全小社研北海道大会公開授業⑮宮の森小 歴史の中心に「人の営み」 札幌農学校設置の影響に着目(札幌市 2022-12-23付)
第6学年授業研究会B(1)
札幌市立宮の森小学校6年4組(勝谷亮太教諭)
札幌農学校~歴史の中心に「人の営み」があることを実感する
◆第6学年で目指す子どもの姿
▼歴史から学び、新たな社会を創り出そうとする子
第6学年部会で目指す「社会を知り、世界を切り拓く北国の子」とは「歴史から学び、新たな社会を創り出そうとする子」である。学習指導要領には本単元の目標として「近代化を進めたことを理解すること」とある。
黒船来航以降の外国からの脅威に対し、大久保利通を中心に行われた廃藩置県等の諸制度の改革、殖産興業等の政策は近代化を目指した社会の変化の一側面である。
しかし、活動の主体となるのはあくまでも人間である。明治の近代化は制度などの外面の変革のほかに、生き方や考え方など、人の内面の近代化が同時に行われたからこそ、列強に伍する力を日本が急激に付けることができたと考える。
本単元の学習を通して、国を変革するには制度の変革だけではなく、人々のそれまでの考え方や生活様式を変えていく必要があると考える子、そして、これからの自分たちの新たな社会に思いをはせる子に育てたい。
◆本単元の目標
明治維新における改革を、地租改正、徴兵令等の制度の変革という側面と、文明開化、四民平等、人々の生き方や考え方の変革という側面に着目し、地図や年表などの資料で調べてまとめ、諸外国からの独立を果たすために、それぞれがどのような役割を果たしたかを考え、表現することを通して、黒船の来航、廃藩置県や北海道開拓などの施策を手がかりに、わが国が明治維新を機に欧米の文化を取り入れつつ近代化を進め、諸外国に追いつくために富国強兵に力を入れ、政策を進めたことを理解する。
また、明治維新では人物や事象がどのように関わって国づくりが進んだかについて予想や見通しを持ち、主体的に学習問題を追究し、これからの自分たちの社会について考えようとする態度を養う。
◆本時のねらい
札幌農学校を設置する決断をした黒田清隆の意図について話し合う活動を通して、農業や酪農、建築などの技術を学ぶ場をつくり、人を育てることで北海道を開拓し、さらに日本の近代化を進めようとした黒田の思いと、北海道を重要視していた明治政府の思いを考え、適切に表現する。
◆本時の展開
【子どもの主な活動】
〈問いを生む場〉
▽当時の北海道に必要なものは何かな?
・人が住む場所
・人が働ける場所
・兵隊たちが訓練する場所
・人が移動するための手段
▽開拓使長官・黒田清隆
1876年アメリカ人のクラークを初代教頭として迎え、日本で初めて学士号の授与権が付与された高等教育機関として設置された。
▽造ったのは札幌農学校
▼課題「(開拓に関係がなさそうなのに)黒田清隆は、なぜ、札幌農学校を設置したのだろう?」
〈考えをつなぐ場〉
▽学びによって学生が育つ
・欧米の進んだ農業技術・測量術
・化学
・土木技術
▽北海道の開拓が進む
・農業の発展
・街が大きくなる
・交通網の発達
▽人口増加「富国強兵の国づくりへ」
▼まとめ「黒田は、札幌農学校で開拓に必要な知識や技術を身に付けさせ、北海道の開拓、日本の近代化を進めようとしたんだね」
〈吟味・検証・再考する場〉
▽卒業生のその後は?
▼課題「札幌農学校は、本当に国全体の発展につながっていたのかな?」
▽第2期生・新渡戸稲造
・1881年開拓使御用掛
・1894年遠友夜学校設立
・1887年札幌農学校教授
・1901年台湾総督府技師
・1920年国際連盟事務局次長
▽北海道だけではなく外国でも活躍しているね
▽自分が教わったことを人のために教えているね
▼まとめ「黒田清隆をはじめとした明治政府の人々の開拓に対する思いが、日本の発展につながったんだね」
【教師の具体的な手だて】
〈問いを生む場〉
▽当時の北海道において必要なものを考えさせたあとに、一見すると開拓とは関係のない札幌農学校を設置した事実を提示し、児童に思考のずれを生ませ、問いへとつなげる
〈考えをつなぐ場〉
▽欧米の進んだ知識や技術を学生が学び、身に付ける場を設けることで、北海道の開拓を進めようとした意図を明らかにする
▽北海道の開拓を進めることで国にとってどのような影響があるのか、視点を広げていけるように関わる
▽新渡戸稲造を中心人物として、農学校の卒業生の動向を提示し、農学校の存在価値を問う
〈吟味・検証・再考する場〉
▼評価「農学校で育成した人材が、北海道だけではなく日本全体の発展に関わっていることや、農学校を設置した明治政府の意図について考え、表現しているかを評価する
(札幌市 2022-12-23付)
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