道議会質疑 予算特別委員会(令和2年11月11日)(道議会 2021-02-24付)
【Q 質問Question A 答弁Answer P 指摘Point out O 意見Opinion D 要望Demand】
【質問者】
▼壬生勝則委員(民主・道民連合)
【答弁者】
▼小玉俊宏教育長
▼赤間幸人学校教育監
▼池野敦総務政策局長兼幼児教育推進局長
▼小松智子学校教育局長
▼新免寛啓教育政策課長
▼伊藤伸一生徒指導・学校安全課長
◆いじめの防止 人権教育推進
Q壬生委員 全国の国公私立の小・中学校、特別支援学校が令和元年度認知したいじめの件数は、前年度比12・6%増の61万2496件と過去最高だったことが文部科学省の調査で明らかとなっている。道内公立学校も12・4%増の2万2574件と過去最多を更新した。文科省は、学校が初期段階での把握に努めた結果とみるが、心身や財産に深刻な被害を受ける重大事態も20・1%増の723件と最多である。
道内の公立学校の重大事態も8件増の14件で、過去最多であることを踏まえれば、悠長なことは言ってられないはずである。
道内公立学校におけるいじめの認知件数は、平成25年度で1000人当たりの認知件数が6・1人であったものが、元年度では1000人当たりの認知件数が48・9人と過去最高を記録している。
生徒数の減少が進んでいる中、本来はいじめの認知件数も減少していかなくてはならないと考えるが、残念ながらそうはなっていない。いじめの傾向については、高校、特別支援学校が減少している中、小学校の増加が顕著であることに対し、道教委として、どのようにとらえているのか、見解を伺う。
A伊藤課長 いじめの認知件数について。学校においては、いじめはどの子ども、どの学校でも起こり得るという認識のもと、ささいなけんかやふざけ合い等の小さなトラブルや嫌なことを言われるなど、子どもが感じる被害性に着目していじめを認知し、早期に対応することが重要と考えている。
こうしたことから、とりわけ小学校においては、各学校がいじめを初期段階のものも含めて積極的に認知し、その解消に向けて取り組んでいることがこのたびの調査結果における認知件数の増加につながったものととらえている。
Q壬生委員 いじめの認知件数の増加や1000人当たりの認知件数が過去最高を更新し続ける今、道教委は、今後、どのように対応していこうとしているのか、見解を伺う。
A伊藤課長 いじめへの対応について。各学校においては、いじめを根絶し、すべての児童生徒が安心して学校生活を送ることができるようにするためには、全教職員の共通理解のもと、いじめの芽を見逃さず、積極的に認知し、早い段階から適切に指導することによって、早期に解決することが重要と考えている。
このたびの調査結果においては、いじめが解消した割合が本道では約95%と、全国平均よりも10ポイント以上高かったことは、各学校において、初期段階からの積極的な対応が定着してきたことによるものと受け止めている。
今後、道教委としては、児童生徒に寄り添ったきめ細かな生徒指導を通じ、いじめの未然防止、早期発見・早期対応を一層徹底して行うことができるよう、市町村教委と連携し、各学校の組織的な生徒指導体制の充実に向け取り組んでいく。
Q壬生委員 道教委は、今回の結果に対し、スクールカウンセラーや専門家とも連携して、学校がいじめの未然防止、早期発見・早期対応できる体制を整えたいとしている。今までも同じような見解が示されてきたが、それにもかかわらず、いじめの認知件数が減少していない。
道教委は、教育行政執行方針の中で、豊かな人間性の育成を柱立てして約2億円のいじめ等対策総合推進事業費を講じている。過去5年間の推移ではあるが、年々予算が増えているにもかかわらず、いじめ認知件数は減少に転じていない。
予算を増額したから、いじめがなくなるという単純なものではないことは理解するが、事業予算の在り方について、道教委の見解を伺いたい。
A伊藤課長 いじめにかかる予算について。いじめの問題等に対応するため、これまでスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置を順次拡充してきたほか、ネット上のいじめ等のトラブルから児童生徒を守るためのネットパトロール事業などに加え、30年度からは国の補助事業を活用し、SNSによる教育相談事業を新たに行うなど、いじめの未然防止などに向け、各般の取組を推進してきた。
道教委としては、いじめの未然防止や早期発見・早期対応のためには、各学校において、スクールカウンセラー等も含めた組織的な生徒指導体制を整備することに加え、児童生徒や保護者が安心して相談できる教育相談の充実が重要と考えており、引き続き、効果的な取組を進めていきたいと考えている。
