道教大附属札幌中2年次研究概要 第1回 “自他”を往還し学ぶ生徒育成 他者との関わり大切に(札幌市 2023-04-06付)
道教育大学附属札幌中学校(萬谷隆一校長)は、「“自他”を往還し、批判的・創造的に学ぶ生徒の育成」を研究の目的に掲げ、4年8月から2年次研究を推進している。研究目標には「各教科・領域をつなぐカリキュラム・デザインの構築」「既習と未習を意識的につなぎ合わせ、自他の思考を吟味しながら課題解決へ向かう授業の実践」「研究目標1・2による変容の質的・量的な分析と検証」の3点を設定。ここでは、これまで取り組んできた2年次研究の概要を連載で紹介する。
【はじめに】
本校では、4年度から研究の目的を「“自他”を往還し、批判的・創造的に学ぶ生徒の育成」と設定して校内研究を推進してきた。
前次研究を踏まえつつ、目の前の生徒の状況をもとに育みを目指す姿を整理する中で見えてきたことは、社会の変化するスピードがいかに急速で不確実性が高まろうとも必要となる汎用的な力が必要不可欠ということである。
そのような力の中には、他者とより良く関わろうとする姿勢や冷静に判断しようとする意識、新しい発想や価値を生み出そうとする創造性に関わる志向性などの非認知能力に関わるものも多く挙げられた。
世界的な潮流においてもこのような力は「社会情動的スキル」等と表現され、AIによっては代替が困難なスキルであるとともに「より多くの学習成果につながる」ことを実現する重要なものとして位置付けられている。
本校における取組については、4年7月26日に「夏季教育研究大会」として研究1年次の取組状況を発信し、札幌市はもとより道内外から数多くの教育関係者の皆さんからの批正をいただくことができた。
直近の2年間は、新型コロナウイルスによる感染状況の悪化に伴い、授業動画の配信とオンラインでの研究討議によって研究の歩みを止めない努力を重ねてきた。
感染拡大防止の観点から、3年ぶりとなる教育研究大会の開催に当たっては従来の運用方式を大幅に見直す必要があったが、対面式とオンライン配信を組み合わせるハイブリッド方式によって、生徒の学ぶ様子を間近で見ていただけたことは大きな成果であった。
また、上智大学の奈須正裕教授には「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を目指して」と題した講演をいただき、本校の取組に対して有益な、様々な示唆をいただいた。
研究1年次の取組を終え、4年8月からは研究2年次として新たな研究推進を試みてきた。
冬季教育研究大会は、この研究2年次の取組における中間報告という位置付けをもたせている。研究推進の質をさらに高めるため、参会者の皆さまからは率直な指摘をいただけると幸いである。
【本校研究の基盤となる考え方】
▼本校の教育目標と「共創の学校」
本校では「清新・進取・斉正・親和」の4つの言葉を学校教育目標としている。生徒が学校教育目標に親しみを持って学校生活を送ることができるように設定され、本校の教育活動における指針になっているとともに、私たちが育みを目指す生徒の姿として研究推進の視点からも重要な指針として位置付けられる。
〈附属札幌中学校のめあて〉
▽清新=いつも生き生きと、心と体をはたらかせましょう
▽進取=なにごとにも積極的に、自ら進んで取り組みましょう
▽斉正=品位と正義を重んじ、けじめのある中学校生活を送りましょう
▽親和=人々との交わりに喜びをもち、ともに向上することをめざしましょう
また、前記の学校教育目標を支えるものとして、本校が「子どもの“学び”にかかわる生徒、教師、保護者、地域・社会の人々が有機的につながり、“子どもの学びの姿”を中心に、学び合い、高まり合い、相互に機能していく(学びの共創体)ことのできる場としての学校」であることが理念上の位置付けとして示された。
生徒が他者と積極的に関わり合い、自ら学びを創り上げ、共に高まっていこうとする学びの姿は、現在も本校において大切に受け継がれている。
▼本校研究における「学び」と「学び合い」
本校研究において「学び」は、子ども一人ひとりの持つ自由な発想によるものをはじめとして、学校教育にとどまるものではなく、社会におけるもの、つまりは生涯にわたっての行為と捉え、平成25年には「自らの成長の欲求に基づき、対象の本質を探り、自己に取り込み、さらなる成長を目指し続ける行為」とした。
つまり、本校における「学び」という行為には、学ぶことへの動機付けや自己省察、さらにはこれからの「学び」への見通し等の重視を含んでいると言える。
また「学び合い」は「学び」の過程において「学び」を深める手段の一つとして他者との関係性を重視したものであり「自他の考えや価値観に影響を与える相互作用のある学びの過程」と捉えている。
このような捉えを生徒・教師が共に大切にしながら授業を構築してきた。
これは多様な価値を持つ他者との関わりを学校全体で大切にしていることを意味している。
以上を踏まえると、本校では学び手である生徒自身の主体性を大切にし、生徒が自他の考えや価値観に影響を与え合う中で行われる「学び」や「学び合い」をこれまでも重んじてきたと言うことができる。
このような捉えを、今次研究においても研究推進の基盤になるものとして位置付けて研究推進を図っている。
(札幌市 2023-04-06付)
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