持続可能な教育体制構築を 道小・道中 教育条件整備で提言
(関係団体 2021-05-19付)

 道小学校長会(吉田信興会長)と道中学校長会(三浦利章会長)は、道教委に「北海道教育の充実をめざす地域格差のない教育条件の整備に関する提言~“チーム北海道”として」を提出した。学習指導要領の趣旨を生かした授業と、チームとしての学校実現に向けた地域格差のない教育条件の整備を提言。教員の人的配置の充実、スクール・サポート・スタッフ等支援人材の拡充、家庭・地域・関係機関との連携・協働体制の整備などを提案している。概要はつぎのとおり。

【学習指導要領の趣旨を生かした授業改善に向けた教育条件に関する提言】

 現在の子どもたちが、社会で活躍するころのわが国は、Society5・0時代の到来によって社会の在り方そのものが劇的に変わる状況が生じつつあると言われている。このような社会を子どもたちが生き抜いていくためには、子どもが自分のよさや可能性を認識するとともに、多様な人々と協働しながら持続可能な社会の創り手となることができるように資質・能力を育成することが求められる。

 そのためには、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実など、学びの質を一層重視した授業改善を図っていくことが必要。

 こうした時代の要請に応えていくためには、学校は、各教科等の特質に応じた見方・考え方を働かせながら、知識を相互に関連付けてより深く理解し、情報を精査して考えを形成するとともに、問題を見い出して解決策を考え、思いや考えをもとに創造していく過程を重視した主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善の取組を進めていかなければならない。

 また、学びを教科等の縦割りにとどめるのではなく、教科等の枠を越えた視点で教育課程を見渡して、相互の連携を図り、教科等横断的な視点をもって、社会とのつながりを重視した社会に開かれた教育課程を編成し、「よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創る」という学習指導要領の目標の実現を図っていかなければならない。

 特に、小・中学校においては、コロナ禍のもとGIGAスクール構想によって児童生徒1人1台端末と高速大容量の通信ネットワーク環境の整備を最大限に生かしていくことが急務となっている。災害や感染症による学校の臨時休業等の緊急時においても学習が継続できるとともに、これまでの実践とICTの活用を適切に組み合わせていくことで、教育の質を向上させることが期待されており、個別最適な学びと協働的な学びを一体的に充実させていくことが求められている。

 こうしたICTを活用した授業改善の浸透を図りつつ、教育活動の質を向上させ、学習の効果の最大化を図るカリキュラム・マネジメントを進めながら、学習指導要領のもとで、指導と評価の一体化を進めなければならない。児童生徒の学習評価の在り方については、国において、指導要領における文章記述欄について、大幅に簡素化を図られ、教師に過度な負担をかけることのないよう改善が図られてきた。

 さらに、コロナ禍のもと感染拡大防止の観点から学習活動や形態、時数確保について柔軟にとらえることが求められる。また、感染防止対策に力を尽くし学習の質を高める授業改善を進めながら、限られた時間の中で、教師の専門性を生かしつつ、授業改善や児童生徒と接する時間を十分に確保し、教師が自らの授業を磨くとともに、その人間性や創造性を高め、児童生徒に対して効果的な教育活動を持続的に行うことも求められている。

