道教委 コロナ防止要望に回答 リスク低減し適切に評価
(道・道教委 2020-09-16付)

 道町村教育委員会連合会(会長・本庄幸賢当別町教育長)の「新型コロナウイルス感染防止に関する要望書」に対する道教委の回答はつぎのとおり。

【学校再開後の教育課程の運営等】

▽長期の休業によって授業時数の確保が難しい事態になった。国に対し、学習指導要領に定めた学習内容の見直しの特例措置を求めてほしい

〈回答〉

 道教委としては、臨時休業が長期化する中にあっても、すべての子どもたちが社会で自立するために必要な学力を身に付けることができるよう、学習指導要領に示された内容を確実に指導することが重要と考えている。

 なお、国においては、各学校が時間割編成の工夫や長期休業期間の短縮、土曜日の活用、学校行事の重点化等の取組を行い、学校における指導を充実したとしても、なお年度当初予定していた内容の指導を本年度中に終えることが困難である場合の特例的な対応として、学習活動の重点化にかかる考え方を示している。

▽再開後については、遅れた分の補充や個別の指導の必要性がさらに高まっていくと考えられる。十分な対応を可能とするためにも、退職教員や学習支援のための人材の登用を拡充し、学習指導の充実が図られるようにしていただきたい

〈回答〉

 道教委としては、新型コロナウイルス感染症対策を図るための国の補助事業を活用し、少人数指導のサポートや家庭学習・提出物のチェックなど、教員の指導業務を支援するための学習指導員を配置する新たな事業を推進しており、また、退職教員の登用に関しては退職教員等外部人材活用事業によって退職教員や社会人等を講師として配置し、それらを活用し、児童生徒の学力向上に資する事業を実施しており、今後とも、その活用について促していきたい。

▽端末での校外学習や緊急時の家庭学習を担保するには、LTE通信が学習活動環境としては最適であることから、端末にかかる通信料の国の補助をお願いしたい

〈回答〉

 道教委としては、全国都道府県教育委員会連合会と連携し、国に対して、臨時休業期間中等において、児童生徒が自宅でオンライン学習をする際の通信料を無料にすることなど、国の責任で通信事業者と連携した支援策を講じるよう要望してきている。今後も、引き続き必要な対応を行っていきたい。

▽GIGAスクール構想については、予算的にも機材の調達の面でも難しい状況にある。財政措置や機材の確保など、道教委には今後も後押しを願いたい

〈回答〉

 道教委としては、全国都道府県教育委員会連合会と連携し、国に対して、校内通信ネットワーク整備に関し、「このたび、公立学校情報通信ネットワーク環境施設整備費補助金の内定額が示されたが、多くの地方公共団体で申請額より大幅に圧縮された額となっている。

 交付額の圧縮は、計画した内容どおりに事業を進められないといった教育行政に対する影響や、国が示したとおりの財源で事業を進めていくことができないといった財政計画に与える影響は大きいものであるため、交付額を圧縮することなく、至急財政措置を講じること。併せて、次年度以降、地方公共団体が計画する事業が円滑に実施できるよう、十分な予算を確保すること」と要望している。

 また、1人1台端末整備に関し、「各学校において、持続的にICT機器が活用できるよう、端末整備完了後における機器の保守管理および端末更新時の費用についても国庫補助の対象とし、継続的かつ十分な財政支援を行うこと。また、端末等の更新についての考え方を事前に提供すること」「デジタル教科書をはじめとした学習用ソフトウェア等の充実や、1人1台端末整備に伴う通信量の増加に対応できる校外通信ネットワークの整備等に必要な財政措置を講じること」と要望しており、いずれについても、引き続き要望していきたい。

▽臨時休校が長引き、学校生活に不安を覚えている子どもたちが多いと推察される。特に、受験を控えた中学3年生については、内申点等のこともあって大変な不安をもっていると思われる。高校受験について変更点等があれば、早めの周知をお願いしたい。また、教育課程の達成状況について、必ず達成すべき内容や次年度へ引き継ぎ可能な内容など詳細な指示についてもお願いしたい

