寄稿 新型コロナ感染拡大下 児童生徒の心のケア (上) 情報の真偽確認 正しく伝達 北海道文教大学人間科学部子ども発達学科教授 石垣則昭氏(コロナウイルス関連 2020-11-04付)
道文教大学人間科学部子ども発達学科の石垣則昭教授は「新型コロナウイルス感染拡大下における児童生徒の心のケア」と題し、本紙・北海道通信日刊教育版に寄稿した。情報の真偽の判断と正しい情報の伝達、心の交流を促す教師の言葉かけなどの重要性を訴えている。全2回で掲載する。
長期化している新型コロナウイルス感染症対策下では、児童生徒のメンタルヘルスが不調に陥りやすい状況となります。
メンタルの不調とは「本人の通常の行動様式からのズレ」をいいますが、ふさぎ込んでいる様子がみられる、遅刻や欠席が目立つようになってきた、顔色が良くなく口数が少ない、身だしなみが乱れてきた、学習意欲が低下し宿題をやってこない、イライラし児童生徒同士のトラブルが多くなってきたなどの日常的な変化をいいます。
新型コロナウイルス感染症拡大下では、人の集まる場所等への外出に注意を払うなど、生活様式を変えなければなりませんが、これが生活空間への閉塞感となりストレスの要因の一つとなっています。また、経済的不況下で保護者のイライラが募り、以前よりも虐待が多くなっていると言われています。抑うつ状態(気分が落ち込んで何にもする気になれない、憂鬱な気分などの不快な心の状態)によって、不登校傾向の児童生徒も増加傾向にあるとも言われています。
このような状況の中、5月の寄稿「登校再開のレジリエンス」に引き続き、「新型コロナウイルス感染拡大下における児童生徒の心のケア」と題し寄稿いたします。
新型コロナウイルス感染拡大下でのメンタルヘルスへの影響は、兵庫県心のケアセンター加藤寛センター長(2020)によると、①心理的反応(感染リスクが引き起こす不安や恐怖に対する反応)②環境的反応(行動制限など環境がもたらす反応)③情報的反応(情報の混乱による批判と不信による反応)―としています。
心理的反応は、新型コロナウイルスがどこに潜んでいるか分からない、抜本的な治療方法が確立されていない、有効なワクチンが開発中である、いつ終息するのか不明であるなど、不安と恐怖による心の反応を言います。環境的反応は、今までの生活様式の変化がストレスとなり、情報的反応は、専門家の知識以外の様々な情報が飛び交い、それがメンタルヘルスを低下させる要因の一つとも言われています。
今回は、児童生徒が情報による不安をもたらす誤情報のバウンディングについて説明します。
誤情報の発信は、周りの大人の影響を受けやすい児童生徒にとって、大きな不安と恐怖につながります。さらに、誤情報の拡散は差別や偏見につながり、いじめや不登校などの原因ともなります。
根拠のあるなしにかかわらず、人は知っている情報を誰かに伝えなければならないという親切心に駆られます。記憶に新しいのは、新型コロナウイルスによってトイレットペーパーがなくなるといううわさが国内中に広まり売り切れとなりました。しかし、この問題は人の不安や恐怖がもたらした誤情報であると言われています。
誤情報はいつの間にか「~らしい」という情報が口伝えとなり、確定的に伝達されていきます。
誤情報の伝達は雑談によることが多いと言われていますが、雑談は人間関係づくりの手段であり感情のやり取りです。誤情報であっても関係性を遮断したくないため、耳を傾けることが多くあります。
児童生徒の心のケアのためには、周りの大人である教師や保護者が正しい情報であるかどうかを判断し、児童生徒に正しく伝えるようにしなければなりません。
新型コロナウイルス感染が続く中、厚生労働省や北海道から出された情報をあらためて確認されてはどうでしょうか。
(コロナウイルス関連 2020-11-04付)
その他の記事( コロナウイルス関連)
当日体調不良 途中退室の場合 追試験の受験可能に 大学共通テストで対応策
大学入試センターは6日、令和3年度大学入学者選抜にかかる大学入学共通テスト新型コロナウイルス感染症予防対策等を公表した。当該試験日に受験者が体調不良で他の受験者に影響が出ると監督者が判断し...(2020-11-11) 全て読む
警戒ステージ移行 感染染症対策徹底を 道教委が通知
道教委は7日付で通知「道の警戒ステージの移行に伴う感染症対策の徹底について」を各教育局長、札幌市を除く市町村教委教育長、道立学校長に発出した。 道新型コロナ感染症対策本部会議において、...(2020-11-10) 全て読む
【解説】新型コロナで全国知事会が緊急提言
全国知事会は5日、全国知事会議をウェブ会議で開催し、将来世代を応援する緊急提言をまとめた。「新型コロナウイルス感染症への対策強化」「次世代育成支援の根本強化」「困難な環境にある子どもへの支...(2020-11-09) 全て読む
道議会文教委員会(令和2年11月4日) 安全・安心確保へ実施時期等検討を 3年度の修学旅行
令和3年度の修学旅行実施について質疑が行われた。 道教委の小松智子学校教育局長は、本年度の実施について新型コロナウイルス感染症の感染リスクを回避する観点から、各市町村教委や各学校に対し...(2020-11-09) 全て読む
寄稿 新型コロナ感染拡大下 児童生徒の心のケア (下) 安心与える言葉かけを 北海道文教大学人間科学部子ども発達学科教授 石垣則昭氏
ソーシャルディスタンスなど感染予防のための生活様式を変えることは当然必要なことですが、同時に新型コロナウイルスの終息を見越した児童生徒の心のケアが必要です。 児童生徒の成長は、人間関係...(2020-11-05) 全て読む
警戒ステージ移行 道立校行動基準 同居家族発熱でも出停 道教委 健康確認は玄関内で
道教委は28日、新型コロナウイルス感染症の警戒ステージ移行に伴う道立学校の行動基準について各道立学校長に通知した。新たに、児童生徒の同居家族に風邪症状がみられる場合も出席停止の措置を取ると...(2020-10-30) 全て読む
新型コロナ警戒 ステージ2に移行 道が対策本部会議
道は28日の道新型コロナウイルス感染症対策本部会議で、同日をもって警戒段階の5段階中、2段階目となる「警戒ステージ2」に移行することを決定した。 同日から2週間を集中対策期間に設定。発...(2020-10-29) 全て読む
【解説】コロナ 学校内感染16%
文部科学省は、学校における新型コロナウイルスの感染状況(6月1日~9月30日)をまとめた。感染者数は、児童生徒が1816人、教職員が277人。感染経路は家庭内感染が半数を占めており、学校内...(2020-10-28) 全て読む
【解説】コロナ差別・偏見なくそう
文部科学省は、新型コロナウイルス「差別・偏見をなくそう」プロジェクト啓発動画を同省ホームページに公開した。学校における新型コロナウイルスの感染者の発生が継続する中、差別や偏見が生じないよう...(2020-10-26) 全て読む
民間検定試験実施ガイドライン改訂 全国検定振興機構
全国検定振興機構は20日、「民間検定試験等の実施における新型コロナウイルス感染症対策ガイドライン」を改訂し、公表した。受検当日の健康状態を確認する際、検温の温度「37・5度以上」の記載を削...(2020-10-26) 全て読む