第73回全国造形教育研究大会北海道大会第70回全道造形教育研究大会札幌大会(札幌市 2021-10-12付)
【研究概要】
▼研究テーマ=この子が主体的に感じる=考える=表す「気持ちの形・色」(絵に表す)
▼発表者=三浦真奈美教諭(道教育大学附属札幌小学校)
ふわとろ絵の具に触れて感じたことや形・色、自分の気持ちを基にどのように主題を表すか考え絵に表す題材(5年生)。
視点①「もっと!」を生み出す教材化
▼ふわとろ絵の具
液体粘土と水彩絵の具を混ぜ合わせたもの。手指で扱い感触から行為や気持ちを引き出す。支持体上で混色したり凹凸を付けたりするとそのまま固まるので形や色の工夫を引き出すことができる。
▼卵パック
指で混ぜて感触を味わうことができる。1度に10色つくることができる。密閉して再利用できる。
▼白板段ボール
最初の1枚は教師が15㌢㍍四方にカット。以降は表したいことに合わせて子どもがカット。丈夫なので、ふわとろ絵の具を載せて混ぜ合わせ、形や色の工夫を引き出すことが可能。
【評価規準】
▼知識および技能
描画材を手指で扱う感覚や行為を通して、その立体感や可塑性が生み出す形や色について理解している。また、材料・用具や手指の動きなどに対する知識や経験を生かし工夫して表している。
▼思考力・判断力・表現力等
感じたことや自分の気持ちや形・色をもとにイメージをもち、材料・用具の特徴や手指の動きと結び付けながらどのように主題を表すかについて考えている。
▼主体的に学習に取り組む態度
主体的に材料や用具にかかわったり、感じたことや自分の気持ちや形・色を基にイメージしたりして学習に取り組もうとしている。
【活動構成】
「この子」
▽この子=手のひらでふわとろ絵の具を混ぜ合わせ混色を試す。「板段ボールでなく、自分の手を作品にしたい」「このまま帰って家族に見せたい」
▽教師=受け入れる
▽友だち=「これどうやったの?」
▽この子=「全部の色を入れて混ぜるのさ」と教える。その後「そうだ!今度は茶色と緑と…」と色の使い方に意図が生まれた
▽この子=「平面でなく立体にして接着したい」
▽教師=「考えがあるんだね」。線接着の方法が書かれた掲示物を示す
▽この子=立体にして接着し「向きを決めたくなかった」と考えを教師に伝えた
視点②「もっと!」が連続する活動構成
▼活動Ⅰ「思いのままに」
▽卵パックに液体粘土と水彩絵の具を入れて指で混ぜ、ふわとろ絵の具をつくる
▽指や手のひらで感触を味わいながら白板段ボールの上で思いのままに表す。ふわとろ絵の具の特徴や形・色に興味をもち、活動への意欲をもち始める
▼活動Ⅱ「見合い話し合う」
▽前時の自分の表現に題名を付ける
▽教師によって抽出された3人の表現を見る。題名を予想したり本人の思いを聞いたりしながら、どのように気持ちを表すかについての問題意識をもち、気持ちを表現することへの意欲をもつ
▼活動Ⅲ
▽手のひらサイズ程の板段ボールにふわとろ絵の具を使ってどのように気持ちを表すか考え、表す
▽用具を自由に選択できるようにすることで、主題と工夫の往還を保障する
▼活動Ⅳ
▽構成の美しさや感じを考えながら、これまでの表現の組み合わせ方や背景の形・色を工夫して主題を表す
▽新しく90×60㌢㍍の板、段ボール、ローラー、接着剤を提示する
視点③「もっと!」をつなげるための自他の変容をとらえる振り返り
▽自分の表現を撮影し、題名や表現に込めた思いを書き添えることで、感じたり考えたりしたことを自覚することができる
▽撮影した画像、題名や思いをGoogleスライドに挿入し、学級の共有ドライブに保存することで、いつでも自他の表現を見ることができる
視点④「もっと!」を高めるための学習評価の工夫
▼活動Ⅳ「構成の感じを考えながら心を表す」
▽友だちと教師、家族などの他者からの評価によって、自分の表現のよさに気付くことができる
▽Googleスライドのコメント機能や、小型カメラによる動画の定点撮影、家庭との連携などによって、様々な角度からの他者評価を促す
【実践を振り返って】
▼材料に興味をもってかかわったり、問題意識をもって活動したりすることで、形や色、材料に浸りながら、表したいことを見付け、工夫して表すことができた
▼活動ⅢとⅣを同時に進行させたため、構成の感じを考えることへの見通しをもてない子どももいた。先の見通しをもてるような手立てが必要である
(札幌市 2021-10-12付)
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