【PICK UP2020】No.4 指導方法向上へ 時間を確保 札幌市 小学校専科指導の導入(札幌市 2020-12-17付)
授業は1日約6時間。5分間で授業準備を行い、給食指導後の昼休みは児童の対応に追われる―。とある小学校教員の分刻みの1日だ。札幌市教委は、小学校高学年における教科担任制の導入を見据え、ことし4月から専科指導教員の加配を開始した。学校現場からは勤務負担軽減への効果に期待の声が上がる一方、専門性の高い教員の確保などの課題も浮かび上がる。
ことし4月、小学校の新学習指導要領が全面実施となった。中央教育審議会は高学年の指導内容の高度化を踏まえ、令和4年度から算数、理科、英語の3教科を優先的に教科担任制とすることを例示している。
市教委は国の加配を受け、これまでチーム・ティーチングによる指導を目的としていた教員の加配事項を、本年度から小学校専科指導(教科担任制を見据えた発展的見直し部分)に変更。高学年の専科指導に活用したい加配定数の希望調査を開始した。
◆教員の負担が軽減
理科と家庭科の専科指導を導入している月寒東小学校(佐藤達也校長)では、専科指導教員が5・6年生の授業を担当。評価も行うため、担任は空き時間に、他教科のテストの採点や授業の準備ができるという。佐藤校長は「実験器具や材料の準備に時間が割かれる教科。専科指導を導入したことで教員の負担軽減につながっている」と話す。
高学年の担任は「1週間当たり1時間程度の空き時間が専科指導導入後、4~5時間に増加した。授業時数の軽減による時間外勤務時間の短縮など効率的な勤務体系の確立が進んだ」と効果を実感している。
しかし、現状の制度では、専科指導教員の多くが再任用教員や非常勤講師。勤務時間がハーフタイムの場合、午前中に専科指導教科を設定しなければならず、学校現場は「時間割編成が難しい」と頭を抱えている。
また、「専科指導の加配教員が当たらなかった」「異動などを考えると次年度の見通しが立たない」という声も聞こえており、専科指導教員の安定した確保が課題となっている。
充実した授業を等しく提供するため、市教委は平成28年から英語専門教師配置事業を展開。英語免許などの資格をもつ教員が1日当たり約5時間の巡回専科指導に当たっている。
取組は専科指導導入の先駆けとなったが、外国語以外の教科ではいまだ専科指導の確立が難しい。
◆校内研の体制構築
教員の指導力を高める体制構築を求める意見もある。
ある研究団体の役員は「特に理科を得意とする教員数が少ないのでは」と分析。
道内で小学校教員免許を取得できる大学の2次試験科目は国語、数学、英語の3科目。中学校教員養成課程では教科別に受験科目が定められているが、文系の受験生は高校の学習までに知識がとどまっているという。
ある研究団体の会員は「全教科を指導する小学校教員は得意教科も様々。中学校教員の乗り入れ授業なども視野に入れるべき」と話す。
「どの学校でも専門性の高い指導を提供できる体制づくりが必要」と話すのは、山鼻南小学校(東間義孝校長)の竹村正教諭。
同校は竹村教諭をはじめ、高学年の社会、図画工作、家庭科に3人の専科指導教員を配置している。市社会科教育連盟小学校研究部長である竹村教諭の授業には、中学年の担任教員も見学に訪れる。指導方法について意見を交わすなど自身のノウハウを広く教員に語り伝えている。
同校では15分で各教科指導のポイントなどを教示する研修も企画。研究の積み重ねによって専門性を高める試みだ。
東間校長は「教員が校内で学び合う文化を構築させることが重要。再任用の専科指導教員や学級担任も一緒に教材研究を進めるなど教員全体で共有しながら指導力を高め合っている」と力を込める。
◆専門性の継承を
市内の小・中学校両校で勤務経験のある教員は1人による学級担任制について「余裕がもてず、主観で物事を考えてしまうことがあった」と振り返る。教科担任制は「ほかの教員からの視点が入ることで子どもの些細な変化に気付かされた」と話すなど、教科担任制に向けた専科指導の広がりを期待する。
ある教育関係者は「多くの教員で子どもたちを育てていくためには、専科指導教員の専門性を全校に広めることが重要」と指摘。制度上の課題は残るが、各校でのOJT研修などを通して、専科指導教員が専門性を継承していくことが教科担任制導入への道筋となるのではないか。
(札幌市 2020-12-17付)
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