点を踏まえ、以下のとおり要求する。
(1)道教委は「高校入学者選抜(改善)」の拙速な導入は行わないこと。
①新しい要項が決定されるのは2021年9月であり、同じ年度の高校入学者選抜から導入するのはあまりにも拙速である。実施の時期を遅らせること。
②地域住民、保護者、学校関係者、教職員団体と十分協議を重ねること。また、定時制課程の学力検査導入は特に慎重に議論すること。
(2)具体的な制度設計に当たっては、有識者懇談会ではなく、中学生の保護者、教職員、研究者から広く意見を聞く委員会等を立ち上げること。
加えて、ILO・ユネスコ共同専門家委員会(CEART)の「教員団体は、教育の進歩に大きく寄与しうるものであり、したがって教育政策の決定に関与すべき勢力として認められなければならない(教員の地位に関する勧告)」という勧告に基づき、教職員団体の代表を構成委員に入れること。
(3)インフルエンザ罹患者等への対応については、受検の機会均等の立場から、2022年度を待たずに、2020年度の高校入学者選抜から要項を変更して行うこと。
(関係団体 2019-05-09付)
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