【4種校長会長に聞く】 第2回 道中学校長会会長 鎌田浩志氏 社会総がかりの取組推進(関係団体 2021-01-08付)
道中・鎌田浩志会長
―校長会として新年の展望をお聞かせください。
令和2年度は、新しい組織体制となって4年目であり、札幌市以外の校長が会長職を担うことになって3年目となります。新たな年を迎えて、2月に開催される副会長研修会、専門部研修会、理事研修会をもって本年度の活動を締めくくることになりますが、新型コロナウイルス感染症拡大防止対策の観点から、この最後の研修会も書面決済とウェブを使用しての開催とし、参集しての研修会を断念したところです。
いまだかつて経験したことのない緊急事態宣言、全国一斉の臨時休業等の事態に私たち校長の誰もが日々迷い、考え、判断する日々の連続でした。その状況下で、全道すべての中学校において日々教育活動が行われ、再び臨時休業措置がとられる事態にならなければ、本年度実施すべき教育課程をほぼ終えられるであろう状況になっていることは、とても尊いことだと思います。
これもひとえに、すべての校長の努力であり、そのことを共にねぎらい合い、そして今後に向けてさらに気を引き締め合っていきたいと思います。
これまで、「叡智を結集し 羽撃く 道中」のスローガンのもと、本会の活動を支えていただいた全道569人の会員の皆さんに心より感謝を申し上げます。また、本会の活動に多大なご理解とご支援をいただきました教育関係機関、関係団体の皆さんに厚くお礼を申し上げます。
間もなく新学習指導要領が全面実施となる新しい年度を迎えます。また、前倒しで実現することになったGIGAスクール構想元年の到来でもあります。
変化が激しく予測困難な時代にあっても、子どもたちが社会の変化と主体的に向き合ってかかわり合い、自らの可能性を発揮し、多様な他者と協働しながら未来社会を創り出す生きる力としての資質・能力を育むことが求められております。社会に開かれた教育課程の実現を目指し、主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善や教育効果を最大限に高めるカリキュラム・マネジメントの推進による教育活動の質の向上を図っていかなければなりません。
GIGAスクール構想の推進によって、新年度にはICT環境の整備が整っていることと思います。個別最適化の個を重視した教育の推進と集団で学習することの教育効果を高めていくためにもICT機器の効果的な活用が重要となり、各種研修や人的支援等の必要性を感じております。
学校における働き方改革についても、北海道アクション・プランの見直しが行われ、新年度も継続される見通しから、より実効性のある取組によって教職員の専門性が生かせ、力量を発揮できる職場環境の実現と人材確保を目指して、引き続き各関係機関と連携を図りながら取り組んでいきたいと考えております。
新型コロナウイルス感染症への対応を行いながらも、子どもたちがこれからの時代を生き抜くための資質・能力の育成に努めている全道の校長を支え、課題解決に向けた学校現場としての考えや意見を発信していかなければなりません。
各教育関係機関と協働して、未来を見据え、目指す子ども像や目標を共有し、「チーム北海道」として確固たる意志と決意のもと、社会総がかりで教育課題に取り組むことが一層求められていると考えております。
―校長会の抱える課題と対策をお願いします。
全国的な視点では、国の動きへの対応があります。過日「令和の日本型学校教育」の構築を目指して(中間まとめ)が公表されました。非常に膨大な量ですが、ここに書かれている理念は、一斉授業か個別学習か、履修主義か習得主義か、デジタルかアナログか、遠隔オンラインか対面オフラインかといった二項対立に陥らず、教育の質の向上のために、発達の段階や学習場面等によって、どちらのよさも適切に組み合わせ生かしていくということだと思います。
とても大事なことであり、このこと自体に異論は全くありませんが、これを今後の私たち学校教育においてどのように具現化していくかという点では、難題を課せられているようで、様々考えていかなければなりません。
また、学校の働き方改革を踏まえた部活動改革の第一歩として、休日に教師が部活動の指導に携わる必要がない環境を構築していく、部活動の指導を希望する教師は引き続き休日に指導を行うことができる仕組みを構築する、生徒の活動機会を確保するため、休日における地域のスポーツ・文化活動を実施できる環境整備ということで検討が行われています。このような、国が大きく動こうとしていることに対して、能動的に私たちがかかわっていく必要性を強く感じています。