〈回答〉

 道教委としては、感染拡大リスクを可能な限り低減しつつ、教育活動を継続しながら、一人ひとりの学習状況をきめ細かに把握し、適切な評価を行うことによって、高校入学者選抜等、卒業後の進路に向け、生徒が不利益を被ることがないよう、学校訪問等の機会を通して各学校に指導助言していきたい。

 臨時休業が長期化する中にあっても、すべての子どもたちが社会で自立するために必要な学力を身に付けることができるよう、学習指導要領に示された内容を確実に指導することが重要と考えている。

 学校の再開に当たり、各学校に対し、これまで指導できなかった内容の習得に必要となる授業時数を明らかにした上で、年間指導計画の見直しを行うよう通知した。

 なお、国においては、各学校が時間割編成の工夫や長期休業期間の短縮、土曜日の活用、学校行事の重点化等の取組を行い、学校における指導を充実したとしても、なお、年度当初予定していた内容の指導を本年度中に終えることが困難である場合の特例的な対応として、学習活動の重点化にかかる考え方を示している。

▽臨時休業に伴う学習の遅れの補完や3つの密を避けるため、少人数指導のための教員の加配措置についてお願いしたい。また、1クラスサイズの人数が20人以下の学級を少しでも多く確保願いたい

〈回答〉

 このたびの国の補正予算では、新型コロナウイルス感染症の影響による臨時休業の長期化や段階的な学校再開に向けて、学習保障に必要な人材を緊急的に追加配置することが盛り込まれている。

 学校における環境は地域によって多様であり、学習の進度は臨時休業の期間や分散登校の回数、家庭学習の内容等によって様々であることから、道教委としては、市町村教委において、このたびの教員加配の措置等を有効に活用し、子どもにとって最適な学習環境を整えていただきたい。

 なお、少人数学級の拡大など学級編制基準の見直しについては、国の新たな定数改善が必要であると考えていることから、全国都道府県教育委員会連合会などとも連携し、国に対して、改善が行われるよう強く要望していきたい。

▽児童生徒の育成に不可欠な学校・家庭・地域の連携・協働の体制を整え直すことと併せて学校教育活動の適正化を図ることが肝要であり、授業時数の確保などによって学校教育を平時に戻すことを念頭に置いた短期間での正常化には慎重であるべきと考える。国・道・市町村の教育振興計画を見直す等の取組も必要ではないか

〈回答〉

 臨時休業の長期化に伴う年間指導計画の見直しに当たっては、授業時数を形式的に確保するのではなく、児童生徒の過度な負担とならないよう十分配慮しながら、学校行事等も含めた学校教育ならではの学びを大切にするなど、効果的な学習活動の工夫を行うことが重要であると考えている。

 このため、道教委では、学習指導要領に示された各教科等の内容をすべての児童生徒が身に付けることができるよう、年間指導計画の見直しや指導方法の一層の工夫改善等によって、学びの保障のための教育課程を編成するなど、適切に対応するよう、市町村教委に通知した。 

 道教育推進計画については、教育基本法に基づく教育振興のための基本計画として、また、道政全般に関する政策展開の基本方向を示している道総合計画における特定分野別計画として位置付けられており、現行の計画期間は2018年度から2022年度までの5年間と定めている。

 道教委としては、新型コロナウイルス感染防止対策や教育に関する諸課題について、現行推進計画の点検・評価を十分踏まえながら、迅速かつ的確に対応していきたい。

【オンライン・システム】

▽端末機器は、国において予算措置がされて整備は可能となっているが、各家庭との通信料金については、個人または各自治体の対応となっている。すべて自治体の負担となれば経費は多大であることから、国における負担を要望する。また、オンライン対応で必要となるシステムの導入や、ライセンスにかかる経費についても強く要望する

