管内教育活性化生む力に 道小 広域人事調査の分析と考察
(関係団体 2020-08-18付)

 道小学校長会(神谷敦会長)がまとめた令和2年度「広域人事に関する調査の集計と考察」によると、広域人事終了後2年経過した対象者全員が「授業力向上」「家庭・地域とのかかわり方」などの面でよい変化があったと回答していることが分かった。道小は、広域人事の経験が対象者の「教師・人」としての幅を広げ、管内教育の活性化を生み出す力となっていると分析。一方、広域人事の趣旨に見合う人選に苦慮している地域もあるなどの課題を挙げ、優遇措置の明確化、異動者に対する精神的・経済的な負担軽減など改善策を示している。概要はつぎのとおり。

【分析】

▼3年目終了者本人

 「自身の授業力の向上」「職場の仲間とのかかわり」を中心に参加してよかったという回答が多い。対象者が異動した地域で日々努力を重ね、成果を感じたことを読み取ることができる。

 一方、「保護者・地域とのかかわり」「経済的負担」が大変だったとの回答が前年度に続き多い。異動先でのこれまでとは違う地域環境、職場環境に困りを感じることが多いようだ。

 しかし、様々な困りを感じている対象者に対するサポート体制(実務担当者の訪問面談や電話による丁寧なサポート)が充実してきている。こうしたサポートが、対象者の精神的な支えとなっていると推察される。

▼3年目終了時の勤務校校長、元々いた管内への異動先校長

 3年目終了時の勤務校校長の全員が「大いに貢献した・貢献した・貢献した部分がある」と回答しており、学校への貢献を感じていることが分かる。特に、「授業力の向上」「学力の向上」「職場の仲間とのかかわり」など、他管内との人事交流によって教育活動に対する見識を深め、授業や校務改善の活性化に影響を与えたと考えられる。

 実務担当者による意向調査の有無については、3年目終了時の勤務校校長の全員が「あった」と回答しているのに対して、異動先校長では3割以下となっている。

 また、人選に当たって、受け入れる側の学校としては必ずしも希望する人材ではなかった、有意義な人事交流となっていないという記述もみられた。

▼1年目対象者本人

 対象者全員が自らの意思でこの制度に参加している。制度の説明については、7割以上が「校長」からであり、参加した全員が制度について「理解している」「概ね理解している」と回答している。

 対象者の異動先の規模・場所などの希望はかなえられている。

 困りに関しては、準備段階では「引越に伴う費用や住居探し」に関してが多く、着任後は「新しい学校での校務に関することや通院に対する困り」がみられる。

▼1年目赴任校校長、元の管内の勤務校校長

 各校長会への説明会、意見交換会等、制度の趣旨についての周知については、各管内で行われたと回答されている。この制度が浸透してきていることが分かる。

 しかし、異動希望者の決定や受け入れに当たっては、困難に感じることが「なかった」と多くの学校が回答しているものの、一部の管内で広域人事制度の趣旨にそぐわない人選もあったと報告されている。

▼終了後2年経過者本人

 対象者全員が広域人事で「よい変化があった」と回答している。

 「授業力の向上」「家庭・地域とのかかわり方」などを中心に教師としての意識の変化を感じ、職場の仲間と連携しながら、教育活動の改善に積極的に取り組んでいるものと思われる。

 また、他の地域の教育事情を知ったり、他管内の先生方とつながったりしながら、情報交流などを通して、広い視野で物事をみることができているようだ。

 さらに、学校運営、校務分掌、保護者との関係づくりについて学び、地域を生かした教育課程の編成にかかわっている。

▼終了後2年経過者本人・その勤務校校長

 様々な経験をして自信を付けた職員が、戻った管内の学校で貢献している様子が伺える。多くの校長が、対象者の「授業力の向上」「教育課程の改善」など、校内での活躍ぶりについて回答している。さらに対象者は、管理職候補やミドルリーダーとして期待されており、学校全体をけん引しながら周囲によい影響を与えているようだ。

 また、広域人事の経験は、対象者の「教師・人」としての幅の広がりにつながっているとともに、今後、管内教育の活性化を生み出す力となっているようだ。

 一方、管内によっては、広域人事の趣旨に見合う人選に苦慮している声が多く上げられている。他管内の教育活動を体験することで、視野を広め、多様な考えをもつことができるよさや、戻った際の優遇措置(メリット)などを対象者に分かりやすく説明する必要がある。

【考察】

 広域人事に参加した職員は、意欲と使命感をもって3年を過ごしたあと、授業力の向上や視野の広がりなど、教育者としての成長を実感し、元の管内に戻ってその力を発揮している。経験を生かし、職場によい刺激を与え、新しい教育の在り方を伝えるなど、学校の活性化にも大きく寄与している。

 元の管内に戻る際、校長は3年間の実績を勘案し、学校運営に力を発揮できる役割を用意するなどの配慮をしていきたい。

 広域人事の制度については、教育局や教育委員会によって適時関係者への説明が行われている。しかし、地域によっては参加する学校や希望者が少ない状況である。希望者の増加につなげるためには、制度の趣旨や意義が理解されるよう、より一層広域人事の趣旨や意義を丁寧に伝えることが必要である。

 制度のよさを広める取組の一つとして、広域人事を経験した教諭による体験談を伝える場を設けるなどの工夫も必要と考える。なぜなら、広域人事を終えた教諭全員がアンケートの中で「よい変化があった」と回答しているからだ。体験者の具体的な話は、広域人事に対する興味や関心を高めることにつながると思われる。

 異動者については、依然として、精神的な不安、経済的な負担を訴える声が大きい。しかし、教育局や教育委員会の担当者による電話や面談等の継続的な支援が丁寧に行われており、困りは軽減されつつある。

 今後は、3年間を通じた精神的な面を支える支援に加えて、引越し時の費用など経済的な援助がされるとよい。

 異動者の決定については、情報を互いの管内で共有することが重要である。しかし、管内によっては異動者と受入校の希望が合致しないケースもあったようだ。受け入れる学校の体制を整えるために、校長間で異動者についての事前の情報交流を積極的に行っていきたい。さらに、異動者が赴任先で目的意識や見通しをもって積極的に学校運営に参画できるよう、学校の状況や役割を事前に伝える機会があるとよい。何より人事交流にふさわしい人選が不可欠であることは言うまでもない。

▼課題・改善策

▽対象者の選考

 対象者の資質・能力、人柄など、広域人事の目的に合致した使命感の高い人選をする。

 学校改善への目的意識をもって参加する。

 異動に当たっての処遇などを事前に丁寧に説明する。

 3年間を通して、広域人事で異動した教員同士が顔を合わせて交流する機会を設けたり、教育局、教育委員会によるサポート体制の充実を図ったりする。

▽情報の共有(対象者・学校)

 対象者のよさや課題を事前に異動先の校長に情報として提供する。適任者を推薦する。

 住宅のあっせんなど、異動先について多くの情報があると、生活面での不安が解消され、見通しをもって赴任できる。

▽制度の運用

 希望者(適任者)が少ない。対象とする地域の見直しや優遇措置などを明確にする。

 異動対象者は学校の貴重な人材であり、即戦力であることが多い。異動させた場合の人的な補償があると推薦しやすい。

 異動者に対する精神的・経済的な負担への配慮(軽減)を行う。

(関係団体 2020-08-18付)

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