Q壬生委員 元年度の教育行政執行方針では、いじめの防止や不登校児童生徒への支援について、道いじめ防止基本方針の周知徹底を図るとともに、望ましい人間関係の醸成はもとより、いじめ等の未然防止と適切な実態把握による早期発見を基本として、組織的かつ迅速な対応が図られるよう取り組むとしている。
つまりは未然防止、早期発見・早期対応であるが、いじめの解消状況が96%以上あるということは、いじめの解消に向けて学校や道教委が大変努力していると思う。
ただ、いじめが起こらないことが一番いいはずである。そのためには、未然防止が強化されなければならない。
事業をみると、未然防止の観点が少し弱いのではと考えるが、道教委の見解を伺う。
A伊藤課長 いじめの未然防止について。学校において、いじめが起こらない環境をつくるためには、すべての児童生徒が自分が必要とされる存在であると感じ、互いの違いを認め合い、支え合うことができる教育活動を展開することが重要と考えている。
道教委としては、各学校において、児童生徒に豊かな情操と道徳心を育み、心の通う人間関係を築く力を養うことはもとより、児童会・生徒会において、児童生徒同士がいじめの問題を自分のこととしてとらえ、考え、議論するなど、児童生徒の自主的な活動を推奨しており、児童生徒によるいじめ根絶のメッセージ、ポスターのコンクールや、いじめの防止について話し合う子ども会議など、児童生徒による取組を支援する事業を展開し、いじめの未然防止に取り組んでいる。
O壬生委員 いじめの防止対策については、学校のみならず、家庭や社会全体で解消に向けた取組が必要であると思うが、子ども同士が一番集う場所は学校である。
これまでも努力していることには敬意を表するが、引き続き、地域、家族と一体で未然防止の取組を進めていただきたい。
Q壬生委員 いじめがなくならない原因について、道教委の見解を伺いたい。
A小松局長 いじめがなくならない原因について。いじめは、児童生徒同士の複雑な人間関係や心の問題から起こるものであり、また、意図的ではないものの、相手に嫌な思いをさせる言動を取ってしまうことがあるなど、いじめの芽はどの児童生徒にも生じると考えている。
また、単に児童生徒だけの問題ではなく、他人の弱みを笑いものにしたり、異質な他者を差別したりするといった大人の振る舞いを反映している問題でもあり、家庭環境や対人関係など多様な背景から様々な場面で起こり得ると考えられ、こうしたことが学校でいじめがなくならない原因ととらえている。
道教委としては、各学校が日ごろから児童生徒の理解を深め、教育活動全体を通じ、いじめをしない、させない、許さない学校づくりを進めることができるよう、学校の取組を支援していく考えである。
Q壬生委員 誰もが、いじめは悪いことであるということは認識していると思う。子どもたちに聞いても、いじめはいじめる側が悪いと言う。ただ、「いじめられる側にも問題がある」ということが許されてきたから、いじめがなくならない。
からかいや悪口などの誹謗・中傷、無視、仲間はずれ、暴力などが、いじめられる側にも問題があるとした風潮の中で見逃されてきた。これらの行為は人権侵害であり、決して許されるものではない。このことを児童生徒は理解できるし、また、理解させなければならない。だからこそ、人権とは何かを発達段階に合わせてしっかりと理解させなければならない。この部分を道教委の施策として強化しなければならないと考えるが、所見を伺う。
A小松局長 いじめと人権について。人権とは、すべての人々が生命と自由を確保し、それぞれの幸福を追求する権利であり、いじめは人権にかかわる重大な問題であると認識している。
いじめの未然防止のためには、子ども一人ひとりに人権尊重の精神を培い、学校はもとより、家庭や地域社会において、それを生かすことができるよう、人権教育を推進することが大切である。
このため、学校においては、児童生徒の発達の段階に応じて、学校教育全体を通じてお互いの違いやよさを認め人権を尊重すること、誰に対しても差別することや偏見をもつことなく公正、公平にすることなどについて指導している。道教委としては、今後もこうした人権教育の一層の充実に向け必要な助言をしていく考えである。
Q壬生委員 道教委が本気でいじめをなくす、不登校生徒の減少、人権侵害を許さないということを示すためにも、対症療法としての早期発見・早期対応ではなくて、未然防止としての人権教育を推進すべきである。
そのために、道教委として、小・中・高校の発達段階に応じた人権ハンドブックを作成し、人権教育を教育課程に取り入れやすい環境をつくるべきと考えるが、道教委の見解を伺う。
A赤間学校教育監 人権教育について。いじめは、児童生徒の人権にかかわる重大な問題であり、「いじめは絶対に許されない」「いじめはひきょうな方法である」との意識をもつことができるよう、各学校において、人権教育を推進することが大切と考えている。
