道議会質疑 決算特別委員会(令和2年11月9日)(道議会 2021-02-08付)
【Q 質問Question A 答弁Answer P 指摘Point out O 意見Opinion D 要望Demand】
【質問者】
▼赤根広介委員(北海道結志会)
【答弁者】
▼京谷栄一保健福祉部少子高齢化対策監
▼鈴木一博保健福祉部子ども未来推進局長
▼齊藤順二保健福祉部子ども未来推進局子ども子育て支援課自立支援担当課長
◆子を見守り育てる社会
Q赤根委員 国の国民生活基礎調査によると、平成30年度の相対的貧困率は15・4%で、18歳未満の子どもの貧困率は13・5%となっており、実に子どもの7人に1人が貧困の状態となっている。
道における子どもの貧困率はどのようになっているのか、その受け止めと併せて伺う。
A齊藤課長 子どもの貧困率について。国民生活基礎調査においては、都道府県別の数値は公表されておらず、本道の子どもの貧困率の値は示されていないが、本道は全国と比較してひとり親世帯の割合が高く、また、30年に道が実施した実態調査において、ひとり親世帯は一般家庭と比較して、奨学金の利用や希望進学先を諦めた割合が高いなどの結果が出ており、子どもの生活環境は厳しい実態にあるものと認識している。
Q赤根委員 国の方から数値は公表されていないということであるが、道として、いわゆる貧困率の調査などは行わないのか。
A齊藤課長 実態把握にかかる調査について。道では、これまで、貧困対策推進計画の策定や各般の施策にかかる推進状況の確認に必要となる実態調査などを行ってきており、本年度においては、ひとり親の当事者や支援団体の方々から新型コロナウイルス感染症による影響について直接話を伺うなど、あらゆる機会をとらえて状況の把握に努めてきている。
道としては、今後、新型コロナウイルスの影響が長期化していくことも踏まえ、国が来年度行う予定の調査とも連動しながら、実態の把握に向けた調査を行うほか、インターネットを活用したアンケート調査なども検討していく。
Q赤根委員 調査を通じて、より的確な対策を打っていただきたい。
子ども食堂は、コロナの関係で全国的に休止しているとの状況を伺っている。全道の状況がどうなっているのか。また、他県では、休止している子ども食堂の再開などに、運営団体への補助を行うなどの支援策がみられるが、再開に向け、道としてどう対応するのか伺う。
A鈴木局長 子どもの居場所の現状について。令和2年4月の時点で新型コロナウイルス感染症の影響などによって休止している子どもの居場所は全道で71ヵ所と把握していたが、その後、居場所にかかわるネットワークを構築している支援団体からは、徐々に活動再開、あるいは、再開に向けて動き出していると伺っている。
子どもの居場所は地域で生活する子どもたちにとって大きな役割を果たしており、道では、これまで、運営に必要な内容をまとめた手引きの作成や、道のホームページを活用した学習支援の呼びかけなど、活動を後押しする取組を進めてきた。今後は、新型コロナウイルスと共存しながら、新しい生活様式のもとで運営する必要があることから、本年度から居場所に派遣することとしているアドバイザーを通じて運営上の困り事などを伺っていくほか、開設の手引きに感染症対策の項目を追加するなどして、子どもの居場所の活動を支援していく考えである。
Q赤根委員 ひとり親家庭については、養育費の支払いが適切に行われることが生活をしていく上で重要である。特に、養育費は、離婚後のひとり親家庭にとって重要な生活の支えであると考える。道内のひとり親家庭で離婚時に文書で養育費の取り決めをした割合がどの程度か、また、実際に養育費を受け取っている割合がどのようになっているのか併せて伺う。養育費を確実に受け取れるようにするため、道として、どのように取り組んできたのかも併せて伺う。
A齊藤課長 ひとり親家庭の経済的支援について。29年に道が実施したひとり親家庭生活実態調査では、離婚の際、養育費について文章を交わし取り決めをしているのは3割程度、また、実際に養育費を受け取っているのは離婚した全体の2割強で、そのほとんどが母子家庭となっている。
道では、各振興局に配置されている母子・父子自立支援員が生活や養育費を含め経済的な支援に関する相談に応じているほか、道内6ヵ所にある母子家庭等就業・自立支援センターにおいて、弁護士が家庭裁判所への申立ての手続きや相手との交渉方法などをアドバイスするなど、養育費の支払いが適切に確保されるよう、専門的な相談に対応している。
Q赤根委員 道として支援しているとのことであるが、そもそも文書を取り交わしているのが3割、実際に受け取っているのが2割であることの要因をしっかり分析しなければ、対策も本当に的を射たものかどうか分からない。要因をどのように分析しているのか伺う。
