道町村教委連文教施策要望への道教委回答〈下〉(道・道教委 2020-09-16付)
道町村教育委員会連合会(会長・本庄幸賢当別町教育長)の令和3年度文教施策要望に対する道教委の回答はつぎのとおり。
【学校教育の改善・充実②】
▼特別支援教育の充実
▽特別支援学級および通級による指導を担当する教員の研修機会の一層の拡充や教職員定数の改善を図っていただきたい。また、すべての学校に通級指導教室を開設できるよう、開設条件を緩和していただきたい
〈回答〉
道教委では、特別支援学級および通級指導教室を担当する教員の専門性向上を図るため、全14管内において特別支援教育充実セミナーを開催しているほか、道立特別支援教育センターにおいて特別支援教育基本セミナーや自立活動研修講座、小・中学校等特別支援教育研修講座を実施している。また、教員向けの指導資料として、これまで作成した『特別支援学級を支えるために』のほか、個別の教育支援計画の活用に関するリーフレットの活用について、すべての小・中学校等に周知することによって、特別支援学級を担当する教員の指導力向上に努めていきたい。
特別支援学級の教員配置については、標準法に準拠し、学級数に応じた配置となっているが、肢体不自由、自閉症・情緒障がい、知的障がい学級で児童生徒数が7人以上の場合などに道独自の措置として1人加算するほか、通級指導を行う学校への加配措置を行うなど、教職員配置の充実に努めている。
通級指導教室の開設について、加配の必要がない場合においても通級による指導を実施することは可能となっている。また、対象児童生徒の状況によって加配を必要とする場合は、対象児童生徒の状況や国からの加配措置状況等を考慮し、総合的に判断の上、加配措置を決定している。
今後とも、障がいのある児童生徒一人ひとりの教育的ニーズに応じた指導、支援を適切に行うことができるよう、定数措置の一層の拡充について、引き続き国に要望していきたい。
▽公立小・中学校に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒への支援の充実に向け、特別支援教育支援員の配置に当たり、特別支援学校教諭免許状の所有者も確保できるよう交付税措置の増額を図るとともに、特別支援教育支援員の人数に応じた算定基準に改めるよう国に要望していただきたい
〈回答〉
道教委では、特別支援教育支援員の配置の充実が図られるよう、全国都道府県教育委員会連合会と連携し、毎年度、国に対して地方財政措置の拡充を要望しており、一定程度増額が図られてきているが、市町村によっては、必要とする学校すべてに配置がなされていない状況もみられる。
また、道教委が実施している通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒等に関する調査においては、支援を必要とする児童生徒等の割合は増加傾向にあり、各市町村では、財政事情や人材確保が困難な状況にある中、特別支援教育支援員を独自に配置するなど、支援を必要とする児童生徒等の教育的ニーズに応えるため、様々な取組を行っているものと承知している。
道教委としては、各学校や地域の実情に応じて特別支援教育支援員の配置ができるよう、支援員の配置にかかる財源措置の一層の拡充について引き続き国に要望していきたい。
▽現行の特別支援教育就学奨励費においては、重度重複障がいのある児童生徒にかかる修学旅行の付添経費等は、特別支援学校の在籍児童生徒は補助対象であるが、市町村立小・中学校の特別支援学級に在籍する児童生徒は補助対象となっていない。今後、市町村立小・中学校の特別支援学級に在籍する児童生徒についても補助対象となるよう特段の配慮を願いたい
〈回答〉
道教委では、障がいのある児童生徒等の就学に当たり、保護者の経済的負担の軽減を図る観点から、これまでも、特別支援教育就学奨励費負担金等における修学旅行の付添人経費の支給対象範囲拡大など、就学奨励にかかる施策の充実を国に要望してきており、引き続き要望していきたい。
