高校・特別支援配置計画案撤回求め 20人学級 早急に実現を 道高教組・道教組が声明
(関係団体 2021-06-09付)

 道高教組(尾張聡中央執行委員長)と道教組(中村哲也執行委員長)は7日、道教委の2022~24年度公立高校配置計画案と2022年度公立特別支援学校配置計画案に対し声明を発表した。新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、20人学級を求める声が高まっているとし、学級定員を20人に引き下げることは不可欠と強調。留辺蘂高校の募集停止について「道教委は説明責任を果たしているとは言えない」とし、40人学級を前提とした判断に断固として反対する姿勢を示した。概要はつぎのとおり。

▼パンデミックは、これからの高校づくりに関する指針の問題点を浮き彫りにした

 新型コロナウイルス感染拡大に伴い、昨年20人学級を求める声が大きく高まった。それはついに文部科学省をも動かし、40年ぶりの学級編制基準の変更に至った。

 コロナ禍においては、道教委が望ましい規模とする4~8学級の高校では、集会や学校行事、部活動もままならないばかりか、クラスターが続発し、命の危険を抱えながら教育活動を続けている状況。結果として5~6月には分散登校を強いられ、“望ましい規模”であればあるほど、子どもや保護者が求める教育はできないという皮肉な現状にある。

 私たちは、これまでも教育効果の観点から小規模校や少人数学級の優位性を訴えてきたが、感染症対策においても、きめ細かで臨機応変な対応が可能であることが明らかとなった。

 感染症対策はコロナ後に不必要になるものではなく、来るべき新たな感染症にも適切に対応できるものでなければならない。未来においても、このコロナ禍の教訓を生かすものとして学級定員を20人に引き下げることは不可欠だ。

 道教委は、40人学級を前提としたこれからの高校づくりに関する指針に基づく高校配置計画案を直ちに撤回するとともに、抜本的に施策の転換を図るべきである。

▼地域の声を尊重し、説明責任を果たせ。留辺蘂高校募集停止には断固反対する

 第1回地域別検討協議会においても、指針の見直しを求める悲鳴にも似た声が、多くの自治体や保護者から寄せられた。特に、学級定員の引き下げを求める声は強かったが、「少人数学級の導入は現段階では難しく、定数措置の拡充について国に要望する」とする責任転嫁に終始している。

 2023年度の留辺蘂高校募集停止に関して、留辺蘂高PTA会長からは、募集停止による地元生徒への交通面、費用面の影響と、来年度以降の生徒数減少が見込まれる状況ではないことが指摘された。

 また、北見市教委からは機械的な統廃合への懸念も示されたが、道教委は説明責任を果たしているとはいえない。40人学級を前提とした現在の基準をもって、機械的に留辺蘂高を募集停止することには断固として反対する。

 併せて、2024年度においても岩見沢東高校、利尻高校、釧路湖陵高校、釧路明輝高校、釧路商業高校、釧路東高校において機械的に学級減をするのではなく、少人数学級を見据えて学級数を維持し、よりきめ細かで質の高い教育を保障すべきである。

▼機械的な計画策定と急な募集学級数の変更は現場を疲弊・混乱させるだけだ

 道教委は「中学生の進路選択に十分な検討時間を確保するため3年間の計画を策定する」としていながら、配置計画案では24もの学校において次年度の学級数を計画決定時に公表している。

 本年度予定していた学級数に入学者数が達していない場合においても、一度の結果をもって判断するのは早計である。次年度の計画案を示すことができないのであれば、各学校も中学校3年生とその保護者の進路選択のために実施する学校説明会での説明責任を果たせない。少なくとも1年先延ばしすべきである。

 各高校では感染拡大要因が多い環境の中で、複雑で予測困難なコロナ対応を迫られながら、道教委が押し付ける授業時数確保至上主義のために、土曜授業、長期休業の削減などで、年間計画の変更・時間割作成業務が複雑化し、修学旅行、学校行事等においても延期・中止・変更・縮小など複雑な対応を求められている。すでに教職員の疲労は頂点に達しており、過労死ラインとされる超過勤務月80時間を超える教員が、2020年10月において1200人以上もいた現状は許容できるものではない。

 このような状況において、働き方改革を推進する立場の道教委が、より教職員に負荷のかかる配置計画を提示すべきではない。機械的で不安定な高校配置計画を策定・実施せず、募集定員に満たない場合にあっても教員数と学級数を維持し、可能な学校から順次、少人数学級を実現するべきである。