A齊藤課長 養育費が受け取れない理由について。実態調査によると、受け取れない主な理由としては、相手に支払う意思や支払い能力がなかったこと、相手が支払わない、支払えないと思ったこと、相手が話し合いに応じなかったこと、自分が話し合いをもちたくなかったことなどが挙げられており、また、誰にも相談しなかったとの回答が多かった。こうした方々を支援するために、養育に関する相談窓口を周知するとともに、あらゆる制度を活用した必要な支援に努めていく。
Q赤根委員 こういう方法があるとか、文章の取り決めはこうするなどと、具体的に後押ししてあげれば、少しずつ、この問題も解決に向かうのではないかと思う。
ことし7月、国は、すべての女性が輝く社会づくり本部を開催し、女性活躍加速のための重点方針2020を決定し、離婚後の子どもの養育費確保に向けて法改正の検討を明記し、当時の総理大臣は、困難な状況にある女性に対してもしっかりと支援をしていくと述べている。
長期戦となっている新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、経済環境が悪化する中、兵庫県の明石市では、離婚後の養育費を受け取りやすくするため、養育費の取り決めに関する手続きの費用を全額補助することを全国で初めて導入し、福岡市でも同様の取組が行われている。本来であれば、自治体ごとの取組に格差が生じないよう、国が体制整備を図るべきと考える。
本道は、全国でも最も長くこのコロナの影響を受けている。道しても、こうした支援に積極的に取り組むべきと考えるが、所見を伺う。
A齊藤課長 養育費の支援について。ひとり親家庭生活実態調査においては、多くのひとり親が養育費を受け取ったことがない、または、支払いが途絶えたと回答しており、新型コロナウイルス感染症によって大きな影響を受けているひとり親世帯が生活基盤を維持していく上で、離婚の際に取り決めた養育費の支払いが確実に履行されることは大変重要と認識している。
また、国においては、現在、離婚前後親支援モデル事業に取り組むとともに、2年10月、『養育費の履行確保等に関する取組事例集』を作成し、配布した。道としては、こうした国の支援策と連動するとともに、各種窓口における相談支援において、弁護士や関係機関への相談を提案するなどして、養育費の受け取り支援に関する取組を推進していく考えである。
Q赤根委員 今述べたような形で、しっかりと対策を充実させていただきたいと思う。
子育て世代における保護者の健康状態などの状況について、道としてどのように把握しているのか伺う。
A齊藤課長 子育て世帯の健康状況の把握について。29年度のひとり親家庭生活実態調査では、「通院していないが、体調が悪い」と回答した保護者の割合が全体の約1割になるとともに、「健康上の問題で仕事や家事などができなかったことがある」と答えた方もいることから、健康に不安を抱えている方が多いことがうかがわれた。
こうしたことから、道としては、健康問題も含めた生活相談を行っている窓口を記載したリーフレットを配布するなどして広く周知するとともに、市町村が設置する子育て相談窓口や子育て世代包括支援センターにおける相談対応について、早期の受診勧奨や医療費の減免制度などについて説明するほか、保護者の健康状態などの不安を受け止めるとともに、その状況に応じ、家庭生活の見守りや各種福祉施策による対応策の検討を行うなど、適切な支援に努めている。
Q赤根委員 健康に不安を抱えている方が多いことが実態調査で分かったが、こうした家庭で懸念されるのは、ヤングケアラーの問題である。日本ケアラー連盟によると、ヤングケアラーは病気の親の代わりに家事をしたり、障がいのある家族の介助をしたりするほか、幼い兄弟の世話をしている。
埼玉県においては、2年3月、家族を介護する人全般を支援するケアラー支援条例を全国で初めて施行してる。7月から、県内の全高校を対象に調査を始めるなど、先行した取組を進めてる。
道の計画や施策では、ヤングケアラーについてふれているものを探すことはできなかった。道は、ヤングケアラーについて、実態をどのように把握し、問題をどのように認識しているのか伺う。
A齊藤課長 ヤングケアラーについて。30年に国が実施した実態調査では、ヤングケアラーとは、年齢や成長の度合いには見合わない重い責任や負担を負って、本来、大人が担うような家族の介護をすることで、自らの育ちや教育に影響を及ぼしている18歳未満の子どもと定義されており、こうした子どもたちは、1日の多くの時間を介護や世話に当てており、学校にあまり行けていないとか、自身や保護者を含めて家庭の事情を公に知られたくないことによって、必要な支援につながりにくいなどの課題を有しているものと承知している。
