道議会質疑 決算特別委員会(令和2年11月9日)
(道議会 2021-02-10付)

【Q 質問Question A 答弁Answer P 指摘Point out O 意見Opinion D 要望Demand】

【質問者】

▼滝口直人委員(自民党・道民会議)

▼松本将門委員(民主・道民連合)

【答弁者】

▼長橋聡環境生活部アイヌ政策監

▼松谷雅一環境生活部アイヌ政策推進局長

▼遊佐貴志環境生活部アイヌ政策推進局象徴空間担当局長

▼高野政敏環境生活部アイヌ政策推進局アイヌ政策課長

▼永田英美環境生活部アイヌ政策推進局アイヌ政策課象徴空間担当課長

◆アイヌ施策の推進について

Q滝口委員 アイヌ政策推進費補助金収入の予算額は1億3475万5000円となっている。この補助金を財源としているアイヌ政策推進費における主な事業の実施状況はどのようになっているのか、また、補助金収入は約7760万円の減となっているが、この要因を併せて伺う。

A高野課長 アイヌ政策推進費について。アイヌ政策推進費補助金を特定財源とする事業は、生活館整備事業費および高校等への進学奨励費となっており、生活館整備事業費は、アイヌの人たちの生活向上や地域住民との交流を図るために設置されている生活館の管理運営を行う市町村に補助するものであり、25市町に対し1億156万1000円を執行した。進学奨励費は、道内に居住するアイヌの子弟で、経済的理由によって高校や大学などでの教育を受けることが困難な人に対して補助等をするものであり、484人に対し1億2062万円を執行した。

 歳入減の主な要因としては、生活館整備事業において、国の事務処理の誤りによって当該年度中に受け入れができなかったこと、また、進学奨励金において、当該年度の申請額が当初見込みを下回ったことに伴い、国庫補助の交付額が減少となったものである。

Q滝口委員 生活館整備事業費補助金は、市町村が運営するアイヌ生活館にかかる経費である。

 これまで、生活館では、どのような取組が行われてきたのか、また、国の事情で道への補助金の交付が一部見送られているが、このことによって事業に支障が生ずることはなかったのか伺う。

A高野課長 生活館整備事業費について。生活館は、アイヌの人たちをはじめとする地域住民の福祉の向上や交流の拠点となるコミュニティセンターとして、生活上の各種相談事業や文化活動をはじめとする地域交流事業などを行うため市町村が設置してるものであり、その管理運営にかかる費用のうち4分の3を国と道が補助しているものである。

 当該事業は、道を経由して交付する間接補助の事業であり、国からの補助相当額を含め令和2年2月に道から交付しており、各市町村における当該事業の運営には支障を生じていない。

 なお、元年度に受け入れができなかった国から道への補助金6787万6000円については、2年度中に交付される予定となっている。

Q滝口委員 アイヌ生活館を拠点として、地域では様々な取組が行われているが、各地域で生活館の整備が始まってから相当の年数が経過しており、施設等の老朽化などへの対応も必要になっている。

 このような課題に、道として、どのように取り組んでいく考えなのか伺う。

A松谷局長 老朽化等への対応について。生活館は昭和36年度以降、整備が進められている。現在、道内に161施設が設置されており、施設の破損や老朽化に対しては、これまで、市町村が生活館整備事業費補助金を活用し、改築、修繕等による対応を行ってきた。

 元年度からは、アイヌの人たちと地域住民との交流の場の整備や老朽化した生活館の耐震改修等について、国のアイヌ政策推進交付金を活用することもできることとなっている。

 道としては、交付金の活用などについて、市町村との情報交換や協議を行うほか、アイヌの人たちや地域が抱える課題などを伺いながら、地域の実情に応じた必要な助言や協力を行うなど、本道におけるアイヌ政策の一層の推進に向けて市町村の取組を支援していく。