▼道教委の特色づくり、高校の魅力化の破綻がいよいよ明らかになった

 道教委は一貫して、特色づくりを学校に押し付けてきた。総合学科や単位制、フィールド制などを学校存続をかけて競わせてきた。とりわけ総合学科は特色づくりの花形として、「小規模校となった場合でも、民間講師を活用するなどして教育活動の充実を図る」と守り続けてきたが、留辺蘂高の募集停止案は、いよいよ特色づくりの破綻を示したといえる。

 そもそも、「魅力ある学校=選ばれる学校」という定義自体、何ら根拠がない。地域別検討協議会においても地域の首長自らが「あらゆる“魅力化”を図ってきた」としながらも、都市部に人口が流出する中、生徒募集に苦悩していることを率直に語っていた。道教委は、強引に進めてきた特色づくりと高校の魅力化の押し付けをやめるべきである。

 名寄市内の高校については、名寄高校の普通科3学級と名寄産業高校の酪農科学科、機械・建築システム科、生活文化科各1学級を、普通4学級と情報技術科1学級に再編統合する案が示された。

 名寄産業高は、名寄光凌高校と名寄農業高校を統合し、道内唯一の産業キャンパスによる職業学科集合型の専門高校として2009年に開校した学校である。産業キャンパスは、道教委が2006年に策定した高校教育に関する指針(旧指針)で、特色づくりの目玉の一つとして掲げたものであるが、その総括もほとんどないまま、「魅力化」に看板を掛け変えて、新たな“特色”を懲りずに押し付けようとする姿勢は到底許されるものではない。

 また、野幌高校、千歳北陽高校のアンビシャススクールについて、どのような学校づくりをするのかは、教育課程の編成主体である各学校に任せられるべきであり、道教委が高校配置計画の中で位置付けるものではない。道教委は各地域・学校の状況や子どもの実態から出発した学校づくりを支援する教育条件整備に専念すべきである。

▼特別支援学校設置基準の策定を踏まえ、配置計画の大転換を求める

 道教委は、特別支援学校配置計画案の冒頭、知的障がい特別支援学校高等部の進学者の推移について、「近年、増加がやや緩やかになってきており、本年度は前年度に引き続き、微減となっている」としている。

 しかし、少子化の中にあっても、特別支援学校の在籍者の増加傾向が継続していることは変わらない。ましてや、小・中学部と高等部が併設されている知的障がい特別支援学校の教室不足は深刻であり、道教委の示す計画案は、小・中学部を含めた特別支援学校の実態に追いついていないと言わざるを得ない。

 5月26日、文科省は特別支援学校の設置基準案を公表し、現在、パブリックコメントを募集している。一向に改善されない特別支援学校の過大・過密化に対する保護者や関係団体の運動の後押しによって、国・文科省が特別支援学校の劣悪な教育条件を認め、やっとのことで不十分ながらも学校設置基準を策定しようとしている。

 これらの新たな動きの中、道教委は、配置の見通しで出願者数の増加見込みに対して「既存施設等の活用による対応を検討」と、これまでと変わらない方針を示している。

 道教委は、既存施設への詰め込みとも言えるこれまでの方針を大転換し、本来あるべき単独校舎による新増設の計画を示すべきだ。この後も当事者の声、学校の実態をよく踏まえ、早急に小・中学部も含めた特別支援学校の過大・過密を解消するための配置計画を示すことを求める。

▼少人数学級実現による子どもたちの“えがお”こそが魅力ある学校のエビデンスである

 ことし3月に成立した改正義務標準法の本案審議の過程で、萩生田光一文部科学大臣は「子どもたちの笑顔が増えているかも含めて、大きな視点から評価をしていただくことが大事だ」と強調し、少人数学級の効果を幅広く検証する意向を示した。

 同時に、子どもたちの笑顔のためには、多忙化で悲鳴を上げている教職員の笑顔があふれるような教育条件整備が必須である。

 道教委は、矛盾が浮き彫りになっている高校配置計画案を撤回する勇気をもち、40人学級を見直し、20人学級を早急に実現するなど、子どもたちの笑顔と北海道の未来のために教職員の笑顔を支援する教育条件整備に全力を挙げて取り組むことをあらためて求める。

 文科省が自信をもって大幅な予算の増額要求ができるよう、私たちも「えがお署名」に取り組み、20人学級実現、特別支援学校の過大・過密解消、教職員の長時間過密労働解消を求めていく。

(関係団体 2021-06-09付)

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