道では、これまで、ヤングケアラーに特化した調査などは行っていないが、道児相に寄せられた相談の中には、過度な家族介護や世話などにかかわる事案が10月末時点で24件あった。この中には、ネグレクトなどの虐待に至っている場合も多いことや、家庭内のことという保護者の無理解といったケースも散見されることから、児相長会議や担当課長会議などを活用して事案の検証を行い、アセスメントなどの対応方策を検討していく考えである。
Q赤根委員 国は、全国の教育現場を対象とした初の実態調査を12月にも始めると承知している。道として、ヤングケアラーについて、どのような施策を講じていくのか伺う。
A鈴木局長 ヤングケアラーへの対策について。道では、これまで、子どもや家庭にかかわる関係機関に対し、国が作成したヤングケアラーに関するガイドラインなどを配布するなどして理解促進を図ってきた。こうした子どもの支援は、権利侵害の視点をもって対応する必要があることや、支援対策が多岐にわたることから、ヤングケアラーに関する理解促進と認知度の向上が重要であり、地域の関係機関が対象者の情報を収集し共有していく必要があると考えている。
こうしたことから、道では、今後、児相による支援の一環として、要保護児童対策地域協議会(要対協)の中心となる市町村に対し、研修などの機会を通じて、ガイドラインやアセスメントシートを活用した理解促進や、必要に応じて支援にかかわる助言を行うほか、国が実施を予定している実態調査の結果を注視するとともに、地域の関係機関との連携のもと、国とも連動した適切な姿勢に努めるなど、子どもたちの権利が守られ、健やかな成長が確保されるよう取り組んでいく考えである。
Q赤根委員 ヤングケアラーについては、限られた人生の中でも大事な時間にこういう問題に直面している。本人がそのことに気付いてすらいないかもしれない。そういうことが大きな問題だと思う。非常にデリケートな問題であり、対応の難しさを象徴するわけである。
実態調査の結果を注視するということで、可能であれば、道教委と連携を図っていただきたいと思うが、それについて伺いたい。
A鈴木局長 ヤングケアラーへの対策について。ヤングケアラーと言われる子どもたちの把握や支援は、権利侵害の視点をもって対応する必要があることや、課題も多岐にわたる。子どもの将来に大きな影響を与える懸念があることから、子どもと接する機会の多い教育機関はもとより、地域の関係機関が情報共有のもと、適切な支援につなげることが重要と考えている。
このため、道では、今後、さらなる実態把握として、市町村の要対協の登録ケースの中に、同様の事案がどの程度あるか確認することとしているほか、国が実施する予定の実態調査においては、教育部局と連携し各地域の教育機関が取りまとめた調査結果を把握の上、要対協で共有するよう促すなど、子どもや家庭の課題にかかわる関係機関における理解の促進や、地域での連携と役割分担のもとに、必要な支援が適切に行われるよう、対策に順次取り組んでいく。
Q赤根委員 この問題は、まだまだ世間で知られていないということで、しっかりと理解促進などから始まって、個別の事案になるかと思うが、それぞれの事案に合った支援に取り組んでいただきたい。
北海道のすべての子どもたちが夢や希望をもち、その生まれ育った環境によって左右されることなく貧困が世代を超えて連鎖することのないよう、その環境整備、教育の機会均等を図り、子どもの権利および利益を尊重しながら、本道のすべての子どもたちを地域全体で見守る地域社会の実現を目指し、着実に取組を進めていかなければならないと考える。
親の妊娠、出産期から、子どもの社会的自立まで、その成長段階に応じて切れ目ない必要な支援を実施することや、生活保護世帯やひとり親家庭の子ども、児童養護施設等に入所している子どもなどへの支援や、児童虐待防止のための対策強化を含めて、道として、地域全体で子どもを生み育てる社会づくりにどのように取り組むのか伺う。
A京谷少子高齢化対策監 今後の取組について。子どもたちがのびのびと健やかに育っていくためには、成長段階に応じて母子保健サービスや保育サービスなどの子育て支援、学校における支援をはじめ、身近な地域での居場所の提供や学習支援、保護者の就労・生活支援など、地域における様々な立場の大人による見守りのもと、支援を切れ目なく提供していくことが大変重要であると認識している。
道としては、教育や労働など庁内関係部局との横断的な連携のもとで、14振興局に設置した地域ネットワーク会議が中心となり、市町村や関係団体、民間の方々と一緒になって、実効性のある施策を推進するとともに、今後、新型コロナウイルス感染症の影響によって、ますます厳しい状況に置かれることが危惧される子育て家庭に対して、保護者の就労支援や生活の安定に向けた経済的支援などに積極的に取り組み、貧困が世代を超えて連鎖することなく、すべての子どもが夢と希望をもって成長できる社会の実現に努めていく。
(道議会 2021-02-08付)
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