▽障がい種別(特に病弱、肢体不自由児)で学級に複数の子どもたちが在籍の場合は教員の複数配置となるよう国に要望していただきたい
〈回答〉
特別支援学級の教員配置については、標準法に準拠し、学級数に応じた配置となっているが、肢体不自由、自閉症・情緒障がい、知的障がい学級で児童生徒数が7人以上の場合などに道独自の措置として1人加算するほか、通級指導を行う学校への加配措置を行うなど、教職員配置の充実に努めている。
通級指導教室の開設について、加配の必要がない場合においても、通級による指導を実施することは可能となっている。対象児童生徒の状況によって加配を必要とする場合、対象児童生徒の状況や国からの加配措置状況等を考慮し、総合的に判断の上、加配措置を決定している。
今後とも、障がいのある児童生徒一人ひとりの教育的ニーズに応じた指導、支援を適切に行うことができるよう、定数措置の一層の拡充について、引き続き国に要望していきたい。
▽児童生徒が医療機関に入院(短期)し、併設する特別支援学校やいわゆる院内学級で教育を受ける場合の転校手続きの特例・簡素化を国に要望していただきたい
〈回答〉
道教委は、これまでも、全国都道府県教育委員会連合会と連携し、国に対して、病気のため入院療養中の児童生徒に対しては、いわゆる院内学級等への学籍異動事務を省略し、事務軽減および円滑な児童生徒の異動を行うことができるようにすること、また、いわゆる院内学級等で実施した教育指導を学籍校の教育課程の一部とみなす制度に改正することを要望してきており、引き続き要望していきたい。
▼高校の配置
▽全日制小規模高校および定時制高校の配置については、これからの高校づくりに関する指針によって基本的な考えが示されているが、地方(郡部)においては、高校の地域振興に果たす役割が大きいので、都市部と郡部の違いを考慮し、小規模校を抱える地域の意見を聞いて、配置の見直しは慎重に検討いただきたい
〈回答〉
本道の中学校卒業者数は、ピーク時の半分を下回る状況となっており、こうした中、一定規模の生徒や教職員による活力ある教育活動を展開する観点から、高校の再編整備を進めているが、配置計画の策定に当たっては、各学区ごとに開催している地域別検討協議会に加えて、個別に市町村を訪問する機会や地元の検討の場などを通じて地域の人たちの意見を伺うとともに、学校や地域の実情を十分に考慮しながら進めている。今後とも、高校における教育水準の維持向上や教育環境の充実を図ることを基本とし、広域な本道における都市部と郡部の違い、今後の中卒者数、地域の実情や学校・学科の特性などを考慮し、地域別検討協議会などにおける地元市町村の意見なども参考としながら、適切な高校配置について検討していきたい。
なお、これからの高校づくりに関する指針では、地域連携特例校等において、5月1日現在の第1学年の在籍者が20人を下回った場合にあっても、地域における高校の教育機能の維持向上に向けた具体的取組とその効果を勘案した上で、再編整備を留保することとしており、今後とも、地域との連携を一層深めながら魅力ある高校づくりに努めていきたい。
▽高校の総合学科を設置するに当たって、地方における中等教育の振興、高校の活性化に果たす役割が大きいので、地域の実情を考慮し設置していただきたい
〈回答〉
道教委としては、総合学科を平成9年に設置して以降、できるだけ多くの通学区域に設置してきた。現在、町立を含め16校設置している。
総合学科の設置に当たって、地域の特性に応じた教育内容の設定や教育活動における地域との連携が重要であることから、これまでも地域の人たちや学校関係者の理解を得ながら進めてきた。今後とも、地域の人たちの要望等を踏まえ、中学校卒業者数の状況や進路動向、都市部と郡部との違い等を総合的に勘案しながら、これからの高校づくりに関する指針に基づき取り組んでいきたい。
▽つぎの事項について、特段の配慮を願いたい
①公立高校配置計画地域別検討協議会における意見や、地元市町村の理解や要望を高校の配置計画に対して大きく斟酌する材料とする
②都市部と郡部の教育的環境に格差を生じることのないよう配慮する
