体力問題 憂慮すべき状況 札幌市教委2年度教育方針説明会(市町村 2020-02-21付)
札幌市教委・長谷川雅英教育長
札幌市教委の長谷川雅英教育長は、20日の令和2年度教育方針説明会で、体力の向上や働き方改革の取組、リスク管理の重要性を強調するとともに、教職員がより子どもと向き合う時間の確保や、関係機関とのネットワークづくりなど、チーム学校として取組を進めていくことを求めた。
長谷川教育長のあいさつ概要はつぎのとおり。
▼体力の向上
先日開催された総合教育会議の議題は、子どもの体力についてだった。
昨年、スポーツ庁から全国・体力運動能力、運動習慣等調査の結果が公表された。体力合計点が大幅に低下しており、小学5年生の男子は2008年の調査開始以来、最低で、中学2年生の男子においても過去5年間で最低だった。
さらに、札幌市の場合はこの全国の平均をも下回っているという大変憂慮すべき状況。
また、市長、副市長は、健康寿命の延伸という大きなテーマからみて、「大変危惧している」「危機感をもっている」と話していた。このことは、本当に喫緊の課題、解決しなければならない課題と考えている。
一方で、スポーツ庁の調査では、体力・運動能力の調査結果のほかに、運動が苦手でも運動やスポーツを楽しいと感じている児童生徒が多い学校の取組事例も紹介されていた。
小学校では全国で4校が取り上げられ、前田小学校の取組が取り上げられていた。他の園や学校においても、前田小のように様々な取組を進めていると思うが、体育や保健体育の授業の充実をはじめ、休み時間や放課後など、授業以外の場面でも日常的に運動に取り組めるような環境を整えていかなければならない。
現在、教育委員会では、道教育大学と連携して詳細な現状分析をした上で、子どもに対する運動能力の向上を図ることとしている。
例えば、運動習慣の形成を目的としたイベントの企画、オリジナルの体操など新たな方策を検討している。
ことしは東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会が7月から9月にかけて、札幌でも、サッカーに加えマラソン、競歩の競技が開催される。
オリンピック・パラリンピック開催への機運を生かしながら、今後も各学校の創造性あふれる健やかな体の育成プログラムの策定と実施によって、札幌市の子どもたちの健やかな体の育成、体力向上について一層効果的な取組が進められることを期待している。
▼働き方改革
これまで、夏季休校日や部活動休養日・活動基準を設定、勤務時間外の電話対応を留守番電話にしたほか、部活動における外部人材の活用など、様々な取組を進めている。
国に対しても、定数改善などの要望も行っているが、併せて長時間勤務に対する意識改革に取り組まなければならないと感じている。
私も含め、昔は遅くまで仕事をすることが普通の雰囲気で、これが職場のそこかしこにあったように思う。まだそのような意識が頭のどこかに残っているかもしれないが、まずは、そこを含めて、改めなければならない。教育委員会と学校が本気になって、変えていかなければならない。
本年度からは、外部からの客観的で専門的な視点による分析を行うために、民間のコンサルタントに業務を委託し、小・中学校、高校の各校種ごとに課題整理を行った上で、具体的な改善策について提案を受けることになっている。
コンサルタントの担当者と話をする機会があったが、例えば、職員室内のレイアウトや会議のもち方など、業務時間の短縮に向けて、まだ工夫の余地があるということだった。
詳細については、後日、報告があると思うが、これらのことは教育委員会を含めて、多くの学校があまり意識しなかったことではないか。
私はいつも「常に“なぜ”ということを念頭において仕事を進めてほしい」と言っているが、まさにこれと重なるものだ。まず、現状を疑ってほしい。何のためにやっているのか、やるべきことなのか、無理や無駄などはないか、常に疑問符をもって仕事を進めてほしい。
そしてもう一つ、これも私の就任以来言っていることだが、凡事徹底に取り組むこと。当たり前のことを当たり前に実践するのみならず、もう一歩踏み込んで他の人にはまねができないほど、徹底的に実践するほか、簡単なことや単調なことをおろそかにしない。それを極めようとすることから、先ほどの「現状を疑う」「改善」にもつながっていくと思う。
▼リスクマネジメント
昨年も子どもたちが巻き込まれる悲しい事件や事故、教員のわいせつ事案や、体罰などの不祥事があとを絶たなかった。こういった状況を踏まえ、今後も管理職の皆さんのリスク管理能力が、さらに求められることとなる。
リスク管理、危機管理のポイントは、「悲観的に準備し、楽観的に対処せよ」「気付く、そして、行動する」などがよく言われている。言葉にすると簡単だが、いざ取り組もうとすると大変難しいことだと思う。
我々は、往々にして、楽観的に準備をして、起こったことに悲観したり、兆候に気付いたものの大したことではないと思い込み、行動しなかった、こういったことがあるのではないか。
言うまでもなく、それではマネジメントとはいえない。
大事なことは情報収集力や想像力、瞬発力を日ごろから鍛えておくこと。
まず、情報、特にリスク情報については、その真偽を問わず受け入れること、また、情報の範囲も、学校内や教育委員会にとどまらず、他都市の事件、事故、国の動向など様々なところまで広げてほしい。
当然のことだが、学校内や教育委員会を含め、関係者とのコミュニケーションも重要となる。それらの情報をつなぎ合わせ、総合的に、悲観的に、その先に何があるのかということを想像してみてほしい。
リスクの発生の可能性、兆候に気付いたら、速やかに行動に移す。リスク対応では、空振りは許されるが、対応の遅れは命取りとなる。
誰を守るのか、何を守るのか、そのために何をすべきなのか、常にリスク発生時、そういったところに備えたイメージをもつことが重要。気付く力や想像する力、行動する力を日ごろから鍛錬してほしい。
学校が抱える課題は、今後ますます多様化、複雑化していく。
そのような中でいかに教職員の負担を軽減し、子どもと向き合う時間を増やし、いかに教育の質を担保していくか。家庭や地域、関係機関とのネットワークづくりを含めて、チーム学校の在り方の真価が今、問われている。
札幌のすべての学校が、そして、このまちが、たくさんの子どもたちの笑顔であふれるよう、園長先生、校長先生と一緒に頑張っていきたい。
(市町村 2020-02-21付)
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