道議会質疑 決算特別委員会(令和2年11月11日)
(道議会 2021-02-18付)

【Q 質問Question A 答弁Answer P 指摘Point out O 意見Opinion D 要望Demand】

【質問者】

▼村田光成委員(自民党・道民会議)

【答弁者】

▼小玉俊宏教育長

▼志田篤俊教育部長

▼赤間幸人学校教育監

▼池野敦総務政策局長兼幼児教育推進局長

▼添田雅之生涯学習推進局長

▼山本純史学校教育局指導担当局長兼ICT教育推進局長

▼山口利之生涯学習課長

▼大畑明美幼児教育推進センター長

▼唐川智幸高校教育課長

◆幼児教育の充実について

Q村田委員 幼児教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う上で極めて重要なことから、幼稚園、保育所、認定こども園のいずれにおいても、質の高い幼児教育が受けられるようにすることが大切であると認識している。

 令和元年6月に道および道教委で設置した幼児教育推進センターでは、本道における幼児教育の質の向上を図るため、幼児教育に関する知識、経験を有する人を幼児教育相談員として委嘱し、幼稚園等を訪問して園内研修の講師を務めたり、助言を行ったりする幼児教育相談員派遣事業を実施していると承知している。

 幼児教育相談員派遣事業について、元年6月のセンター設置後から今までの取組状況について伺う。

A大畑センター長 幼児教育相談員派遣事業の取組状況について。元年6月のセンター設置に伴い、全道14管内で幼児教育に関する知識、経験が豊富な施設長や、専門的知識を有する保育者養成大学の教授などを幼児教育相談員として委嘱し、幼児教育施設からの要請に応じた派遣を行いながら、園内研修などにおける助言等に当たっている。

 なお、相談員の幼児教育施設への派遣回数は、元年度は47回、2年度は各地域の新型コロナウイルス感染状況によって、施設からの派遣要請が減少したことから、10月末現在で23回となっている。

Q村田委員 派遣事業を活用した幼児教育では、どのような成果があったのか伺う。

A大畑センター長 事業の成果について。派遣をお願いしている相談員には、教育課程編成の改善や、特別な配慮を要する子どもへの対応の工夫、幼児教育と小学校教育の連携・接続の推進など、今日的な課題や個々の施設の課題に応じた助言等をきめ細かく行っていただいており、各園からも、「職員にとってよい刺激となった」「園内研修の必要性を再認識した」といった声が聞かれている。

 センターとしては、この事業を通じ、施設における幼児一人ひとりに対する保育の質の向上、職員のチーム力を高め、施設の方針に基づく一貫した保育の展開等につながっていくものと期待している。

Q村田委員 本年度は、感染症の影響もあって、派遣が進まない状況と考える。センターでは、どのような工夫を行い、派遣事業を実施しているのか伺う。

A池野局長 本年度の実施状況について。センターでは、相談員の派遣に当たり、地域の新型コロナウイルス感染状況を適切に把握するとともに、相談員の健康チェックを十分行った上で派遣しているが、9月からは現地に赴くばかりでなく、ウェブ会議システムを活用したリモートによる助言も実施している。

 こうしたリモート助言においては、相談員が参観できる範囲は限られるものの、これに参加した保育者からは、「テーマを焦点化し、話し合いが十分にできた」「遠くに在住していて、なかなか来てもらえない相談員から助言を受けられた」など、高い評価をいただいた。

 従来からの施設派遣と併せ、今後、リモート助言の活用も増やしていきたいと考えている。

Q村田委員 幼児教育施設に対する相談員による助言は、幼児教育の質の向上を図るために重要と考える。センターとして、今後、どのように取り組んでいく考えなのか伺う。

A志田部長 今後の取組について。保育者は多忙であることから、園外での研修に参加できる時間は限られており、そうした中にあっても、保育の質の向上を図るためには、園内で共に学び合うことができる園内研修の充実を図ることが重要であると認識している。

 このため、道教委としては、相談員の知見を活用し、園外研修の内容と関連させた園内研修用教材を作成したり、複数園合同の研修を行ったりするなどして、各施設における園内研修を充実させるとともに、これまでの相談員の施設への派遣に加えて、本年度から開始した、いわゆるリモート助言を多くの施設で行うことなどを通じて、幼児教育の質の向上に向けた取組を着実に進めていく考えである。

