新しい学び 各校で開始 札幌市立小中 1人1台端末活用 利用環境整備、持ち帰りに課題も(札幌市 2021-05-12付)
タブレット端末を使用する児童たち=新琴似小=
ことし4月、札幌市立小・中学校298校における1人1台タブレット端末の活用が始まった。学校現場では安全に使用するルールのもと、工夫しながら様々な教育活動で展開されている。例えば小学校6年生図画工作。授業では、児童同士が端末を通して作品の良さについて意見を共有する。学校現場からは「写真をプリントアウトする必要がなくなり、黒板を使用する回数が減った」などの利点が多く挙がる。一方で、ネットワーク環境の制限や活用のルールに関する課題を指摘する声もある。
市内の小・中学校では1人1台端末にChromebookを指定。クラウド型学習支援システムにはGoogle Classroomを活用している。
新琴似小学校(鈴木秀和校長)では、ことし1月からタブレット端末を導入し、2月に貸与を開始。4月下旬までに授業の中で6回活用した。
休み時間の端末使用は、学習に関係のないサイトにアクセスしないなどのルールを設けた上で許可。児童は、漢字辞書の代用や係活動におけるスライド作成などで活用している。
4月22日に行った6年生の図画工作では、児童がこれまで描いた「音のする絵」について、児童同士が互いに作品を鑑賞する授業が行われた。
教員はタブレット端末で児童が良いと思った作品を自由に撮影させたほか、写真とともに、「良かった点」「自身も取り入れたい点」について意見を入力し、学習支援システムで多くの意見を共有させた。
児童の一人は「普段話さない子の意見もタブレット端末を通して伝わるから、うれしい。先生や学級内からのコメントもすぐ届く。様々な反応が得られるため、授業が楽しい」と話すなど、多くの児童が、前向きな姿勢で取り組んでいる。
同校によると、1人1台タブレット端末活用開始前の授業では、学級内でデジタルカメラを使い回して撮影後、一人ひとりの作品をプリントアウト。児童の意見は用紙に記入させて紹介していたという。
6年生の担任を受け持つ冨樫良介教諭は「子どもが自由に写真を撮影できるため、一人ひとりの個性が見えやすい。写真をプリントアウトする必要がなくなるため、黒板を使用する回数も減った」と授業の円滑な進行を実感する。
一方で、校内のネットワーク環境や端末活用のルールに関する課題も浮き彫りになっている。
同校では、体育館や特別教室などで、Wi―Fiの使用が制限されている。体育の授業では、Wi―Fiが体育館まで届かないため、教師用の端末のみ持ち込み、授業後、運動の様子を撮影した動画をテレビモニターに接続して対応している。
鈴木校長は「今後、理科や生活科の授業における調べ学習など、校外でタブレット端末の検索機能を使用できれば、活用範囲が広がるのではないか」と、ネットワーク環境拡大の必要性を指摘する。
また、緊急時の休校などを想定した端末の持ち帰りについても、「家庭への持ち帰りに関するルールづくりが不可欠」と強調する。
市教委は、課題解消に向けて、貸与用ルーターの活用を推奨する。昨年、通信環境のない家庭向けに各校で貸与したもので、担当者は「校外学習などで必要に応じて使用することは可能」としている。
家庭への端末の持ち帰りについても検討。今後モデル校での試行を経て、課題や成果を発信していく見通しだ。
長谷川雅英教育長は、各校での取組について「端末運用開始に向けて準備し、現在は成果に向けて各校で工夫しながら取り組んでいると思う。今後もさらに、個別最適な教育活動の実践につながっていくよう、期待している」と話している。
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写真や動画の撮影も行っている=新琴似小=
(札幌市 2021-05-12付)
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