【解説】９月入学で声明　日本教育学会

（コロナウイルス関連 2020-05-13付）

　日本教育学会は１１日、９月入学・始業に関する声明を発表した。入学までの空白期間における大学の学費負担など、制度導入のデメリットを指摘。拙速な導入が状況の一層の混乱を招く可能性があるとし、教員、教育行政、子ども、保護者、企業などの意見を踏まえ、慎重に検討すべきとした。同会は課題を整理し、近日中に緊急提言を公表する。

　新型コロナウイルスの影響で９月入学の議論が高まる中、安倍晋三首相は国会で「選択肢の一つとして検討する」と答弁し、各府省に論点整理を指示している。

　日本教育学会が発表した声明では、学校生活の時間を削減しないでほしいという子どもたちの声、学校再開後の教育が子どもたちのストレスを高めるとの保護者・教員の心配に真摯に耳を傾ける必要があると指摘。その上で、制度の導入が状況の混乱・悪化を招く可能性があるとし、学力格差の是正への有効性についても疑問があるとした。

　制度を導入した場合、義務教育の開始が一番高い年齢で７歳５ヵ月と世界でも異例の高年齢になること、大学では４～８月分の学費の空白が生じ、私立大学で１兆円近くになることなどの問題点を指摘。

　解決・解消できるとしても１０数年を要する問題もあるとし、政治、行政のみならず教員、教育行政、子ども、保護者、企業、専門家の意見を踏まえて慎重に検討すべきとした。

　以上を踏まえ、時間をかけた丁寧な社会的論議が必要とし、政府に対しては拙速な導入を決定しないよう要請。併せて、学校休校による子ども、保護者、教職員の不安や心配の声に応える実効性ある対策を至急検討・実施するよう求めた。

　同会は現在、特別委員会を設置して検討すべき課題を整理。近日中に緊急提言を公表する。

(コロナウイルス関連 2020-05-13付)