道教大附属札幌中2年次研究概要 第2回 既習と未習、自己と他者つなぎ 生徒の課題克服と願い実現(札幌市 2023-04-07付)
【研究1年次の振り返り(自己評価)】
▼研究1年次の取組概要
研究1年次においては、前次研究における質的・量的分析やその検証結果から捉えた「生徒の課題」と、私たち教員が育みを目指す姿や生徒への「願い」を組み合わせて研究の方向性を定めてきた。
〈前次研究から捉えた生徒の課題〉
学習成果に対する自信や自己肯定感はそれほど高いとは言えず、自己の力や努力を低く見積もってしまう傾向がある。
また、打たれ弱く、教師の指示や他者の意見に疑問を持たずに順応する傾向がある。
〈教員が育みを目指す生徒の姿や願い〉
過去に学んだ内容や経験、自他の学びの成果を意識的につなぎ合わせて方略を選択し、批判的・創造的な態度や志向性を育み、それらを生かしながら課題解決に向かうようになってほしい。
このような研究推進の方向性は、前次研究において「エビデンスに基づいた研究・研修」に取り組む中で、生徒の課題に重点を置いてその克服を目指してきた結果、取組内容への焦点化が過度に進み、私たち教員の視野が狭くなるという反省点を踏まえたものであった。
前者の「課題」については、アンケート調査による数値的な分析結果のほか、日々の観察記録や生徒の記述内容、さらには教員の実感を取り入れた結果として明確化してきたものである。
また、後者の「願い」については、状況に応じて方略を選択しながら課題解決に向かうための認知面に関する力を育むとともに、自他の考えを冷静に捉えて批判的に分析しようとしたり、新たな考えや価値を生み出すことで創造的に課題解決に向かおうとしたりする、非認知面の力の育みも重要であるという認識を共有している。
これらの議論を踏まえ、今次研究では、研究の目的を「“自他”を往還し、批判的・創造的に学ぶ生徒の育成」と設定し、生徒の「課題」の克服と生徒の「願い」の実現を目指すこととした。
▽「自他」を往還し、批判的・創造的に学ぶ生徒の育成
将来にわたって、直面した課題の解決過程において、自己の既有の知識や考えと課題、自己や他者の考えを能動的に行き来するとともに、様々な角度から吟味し、自己を調整しながら解決に向かうことを通して新たな価値を生み出すことができる生徒の育成
ここで述べる「“自他”を往還する」姿とは、生徒一人ひとりが自己の既有の考えや課題、自己や他者の考えを能動的に行き来することを想定している。
単に他者の考えを自分に取り込むだけではなく、過去の学びとこれからの学び、さらには自他の学びの成果をつなぎ合わせるという行為を、生徒自身の必要感に応じて何度も往復する姿を求めようとしたものである。
また「批判的・創造的に学ぶ」姿とは、自他の考えを様々な角度から吟味し、自らの学びを調整しながら解決に向かうことを通して新たな価値を生み出そうとすることを想定している。私たち教員の「願い」は、将来にわたって予測困難な社会をたくましく切り開き、豊かに生きていく力が求められるという社会的な要請や変化なども踏まえている。
その実現のためには、偏見を持たずに多様な視点から吟味しようとしたり、自分の考えに対しても疑いながら慎重に判断しようとしたりする批判的な態度や、「ほかにどんな解がありうるのか、様々な可能性を考えたり、一つの物事を複数の観点から眺めるといった、広がりのある思考」を伴う創造的な態度が重要である。
なお、この「批判的」「創造的」の両者の間には独立性や順序性のあるものではなく、互いに関連し合う思考として位置付けられる。これは、創造的に課題を解決する過程において、新たな解を模索しようとする姿勢が重要である一方、批判的に思考する際においても「複数の選択肢を探したり、新たな可能性について開かれた心を持っていることが重要」であるためである。
さらに、研究の目的を実現するための具体的な取組として、以下の研究目標1~3を設定した。
▽研究目標1
教師自身が教科内や教科・領域間のつながりを捉えるために、総合的な学習の時間を核としたカリキュラム・デザインの作成を意識した実践を行う。
▽研究目標2
各教科・領域において、既習と未習、自己と他者の考えを意識的につなぎ合わせながら解決へ向かう授業の在り方を考え、実践する。
▽研究目標3
主に研究目標2に関する継続的な取組を通して生徒にどのような変容が見られたかを、大学・教職大学院との連携をもとに分析・検証する。
研究目標1は、カリキュラム・マネジメントの視点から研究の目的に迫ることを目指したものである。
本校における現在の総合的な学習の時間の取組を基盤にしつつ、今次研究の目的の視点から内容・目的等を見直したり、教科等を横断したつながりに対して教師自身が意識的に捉えたりしようとする試みである。
研究目標2は、教科固有の見方・考え方を働かせつつ、自己内においては既習と未習、他者との関係性においては相互の思考を意識的につなぎ合わせる授業実践を積み重ね、研究の目的に迫ろうとする試みである。
この取組は、個々の学びを集団での学びに生かし、さらにその成果を個々の学びに生かそうとする点において「“個別最適な学び”と“協働的な学び”を一体的に充実し“主体的・対話的で深い学び”の実現に向けた授業改善につなげていくこと」という趣旨にも合致したものと考える。
この取組を分析・検証するために研究目標3を設定し、前次研究までの実施方法を踏襲した形で量的・質的の両側面から分析・検証することを試みた。
なお、上記の研究目標1~3について、実質的な取組は4年4月~7月までの3ヶ月程度と極めて短期間であった。
そのため、研究1年次においては主に研究目標2について重点を置いて推進してきた。
(札幌市 2023-04-07付)
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