O村田委員 想定しなかった感染症が広まり、非常に厳しく、大変だろうとは思う。

 ぜひ、しっかりと取り組んでいただくようお願いする。

◆子どもの読書活動推進

Q村田委員 読書活動は、子どもにとって言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、創造力豊かなものにし、人生をより深く生きる力を身に付けていく上で欠かせないものであり、子どもが楽しみながら読書習慣を身に付けられるよう取り組むことが必要である。道教委は平成30年度から、地域人材との連携による子どもの読書活動推進事業を実施し、学校図書館の活性化や子どもの読書活動推進などの取組を行ってきていると承知している。具体的には、どのような取組を進めてきたのか伺う。

A山口課長 子どもの読書活動推進にかかる取組について。道教委では、子どもが読書に親しみ、読書習慣を身に付けられるよう、学校図書館と地域の様々な人材が連携し、市町村における読書活動の取組が活発になることを目的として、30年度から地域人材との連携による子どもの読書活動推進事業を実施している。

 この事業は、司書教諭、学校司書、図書館職員、教育委員会職員、ボランティア団体などを対象に、読書活動の充実の意義、役割分担、具体的な方法等について共通理解を図るため、それぞれの役割や実務的な内容について意見交換などを行うフォーラムを開催するもので、30年度から3ヵ年で全道14管内で実施することとしており、本年度についても、4管内での実施を予定している。

Q村田委員 道内の小中学生の家庭での読書時間の状況、また、全く読書をしない児童生徒の割合はどのような状況になっているのか、併せて伺う。

A山口課長 家庭等における読書習慣の状況などについて。31年度の全国学力・学習状況調査の児童生徒質問紙における「学校の授業時間以外に普段1日当たりどれくらいの時間読書をするか」という質問に対し、「10分以上読書をする」と回答した割合は、道内公立学校の小学生で62・9%、中学生で51・0%となっている。また、同じ質問に対し、「普段読書を全くしない」と回答した割合は、小学生で21・4%、中学生で33・8%となっている。

Q村田委員 スマートフォンの普及とその利用時間の長時間化によって、読書活動の時間に影響を与えている可能性があるのではないかと懸念している。

 道教委では、読書しない児童生徒がいる要因をどのようにとらえているのか伺う。

A添田局長 児童生徒が読書しない要因について。28年度に文部科学省が民間のシンクタンクに委託した調査報告書によると、児童生徒が本を読まない理由としては、「ほかにしたいことがあったから」「ほかの活動等で時間がなかったから」という回答の割合が高くなっていると承知している。

 具体的には、小学生では、テレビ等を見る時間やゲームで遊ぶ時間が長い児童、中学生では、テレビ等を見る時間に加え、メールやSNS等を利用する時間が長い生徒ほど、読書時間が短い傾向がみられている。

 道教委としては、スマートフォンの普及やSNS等のコミュニケーションツールの多様化など、子どもを取り巻く情報環境の変化が読書環境にも大きな影響を与えるものと考えている。

Q村田委員 子どもの成長に伴い、ほかの活動への関心が高まり、読書への関心度合いが低くなっていることがうかがえる。子どもが生涯にわたって読書に親しみ、読書を楽しむ習慣を形成するためには、読書習慣を含めた生活習慣の確立が必要ではないかと考えられる。道教委として、今後、どのように取り組んでいく考えなのか伺う。

A志田部長 今後の取組について。子どもの読書習慣は、日常の生活を通して形成されるものであり、読書が生活の中に位置付けられ、継続して行われるには、学校ばかりではなく家庭においても、子どもの読書のきっかけづくりや読書習慣の定着に向けて積極的に取り組むことが重要であると考えている。

 こうしたことから、道教委では、これまでも、子どもと一緒に本を読むなど家庭での読書を通じて、家族のコミュニケーションを図る家読を啓発するリーフレットの作成・配布など、保護者を対象とした啓発等の取組を進めてきた。