〈回答〉

 道教委としては、全国都道府県教育委員会連合会と連携し、国に対して、臨時休業期間中等において児童生徒が自宅でオンライン学習をする際の通信料を無料にすることなど、国の責任で通信事業者と連携した支援策を講じることや、ソフトウエアの経費やネットワークおよび端末整備後の機器の保守管理等の維持にかかる経費、更新時の費用について、耐用年数やランニングコストなどを踏まえた継続的かつ十分な財政措置を行うよう要望してきており、引き続き必要な対応を行っていきたい。

▽オンライン・システムについては、各学校や各町村教委が様々なシステムで試行している状況にあるが、今後のオンラインを見越したときに、国において安心・安全な学校教育用として推奨したシステムの開発を要望する

〈回答〉

 道教委としては、全国都道府県教育委員会連合会と連携し、国に対して、「新型コロナウイルス感染症にかかる全国での一斉臨時休業を踏まえ、今後、災害や感染症の発生等による学校の臨時休業等の緊急時においても、児童生徒の学びが保障できるよう、遠隔教育の制度的な検討を進めるとともに、児童生徒がICTを効果的に活用し、家庭等の場でも学び続けることができるような仕組みづくりを進めること」と要望してきており、今後も引き続き要望していきたい。

▽オンライン授業を実施する場合、限られた期間の中で効果的な準備を進めるためには、専門家が作成した教材コンテンツが必須であると考えることから、学習用コンテンツ作成を主導していただきたい

〈回答〉

 道教委としては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う臨時休業中において、子どもたちの家庭学習を支援するため、ウェブページ上にどさんこ学び応援サイト(義務教育課)、Online学習サポートサイト(高校教育課)、学び・生活サポートサイト(特別支援教育課)を開設し、学習の振り返り教材や授業を撮影した動画等を掲載するなど、教材コンテンツを整備してきた。

 今後も、民間事業者作成の活用しやすい教材の紹介を含め、必要に応じて新たな教材を作成してウェブページ上に掲載するなど、教材コンテンツの充実を図っていきたい。

▽タブレット端末などを活用した授業の展開や、オンライン授業の安定的かつ効果的・効率的な実施に向けては、全教職員が積極的に活用できるようにするための全体的なスキルアップが急務であり、研修計画や研修内容の充実を図っていただきたい

〈回答〉

 教員によるICTの効果的な活用に向けて、これまでも初任段階教員研修などの基本研修のほか、道立教育研究所の専門研修などで行っている。本年度も初任段階教員研修などの基本研修で取り上げるほか、道立教育研究所の研修講座では、9月に小学校プログラミング教育実践研修、11月にタブレット活用基礎研修を開催する予定であるほか、管内研修センター等連携研修講座(ミニ道研)において、「小・中学校におけるプログラミング教育」を9月に後志管内とオホーツク管内で開催する予定。

 今後とも、ICTを活用して指導する能力の向上を図る教職員研修の充実に努めていきたい。

【9月入学制導入】

▽国において、ただちに導入を結論づけることはないとのことだが、今後、検討を続ける際に教育現場においては、クリアすべき問題が山積みであり、拙速な導入をしないよう国に対し慎重かつ十分な議論をお願いしたい

〈回答〉

 9月入学については、外国の秋の入学に合わせることで国際化が進むという利点がある一方、幼稚園や保育所との接続の問題や、就職時期の遅れにつながるといった指摘もあり、社会全体に大きな影響を及ぼす事案であるとして、早期の導入に慎重な意見が多かったものと理解している。

 道教委としては、9月入学の導入に当たっては、国民的合意を得ることを前提としつつ、グローバル社会に対応した教育改革の観点から、議論を深めていくことが重要であり、必要に応じ、市町村教委や校長会などと連携しながら、国等に意見を伝えていきたい。

【健康診断時の医師の安全確保】

▽児童生徒の健康診断に対して、医師にフェイスガードやガウンを支給するための財政的支援をお願いしたい

〈回答〉

 新型コロナウイルス感染症の影響によって必要となった児童生徒の健康診断実施における感染症予防対策に関する衛生用品については、国の学校保健特別対策事業費補助金(学校再開に伴う感染症対策・学習保障等にかかる支援事業)による支援対象となっている。

(道・道教委 2020-09-16付)

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