東川町研究開発学校 3年次報告書 ⑤(市町村 2020-03-24付)
▼配慮事項・成果・課題
▽複式学級の同内容異程度指導~東川第一小学校
グループで課題解決をする学習や、コミュニケーション活動の定着をねらいとした学習では、児童の実態を考慮しながら、異学年混合のグループで活動に取り組ませるなど、学習形態を工夫した。
下学年の児童は、上学年の児童をモデルに学習することで徐々に学びを獲得する姿がみられると考えた。上学年にとっては、下学年に学んだことを教えることで、学習内容の十分な定着が図られたり、下学年の児童から頼りにされたりすることで自己肯定感が高まった。
コミュニケーション要素にかかわり英語を活用する場面では、多くの友達と会話をすることができ、会話をしたり交流をしたりする意欲が高まっており、交流や発表を楽しみにする姿が
みられた。
下学年にとっては、上学年の子をモデルに学習することで徐々に学びを獲得することができた。さらに、上学年にとっては、下学年のモデルとして頑張ろうとしたり、異学年混合のチームでの活動で、下の学年に教えようとしたりするなどしてGlobeを通して成長する姿がみられた。
5・6年生では、どのメンバーになっても6年生がリーダーとなって進め、5年生は6年生にアドバイスをしてもらってできるようになるという姿が多くみられ、一緒に学習する成果が表れた。
▽極小規模校での取組~東川第三小学校
小学校を対象にした文部科学省指定のデジタル教材「Let’s try」「We Can!」のほかに、「SWITCH ON!」(コミュニケーションツールとしての英語を使って、自分の夢を語ることができるような姿を一つの目標に、小学校での6年間の英語の学習をサポートするプログラム)を活用している。
各学年が5人に満たない極小規模校である東川第三小では、作成したカリキュラムどおりに進めることができていることに加え、アクティビティなどの時間が短くて済むので、1~4年生を対象にデジタル教材「SWITCH ON!」を視聴させ、発音を重点的に学習している。日常の場面を描いたストーリー、歌、アルファベットとフォニックスで構成されたプログラムは、1回1015分。
ストーリーには、あいさつ、お礼、様子を表す表現などが出てきており、何度も繰り返すことで児童の耳に残っていった。発表する際には、ストーリーの中に出てきたフレーズを使おうとする児童も現れた。
歌やフォニックスは子どもが楽しんで取り組んでいる。動画を見ながら指でアルファベットを空中になぞり書きする場面もあり、1年生からアルファベットにふれ興味をもたせることができた。高学年は使用せず、「We Can!」のページ下にある文字を使ってALTとHRTでフォニックスの指導を毎時間5分程度継続してきたことで、新出単語も読めるようになってきた。
◇研究開発の結果およびその分析
▼幼児児童生徒
▽幼稚園
《4歳児》
2つの学級にALTが一人ずつ入り、制作や運動など保育活動に加わってもらう。このほか、英語による絵本の読み聞かせも継続して実施している。
子どもたちはGlobeを楽しみにし、ALTへのかかわりが積極的な幼児が増えている。知っている英単語で話しかけたり、英単語を教えてもらったりする姿が見られる。英語絵本の読み聞かせは、英語と絵だけでは難しいが、身振りや手振りを交えることやリピートして発音をまねることで楽しめている。七夕や正月など日本の伝統的行事の制作を通して、一緒に行事にふれ、ハロウィンやクリスマスなどそれぞれの国での楽しみ方などを教えてもらうきっかっけとなる。
《5歳児》
年長1学級ずつALT2人が主導でGlobeを進め、学級担任が英語を日本語でフォローしながら保育を進めている。年中からGlobeの活動を通してALTに来てもらい、一緒に遊び、コミュニケーションを図り、親しみをもって接する子どもの姿が多い。カリキュラムで毎月の活動内容を確認し、ALTと打ち合わせながら進めることで単語や興味の引き出しなど段階を踏むことができる。
小学1年生との交流では、慣れ親しんだ歌や知っている英単語で色鬼をして交流できた。英単語の発音の仕方など自ら言ってみる経験を通して、伝え合う楽しさや自信がみられ始めた。色、食べ物、天気など身近な単語にふれてきたことで、朝の会などの生活の中でも子ども自ら発言して楽しむようになってきた。
▽小学校
4月には、様々な国の人たちとの交流において、自分から接することに抵抗を感じる子どもが多かったが、今では自然にあいさつする子どもが多い。外部講師などの人材活用をできるだけ多く実施したことで、様々な国と地域の人たちとふれ合うことに抵抗が少なくなってきている。
また、様々な国の人々をゲストティーチャーや外部講師として迎え入れたことで、活動に対する目的意識が明確となり、より主体的な活動につながるとともに、世界の言語や文化に対する理解が深まってきた。
さらに、授業を進めていくと、あいさつ・数字・食べ物などの言葉について英語だけでなく「ほかの国では何て言うのかな」と聞くなど世界に目が向けられるようになってきている。興味・関心の高まりから、「書きたい」「調べたい」と積極的な行動も目立つ。
アンケート結果から前年度よりも授業への意欲が大きく向上しているのは、カリキュラムの改善による成果だと考えられる。
児童の振り返りからは、ローカル要素・グローバル要素を取り入れ、地域の題材や世界の文化にふれる活動を多く展開してきたことで、地域への愛着および世界への視野が広がる態度が育ってきている。
本年度の全国学力・学習状況調査のアンケートでは、外国への興味・関心(Global)や自分の地域への愛着について全道、全国を大きく上回っていることが分かる。これは、間違いなく国際教育を中心としたGlobeの取組の成果として挙げられる。
GTEC juniorの結果から、4領域にわたって6学年に十分な力が備わっていると判断できる。Globeを通して外部講師や友達とのやり取りを多く取り入れていることもあり、特に聞くことの力が向上しているのが分かる。