 今後とも、保護者に対し、読書の楽しさや重要性について、より分かりやすい啓発資料を作成・配布するなどして、市町村教委などと連携して、家庭における読書活動の推進に取り組んでいく。

◆高校生の学力向上について

Q村田委員 これからの社会が急速な技術革新やグローバル化の一層の進展などによって大きく変化していく中で、次代を担う本道の子どもたちは、社会の変化に主体的に向き合いながら、自らの可能性を発揮し未来を切り拓いていく力を身に付けることが重要である。

 道教委では、高校生の学力向上に向け、新学習指導要領の趣旨を踏まえ、未来を切り拓く資質・能力を育む高校教育推進事業を前年度から実施している。

 道教委が高校におけるカリキュラム・マネジメントの確立や、生徒の思考力・判断力・表現力の育成などを目指して令和元年度から3ヵ年で取り組むとしているこの事業は、どのようなものなのか、概要について伺う。

A唐川課長 未来を切り拓く資質・能力を育む高校教育推進事業について。4年度から年次進行で実施となる高校の新学習指導要領への対応として、生徒が未来社会を切り拓くための資質・能力を育成する目的で実施しているものであり、生徒支援事業、教員支援事業、学校支援事業の3事業で構成している。

 このうち、生徒支援事業では、大学進学を希望する生徒の学力の向上や、他者と協働して課題を解決する能力の育成等を目指す探究活動キャンプやアドバンスト学習キャンプの実施。教員支援事業では、教員の教科指導力の向上を図り、授業改善の取組を推進するための授業改善セミナーや、アドバンスト学習キャンプを運営する教員を対象としたスペシャリスト育成講座等の実施。また、学校支援事業では、カリキュラム・マネジメントを推進するプロジェクトや指定校において、探究活動の充実に向けた実践研究を行う総合的な探究の時間推進プロジェクトなどを実施している。

Q村田委員 これからの時代を担う人材には、情報活用能力や課題解決能力、コミュニケーション能力などが求められる。これらの必要な能力を育み、生徒の学力向上を図るための取組が生徒支援事業として行われているが、具体的な取組の内容はどのようになってるのか伺う。

A唐川課長 生徒支援事業について。これからの時代に必要となる情報活用能力や課題解決能力、コミュニケーション能力などを育成するための探究活動キャンプや、大学進学を目指す生徒の進路実現に向けた学力の向上と進学意欲の高揚を図ることをねらいとしたアドバンスト学習キャンプを開催している。

 探究活動キャンプは、道内の高校1・2年生を対象に、道内大学等と連携し、地域の課題等に関する講演や地域課題の解決に向けたグループ協議などの参加者交流を札幌市において、2日間の日程で実施した。また、アドバンスト学習キャンプは、道内の高校1年生を対象に、大学等の様々な情報や受験に対する学習方法に関する講義、生徒間ネットワークづくりにつながる交流などを全道5会場において、3日間の日程で実施している。

Q村田委員 生徒の学力向上を図るためには、教員の教科指導力の向上や授業改革の取組を推進する必要がある。教員支援事業では、どのような取組が行われているのか伺う。

A唐川課長 教員支援事業について。教員の教科指導力の向上と主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を進めるための授業改善セミナーや、生徒支援事業のアドバンスト学習キャンプを運営する教員の指導力の向上を図ることをねらいとしたスペシャリスト育成講座を開催している。

 授業改善セミナーでは、全道27会場において、国語、地理歴史、公民、数学、理科、外国語、情報の教員を対象に、ICTを効果的に活用した授業や課題解決型学習の実践などの発表、学習指導の在り方等についての研究協議を実施している。スペシャリスト育成講座では、大学教授による今日的な教育課題についての講演のほか、生徒の学びの質を高める授業づくりについて協議している。

Q村田委員 生徒や教員への取組とともに、学校における取組が重要となる。カリキュラム・マネジメント確立に向けた取組や、生徒の思考力・判断力・表現力等の育成に向けた取組などを推進するため、学校支援事業では、どのような取組が行われているのか伺う。