Q滝口委員 7月に開業したウポポイに関する取組として、地方創生推進交付金を活用した民族共生象徴空間誘客促進地域連携事業費が措置されており、機運醸成や誘客促進を図るための取組が行われている。事業の実施状況はどのようになっているのか伺う。

A高野課長 ウポポイへの誘客促進などの事業について。道では、ウポポイへの誘客促進やアイヌ文化の魅力発信に向け、札幌や東京など道内外の主要な6都市において、PRイベントを開催したほか、海外に向けても先住民族文化に関心が高いカナダやイギリスにおいて、アイヌの工芸品や音楽などを紹介するイベントを開催するとともに、本道への来訪客数が多い中国、台湾、ASEAN諸国などにおいて、本道の食や観光と併せてウポポイやアイヌ文化の魅力をPRした。

 また、ウポポイ開設100日前のカウントダウンプロモーションとして、チ・カ・ホ(札幌駅前通地下広場)壁面広告や各種広報媒体を活用して、ウポポイ開設に向けた機運醸成を図るとともに、2年1月には、さっぽろ雪まつり会場において、ウポポイをテーマにした大雪像を制作し、アンバサダーによるトークステージやアイヌ古式舞踊の披露、情報発信ブースの設置などによって、道内外からの観光客などに対しPRした。

 さらには、観光事業者向けのガイド教本の作成や、アイヌ文化ゆかりの地を周遊するモデルルートづくりなど、ウポポイと全道各地の連携の促進にも取り組んできた。

Q滝口委員 プロモーションや情報発信など様々な取組が行われているが、事業の成果や課題について、どのように認識しているのか伺う。

A高野課長 事業の成果や課題について。道としては、これまで、国やアイヌ民族文化財団をはじめ、白老町や民間企業などと連携しながら、ウポポイへの誘客に向けたPRに取り組んできた。新型コロナウイルス感染症対策として入場制限がされている中、7月12日の開業以降、来場者は2年11月8日までで16万人を超え、そのうち、教育旅行として4万人以上の児童生徒が訪れるなど、アイヌの歴史や文化の学びの場として活用されている。

 今後も、ウポポイへの来訪はもとより、より多くの方々に地域ならではのアイヌ文化に関心をもっていただき、道内各地のアイヌ関連施設を訪れていただくなど、ウポポイの開設効果を全道に広げていくことが重要と考えている。

Q滝口委員 7月12日の開業から間もなく4ヵ月を迎えようとしている。入場制限をしている中で、8日までの来場者は16万人を超え、アイヌ民族博物館の入館者も12万人近く、また、修学旅行での需要も多く、全国的な知名度も高まっていると聞いている。

 本年度も、ウポポイの魅力や文化の発信、誘客促進に向けた経費などが措置されているが、コロナ禍の中で道としてどのように取り組んでいくのか伺う。

A永田課長 ウポポイの今後の取組について。ウポポイはアイヌ文化の復興、発展はもとより、本道の発展に重要な役割を担うことから、これまでも官民が連携して機運の醸成や受け入れ環境整備などのほか、情報発信や教育旅行誘致などの取組を進めてきた。

 道としても、本年度においては、感染の状況を見極めながら、テレビ番組の制作、ラッピングバスや地下街での屋外広告など様々な媒体を活用し、ウポポイの具体的な魅力を発信しているほか、プロスポーツとのタイアップなど、若年層やファミリー層へのPRや、観光需要を喚起する取組とも連携しながら、旅行商品開発への働きかけを行っている。

 今後とも、感染防止対策を講じながらも、ウポポイに多くの方々に来ていただき、アイヌの歴史や文化の正しい理解につなげるとともに、本道の観光や地域の振興が図られるよう、国や財団をはじめ関係自治体と連携し取り組んでいく。

Q滝口委員 道はこれまで、生活向上と文化振興を両輪としてアイヌ政策に取り組んできたが、元年5月には、アイヌ施策推進法が施行されたことから、法に掲げる基本理念や基本方針などを踏まえることはもとより、市町村のアイヌ施策推進地域計画とも連携した取組が求められる。