現在、新型コロナウイルス感染症の収束が見通せない状況から、新年度の教育課程の平準化について悩まれていることと推察されます。本年度の修学旅行は、延期したところ、行き先を変更したところ、また、限定的な形や泊数を減らしての実施などがあります。また、体育大会についても、中止や実施、規模を縮小したり保護者の入場を制限したりしたところや学校祭との同時開催など。学校によって、この2つの行事を例に取り上げただけでも様々な形ができています。
これは、新型コロナウイルスに対して不明な点が多く、何をどうしたらいいのか正解が分からない中での判断でしたので、ある意味で致し方ないことと思います。
では、新年度の教育課程の編成はどうするべきなのか、隣同士の学校で全く違う、あるいは隣の市町村と全く違う対応となった場合、保護者や生徒の意識に立ったときに、感染状況に地域差があるため、ある程度広域の地域間で差が出ることは致し方ないことですが、公教育に求められる一律性という観点では、決して好ましい状況とは言えないのではないでしょうか。このようなことに対して、全道の校長一人ひとりの考えなども酌みながら、全国の状況も踏まえ、北海道としての方向性を模索していく必要性を感じています。
そのためにも、今後さらに道中と各地区校長会の関係性を密接にし、全国的な課題、国の動向への対応や今後の教育課程編成に向けての平準化等について、全日本中学校長会での動きや情報が各地区、市町村の校長会一人ひとりの校長に伝わり、逆に個々の課題、困難を逆のコースを使って道中から全日中へ届け、国に対しての働きかけへとつながる図式が図られるよう、全日中とともに模索しているところです。
全日中策定の「全日中新教育ビジョン~学校からの教育改革」を再確認し、本会会員が同じ方向を向きながら課題解決に当たっていくことの重要性を強く感じています。
―新年度の重点的取組を伺います。
対応すべき課題は様々あります。北海道中学校長会という全国ともつながる全道レベルでみたときに、特に重要かつ喫緊の課題として、4月から全面実施となる新学習指導要領の理念に基づいた教育活動の展開、整備されたICT環境の日常の授業等での効果的な活用、学校における働き方改革への具体的な対応等が挙げられます。各学校ではその趣旨や背景を再度確認し、自校の学校経営や教育課程へ反映させていかなければなりません。
各地区にとって必要な情報の発信や共有、連携を通してより一層主体者意識の醸成を図り、つながりを深めていくことが重要です。次年度の地区別教育経営研やブロック研、道中諸会議等が形は違っても開催でき、各地区や各学校が抱える課題や取組を交流できる機会となり、同じ校長という職責を担う者同士が意見を交わし思いを共有し合うことが、道中という組織をより確かで強固なものにしていくものと考えます。
新年度は新型コロナウイルス感染症が収束を迎え、普段の日常を取り戻せる状況に進んでほしいと願っています。
「新たな時代を切り拓き、よりよい社会を創り出していく日本人を育てる中学校教育」を研究主題とする4ヵ年継続研究の2年次目を迎えます。
9月24日・25日の両日、稚内市で第63回道中研究大会宗谷・稚内大会が開催されますが、本年度、会同による開催ができなかった函館大会の分まで、全道各地区校長会の実践の共有と地区を越えた校長同士の交流を通して、北海道の中学校教育の振興に果たしてきた本会の足跡・役割を再認識し、新しい時代の教育に向けた方向性を内外に示す大会となることを大いに期待しています。
北海道中学校教育の振興のために、保護者・地域の理解と協力を得ながら、教育関係機関・関係団体と協働し「教員が笑顔になり、その先にいる子どもたちも笑顔になる学校」となるよう歩みを進めたいと考えております。
引き続き、皆さんのご理解とご支援をよろしくお願いいたします。
昭和58年道教育大札幌分校卒。北檜山町立北檜山中を振り出しに、長沼町立中央長沼中、南幌町立南幌小に勤務。平成11年由仁町立川端小教頭。14年岩見沢市立北真小教頭、17年岩見沢市立北村小教頭、19年芦別市立芦別中教頭、22年滝川市立明苑中教頭。24年芦別中校長、28年新十津川町立新十津川中校長、30年から現在の岩見沢市立北村中校長。
昭和35年6月23日生まれ、60歳。利尻町出身。
(関係団体 2021-01-08付)
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