寄稿 新型コロナ感染拡大下 児童生徒の心のケア (下) 安心与える言葉かけを 北海道文教大学人間科学部子ども発達学科教授 石垣則昭氏(コロナウイルス関連 2020-11-05付)
ソーシャルディスタンスなど感染予防のための生活様式を変えることは当然必要なことですが、同時に新型コロナウイルスの終息を見越した児童生徒の心のケアが必要です。
児童生徒の成長は、人間関係の中で育まれ、周囲に受け入れられ、共感されることで心が安定し、人格や社会性を高めていきます。新型コロナウイルス感染拡大下では、学校や地域での活動が低下し大切な人間力を発達させる機会が減少しています。
その対応策として、単に「わいわいガヤガヤ」の機会を増やすということではありません。
学校生活の7割は授業です。授業中、児童生徒同士や教師と心の交流をどう図るかです。説明的な授業だけでは、心の交流を図る機会は少ないと思いますが、教師が意識することで、心の交流を図ることができます。児童生徒の発言や活動に対して、教師が励ましの言葉をかけることや、児童生徒同士が教師の促しに応じて安心や満足を供与するよう、言葉をかける場を設けてはどうでしょうか。
例えば、児童生徒の発言に「他の人の考え方を深めるよい意見です」「よく考えることができましたね」などや、「今の○○君の発言の立派なところはどこですか」「○○さんの発言を大切にして学習を進めていきます」など、教師が一言付け加えることで、認められているという思いが広がり、心の安定につながると思います。
さらに、短学活の中では、ソーシャルディスタンスを保ちながらグループとなり、特定の児童生徒に偏ることがないようにしながら、全員発言を前提に、きょう1日の活動を認め合う場を設けてはどうでしょうか。
また、教師の負担増とならないように、1日数人ずつ児童生徒との交換日誌も有効だと思います。
さらに、内観法(自分自身の内面をみつめる)を活用した「きょう1日の私」と題した日誌をつけさせることもできます。
一例を挙げましたが、工夫をされ児童生徒の心のケアと人間力を育む取組を期待しています。
新型コロナウイルス感染拡大の予防策が数ヵ月に及んでいますが、対応に馴れ(心理学でいう馴化:ある特定の刺激を繰り返し長時間にわたって接することで、その刺激に対する反応が薄れていく現象)が生じているとの指摘があります。
新型コロナウイルス感染拡大の当初は誰もが緊張し、その対応に追われました。しかし、学校再開後数ヵ月が経過した今、感染対策への馴れはないでしょうか。
学校における感染予防は、特定の先生の指導だけで徹底できるものではありません。教師による指導の軽重が児童生徒の不徹底となり、不安や恐怖を呼び込むことになります。
また大人が、見えないものへの不安に駆られるために生じる過剰反応も、取り沙汰されています。
過剰反応はゼロリスク志向ともいわれ、少しでもリスクのあるものは禁止すべきだとして必要以上に対応を図ろうとし、それが児童生徒のストレスになる場合もあります。
児童生徒やご自身を守るため、この時期、あらためて正しい知識による実践を見直されてはどうでしょうか。
(コロナウイルス関連 2020-11-05付)
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