紋別市教委 学校図書館振興へ 情報活用教育を体系化 地域と協働した教育の核に(市町村 2020-07-13付)
【網走発】文部科学省「学校図書館の振興に向けた調査研究」の委託を受けた紋別市教委は、事業計画をまとめた。南丘小学校を学校図書館推進協力校に指定。情報活用に関する指導の体系化、学校司書の常駐化、コミュニティ・スクールの導入による学校図書館支援の3点について研究を進め、調べ方・学び方を身に付けさせる指導の充実、学校図書館を核にした地域との協働による教育づくりなどを推進する。
市教委は平成30年度と令和元年度、文科省「学校図書館ガイドラインを踏まえた学校図書館の利活用にかかる調査研究」の委託を受けた。
30年度は取組開発型、令和元年度は取組拡充型でそれぞれ研究に取り組んできた。
30年度は、南丘小を研究指定校に、同年度導入された学校図書館管理システムによる蔵書や利用実態の把握、「MMC(南丘小メディアセンター)構想」に基づく校内体制の整備などを推進した。
令和元年度は、南丘小と紋別中学校の2校を研究指定校とし、学校司書の常駐化を見据えた授業方法の研究、小中連携した読書活動の推進などに取り組んだ。
本年度は、学校図書館の振興に向けた調査研究の委託を受け、①情報活用に関する指導の体系化②学校司書の常駐化③コミュニティ・スクールの導入による学校図書館支援―を推進する。
①では、情報活用教育に関する年間指導計画の作成、授業における学校図書館の利用促進などを進める。
②では、本年度から学校司書が常駐化。レファレンスの実施による学習支援、近隣校・市立図書館との相互貸借に関する実務、児童会と連携した学校図書館関連企画などを行う。
③では、学校図書館のスペースを拡大し、新たにコミュニティルームを設置。地域のサロン、読み聞かせ、ボランティア活動などの場とする。
そのほか、地元企業や紋別高校と連携した様々な活動を行い、蔵書の充実や読書活動の推進につなげる。
市教委や南丘小の職員、道立図書館やオホーツク教育局の担当者などで構成する企画運営委員会を22日に開き、研究の方向性などについて協議する。
11月ころには、南丘小を会場に学校図書館見学会・説明会の開催を予定している。
事業計画概要はつぎのとおり。
【事業の趣旨および概要】
人口集積が低く、民間の営利事業が成立しづらい北海道においては、首都圏などと比べ、子どもの学習の機会や学力について、保護者や行政に依存する割合が高い。
このため、保護者の所得や地域の教育環境の差が、子どもの学力や学ぶ意欲にも、より大きな影響を与えていると考えられる。
オホーツク管内にある紋別市は、平成元年にJRが廃止となり、地域振興のために誘致した私立大学も撤退。将来人口予測では、今後20年余りで人口が半減するとされ、同じ管内にある他市と比べても最も厳しい予測となっている。
こうした中、全国学力・学習状況調査結果では、紋別市の平均正答率は道内の市の中で最低水準にあり、定住促進の障害や転勤族の単身赴任につながっているとの指摘もある。このため、将来の地域を担う人材育成の観点から、地域の教育環境の改善や児童生徒の学力向上は、喫緊の課題となっている。
一方、本事業の推進協力校である紋別市立南丘小学校は、過去3年間、学力向上や不登校・問題行動等に対応するため、学校図書館の整備・活用を学校経営の主軸とし、諸課題の包括的解決を図ってきた。
その結果、全国学力・学習状況調査では市内小・中学校9校のうち唯一、全国平均を上回る結果を出している。
同校では、平成30年度には文部科学省「学校図書館ガイドラインを踏まえた学校図書館の利活用にかかる調査研究事業」の取組開発型、また、令和元年度には児童の進学先となる紋別中学校を連携校に加え、同事業の取組拡充型の指定を受け、学校図書館管理システムを導入し、台帳の電子化を図り、蔵書や利用の実態を数値で把握できるようにするとともに、読書活動の推進や授業での学校図書館の活用を進めてきた。
2年度は、学校司書を常駐させるとともに、蔵書の増加・更新を進め、学習・情報センター機能を充実させ、情報活用教育に関する教育課程を見直し、調べ方・学び方を身に付けさせる指導を行う。
また、コミュニティ・スクールを導入し、学校図書館にコミュニティルームを併設することで、学校図書館を核にした地域との協働による教育づくりを推進する。
これらの取組を行う中で、引き続き学校図書館ガイドラインに沿った学校図書館の整備・利活用を進め、学校図書館長(校長)―司書教諭―学校司書―ボランティアの業務分担、心の居場所としての空間デザイン等を行い、本市における学校図書館整備の在り方や活用法の研究・普及を図る。
【過去の事業】
▼平成30年度 学校図書館ガイドラインを踏まえた学校図書館の利活用にかかる調査研究事業(取組開発型)
▽蔵書の適切な廃棄、分類・配架、管理システムの導入、台帳電子化、図書費の増額
▽学校図書館の役割に関する公開研究会の実施=講師―全国学校図書館協議会・渡邊重夫氏
▼令和元年度 学校図書館ガイドラインを踏まえた学校図書館の利活用にかかる調査研究事業(取組拡充型)
▽学校司書配置を前提とした授業方法の研究