 また、本年度で期限を迎えるアイヌ生活向上推進方策に代わる新たな方策の策定作業が進められており、この方策にもこれまでの生活向上や文化振興に加え、地域振興や観光振興等を含めた施策を盛り込んでいく必要がある。

 このほか、インターネット上でアイヌの人たちへの心ない投稿が見られるなど、現在もいわれのない偏見や差別が残っていることも課題となっている。

 アイヌ施策の推進に向け、道として今後、どのように取り組んでいく考えなのか伺う。

A長橋アイヌ政策監 今後のアイヌ政策について。元年、アイヌ施策推進法が施行されるとともに、2年7月にはウポポイが開業するなど、アイヌの人たちや文化などに対する関心が高まっている一方、インターネットなどにおいては心ない投稿が見受けられるなど、現在もいわれのない差別があるものと認識している。

 このため、道としては、アイヌ政策の新たな推進方策を策定し、アイヌの人たちが先住民族であるとの認識のもと、民族としての誇りが尊重される共生社会の実現を目指し、国や市町村、道アイヌ協会をはじめとする関係団体との連携を強化しながら、アイヌの人たちについての正しい理解の促進を一層進めるとともに、各地域に伝承される独自の文化や施設などを有効に活用し、アイヌ文化を核とした地域や観光の振興を図るなど、未来志向によるアイヌ政策を総合的に推進していく。

◆ウポポイの活用について

Q松本委員 ウポポイ開設を契機とした共生社会の実現に向け、全道の各地域や道民が一体となって取り組むことが重要であると思う。開設までの1年間、すなわち、元年度における取組に関して、どのようなコンセプトで臨んだのか伺う。また、国、道、市町村、関係団体などが連携し、一体感をもって取り組むことが重要であるが、この点に関する対応状況などについても併せて伺う。

A高野課長 元年度における取組などについて。ウポポイは、わが国の貴重なアイヌ文化を復興、発展するためのナショナルセンターとして、アイヌの人たちに関する正しい理解の促進はもとより、本道の観光振興や地域の活性化にとっても重要な役割が期待されている。

 このため、道としては、ウポポイへの興味・関心を高め、より多くの方々に来場していただけるよう、国やアイヌ民族文化財団をはじめ、市町村や民間企業など、オール北海道でウポポイ開設に向けた機運の醸成や認知度の向上、交通利便性の向上などの受け入れ環境の整備に取り組んだ。

Q松本委員 道が自らマネージメントして取り組んでいく状況もあろうかと思う。より高度な専門的知識、技術等が必要となる場合には、プロポーザル方式を用いた委託契約を選定せざるを得ないと思う。

 今回のウポポイ開設に伴うプロモーション事業などに関して、どのようなコンセプトをもって対応してきたのか伺う。

A高野課長 誘客促進事業などについて。道では、ウポポイ開設に向けた機運の醸成を図るとともに、認知度の向上などによって、誘客を促進するため、元年度においては、道内外はもとより、海外に向けてウポポイやアイヌ文化の魅力を発信することを基本に事業を展開した。

 このため、観光需要が大きい道内外の都市部をはじめ、海外においては、先住民文化に関心が高い地域や本道への来訪が多い地域を対象に、各種イベントなど様々な機会や各種広報媒体を活用したプロモーション活動に取り組んだ。

Q松本委員 ウポポイ開設に伴うプロモーション事業に関しては、道内外にとどまらず海外に向けた発信も重要であるし、様々な機会、各種広報媒体を活用して取り組んできたとのことであるので、今回実施したプロポーザル方式による契約実績とともに、それぞれ具体的に実施してきた各事業に関して、当初想定していた内容などは達成されたものと認識しているのか伺う。

 また、今回の事業実施期間中には、当初想定していなかった新型コロナウイルス感染症による影響なども少なからずあったものと思う。このような状況によって、当初の事業計画の変更が生じることになった場合に対応できるような仕組みとなっているのか伺う。

