【4種校長会長に聞く】 第4回 北海道特別支援学校長会会長 木村浩紀氏 コロナ禍でも専門性向上(関係団体 2021-01-13付)
道特別支援学校長会・木村会長
―校長会として新年の展望をお聞きします。
北海道特別支援学校長会では、私が委員として参加している中央教育審議会特別部会「新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議」で検討された4点「障がいのある子どもの学びの場の整備・連携強化」「特別支援教育を担う教師の専門性の向上」「ICT利活用等による特別支援教育の質の向上」「関係機関の連携強化による切れ目ない支援の充実」を念頭に置き、関係機関と連携してできるところから取り組みたいと考えています。
学びの場については、特別支援学校のセンター的機能を充実して、学校間や教育委員会等と連携し、連続性のある多様な学びの場が機能できるように協力していきたいと思います。
専門性の向上では、障がい者本人の立場に立ってとらえ、必要な支援の内容を一緒に考えていけるように基礎的な知識、個に応じた分かりやすい指導内容や方法の工夫などを、研究会や研修会等を通して支援していきたいと思います。
ICTの活用等は、各教科の学習や自立活動の指導に役立つだけでなく、情報化の推進の中で障がい者が社会により良くアクセスしていくことが可能になるように、また、教師の業務軽減など働き方改革にもつながるように、今まで推進してきた遠隔TVシステム等ICTを活用した取組をさらに充実させ、他機関との連携を含めて展開していきたいと思います。
切れ目ない支援の充実では、家庭と教育と福祉の連携が重視されることから、関係機関の効率的な連携体制が機能するよう、教育相談やパートナー・ティーチャー派遣事業等を通し、個別の教育支援計画を活用した効果的・効率的に支援していきたいと思います。
新年度も新型コロナウイルスの影響は続くと考えられます。さらにアイデアを出して工夫し、関係機関と連携しながら特別支援教育の推進・発展に力を尽くしたいと考えています。
―校長会の抱える課題と対策について伺います。
現在、道内の特別支援学校は分校等を含め73校です。3月に函館五稜郭支援学校が閉校しますが、4月に苫小牧支援学校が開校、札幌養護学校高等部が札幌養護学校白桜高等学園として移転するなど、盲、聾学校等を除き、全体の在籍数はまだ増えており、地域のニーズに応じた対応や校舎の狭あい化解消に向けた取組が続いています。
そのため、必要な管理職やミドルリーダーをさらに育成しなければいけません。人材育成や専門性の向上は、永遠のテーマかもしれませんが、コロナ禍でもできる対応をさらに進めていきたいと考えています。
遠隔TVシステム等ICTを活用した取組をさらに進化させ、働き方改革をしながら、本道の特別支援教育の充実に、より効果的・効率的な方法で取り組みたいと思います。
―新年度の重点的取組についてお聞かせください。
視覚障がい教育は、全道の盲学校、視覚支援学校4校が、本道の視覚障がい教育のセンターとして、それぞれが管轄する圏域において、弱視特別支援学級や通級による指導の担当者、眼科医等関係機関と連携し、その役割を担っています。
学習指導では、幼児児童生徒一人ひとりの見え方や発達段階に応じた拡大、触察等の教材教具の作成や工夫、ICT機器の活用による指導など教職員の専門性の向上が求められます。
コロナ禍におけるICTの活用では、平成30年度から導入してきた遠隔TVシステムやウェブ会議システムZoom等を利用して、授業や寄宿舎の行事、研究会や研修会、各種会議、PTA活動など、概ね予定どおり行っています。
GIGAスクール構想の前倒しで、充実してきたことをチャンスと捉え、様々な活動に活用することで、授業など幼児児童生徒の活動はもとより、専門性の向上や諸会議の効率化等、教職員の働き方改革にも役立てたいと考えています。
また、インクルーシブ教育システム構築に向かう中でも、全国とのつながりを大切にしながら、道内の4校が選ばれる学校になるようになるように取り組んでいきたいと考えています。
聴覚障がい教育は、全道の聾学校7校が連携して本道の聴覚障がい教育のセンターとしての役割を担っています。
各校では、聴覚障がいに配慮しながら幼児児童生徒の進学や就労を見据え、学力向上に重点を置いて取り組んでいます。GIGAスクール構想の加速によって、1人1台端末や学校ネットワーク環境の整備が進んでいます。聴覚障がい教育でも、ICTを活用した指導は、視覚情報を効果的に活用できるので、とても有効な指導方法となります。