これは、1年生からGlobeを実施しているので、全学年が外国を身近に感じるとともに、ALTを中心として英語をたくさん聞かせていることから聞く力がついてきている。
▽中学校
生徒の振り返りから、知らなかったことにふれたり、題材を通して自分なりに考えたりすることで、世界への視野が広がったことが大きな成果。
中学校においても、全国学力・学習状況調査のアンケートでは、外国(グローバル)への興味・関心や自分の地域(ローカル)への愛着について全道、全国を大きく上回っている。小学校での学習を土台にして、中学校での学習が生きていると考えられる。
小学校から統一しているクラスルームイングリッシュによって、1学年の4月の授業では、積極的に活用する姿が目立った。
▽高校
東川中学校から東川高校への入学者数は毎年10人程度である。町外から通学している生徒が大多数であり、コミュニケーション要素にかかわる中学校と高校とのつながりは難しい。
したがって、高校では、外部講師とのかかわりを多く取り入れて、自分と世界とのつながりを意識させる授業を展開させていった。国際社会や社会に出てよりよい仕事に役に立つと考えている生徒は増えてきている。
▼教職員
指導者が目標達成のため、楽しそうに授業に臨んでいることがとても大切である。前年度以上に指導者の意識が高くなってきており、積極的に工夫して授業づくりに取り組もうとしていた。
指導者の役割分担が明確になっており、デモンストレーション(第一小ではミニ劇場と言っている)によって、子どもがスムーズにアクティビティに取り組めるようになってきている。ALTは、毎時間全学年に入っているので、役割を明確にしたアクティビティに臨むことができるのでコミュニケーション要素の活動が充実している。2人または3人指導体制(HRT、JTE、ALT)で全学年指導しており、連携がとれた学習展開を進めることができている。
さらに、中学校では、学年団が一丸となってGlobeに臨むことが多くなってきている。ALTが全学年入っていることで、全校の子どもたちの実態を正確に把握していることにつながり、子どもに合った指導ができている。ALTから指導についての提案もあり、HRT、ALTで授業を作り上げることができている。
週に1回は、過去に実施した指導案をもとに各学年(HRT、JTE、ALT)で打ち合わせを行い、より効果的に指導できるように工夫している。課題として、毎週の打ち合わせははん雑になるときもあり、また、複数の先生が入るということは、打ち合わせをより密に進める必要もある。大切なことだが、時間がかかることが挙げられる。
▽ミニGlobe会議
本町の研究開発は、幼・小・中・高にわたるカリキュラム編成を中心として進めている。したがって、カリキュラム作成から校種ごとに起きる問題・課題などを解決するべく、ミニGlobe会議を毎月行っている。
ミニGlobe会議には各校の研究開発担当が集まり、カリキュラムの進ちょく状況を交流したり検討課題を話し合い共通理解したことを各校へ発信したりしている。
1年をかけて作成したカリキュラムだが、実践してみると場の設定や単元の流れなど学習内容に改善点がみられ、修正をしながら実践している。
小・中のつながりにおいて、中学校で世界の水問題を扱う際に、小学校での学習内容を把握していないと効率よい学習過程とならないことがあり、互いのカリキュラムの系統性の共通理解を図る取組を進めている。
▽職員研修
学校種間のつながりや研究開発にかかわる共通理解を図るとともに、本町における国際教育の意識を高めるため研修会を実施した。
・夏季研修会(8月7・8日)
2日間で、幼・小・中・高校の教職員延べ110人が参加し、校種別という多様な視点から話すことで、それぞれの授業に対する考えを深めることができた。各校の授業を知るよい機会となり、本町で行っている国際教育を中心とした研究開発の共通理解が図られてきた。
このような取組を通して、Globeについての理解も向上し、積極的に取り組むことができるようになってきている。
・冬季研修会(1月16日)
各学校におけるGlobe実践を中心に研究開発の発表を行った。それぞれのよさ、課題と成果が分かりやすくまとめられており、本年度の実践を共有することができた。
JETのプレゼンでは、ALTの受けてきた第二言語の教育やCIRの各国の教育について知ることができた。Globeは、各国の教育と比較して、その共通点やこれからの課題や今後やっていきたいことなどを挙げながら、世界の教育との共通点などを確認することができた。先生方の視野を広める時間となって、あらためて日本の教育を外から見直す機会となった。
▼保護者
国際教育には高い関心をもつ保護者が多い。小学校では、Globeについて家庭で話題になることが多いことが分かり、Globeへの関心の高さが各家庭においても表れている。
中学校では、わが子への国際教育に関する期待が込められた記述が見立つようになった。Globeの目指す「自己の確立」「多文化共生の態度」「コミュニケーション能力の向上」の意識について書かれており、学校も保護者も同じ意識で幼児児童生徒を育てていこうとする意識が高まっていると言える。さらに増えていけるように呼びかけていく必要がある。
前年度から『Globenews』と題して幼・小・中・高の校種別におけるGlobeの取組を1枚にまとめ、地域・保護者へ発信した。それぞれの校種における学習が自分の子どもだけでなく他校の取組の把握につながっている。さらには全戸配布を行うことで、小・中に置かれているコミュニティ・スクールでも情報共有しており、外部評価も得ている。
(市町村 2020-03-24付)
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