③市町村立高校設置者を含め、各圏域ごとに特色ある教育環境を道と市町村が共に保障していくような協議の場を設定する
〈回答〉
中学校卒業者数の減少が続く中、教育水準の維持向上を図り、活力ある教育活動を展開するためには、高校の再編整備はやむを得ない面もあると考えているが、再編整備の検討に当たっては、地域の実情や教育的観点からの望ましい学校規模の考え方などを丁寧に説明するとともに、地域の人たちから意見を伺うことが何より大切と考えている。
今後とも、高校が地域で果たしている役割や、高校教育を取り巻く環境の変化を見極め、地域別検討協議会をはじめ様々な機会を通じて、保護者や地域の人たちの意見などを伺いながら、魅力ある学校づくりを進めるとともに、適切な高校配置となるよう努めていきたい。
▼地域と学校の連携・協働体制構築事業の充実
地域と学校の連携・協働体制構築事業にかかる補助事業の継続と補助の増額を国に要望していただきたい
〈回答〉
地域と学校の連携・協働体制構築事業については、これまでも国に対し財源措置の継続および拡充を要望してきており、今後とも、全国都道府県教育委員会連合会などとも連携しながら国に要望していきたい。
▼フッ化物洗口剤の支援
新規にフッ化物洗口を実施する公立の幼稚園や小・中学校に対して、24年度と同様にフッ化物洗口に必要な薬剤の支援をお願いしたい
〈回答〉
フッ化物洗口については、未実施市町村における円滑な導入の支援の一環として、25年度から町村教委連の要望を受け、知事部局と連携し、新規にフッ化物洗口を実施する公立の学校等に対して、初年度分の薬剤支援を行っている。
道教委としては、引き続き知事部局と連携し、新規にフッ化物洗口を実施する学校等への負担軽減措置について検討していきたい。
▼子どもたちのインターネット利用にかかる施策の推進
▽ネットパトロール業務の継続をお願いしたい
〈回答〉
道教委では、児童生徒のネットの不適切な利用によるネット上のいじめ等の問題行動の未然防止、早期発見・早期対応のために、国の補助事業を活用しネットを監視する取組や、ネットトラブルの未然防止にかかる学校の取組を支援している。
ネットパトロールは、いじめ等の未然防止や早期発見・早期対応を図る上で重要な事業と考えており、引き続き、国に対して、支援事業の拡充について働きかけていきたい。
▽高速回線が整備されていない地域の学校では、ICT機器を十分に活用できないので、高速通信網の整備に対する優先的配慮および明確な財源措置を国に要望していただきたい
〈回答〉
国の第2次補正予算において光ファイバーの整備事業が盛り込まれ、道(知事部局)においては、未整備の地域に対し、事業を実施するよう働きかけを行っていると承知している。
道教委としては、こうした地域の整備状況を踏まえながら、北海道にふさわしいICT教育の在り方や高速大容量通信網の有効性などについて、道総合教育会議の場において知事と協議を深めていきたい。
【生涯学習・社会教育の振興・充実】
▼生涯学習の振興
▽生涯学習を推進するため、各種施策の充実を図っていただきたい
〈回答〉
道教委としては、道民の生涯学習の意識や状況などを把握し、本道の生涯学習推進の指針として27年2月に策定した第3次道生涯学習推進基本構想で示している3つの重要な視点「道民の学びを行動へつなげる」「子どもたちの学びを広げ、支える」「地域のよさや課題を学ぶ」を踏まえ、今後の生涯学習推進について第14期道生涯学習審議会から審議のまとめをいただいた。
今後、その意見をもとに、道生涯学習推進本部を中心に、市町村、NPO・企業等との連携・協働をより深めながら、道民カレッジや社会教育施設の実施する指導者養成事業など各種施策の充実を図り、さらなる生涯学習推進に向けた環境整備に取り組んでいきたい。
▽学校図書の整備充実に加え、新聞を十分に配備できるように、また、学校図書館司書の配置についても、交付税措置の継続および増額について国に要望していただきたい
〈回答〉
