全小社研北海道大会公開授業① 八軒西小 地域の良さ実感し愛着育む 札幌のタマネギ農家題材に
(札幌市 2022-11-16付)

 第60回全国小学校社会科研究協議会研究大会北海道大会・第77回道社会科教育研究大会・第49回札幌市社会科教育研究大会が10月下旬、札幌市内のカナモトホールを主会場にハイブリッド形式で開かれた。大会主題「社会を知り、世界を切り拓く北国の子の育成~見方・考え方を鍛え、生きて働く資質・能力を確かに育む社会科の学び」のもと、事前に録画した授業をダイジェストで上映する特設提案授業上映や記念シンポジウムなどを実施。ここでは、授業16授業と特設提案授業1授業合わせて17授業を指導案に基づき連載で紹介する。

第3学年授業研究会A(1)

八軒西小学校3年1組(井上友美教諭)

農家の仕事~札幌のタマネギ生産を守り続ける農家

◆第3学年で目指す子どもの姿

▼体験的な活動を通して地域の良さを実感し、社会的事象を創出する人物への憧れや住んでいる地域への愛着を持とうとする子

 第3学年部会で目指す「社会を知り、世界を切り拓く北国の子」とは「体験的な活動を通して地域の良さを実感し、社会的事象を創出する人物への憧れや住んでいる地域への愛着を持とうとする子」である。自分の「地域」をよく学ぶことで他地域の特色もつかめるようになる。

 また、地域に対する誇りや愛着を持つことは他地域、他国の「良さ」を知ろうとする芽を育むことにもつながる。本単元では、札幌のタマネギ農家が、生産性の高い品種改良種を生産する一方で、札幌の伝統野菜である札幌黄の生産にもこだわる意味を追究する。子どもたちが普段当たり前のように口にする農作物。その裏側にある、生産者の工夫や思いを知り、自分たちの生活との関わりを考えることを通して、地域の生産を支えている人物への憧れや、地域への愛着を持とうとする姿を目指す。

◆本単元の目標

 畑の分布、タマネギ生産の歴史、仕事の種類や工程、消費者の願い、品種による特徴や生産量の違いなどに着目して、見学・調査したり、地図などの資料で調べたりして、ノートなどにまとめ、タマネギ生産に携わっている人々の仕事の様子を捉え、地域の人々の消費活動との関連やそれらの仕事に見られる工夫を考え、表現することを通して、タマネギ生産の仕事は地域の人々の消費活動と密接な関わりを持って行われていることを理解するとともに、札幌の農家の一人である澤田さんの営みを知り、地域の農家の在り方について見つめ直し、自分の消費行動や地域の良さについて考えようとする態度を養う。

◆本時のねらい

 育てやすいF1種を主に生産する一方で、病気が多く収量にもばらつきのある札幌黄を作り続ける意味について、生産者と消費者の立場で考えることを通して、札幌のタマネギ農家が、育てる品種を工夫しながら札幌のタマネギ作りを守ろうとしていることに気付き、適切に表現している。

◆本時の展開

【子どもの主な活動】

〈問いを生む場〉

▽品種による生産割合の変遷から、札幌黄を作り続ける理由について問いを持つ

 「札幌黄は作るのが大変だから減らしたんだね」「札幌黄が0%になってしまうよ」「どうして作るのをやめないのかな?」

▼課題「(F1種の方が作りやすいのに)澤田さんは、どうして札幌黄も作り続けているのかな?」

〈考えをつなぐ場〉

▽既習をもとに、生産者と消費者の2つの立場から理由を考える

▽澤田さん

・作るのが大変だけどファンのために

・タマネギ栽培始まりの札幌だからこそ

・138年受け継いできた札幌の宝

・息子や孫の代に残す

▽消費者

・糖度が特別高い

・肉厚で柔らかい

・煮込み料理に

・期間限定の楽しみ

・札幌の自慢

・道外でも人気

・料理人のこだわり

 「札幌黄を増やせばいいのでは?」「F1種とどちらが大切なの?」「F1種を作りながら札幌黄を残したい」「いつも買えるF1種と特別な味の札幌黄を」

▼まとめ「消費者の願いに応えて札幌のブランド野菜を守り続けたいという思いから、F1種とのバランスを考えて作り続けているんだね」

〈吟味・検証・再考する場〉

▽澤田さんの畑のこれから先の生産量のバランスを予想する

 「澤田さんは、これからどんなバランスで作っていくのかな?」

 「札幌黄の人気がもっと高まって、生産を増やすかもしれない」「今と同じように、F1種とのバランスを考えて札幌黄をずっと作り続けると思う」「人気の札幌黄だけを作るかもしれない」「長い期間食べられるF1種も作る必要があると思う」

▼まとめ「これから先も、消費者の願いに応えるために、F1種と札幌黄のバランスを考えながら、タマネギ作りを続けていくと思うよ」「これからも札幌黄を作り続けるのか澤田さんに聞いてみたい」

【教師の具体的な手だて】

〈問いを生む場〉

▽品種による利点と欠点について想起させるためにF1種と札幌黄の割合の変遷を提示する

▽生産量を減らしても札幌黄を作り続けている事実から問いを生む

〈考えをつなぐ場〉

▽消費者の願いと生産者の思いの2つの立場で追究を束ねる

▽生産のバランスや伝承の意味へ考えを深められるように「魅力があるなら札幌黄の生産を増やしたらどうか?」「F1種と札幌黄のどちらが大切か?」と問い返す

〈吟味・検証・再考する場〉

▽これからの生産割合について、グループ内やグループ間での議論を促す

▼評価

▽生産のバランスを考えながら札幌黄を作り続ける理由を生産者と消費者の立場から考え、ノートに記述しているかを見取る

(札幌市 2022-11-16付)

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