A唐川課長 学校支援事業について。高校の新学習指導要領で、総合的な学習の時間をより探究的な活動を重視する視点で改訂した総合的な探究の時間の充実を図ることをねらいとするプロジェクトや、新学習指導要領の趣旨に沿った教育課程編成・実施をねらいとするカリキュラム・マネジメント推進プロジェクトを実施している。

 総合的な探究の時間推進プロジェクトでは、道立高校6校を指定し、ICT活用の実践研究や、道立教育研究所で作成した校内体制の構築などの指導事例等を活用した実践研究に取り組んでいる。カリキュラム・マネジメント推進プロジェクトでは、道内5管内で実施した教務主任等を対象とした研修会において、教科等横断的な視点による教育課程編成・実施の理解を深めるなどカリキュラム・マネジメントの質的な向上に取り組むとともに、全道的な主体的・対話的で深い学びの実現を目指して研究指定校の実践を推進している。

Q村田委員 前年度実施したこれらの取組によって、生徒や教員、学校などにどのような変化が現れているのか。事業の成果について、課題などと併せて伺う。

A山本局長 取組の成果などについて。生徒支援事業については、探究活動キャンプおよびアドバンスト学習キャンプに参加した132人の生徒から、「地域の活性化に向けた課題を発見できた」「課題解決のための方策を考えることができた」「諦めずに問題を解くことが大事だと分かった」などの感想が寄せられ、問題発見・解決能力の育成や学習意欲の向上に成果がみられた。

 教員支援事業については、授業改善セミナーに参加した419人の教員から、「授業実践力の向上に役立った」「自分の授業を振り返るきっかけとなった」「授業で生かせるアイデアを得られた」などの感想を寄せられ、授業改善に向けた意欲の向上がみられた。

 学校支援事業については、研究指定校において、3年間を見据えた総合的な探究の時間の取組が進められているほか、ICTを活用した探究学習が充実するなど、具体的な改善が行われている。

 これらの事業の課題として、キャンプに参加した生徒、教員や研究指定校が取り組んでいる優れた実践を広く全道に普及していく必要があるものと考えている。

Q村田委員 未来を切り拓く資質・能力を育む高校教育推進事業のメニューの中に、学業不振を理由に、中途退学や不登校の生徒などが多い学校に学習支援員を派遣し学習を支援する高校サポーター派遣事業がある。

 この事業の前年度における取組の状況と成果などの道教委の受け止めについて伺う。

A赤間学校教育監 高校サポーター派遣事業について。本事業は、基礎学力の定着や学習意欲が十分でない生徒を支援し、学力の向上を図るため、実施しているものであり、元年度は、指定校16校に退職教員や大学生などを学校サポーターとして派遣し、学校が作成した指導計画に基づき、始業前や放課後などにおいて、復習や予習などの支援を行った。

 こうした取組の成果としては、学校サポーターによる個別指導によって、生徒の基礎学力の定着や学習意欲の向上が図られ、指定校における30年度と元年度の比較として、学業不振を理由に不登校となった生徒は7人から1人に減少、中途退学となった生徒は63人から7人に減少するなど、基礎学力を身に付け、高校生活への意欲を高める効果があったものと考えている。

Q村田委員 高校の新学習指導要領の実施に向けて、この事業の取組を加速させていく必要がある。これまでの事業の取組を踏まえ、道教委は、本道の高校生の学力向上に向けてどのように取り組んでいく考えなのか伺う。

A小玉教育長 高校生の学力向上に向けた今後の取組について。これまで実施してきた高校生の未来を切り拓く資質・能力を育むための事業においては、生徒の学習意欲の向上や主体的・対話的で深い学びへの授業改善が充実する一方で、こうした成果等を広く普及する必要があると考えている。

 このため、道教委としては、研究指定校の具体的な成果等を生かすため、今後、全道研究協議会などを実施し、学校における学習指導の改善・充実を推進することとしている。

 さらに、生徒が自ら課題を設定し、協働的に課題を解決する探究的な学びを充実させるとともに、その成果等を発信する機会を設定するなどして、本道の高校生が多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え、持続可能な社会のつくり手となることができるよう、学校の実践を支援し、教員の指導力の向上を図る取組を推進していく。

(道議会 2021-02-18付)

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