29年3月に学習指導要領が改訂され、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を図るために、学校図書館の役割が一層期待される中で、学校図書館図書整備等5ヵ年計画において、小・中学校の学校図書館における図書整備、新聞配備および学校司書の配置にかかる地方財政措置が29年度から拡充された。
道教委では、学校司書の配置や学校図書館の環境整備が充実するよう、学校司書の定数措置の新設および配置にかかる地方財政措置の拡充などについて、これまでも国に要望しており、引き続き要望していきたい。
▼地域文化の振興
▽文化財保護のため、国庫補助事業計画の完全採択および国庫補助の増額を図るよう国に要望していただきたい
〈回答〉
国民共有の財産である文化財は、つぎの世代へ適切な形で保存・伝承していくべきものであるため、その保存と活用にかかる国庫補助事業計画の完全採択等について、要望の趣旨を踏まえ、国に働きかけていきたい。
▽埋蔵文化財発掘調査費用の国庫補助制度の改善および専門職員の配置についての財政的支援を国に要望していただきたい
〈回答〉
これまでも道の「国の施策および予算に関する提案・要望」において、専門職員の法的位置付けを明確化する必要があることなどについて、国に要望してきた。引き続き国に要望していきたい。
▼社会教育指導体制の強化
▽社会教育主事の専任配置については町村においても努力しているが、生涯学習推進のため、また、今後のコミュニティ・スクール制度を考慮し、学校教職員の社会教育主事資格取得についてお願いするとともに、当面は派遣社会教育主事(スポーツ担当を含む)制度の継続をお願いしたい。
〈回答〉
コミュニティ・スクール制度においては、学校と地域をつなぐ役割を担うコーディネート機能の充実が重要であり、コーディネート機能の役割を果たす者として社会教育主事の活用も期待されていることから、道教委では、本年度から文部科学省の委嘱を受けて社会教育主事講習を実施し、札幌会場以外の地方会場を設けることで、教職員が受講しやすい環境を整備した。
しかし、道教委に在籍する社会教育主事は年々減少傾向にあり、人材不足によって市町村の社会教育推進体制整備への支援、青少年の体験活動の充実、家庭教育への支援など、今日的な課題等に対応するため実施してきた派遣社会教育主事(スポーツ担当を含む)制度の維持が困難な状況にある。
社会教育主事講習の地方会場設置等によって、市町村職員も受講しやすい環境を整えていることから、道教委としては、派遣社会教育主事制度は継続するものの、当面、新たな派遣は見合わせることとし、市町村の自主配置が進むよう取り組んでいきたい。
【いじめ・不登校対策】
▽スクールカウンセラーの配置について、スクールカウンセラー活用事業のより一層の拡充を図っていただきたい
〈回答〉
道教委では、国の補助事業を活用してスクールカウンセラーの配置を推進しており、これまで、派遣方法を改善して配置拡大を図るとともに、本年度からスクールカウンセラーに助言を行うスーパーバイザーを各管内に配置するなど、制度の充実を図っている。
また、災害や事故等のため、緊急に児童生徒の心のケア等が必要となった場合などには、各市町村教委の希望に基づき、随時派遣することも可能としている。
スクールカウンセラー活用事業は、学校の教育相談体制の充実を図る上で重要な事業であると考えており、引き続き、国に対して制度の充実を働きかけていきたい。
【NHKテレビの放送受信料免除措置の継続】
▽学校での放送教育の利用は多く、その教育効果も極めて高いものがあるので、教室等の放送受信料免除措置について継続されるよう、日本放送協会(NHK)に対して働きかけていただきたい
〈回答〉
NHKの放送受信料の免除措置については、義務教育諸学校等における教育内容の一層の充実・向上と放送教育の普及・拡大の観点から、これまで、国に対して要望してきている。
今後とも、日本放送協会の動向を注視しながら、引き続き国に対し、日本放送協会への働きかけについて要望していきたい。
(道・道教委 2020-09-16付)
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