新型コロナウイルス感染症によって臨時休校した際も既存のネットワーク環境を工夫して遠隔授業等を行い、学びの保障に取り組んでいました。今後、通信環境の整備がさらに充実しましたら、ますますICTを活用した指導の充実に取り組んでいく予定です。幼児児童生徒の言語力・学力の向上についても多様なコミュニケーション手段を基盤に据え、ICTを活用し、幼児児童生徒一人ひとりの力を効果的・効率的に育てていきます。
本道の聴覚障がい教育の充実、発展のため、毎年、道聴覚障害教育研究大会(=北聴研)を開催していましたが、昨年は新型コロナウイルス感染症の影響で中止となりました。ことしは、ICTを活用するなどして実施の方向で検討しています。
近年、急増している人工内耳装用児や重複障がいに対応した効果的な指導、乳幼児療育事業をはじめとする早期教育、地域の聴覚障がいに関する専門的な教育相談・支援センターとしての役割等を一層充実させていきます。
知的障がい教育は、閉校と開校が続いています。
本年度で函館五稜郭支援がその役目を終え、閉校となります。その歴史は函館高等支援学校に引き継がれていきます。
令和3年度には、苫小牧支援が開校します。長年の地域の要望を受けて開校となります。
狭あい化の解消が検討されていました札幌養護高等部が移転分離し、新たに札幌養護白桜高等学園と名称が変わります。現在の札幌白陵高校の一部を借り受けての開校という、今までにない形の高等部です。
知的義務校における狭あい化が進む学校はほかにもあり、教室や活動スペースの不足、給食数超過、スクールバス運行上の問題などが深刻化しています。地域のニーズのある子どもの受け入れと、その児童生徒数に見合った教育環境を整備することが喫緊の課題です。
後期中等教育においては、数年かけて新しい高等部の在り方を検討し、障がいの程度によって選択する高等部から、学ぶ内容によって選択する高等部へと転換しました。
今後は新システム下で入学してくる生徒の実態や進学の目的の変化、学びの要望等をきめ細かに検証し、選考検査の変更が当初の目的に合致しているか、高等部教育が生徒のニーズに沿っているかを検討する必要があります。
感染症対策を講じた指導の工夫やICT機器を活用した教育の推進が求められてきますが、全道の知的障がい教育校が集まる機会がもてない状況でも、各校の直面する課題やコロナ禍でも工夫した教育方法などの情報共有に努めていきたいと考えています。
肢体不自由・病弱教育では、昨年8月、国立病院機構八雲病院の北海道医療センターへの機能移転に伴い、八雲養護学校も手稲養護学校三角山分校として札幌市へ機能移転を行い、新たに開校しました。2つの学校が同一の校舎で教育活動をスタートさせ、北海道の病弱教育の新たな枠組について模索し教育実践をスタートさせています。
病弱教育校の学校数の減少から、北海道の校長会レベルでは、肢体不自由教育校と病弱教育校が連携し活動を行ってきました。
今後においても、それぞれの教育の専門性を堅持しつつ、児童生徒の教育活動の交流の促進を図り、授業の充実が図られていくことが大いに期待されます。
研修会を核に学校力と教員個々の実践力の向上に努めてきましたが、コロナ禍において、これまでどおりの形で研修会を実施できませんでした。次年度、どのような状況下においてもICTの活用などを通し、教育活動の充実を図る基盤が確立できました。
新型コロナウイルスの感染拡大で教育活動に様々な影響が出ており、今後もしばらくの間、厳しい状況は続くものと考えられます。北海道特別支援学校長会としても、今まで行ってきた緊急調査をもとに協力体制を強化し、各学校の不安解消に努めるとともに、ICT等を活用しながら幼児児童生徒一人ひとりを大切にした教育活動が展開できるよう取り組みたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。
昭和60年道教育大旭川分校卒。平成24年函館盲校長、26年旭川盲校長、28年道立特別支援教育センター所長を経て、30年札幌視覚支援校長。
昭和36年2月21日生まれ、59歳。小樽市出身。
(連載終わり)
(関係団体 2021-01-13付)
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