▽地域と連携した読書活動の推進・学校図書館整備(隣接高校との連携による読書通帳の制作、地元バス会社と連携した読書感想画コンクールの開催、地元建設会社との連携による農園活動売上金での図書購入)
▽進学先中学校と連携した読書活動の推進(朝読書の統一実施、中学校の定期テスト前部活動停止期間における小学校での家読の推進)
▽札幌市学校司書を招いての公開研究会実施(講師―道学校図書館協会研究部・浅村麻姫子氏)
【企画運営委員会の役割】
▼事業計画に対する助言・事業日程等の調整
▼具体的な活動における助言・調整
▼事業報告の内容に関する検討
【会議開催予定】
▼7月中旬=事業日程の調整および運営体制の検討
▼3年2月上旬=事業報告の内容に関する検討
【学校図書館の現状・元年度時点】
▼資料に関して
▽図書標準が未達成。令和2年1月末現在75・3%
▽分類ごとの偏りが著しい。9類が多く、ゼロ類が特に少ない。調べ方の指導が困難
▽蔵書の鮮度が低い。児童に誤った情報を与える
▽調べ学習など、資料が学習課題の解決に対応できない
▽新聞・雑誌の購入費が公費で賄われていない。PTA予算から支出
▼施設に関して
▽学校図書館のスペースが狭い。図書標準を達成しようとすると書架が不足する
▽パソコン室と離れており、メディアセンターとしての一貫した情報活用教育が困難
▽学習スペースが狭い。隣の図工室を調べ学習用ワークスペースに使用
▽くつろぎのスペースがない
▼人的資源に関して
▽学校司書が配置されていない。市立図書館の巡回司書が週1回程度来校。2年度から学校司書常駐
▽保護者による読み聞かせボランティアの活動が、自分の子どもの卒業などによる会員減少のため休止
▽司書教諭は発令されているが、専任ではない。2年度は担任業務との兼務
▼利用に関して
▽開館時間が限られ、利用の妨げになっている。週3回、中休み・昼休み開館
▽貸し出し冊数の個人差・学年差が大きい
▽授業での学校図書館の利用が増えてきてはいるものの、一部の教科領域に限られる
▽家庭における読書に結び付いていない
【実施内容】
▼情報活用に関する指導の体系化
▽情報活用教育に関する年間指導計画の作成
▽学校図書館経営計画に基づいた授業における学校図書館の利用促進
▽学習に必要な資料の収集
▼学校司書の常駐化
▽学校司書を常駐させ、児童の在校時間中の開館時間を大幅に拡大、読書活動の一層の推進
▽新しい年間指導計画を踏まえたパスファインダーの作成、資料の収集整理
▽レファレンスの実施による学習支援
▽近隣校・市立図書館との資料の相互貸借に関する実務
▽学校図書館見学会の実施・保護者・地域向けの説明会・支援要請
▽児童会と連携した学校図書館関連企画の実施 図書館祭り、校内放送での本や新聞の活用等
▼コミュニティ・スクールの導入による学校図書館支援
▽学校図書館のスペース拡大。学校図書館・廊下・階段・階下教室を含めた空間を扉で仕切り一体化し、セキュリティシステムを分離する。その中にコミュニティルームを設け、地域のサロン、読み聞かせ、絵本・低学年向け図書コーナー、ボランティア等活動の場とする
▽読み聞かせボランティアサークルを、地域住民を加えて再結成する
▽地元建設会社の指導に基づく農園活動の実施、その売上金による資料の充実
▽地元バス会社との共催による読書感想画コンクール「走る作品展」の実施、読書の動機付け(入賞作品を路線バスの広告スペースに展示する)
▽隣接高校総合ビジネス科課題研究として「読書通帳」デザイン依頼
【事業実施によって見込まれる効果・成果】
▼直接効果
▽授業における学校図書館の利用の増加
▽児童の読書量の増加
▽学校図書館に関する地域住民等の参加の増加
▼間接効果(結果として期待されること)
▽授業の質の向上(主体的・対話的で深い学びの実現)、全国水準の学力維持
▽心の教育の充実(言語能力の向上、相互理解の促進によるいじめ・不登校・問題行動の防止)
▽学校教育への保護者・地域住民の理解促進、教員の超過勤務の縮減(学校司書配置による資料収集等の時間の短縮)
【成果測定指標・測定方法】
▼従前から測定している学校図書館活動に関する指標
▽学校図書館を授業で活用した回数、推進協力校での実績数
・実施前(平成30年度41回、令和元年度82回)、実施後目標(令和2年度130回)
・科目等 教科60回(1~6年各10回)、総合的な学習の時間40回(3~6年各10回)、学活等30回(1~6年各5回)
▽家庭における不読率、例年7月ころに児童を対象として学校調査を実施
・実施前(平成29年7月時点33%、30年7月時点33%、令和元年7月時点27%)、実施後目標(令和2年7月時点20%)
▼新たに測定する学校図書館活動に関する指標
▽学年別月平均貸出冊数
・実施後目標=低学年20冊、中学年10冊、高学年5冊
▽4年生以上で新聞を読む児童の割合
・実施後目標=毎日読む30%、週1~2回読む60%
【事業成果の普及方法】
▽報告書の配布
▽市のホームページ掲載
(市町村 2020-07-13付)
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