道徳「特別の教科」化で調査 教員の意識向上 97% 文科省 評価・授業改善で課題(国 2022-05-06付)
文部科学省は3年度道徳教育実施状況調査結果をまとめた。道徳の「特別の教科」化によって教員の意識が向上したと回答した小・中学校の割合は97・0%。8割が評価による指導上の効果を挙げている一方、評価の妥当性や信頼性の担保に課題認識があることが分かった。授業の課題は「議論して考えを深める」「多面的・多角的に考える」ための指導や教材研究の時間の確保が過半数を占めた。
調査は、道徳科を要とした道徳教育の全国的な取組状況や課題を把握して今後の道徳教育のさらなる改善・充実を図ることが目的。「特別の教科 道徳」が平成30年度に小学校、令和元年度に中学校で全面実施となり、9年ぶりに実施した。
公立小・中学校等2218校、都道府県・市区町村教育委員会1747教委から回答を得た。
学校調査の結果をみると、道徳教育推進上の課題(複数回答、以下同じ)として最も多く挙がったのは「教師間での共通理解や連携を図る機会の確保」で57・1%、つぎに「家庭や地域社会との連携・協力」で47・6%。
道徳科の授業の実施上の課題は「話し合いや議論などを通じて考えを深めるための指導」「物事を多面的・多角的に考えるための指導」「教材の吟味や授業構想の時間確保」がいずれも5割以上と高い。
評価によって「児童生徒の成長の把握と指導の効果が実感できるようになった」と回答した割合は87・8%で、評価の工夫方法は「ワークシート等による学習履歴」が97・4%、「児童生徒の自己評価や相互評価」が72・3%と高い。
一方、課題として半数以上が「評価の妥当性や信頼性の担保」「児童生徒の学習状況および道徳性の成長の様子の把握」を挙げている。
道徳の「特別の教科」化を受けた学校の変化は「道徳教育に対する教師の意識が高まった」が97・0%と肯定的回答が並んだ。「各教科等や体験活動との関連」(小学校79・9%、中学校65・8%)、「家庭や地域社会からの理解」(小学校60・1%、中学校47・2%)に関しては小・中学校で差がある。
教育委員会調査の結果をみると、ほぼ全ての都道府県・政令指定都市教委で教師向けの研修会を開催している。ICTの効果的な活用の推進に取り組んでいる教育委員会は57・8%だった。
道徳教育の一層の充実に向けた課題は「教師の指導力」が60・8%と最も高く「家庭や地域社会との連携・協力」「学校管理職のマネジメント」などと続く。
文科省は、道徳教育の量的確保の面で確実に定着しつつあるとするものの、考え、議論する道徳への質的転換を一層推進する必要があるとし、今後、授業づくりの参考となる授業映像や指導資料を掲載した道徳教育アーカイブの拡充、オンラインによる研修機会の充実を図っていく方針。
(国 2022-05-06付)
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