A高野課長 誘客促進事業の成果などについて。プロポーザル方式による事業については、札幌や東京都など道内外の主要な6都市のほか、カナダ、イギリス、中国、台湾およびASEAN諸国などにおいて、ウポポイやアイヌ文化の魅力をPRした。

 また、さっぽろ雪まつり会場において、ウポポイをテーマにした大雪像を制作し、アンバサダーによるトークステージなどによって、道内外からの観光客に対しPRした。

 これらの取組などを進めた結果、元年度に実施した調査では、道内におけるウポポイの認知度は、元年8月の35・4%から2年2月には72・4%と37・0ポイント上昇し、道外においても、5・2%から10・4%と5・2ポイント上昇しており、一定の効果があったと考えている。

 なお、元年度においては、新型コロナウイルス感染症による業務内容等の変更はなかったが、必要な場合には、契約上、その変更や中止ができることとしていた。

Q松本委員 PR活動などを展開したことによって、ウポポイの認知度が上がったということであったが、認知度の上昇だけをもって、その効果や達成度合いを推し測ることは難しいものと思う。今後の来場者数の推移などを見極めることが重要だろうと思っている。

 また、今回実施した元年度における事業に関しては、そのイベントを実施したタイミングでは、新型コロナウイルス感染症の影響は受けなかったとのことであるが、プロポーザル方式による契約上、その状況に応じて変更や中止にも対応できるとのことであったので、その点について確認していただきたいと思う。

 ウポポイの開設に向けた取組に関して、プロポーザル方式による委託業務とは別に、平成28年度に設置されたウポポイ官民応援ネットワークであったり、元年、知事公約で設置された応援団会議などによる取組も同時に進められたと思う。道庁内の各部局でウポポイに関連する取組が進められたと思うが、このように官民問わず各課横断的な対応に関して、どのように連携調整を図ってきたのか伺う。

A永田課長 民間や庁内各部との連携について。官民応援ネットワークは、本道のアイヌ文化の振興やウポポイの開設効果を全道に波及させることなどを目的に設立され、これまで参画企業によって、気運の醸成や誘客促進に向け、ウポポイ関連の商品開発やパッケージ等での情報発信、バスツアーの造成、高速道路の電光掲示板でのPRなど、数多くの取組が行われており、道としても、こうした企業の取組を幅広く発信して紹介するなど、さらに道内に広がるよう努めている。

 また、庁内においても、道の広報媒体の活用や関係部局が所管する国際会議、スポーツイベント、研修会などの場において、積極的な情報発信を行ってきたほか、北海道応援団会議とも連携し、ウェブサイトや道外セミナーの場などで、ウポポイのPRや応援を広く呼びかけている。

Q松本委員 元年度の取組を踏まえて、引き続き、機運醸成、魅力発信、誘客促進などについて、国、道、市町村、関係団体などが一体的な連携を図り、今後、どのように取組を進めてくのか伺う。

A遊佐局長 ウポポイの今後の取組について。道では、ウポポイに多くの方々に来ていただき、アイヌの歴史や文化への正しい理解促進はもとより、道内の観光振興や地域振興などにつなげていくため、これまで、庁内をはじめ官民一体となり、受け入れ環境の整備や誘客促進に向けた取組を進めてきた。

 今後とも、感染状況を見極めながら、様々な媒体を活用して、ウポポイのさらなる魅力を発信するほか、観光需要を喚起する取組とも連携し、旅行商品開発への働きかけを行うなど、引き続き、庁内関係部局はもとより、国や財団、関係自治体、民間などとも連携して取り組んでいく。

O松本委員 今後の取組について答弁いただいた。実際にウポポイに多くの方々に来ていただき、アイヌの歴史・文化に直接ふれていただき、ウポポイの魅力を実感してもらうことが重要だと思う。その事業の中心にいる環境生活部の今後の活躍を大いに期待する。

(道議会 2021-02-10付)

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