 以上のことから、道小学校長会・道中学校長会は、学習指導要領の趣旨を生かした授業改普に向けた教育条件の整備について、つぎのように提言する。

▼主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善のための体制整備

▽学習習慣の確立に向けた定数欠・代替教員欠員の解消など、教員の定数確保に向けた体制整備

▽教材研究の時間と子どもと向き合う時間の確保のための人的配置による研修体制の整備

▽各教科等の授業改善に向けて感染防止を図るための実践事例・資料等、情報提供の充実

▼現代的な諸課題に対応する教科等横断的な教育内容の充実に向けた人材の確保

▽ICT環境の充実に伴うサポート等の体制整備および体験的な活動を充実させるための教員の確保

▽ALTの充実、英語を指導できる教員の確保や養成、専科指導の充実など、外国語等の教科指導における体制の整備と充実

▼新しい時代の教育に向けた持続可能な教育活動運営体制の構築に向けた条件整備

▽専科指導の加配配置による教員1人当たりの週授業時数の改善

▽教師の働き方改革の状況を踏まえた児童生徒の学習評価のICTの活用を含めた工夫改善

【チームとしての学校の実現に向けた教育条件整備に関する提言】

 今日の学校教育の現場は、新型コロナウイルス感染拡大によって、一層先行き不透明な中、いじめの重大事態や不登校、児童虐待相談対応、特別な教育的支援を必要とする児童生徒、外国人児童生徒、厳しい経済状況にある家庭等への対応、GIGAスクール構想に基づく授業改善など、複雑化・多様化する様々な課題への対応が山積しており、誰一人置き去りにしない教育を実現するため、これらの児童生徒等への支援体制を整えていくことが求められている。

 さらに、新型コロナウイルス感染症やアレルギー対策のような新たな健康問題への対応も急務となっている。

 これらの状況の中で、教員は、子どもと向き合う時間や授業準備等の十分な時間を確保することができず、特に、中学校においては、部活動の指導や引率等の業務によって、教材研究・学級経営・生徒指導などの本来的な業務に専念する時間を割かれているという実態にある。

 複雑化・多様化している学校の課題に対応し、教師が児童生徒と向き合う時間を十分に確保するため、個々の教員が個別に教育活動に取り組むのではなく、校長のリーダーシップのもと、連携と分担による学校のマネジメントを強化し、組織として教育活動に取り組む体制を創り上げるとともに、必要な指導体制を整備することが求められる。

 そのため、必要な教師を確保した上で、生徒指導や特別支援教育等を充実していくために、学校や教員が心理や福祉等の専門家(専門スタッフ)や専門機関と連携・分担する体制を整備し、学校の機能を強化することや地域住民との連携・協働を含めた学校運営の改善を図り、チームとして教育活動に取り組む指導体制を整備することが必要。

 また、チームとしての学校を実現することは、学校と地域との連携・協働体制の強化が重要となることから、地域全体で未来を担う子どもたちの成長を支えていく取組は、地域の活力を高め、地方創生へつながるとともに、学習指導要領が掲げる「社会に開かれた教育課程」の理念の実現に結び付くものと考える。

 チームとしての学校を構築し、チームとしての力を最大限に発揮しながら、学校の教育カ・組織力を向上させていくことは、私たち校長に求められる大きな責務である。

 そこで、チームとしての学校の実現に向けた教育条件の整備に向けて、道教委が策定した学校における働き方改革「北海道アクションプラン」(第2期)の確実な推進も含め、つぎのように提言する。

▼連携と分担によるチーム体制構築のための人的配置・専門職員の導入および条件整備

▽教員の人的配置

・管理職の補佐体制充実のための加配措置拡充による主幹教諭の配置の促進

・小学校における専科教員の増員、教科担任制の促進および中学校における免許外担当の解消

▽多様な専門スタッフの配置と専門職員の導入

・スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーおよび特別支援教育支援員の配置拡充

・学校図書館司書配置の推進

・部活動の指導や顧問、単独で部員の引率などを行う部活動指導員配置のより一層の拡充

▽一人ひとりが担う負担を軽減するための条件整備

・新型コロナウイルス感染症対策の負担軽減を図る学習支援員およびスクール・サポート・スタッフの拡充

・校務支援システムや校内LANの構築など、ICT環境整備の地域格差の解消

・事務の共同実施の推進等による事務機能の強化

▼チーム力向上のための家庭、地域、関係機関等との連携・協働体制の整備

▽学校と地域との連携を推進する地域連携担当職員の導入

▽コミュニティ・スクールの促進や地域学校協働本部を活用した、学校・家庭・地域の連携・協働体制の強化

▽学校と児童相談所などの関係機関および警察との連携・協働体制の充実

▽いじめ問題、保護者対応、学校事故等での問題解決において、学識経験者や弁護士等から支援を受けるスクールロイヤーの配置

▽子どもの生活習慣確立・健全育成のための道PTA連合会等との連携の強化

(関係団体 2021-05-19付)

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