本道においては、各学校において児童生徒の発達段階を踏まえ、道徳科や社会科、特別活動、総合的な学習の時間などの指導内容との関連を図り、人権を尊重する教育を推進するとともに、道徳教育推進教師を中心として道徳教育の充実を図っており、道教委としては、今後も、各市町村教委や学校の実情を踏まえ、人権教育の充実に向け適切に指導助言していく。
O壬生委員 今、答弁いただいたが、「いじめは、人権にかかわる重大な問題」で、「市町村や学校の実情を踏まえ」とあった。指導の内容は、市町村や学校の実情によって変わるものであってはならない。北海道のどの学校に行って、どの地域に住んでいても、人権教育を公平に行っていただくことを強く求める。
◆ふるさと応援事業について
Q壬生委員 道立学校ふるさと応援事業は、昨年10月から寄附者が道にふるさと納税を行うと、寄附額の2分の1を寄附者が指定した道立学校の特色ある教育活動や教育環境の充実に活用し、残りの2分の1を道立学校の教育活動を充実するための事業に活用する制度であるものと承知している。
道教委は、実施希望校の審査から決定、リーフレットの配布、ホームページでの本事業に関する広報や周知活動に積極的に取り組んできた。
本事業にかかるこれまでの実施校数および寄附額を伺う。
A新免課長 事業の実施校などについて。学校の実施計画に基づく事業については、事業を開始した元年9月から2年10月末までで72校から実施計画の提出があり、このうち、本年度、学校を指定して集まった寄附金が計画する事業の目標額に達し、これを活用して事業を実施することとなった学校は1校となっている。
国際交流に資する留学の事業については、前年度の寄附額に応じ必要な予算を計上したが、現下のコロナ禍によって海外への渡航を見合わせている。
なお、これまでの寄附額は、募集を開始した元年9月から2年10月末までで総額約584万円となっている。
Q壬生委員 本事業においては、一部で、学校によって寄附額の偏りが大きいとの声も聞いている。道教委として、このことをどのように認識しているのか伺う。
A新免課長 学校に対する寄附の状況について。本事業の開始に当たっては、寄附が一部の学校に集中することのないよう、特定の学校を指定してきた場合にあっても、寄附額の2分の1は、当該校の教育活動の充実に充てるものの、2分の1は、全道の道立高校生を対象とした留学機会の拡大に活用することとし、学校を指定してこなかった場合は、その全額を全道の道立高校生の留学機会の拡大に活用することとした。こうした手立てを講じているものの、学校規模や卒業生の数、PRの方法などによって、学校が自校の教育活動に活用できる寄附額には差が生じており、今後、多くの方々からの協力が一層必要であると考えている。
Q壬生委員 これまで実施してきた中での課題や、その解消に向けた方策について、どのように考えているのか伺いたい。
A池野局長 本事業における課題などについて。本事業の推進に当たっては、これまでも北海道物産展など知事部局と連携した道内外のイベントやSNSなどに周知してきたが、各学校の教育活動にどのように役立つのかが具体的に伝わっていないことや、同窓会などをはじめとする多くの方々に、さらに理解を得る必要があることなどから、多くの学校で希望する寄附額に届いていない状況である。
道教委としては、今後、各学校と寄附額に応じた実施計画の内容の変更やPRの方法などに関し、個別に協議を行って、必要な見直しを図るとともに、同窓会や学校関係者に加え、地域の方々にも自校の実施計画を分かりやすく説明し、協力を求める機会をあらためて設けるほか、各学校のPR動画などを様々な媒体を通じて広く発信するなどして、寄附の確保に向けた取組を進めていきたいと考えている。
Q壬生委員 本事業については、道立学校において、非常に期待がもてる事業であると考えている。
今後の展望を含め、どのように事業を展開するのか伺う。
A小玉教育長 今後の展望について。本事業は、道立学校の特色ある教育活動を促進し、北海道のつぎの世代を担う人材を着実に育成することなどを目的として行うものである。
私としては、事業の推進に当たっては、資金確保の視点だけでなく、地域の住民や道内外の企業等の共感を得て、人材やノウハウ、ネットワークなど多様な応援をいただきながら、その方々の期待に応えることができるよう、確かな成果を上げる活動が重要であると考えている。
今後、学校ごとの実施計画の見直しや、PR方法の改善、協働・連携方法の提案などを行いながら、すべての道立学校とその子どもたちを育んできたふるさとの魅力向上に取り組んでいく。
(道議会 2021-02-24付)
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